BAe ホーク(British Aerospace Hawk)は、ホーカー・シドレー社が開発した単発ジェット練習機。軽攻撃機としての使用も可能である。ホークの製造と販売は、1977年にホーカー・シドレーからブリティッシュ・エアロスペース (BAe) に移り、BAeは1999年にBAEシステムズとなった。総生産機数は900機以上で、40年以上に渡って生産されている。
BAe ホーク
イギリス空軍のホーク T.1
開発経緯
イギリス空軍は、1964年より練習機フォーランド ナットやホーカー ハンターの後継機を求めていた。当初はフランスと共同開発した攻撃機兼用の超音速機SEPECAT ジャギュアを充てる計画でいたが、練習機として使用するには性能過大かつ高価なものとなったため、より経済性の高い機体を開発することとなった。
1970年末に発行された要求仕様ASR397に、アルファジェット社、ホーカー・シドレー社、BAC社の3社が応じた。このうち1968年より検討していたホーカー・シドレー社の亜音速練習機HS.1182モデルが1971年10月に採用され、1973年に「ホーク」の名称が与えられた。徹底したコスト削減のため、ホーカー・シドレー社には試作機を製造せず量産を始めることが提案され、初期量産機のうち5機が運用試験に使われた。1974年8月21日にダンカン・シンプソン氏の操縦する初号機が初飛行を実施し、同年のファーンボロ航空ショーで一般に公開された。
1976年1月4日にイギリス空軍の訓練学校に引き渡され、1977年から兵器訓練のため同空軍の戦術兵器部隊 (TWU) での使用が開始されている。曲技飛行隊レッドアローズが使用していたナットも1979年からホークへの交代が始まり、1980年からホークでパフォーマンスを披露するようになった。レッドアローズ所属機は胴体下部にオイルや染料を入れるタンクが備えられ、3つの管から放出できる。一部の機体はT.1Aへと改装され、戦時には局地防衛に投入することを想定している。
特徴
双発ジェットエンジンの超音速機ジャギュアに対して、本機は単発ジェットの亜音速機である。ゆるい後退角を持つ主翼を低翼配置とする機体となっており、着陸の容易さを狙って主脚の間隔は広く取られている。乗員は2名で、座席はタンデム配置。大型のキャノピーによって視界が広く取られており、また前後の座席の高低差もあるため、後席の視界も良好である。パイロンは主翼各2箇所と胴体中央の計5箇所にあり、有事には爆弾もしくは機銃ポッドを搭載できる。T.1A以降はAIM-9L サイドワインダー空対空ミサイルが搭載できるようになった。
その後も改良が続けられ、エンジンを換装し電子機器や対地・対空攻撃能力を強化したホーク100や、単座の軽戦闘攻撃機として再設計されたホーク200が登場しており、現在も生産中である。
その保守的で簡素だが堅実な設計が評価され、本機は派生型を含めると各国への輸出も好調を維持している。90年代にも米ボーイング社による改設計を経てT-45 ゴスホークの名称でアメリカ海軍に艦上練習機として採用されたほか、2010年代にはT-38練習機の後継を必要としている空軍にもホーク100をベースとしたタイプが提案されていた。
- T.1
- 初期生産型。イギリスで使用している練習機型である。176機製造。エンジンはアドーアMk.151。
- T.1A
- T.1を改装し、サイドワインダー空対空ミサイルを搭載できるようにしたもの。88機改装。
- ホーク50系列
- エンジンをアドーアMk.851に換装した輸出型。
- Mk.51/51A
- フィンランド向け(57機)。
- Mk.52
- ケニア向け(12機)。
- Mk.53
- インドネシア向け(20機)。
- ホーク60
- エンジンをアドーアMk.861に換装。
- Mk.60/60A
- ジンバブエ向け(13機)。
- Mk.61/63
- アラブ首長国連邦向け(29機)。
- Mk.62
- ベネズエラ向け(計画のみ)。
- Mk.64
- クウェート向け(12機)。
- Mk.65/65A
- サウジアラビア向け(30機)。
- Mk.66
- スイス向け(20機)。
- Mk.67
- 韓国向け(20機)。ホーク100のように機首が延長されている。
- ホーク100
- エンジンをアドーアMk.871(推力6,000ポンド)に換装。機首を延長し、FLIRやレーザーセンサーをオプションで装備可能に。翼端に空対空ミサイルを搭載できる『コンバット・ウイング』に主翼を改設計。グラスコックピットを導入し電子機器も近代化。
- Mk.102
- アラブ首長国連邦向け(13機)。
- Mk.103
- オマーン向け(5機)。
- Mk.108
- マレーシア向け(13機)。
- Mk.109
- インドネシア向け(7機)。
- Mk.115
- カナダ向け(19機)。カナダではCT-155と呼称。
- Mk.127
- オーストラリア向け(33機)。
- Mk.129
- バーレーン向け(6機)。
- Mk.132
- インド向け(81機)[1]。旧称Mk.115Y。
- ホークLIFT
- LIFTは『戦闘機前段階訓練機』の略であり、上級高等練習機の一種をさす。ホーク100をベースに、エンジンをアドーアMk.951(推力6,500ポンド)に換装。
- Mk.120
- 南アフリカ共和国向け(24機)。
- ホークAJT
- 最新型。AJTは『高等ジェット練習機』の略であり、ホークLIFTをベースにレーダー操作・兵装発射のシミュレーション機能など新型のアビオニクスを導入。
- Mk.128
- イギリス向け(28機)。ホーク T.2の名称で採用。
- Mk.165
- サウジアラビア向け(22機)。
- Mk.166
- オマーン向け(8機)。
- Mk.167
- カタール向け。
- ホーク200
- ホーク100をベースにした単座戦闘攻撃機型。機首を再設計し、AN/APG-66Hレーダーと固定機関砲を装備。ただし実際にレーダーを搭載した機体は量産されなかった。構想では防空戦闘任務を念頭に置いていたものの、レーダーを備えていないことから実際には軽攻撃機として使用されている。
- Mk.203
- オマーン向け(11機)。
- Mk.205
- サウジアラビア向け(計画のみ)。
- Mk.208
- マレーシア向け(13機)。
- Mk.209
- インドネシア向け(11機)。
- T-45ゴスホーク
- アメリカ海軍向けの練習機であるが、採用にあたってマクドネル・ダグラス社による改設計が施された。航空母艦での運用を想定しているため、尾翼の拡大や着陸脚の強化などが行われている。
退役
そのほか、1980年代においてイギリス政府はホーク練習機を63機ほどイラクに売却することを検討していたが、売却は当時の外務大臣であるジョン・メージャーによって阻止された。
- 乗員:2名
- 全長:11.86 m
- 全幅:9.40 m
- 全高:3.99 m
- 翼面積:16.72 m2
- 運用空虚重量:3,635 kg
- 最大離陸重量:8,342 kg
- 最大着陸重量:7,711 kg
- 動力:ロールス・ロイス/チュルボメカ アドーア Mk 151 ターボファンエンジン × 1
- 推力:23.13 kN
- 最大速度:1,059 km/h
- 航続距離:3,148 km
- 上昇限度:15,240 m
- 上昇率:2,835 m/min
- 武装
- 機銃:30mm ADEN機関砲(機銃ポッドに搭載)
- 爆弾:最大 3t
- ミサイル:IR-AAM を最大2発
- 『エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー』
- プレイヤー機として使用可能。
- 本作の開発スタッフが「BAEシステムズが宣伝したいのでゲームで使ってほしい、とお願いしたので採用した」と発言している[4]。
ウィキメディア・コモンズには、
BAe ホークに関連するメディアがあります。
The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 347. ISBN 978-1-032-50895-5
The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 350. ISBN 978-1-032-50895-5