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鼻音(びおん、英語: nasal)とは子音の一種であって、口からの通気を完全に閉鎖し、鼻の通気だけを開放して出す音。ただし、口と鼻の両方の通気を同時に可能にする音(鼻音化した口(腔)音、母音も子音もある)は除く。鼻音は、口(腔)音と対立する調音である。
気流の妨害の仕方から分類された調音方法としては完全な閉鎖を作る破裂音に相当する。したがって、鼻音を破裂鼻音と呼び、口音の破裂音を破裂口音と呼ぶことがある。鼻音でも、次の母音にわたる瞬間には口腔内の閉鎖が開放され破裂が起こっている。これは有声鼻音では顕著ではないが、無声鼻音では聞き取ることができる。
標準の日本語の鼻音には、次の4種類がある。
鼻の通気を開放したまま発する母音は「鼻母音」といい、鼻音化した口(腔)音の一種である。日本語では、語尾の撥音(「ん」)が鼻母音になることがある。鼻母音は、フランス語、ポルトガル語、ポーランド語、上海語、閩南語などで多用される。
非鼻音化は、一般的には病理的なものを指す。鼻音や鼻母音を調音している途中で、気流を鼻腔へ送ることができずに鼻音の音価が失われる現象を非鼻音化と呼ぶ。風邪を引いて鼻が詰まったときに表れる、一般に「鼻にかかった声」「鼻声」と呼ぶものがこれに相当する。鼻声とは、音声学的には、口蓋帆は下がっていて後鼻孔(鼻の奥からのどへ抜ける穴)は開いているにもかかわらず、気流は前鼻孔(鼻の穴)から外へ抜けることができないので、鼻音をうまく調音できず、音が鼻腔にこもったように共鳴しながら、部分的に口音化した音である。前鼻孔が開放していない点で響きはやや異なるが、鼻腔に共鳴させる点では鼻音化した口音と類似する。表現する記号として、拡張IPAで補助記号[ ͊ ]が用意されており、[m͊]のように記述する。
言語の歴史的な音韻変化の途中でも、部分的な非鼻音化が起こる場合がある。鼻音の調音途中で口蓋帆が上がり後半部分が有声破裂口音として発音される。日本語の漢字音で呉音で鼻音であったものが、漢音では破裂口音として伝わっているものがあり(例えば「馬」は呉音が「マ」、漢音が「バ」)、これは唐代の中国語に起こった非鼻音化を反映しているといわれる。
ビルマ語(たとえば မှာ /m̥à/〈通達する〉、နှာ /n̥à/〈鼻〉、ငှား /ŋ̊á/〈貸し借りする〉)、ウェールズ語、アイスランド語などの例外を除き、ほとんどの言語では音素として有声鼻音しか存在しない[1]。したがって、国際音声記号でも有声鼻音にはそれぞれ独立した記号が用意されているが、無声鼻音には記号が作られていない。無声鼻音は鼻音字母に無声の補助記号[ ̥]を下または上に加えて[m̥]のように記述する。
国際音声記号では、以下のように記述される。
中国語学では歯茎硬口蓋鼻音の記号(nの右下にループを作った記号 [ȵ] - Unicode 4.0に対応しているフォントであれば表示可能)を多用する。
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