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福祉用具の一つ ウィキペディアから
車椅子(くるまいす、英: wheelchair)とは、身体の機能障害などにより歩行困難となった者の移動に使われる福祉用具。一般的なものは[注釈 1]、椅子の両側に自転車に似た車輪が1対、足元にキャスター(自在輪)が1対の、計4輪を備える。車椅子は健常者も使用できる。
筋力などの理由により一般的なものの利用が困難な場合、「電動車いす[注釈 2]」の利用が検討される。こちらは動力に電動モーターを使用したものであるが、いわゆる「セニアカー(シニアカー)[注釈 3]」などと呼称されるものとは構造が異なる。そのほかにも、重度な障害者向けにストレッチャーのような形態のものや、各種障害者スポーツに特化したものも存在する。以下、該当項目を参照のこと。
2010年11月30日までは、「椅」(い)が常用漢字外であったこともあり、日本の法令では「椅子」を平仮名で車いすと表記した。
使用者として、身体障害者の内でも下肢障害者が想定されるが、脳性まひなどによる不随意運動やパーキンソン病などによる振戦により身体の動作がうまくいかない場合や、内部疾患(心臓や呼吸器)による中長距離の歩行が困難な者、加齢による筋力低下、怪我(骨折など)による一時的使用など、幅広く使われている。そのため、普段は使わない人でも、中長距離歩行に不安の有るものが移動の時には使用し、こういった人々の利用に供する為、公共施設や病院には備え付けのものが常備されていたり、自治体などでは貸し出しのシステムが備えられている場合がある。 自治体などで車椅子体験会でも使われることもある。
椅子と車輪という発明が存在した地域から、自然発生的に生まれたと考えられており、その歴史はかなり古い。車輪のついた家具という発明は、記録に残っている限り、紀元前6世紀から5世紀頃、中国の石板に見られる碑文や、ギリシャの花瓶に描かれている乳母車である。障害者を運ぶために使われる車椅子の初期の記録は、3世紀ごろの中国に遡る。当時の車椅子は、重い物を運ぶための手押し車に近いものであり、障害者だけでなく、重い物も運ぶもので、障害者専用として明確に区分けされていたわけではなかった[1][2][3][4]。
有名なところでは、障害者ではないが諸葛亮が三国志演義の中で、車輪のついた椅子に乗っている描写がある。三国志演義は明の時代に書かれており、この時代の中国には、車椅子という発想が存在していたことを示している。
また、1595年に描かれたとされる、スペイン王フェリペ2世の肖像には、召使に押してもらう型(今で言う介助型)に乗っている姿が描かれている。この車椅子を発明した人物の名は不明である。これは、肘掛けや足置きを備えた精巧なものであったが、一方で車輪は小さく、移動にはかなりの労力を要するなど、欠点があった[5]。
自走式タイプが初めて考案されたのは、1650年、ステファン・ファルファという人物によって(ファーフラーとも。自身が下肢に障害があった模様で、自走といっても今のような後輪を直接回すのではなく、前輪をギヤ駆動のクランクで回す形式であった)。これらは、障害者も利用したが、障害者でない者も利用しており、当時は「車椅子は障害者の乗り物」という現代人の常識とは異なっていたようである。ヨーロッパでは、18世紀のはじめ頃から車椅子が商業的に製造されていたと考えられている[6][7][8]。
日本では、中世・近世には疾病などで歩行が困難な者が使用する「土車」「いざり車」と呼ばれる車椅子の原型と呼べるものが存在していた。箱もしくは板に四つの車輪(両方とも木製)の付いたもので、使用者はあぐらなどで座り、手に持った棒で地面を突いて、もしくは取り付けた縄や手押し部分で介助者が動かした。これに乗って寺院巡礼などの長期旅行をする者もいて、記録(浄瑠璃作品や浮世絵など)が散見され、また実物が各地の寺院に残っている。明治以降では大正初期からアメリカやイギリスから輸入された記録がある。また、1920年頃につくられた「廻転自動車」と呼ばれた物が日本国内で最初に開発された西洋式の原型とされている。ただし、これは文献には残っているものの、正確な製造者や製造年は分かっていない。日本で製造したとはっきり認められるのは、同じく1920年頃、北島藤次郎(北島商会(現、株式会社ケイアイ)創設者)により作られたもので、籐製であった。これらは戦傷で障害を負った軍人や入院患者のために、一部の病院で用いられたようである。
第二次世界大戦では、多くの軍人や民間人が負傷した。戦後は義肢などとともにその需要が急激に高まっていたが、当時はあらゆる物資が不足しており、これらの障害者になかなか行き渡らなかった。1951年に制定された身体障害者福祉法により、徐々に普及が進んだ。
1964年に行われた東京パラリンピックで欧米製の優秀さを目の当たりにし、これをきっかけに日本でも性能が急激に上がることとなる[6][9]。
1990年以降、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称「バリアフリー法」)などの制定により社会のバリアフリーが推進され、ノーマライゼーションの観点から車いすを用いての利用、移動を考慮して床面のフラット化(段差解消)、ゆるやかなスロープ、車いすの幅を考慮した開口部の広いドアなどを設備した施設が増えている。
福祉用具取扱店など専門業者のほか、ホームセンターなどでも販売されている。電動型は障害者個人の特性に合わせ、専門業者からカスタマイズ販売されることが多い。 Amazonでも車椅子販売がある。
価格は手動で1万円前後 - 50万円超、電動では30万円 - 300万円超と幅広い。なお、福祉機器であるため、本体について消費税は課せられない。
主な助成制度としては以下のものがあるが、スポーツなどに特化したものは対象とならない。
フレームや車輪には、主に加工性に優れて丈夫な鉄(クロモリ鋼)、軽量で錆びにくいアルミニウムが用途や予算に合わせて使われている。高価なものには軽さと強度を併せ持つチタン、軽量で振動吸収性の高いカーボンを使用している。低帯磁性からステンレスを使ったものはMRIなどの施設内で使用されたり、アルミ以上の耐腐食性により入浴用・シャワー用が製造されている。
身体障害者や高齢者が椅子・車いす、又は座位保持装置を適切に活用し自立的生活を築くための支援や、介護者の負担を軽減する技術のこと。1989年に身体障害者福祉法の補装具交付基準の対象品目になった。シーティングシステムは、座位の保持が難しい重度身体障害者や高齢者(円背等の脊椎の変形を伴うなど)に安定した座位姿勢を確保し、また上肢機能へ配慮した適切な作業姿勢や活動姿勢を提供する概念である。
ベースとなるフレームは車いすや木製の椅子などさまざまだが、クッションやバックレストを変更して身体バランスの改善、筋緊張の軽減、座圧の減少などによって褥瘡(じょくそう=床ずれ)のような2次障害を防止し、快適さを追求していくことで、長時間の座(=生活の基礎姿勢)を維持する。
自走式もしくは自操式ともいう。主輪外側にあるハンドリムを搭乗者自身が操作して、前進・後退・方向転換を行う。後輪のサイズは20インチ - 25インチ程度。身体状況に応じて選択されるが、動作性などから大径のものを選択するユーザーも多い[12]。
フレーム・車輪にカーボン、チタンなど、競技用自転車(→ロードレーサー)と同様に軽量・高剛性な素材・技術を導入したもので、各スポーツに特化させた様々な形状をもつ。
主なものは、
タイヤ破損時の交換を容易にするため、クイックリリースシステムが搭載されている。また、専用に強化された固定式フレームの剛性・駆動効率は一般のものとは比較にならないほど高い。
身体障害者福祉法では車いす手押し型と呼ばれる[要出典]。常に介助者が後方からグリップ(ハンドル)を押して操作する為、車輪にハンドリムは備えない。16インチ程度の小さめな車輪を備えるものが多いが、段差乗り越えなど屋外での移動を考慮して20インチ以上の車輪を備える場合もある。駐車するためのブレーキとは別に、自転車と同様のブレーキを備える事が多い。
自走式は通常、両腕の操作で駆動させるのだが、脳卒中などによる片麻痺、あるいはその他疾病により、片手のみ、片手片足、もしくは足のみが健常である人であっても自操できるようにしたものである。
特徴としては背もたれ部分が頭部まで延長した形になっている。多くは介助型もしくは電動型である。また、背面を大きく後方へ倒すことになるので、バランスを保つため後輪が普通型のものより後方に位置することになりホイルベースが長くなるので、屋内での取り回しなどに苦労する場合がある。これを防止する目的で、通常のホイルベース長のフレームのティッピングバー付近に補助輪をつけたタイプもある。車いす自体も大きくなり、重量も嵩み、特にティルト型はその機構が邪魔をして折り畳めない物もあり、車への積み込みが困難となりうる。見た目の特徴として、介助用ハンドルにレバーが2本(1本は普通の介助型にもある介助用ブレーキレバー、もう1本が座面もしくは背もたれの傾斜時に握るレバーであり、見分けるために両者は色違いとなっている)存在する。
股関節への圧迫開放のためリクライニングで背もたれ角度を変え、なお且つティルトを使って座面圧低下を狙うための、ティルト&リクライニング型というものもある。
起立姿勢をとることができ、リハビリに使用する「傾斜起立台」(起立姿勢が取り難い人の体をベルトで板に固定して起立姿勢をとる器具)と合せたような形であり、通常は普通に車いすとして使い、立ち上がる姿勢が必要になった時(仕事・買い物・リハビリなど)、適宜立ち上がり姿勢をとることが出来る。フットレスト部・背もたれ部にベルトで体を固定し、手動もしくは電動による操作でフットレスト・座面・背もたれが駆動し起立状態まで体を持ち上げる。本体の車いすは手動と電動のものがある。立ち上がることで身体に与える好影響は、下肢中心に大いにあり、起立訓練は理学療法の場で頻繁に行われている。関節可動域の確保や骨萎縮、起立性低血圧などの廃用症候群に効果があるといわれているが、車いす使用者の場合、日常生活において手の届く範囲が限られることと、ものに接近しづらい点が問題としてあげられるが、これらの問題について有効であると思われる。
電気モーターによる走行が可能なもので、最初の動力付車いすは電動ではなく、1912年イギリスでエンジンを取り付けた三輪型が出現した。アメリカでは、サンフランシスコ万国博覧会(1915年開催)の入場者移動用に使われ(病人の移動手段だった模様)、1956年ごろ最初の量産モデルが作られた。日本国内での工業的な国産第一号は1968年の八重洲リハビリ(1960 - 70年代の日本のリハビリ機器最大手)によるものと言われているが、手作りなどにより各地で作られていた模様である(例:有限会社アローワン(後述)など)。1977年に電動車椅子JISが制定(手動型のJIS制定は1971年)されるとともに、各メーカーが製造販売に参入することになる。操作は主にジョイスティックで行い、手動型同様、左右の駆動輪の回転数の差による旋回する。前輪キャスターの進行方向を電気モーターによって直接操舵することで旋回できるパワーステアリング装備型もある。また、近年では中輪駆動方式が出てきて、旋回性能を向上させているものもある。この方式は、乗っている人の真下に駆動輪があるので、方向を変えたときに搭乗者を中心に向きを変えられるので、ごく自然に向きを変えることが出来る。
障害により手が自由に動かない場合でも 足でジョイスティック操作するためのオプションも用意されている。また、口や顎、額など、なにかしら可動部位が存在すれば複数のスイッチを組み合わせて操縦が可能である(ほかにも呼気などを吹き込んで操作するストローのようなスイッチもある)。
高速バスや、乗降方法が前乗り前降りの路線バスでは、折りたたむことができないため、利用できない場合が多い[15][16][17][18][19]。
運転が不慣れな使用者による事故が発生しており、死亡事故も起こっている[20]。
高齢者向けに作られた、ハンドルを使って前輪を操舵する電動車いす。
その名の通り、タイヤがオフロード仕様の車いす。基本的に電動式である。代表的に、シンプルなオフロードタイヤタイプ、キャタピラタイプ、水陸両用タイプが上げられる。
日本の道路交通法では、車椅子は車両扱いではなく、歩行者扱いとなる[22]。また、一定の基準を満たす電動のもの(電動車椅子)についても、同様に歩行者扱いとなる。運転免許などは不要であり、原則として歩道や路側帯を通行し、歩行者用の信号機や横断歩道などに従うこととなる。
前述の通り日本国内においては歩行者として扱われるため、飲酒後および携帯電話を操作しながら使用しても法令違反には問われない。 しかし、機械・乗り物であることから避けるべきであるとの見解が警察庁より示されている[23][24]。
生活保護では被保護者で対象者に限り車椅子の使用に伴う増加エネルギーの補填として加算されている[25]。
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