Loading AI tools
西武鉄道のAGT(新交通システム)車両 ウィキペディアから
西武8500系電車(せいぶ8500けいでんしゃ)は、1985年(昭和60年)4月25日に営業運転を開始した西武鉄道山口線のAGT(新交通システム)車両。
西武8500系電車 「レオライナー」 | |
---|---|
基本情報 | |
運用者 | 西武鉄道 |
製造所 | 新潟鐵工所 |
製造年 | 1985年 |
製造数 | 3編成12両 |
運用開始 | 1985年4月25日 |
投入先 | 山口線 |
主要諸元 | |
編成 | 4両編成 |
軌間 | 1,700 mm |
電気方式 |
直流750 V (第三軌条集電方式) |
最高運転速度 | 50 km/h |
設計最高速度 | 80 km/h |
起動加速度 | 3.5 km/h/s |
減速度(常用) | 3.5 km/h/s |
減速度(非常) | 5.0 km/h/s |
編成定員 | 302人 |
車両定員 |
先頭車 71人(座席28人) 中間車 80人(座席32人) |
自重 |
先頭車 11.0 t 中間車 10.5 t |
編成重量 | 43.0 t |
全長 | 8,500 mm |
全幅 | 車体基準幅:2,380 mm |
全高 | 3,290 mm |
床面高さ | 1,110 mm |
車体 | 普通鋼・耐候性鋼板 |
台車 | 平行リンク式ユニット台車 |
主電動機 |
かご形三相誘導電動機 日立製作所製 HS36632-01RB |
主電動機出力 | 95 kW |
駆動方式 | 直角カルダン方式(差動装置付) |
歯車比 | 6.833 (6:41) |
制御方式 |
VVVFインバータ制御 機器更新前:GTOサイリスタ素子 機器更新後:IGBT素子 |
制御装置 |
日立製作所製 機器更新前:VF-HR-105 機器更新後:VFI-HR2410A |
制動装置 |
回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ HRDA-1 保安ブレーキ・駐車ブレーキ |
保安装置 | ATS(点制御による多情報変周式車上パターン式) |
備考 | 各データは落成時[1]または2002年4月現在[2] |
本項では山口線AGT車両として当初計画され、未成車両となった7000系電車についても記述する。
山口線のAGT化に際して導入された車両で、1985年(昭和60年)1月から同年4月[3]にかけて、4両編成3本(12両)が新潟鐵工所において新製され[3]、第1編成(8501編成)から順にV1,V2,3[注釈 1]の編成番号が付与された[5]。
本系列は大手私鉄が保有する唯一のAGT路線用車両で[6]、「レオライナー (LEO LINER) 」の愛称を有する(路線としての山口線の愛称も兼ねている)。
形式の「8500系」は製造初年が「1985年」であることと[7]、1両の長さが8.5 mであることに由来する。
山口線は西武園遊園地(現・西武園ゆうえんち)の遊戯施設「おとぎ線」として[8]、1950年(昭和25年)8月[9]に軽便規格(軌間762 mm)の非電化路線として開業したものである[8]。その後1952年(昭和27年)7月[9]に「おとぎ線」を地方鉄道法に基く地方鉄道として認可申請し、山口線と改称した[10]。軽便規格当時の山口線は終起点となる遊園地前駅(多摩湖線多摩湖駅に隣接)・ユネスコ村駅(狭山線狭山湖駅から徒歩連絡)ともに既存の各路線と接続しておらず、運賃体系も西武鉄道の他の一般鉄道路線とは異なるなど、依然として遊戯施設色の強い路線であった[8]。
1980年代以降、山口線は運行開始から30年余りを経過し、施設ならびに運用車両の老朽化が問題となりつつあった[11]。また、1979年(昭和54年)4月にはユネスコ村に隣接して西武ライオンズ球場(現・ベルーナドーム)が西武ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)の本拠地球場として開場しており[10]、多摩湖線方面から西武球場へのアクセス改善が求められたことから、折りしも更新時期を迎えていた山口線を遊戯施設的な路線から西武球場方面へのアクセス路線として更新・整備することとなった[11][12]。施設更新に際しては既存路線における鉄輪鉄軌条方式とは異なり、コンクリート製軌条とゴム製タイヤを用いたAGT路線として整備されることとなった[11]。
また、山口線はAGT転換当初からワンマン運転を実施しており、本系列の各種設備もワンマン運転に対応したものとなっている[5]。
外観は全長8,500 mmの普通鋼製車体に、1,100 mm幅の片開客用扉を1両当たり片側1箇所ずつ車体中央部に備え、扉両脇に配置された側面窓は上部に内折れ式の開口部を有する二段窓構造である[5]。構体・台枠は普通鋼を基本としながら、腐食対策として側板・屋根板・床板には耐候性鋼板が用いられている[1]。
前面形状は上下に傾斜を付けた直線的なデザインで[5]、非常扉を向かって左側に設けた左右非対称形状となっており[12]、前面腰板中央部には埼玉西武ライオンズの球団マスコットであるレオを象った立体型ヘッドマークが装着されている[12]。前面窓右下には編成番号であるV1 - V3のロゴが貼付されている。前照灯は角型シールドビームで、同形状の後部標識灯とともに一つのケースにまとめられた。前面窓中央内側には手動式の行先表示幕を備える[5]。
車体塗装はアイボリーホワイトをベースに、側面腰板部に青・赤・緑の3色帯が入った「ライオンズカラー」が採用され、西武球場を始めとした系列レジャー施設へのアクセス路線用車両であることを示している[12][5]。
オールクロスシート仕様で、青色モケットのボックスシートが1両当たり10 - 12脚装備されている[12]。また、乗務員室後部の座席は先頭方向を向いて設置されており、前面展望ならびにワンマン運転対応を考慮して開放的な設計とされた運転台仕切り壁の構造も相まって展望席の様相を呈している[5]。
冷房装置は室内機・室外機が別構造(セパレート構造)とされた三菱電機製CU-24S(冷凍能力 10,500 kcal/h)を各車1基搭載し[2]、床下に搭載された室外機から車内前後2箇所に設置された室内機に冷風が導かれる[12]。なお、補助送風機としてラインデリアを併用しており、天井高さの関係で車内側面肩部に各車4基設置されている[5]。
乗務員扉を備えた全室式の乗務員室とされているが、前述のように乗務員室と客室を仕切る壁が前面展望ならびにワンマン運転対応を考慮した開放的な設計となっている点が特徴である[5]。
運転機器は主幹制御器(マスター・コントローラー)とブレーキ制御器を一体化したワンハンドルマスコンを西武において初めて採用した[13]。その他ワンマン運転関連機器に加え、自動放送装置[14]が搭載されている[5]。なお、運転操作時以外はいたずら防止のためカバーをかけられるようになっている。
また、警笛は西武鉄道で初めて電子笛を採用した[15]。空気笛は設置されていない[15]。製造メーカーはミツバが担当した[15]。
制御方式は日立製作所製のGTOサイリスタ素子(2,500V - 2,000A)を使用したVVVFインバータ制御器(8ビットマイコン[16])VF-HR105を中間車に1基ずつ、1編成当たり2基搭載する[2]。同主制御器はユニットを組む2両分の主電動機を制御する1C2M制御方式で、10km/h以上での定速制御が実装されている[1][17]。当時のAGT車両の制御方式はチョッパ制御とサイリスタ位相制御が主流であった中、本系列は西武に在籍する車両のみならず[5]、AGT車両としても日本国内初となるVVVFインバータ制御を採用した[注釈 2]。
主電動機は日立製作所製のかご形三相誘導電動機HS36632-01RB(出力95 kW)を各車に1基ずつ車体側に搭載し[2]、前後2軸を駆動する[18]。駆動方式は直角カルダン式で、カーブ区間走行時における内輪差(外側と内側の車輪の回転数差異)を吸収するため差動装置が組み込まれている[18]。制動装置は常用制動を回生ブレーキ優先とした電気指令式空気ブレーキHRDA-1である[18]。
台車はステアリング機構付平行リンクユニット形1軸空気ばね式で、1両あたり2台装着する[5]。ゴムタイヤについてはブリヂストン製とフランス・ミシュラン社製のものを併用している[12]。基礎ブレーキは、空油変換式(空気圧をオイルコンバータで油圧に変換する)の油圧式ディスクブレーキである[1]。
集電装置は東洋電機製造製の第三軌条用PT-68M-A(先頭車)・PT-68P-A(中間車)を前後台車に左右各1基、1両当たり4基搭載する[2][12]。
空気源装置はHB-1200電動空気圧縮機(CP・容量1,230 L/min)を西武球場前方先頭車 (Mc1) に、補助電源装置は東洋電機製造製SVM45-441A静止形インバータ(SIV・出力45 kVA)を多摩湖方先頭車 (Mc2) にそれぞれ1基ずつ搭載する[2]。SIVはブースター式チョッパと三相インバータ(双方ともGTO素子を使用)を組み合わせたもので、艤装面積の少ない新交通車両用に大幅な小型軽量化を図ったものである[19]。直流750Vを入力電圧として、三相交流200V、60Hzを出力するものである[19]。SIVも西武鉄道では初の採用となった。
保安装置は西武における他の路線と同じく自動列車停止装置 (ATS) を用いた[注釈 3]手動運転(有人運転)方式を採用しており、イニシャルコストを抑制した[5]。
1993年(平成5年)4月[20]より山口線ならびに本系列の愛称が「レオライナー」とされたことに伴って、先頭部のレオを象ったペットマーク直下に「LEO LINER」のロゴが追加されている[21]。
2000年代に至り、製造後15年以上を経過して制御器ならびにSIVのGTO素子の劣化が進行したため[12]、2001年(平成13年)より制御装置をIGBT素子を使用したVVVF制御器に、SIVについても同様にIGBT素子を使用したものにそれぞれ換装する修繕工事が[12]、8521編成(V3編成)を皮切りに順次施工された[21]。同時に車体の修繕や方向幕の英文表記入りのものに交換と車内自動放送装置の更新も施工されている[12]。前述のように本系列は2両1ユニット方式で編成を構成しており、更新工事は編成単位ではなく1ユニット(2両)単位で施工されたことから、更新過程においては同一編成内に更新済ユニットと未更新ユニットが混在する例が見られた[16][12]。
更新後のVVVFインバータ制御器は同じく日立製作所製で、32ビットマイコンによる全デジタル演算と3,300V - 1,200AのIGBT素子を使用したもの(2レベル方式・ベクトル制御)で、制御ユニットは先に登場した20000系と共通化しており、予備品を効率化している[16]。付帯機器である断流器や主電動機、フィルタリアクトルなどは再用している[16]。補助電源装置は更新前と同じ東洋電機製造製であり、更新後はIGBT素子を使用した45 kVAの静止形インバータ(SIV)である[22]。
また1990年代に一時、ユネスコ村大恐竜探検館開館やプロ野球をアピールする目的で、「冒険3億年。ユネスコ村大恐竜探検館」「西武ライオンズ SEIBU DOME」などの側面上部への文字ラッピングが施されていた。
2007年度(平成19年度)以降、車椅子乗車への対応および混雑時の乗降をスムーズにする目的で、先頭車へのつり革・握り棒の新設と一部座席の撤去・立席スペースの拡大といった車内改良工事が開始され、2009年度をもって全編成への施工が完了した[23]。
2020年(令和2年)9月15日より、8511編成 (V2) を使用した「SDGs×Lions GREEN UP!プロジェクトトレイン」が運行を開始。西武グループが主体となり「サステナビリティアクション」の一環として実施するもので、緑を地色にSDGsや「Lions GREEN UP! プロジェクト[注釈 4]」などのロゴを配した全面ラッピングが施されている[24]。本系列を使用した理由としては西武ライオンズの球団旗が車体にデザインされていることや、本拠地メットライフドームのある区間を走行することが挙げられている[24]。
2021年(令和3年)3月のダイヤ改正で西武遊園地駅が多摩湖駅に改称されたことにより、全編成で再度の方向幕の交換を実施。同年5月15日より、8521編成 (V3) を使用した「西武園ゆうえんちラッピング電車」が運行を開始。西武園ゆうえんちリニューアルオープンを記念したもので、同所のコンセプトに合わせて実際に1960年代に西武線を走っていた車両のカラーリングをイメージした全面ラッピングが施されている[25]。
凡例
AGTへの転換計画当時は7000系[注釈 5]を導入する予定であった。この7000系は、設計図や完成予想図まで製作し、形式名まで決定していたものの、発注直前で計画を中止し、再設計して本形式となった経緯がある。
7000系はAGTへの転換計画が始まった頃に自社の広報誌などで公開され、設計図や完成予想図は当時の西武鉄道の車両関連の資料として現在でも所蔵されており、2015年の横瀬での自社主催のイベントなど、西武が主催あるいは協力のイベントでは来訪者向けに7000系の完成予想図も公開されることもある。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.