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日本の元受刑者 (1907-1979) ウィキペディアから
白鳥 由栄(しらとり よしえ、1907年〈明治40年〉7月31日 - 1979年〈昭和54年〉2月24日)は、日本の元受刑者。
太平洋戦争中の食糧難の時代に収容先の刑務所で次々と脱獄事件を起こし、今日では「昭和の脱獄王」の異名で知られる。当時の看守の間で「一世を風靡した男」と評された。26年間もの服役中に4回の脱獄を決行、累計逃亡年数は3年にも及んだ。
青森県出身。幼少期に父が病死。3人姉弟の2番目だったが、母は乳吞児の末弟とともに再婚。白鳥は姉とともに叔母(父の妹)の家(豆腐屋)の養子となる。徐々に素行が悪化、遂に1933年(昭和8年)に仲間と強盗殺人を犯し投獄される。
青森刑務所では劣悪な刑務所の待遇に抗議するも、逆に懲罰房に入れられる。 1936年(昭和11年) 手桶のタガで手製の合鍵を作り、開錠して脱獄(1回目の脱獄。白鳥28歳)。だが、翌日自首。いじめられた看守への復讐が動機だったが罪状に「逃走の罪」が加わり、無期懲役となる。1937年(昭和12年)4月、白鳥は宮城刑務所を経て小菅刑務所(現:東京拘置所)に移監される。小菅刑務所では普通の受刑者としての扱いを受けていた。
1941年(昭和16年)10月、戦時罪因移送令に基づき秋田刑務所に移監される。脱獄の経験があるため特別房入りの待遇であったが、高さ3メートルの牢屋に天窓があるだけであり、余りの寒さに防寒着を要求するものの拒否され、脱獄を決意。
収監された鎮静房の天窓の釘が腐食していることに気づき、部屋の隅を使って天井に登ることを思いつき、看守が寝静まってから練習をした。窓枠のブリキ片と古釘を見つけ、釘でブリキ板の縁をギザギザにして即席ノコギリを作り、鉄格子の周囲を切り取り始める。看守の交代時間を狙い、一日10分間ずつ鉄格子の周囲を切り取る作業を行った。切り取りに成功すると、脱獄の日を待った。
1942年(昭和17年)6月、暴風雨に紛れて鉄格子を外し、天井より脱獄。刑務所の工場の丸太を足場にして塀を乗り越えた(2回目の脱獄。白鳥34歳)。
3か月後、小菅刑務所に自首。収監の期間はさらに延長され、難攻不落と言われる網走刑務所に移監、凶悪犯専用の特別房に入れられる。時折、看守の態度に腹を立てて、手錠を力任せに引きちぎった。そのため、真冬でも夏物の単衣一枚の着用、夏には逆に厚着をさせられるという虐待を受ける。手錠や足錠はほとんど外されず、蛆が湧いてくる。この対応に死を覚悟し、脱獄を決意[1]。
味噌汁を手錠と視察孔の釘に吹き掛ける行為を一年間続け、その塩分で腐食させた後に外し、関節を脱臼させ、監獄の天窓を頭突きで破り、煙突を引き抜いて1944年(昭和19年)8月26日脱獄(3回目の脱獄。白鳥37歳)。
その後終戦まで身を潜めるが、終戦後、畑泥棒と間違えられ農家に袋叩きにされ、逆に相手を殺害。札幌地裁から死刑判決が出たために脱獄を決意。
札幌刑務所では過去3回も脱獄経験のある白鳥だけに、特別房が用意され、扉・窓・鉄格子・採光窓など全てが補強され、看守6人1組で厳重に監視されていた。
視線を上に向けて誤魔化しながら隠し持った金属片でノコギリを作り、床板を切断。食器で床下からトンネルを掘った。1947年(昭和22年)3月穴を潜り、外に出る。積雪が足場となり、塀を乗り越えて逃走(4回目の脱獄。白鳥39歳)。
最後に捕まった際には、警官から当時貴重品だった煙草を与えられたことがきっかけとなり、あっさり自分は脱獄囚であると明かし自首した。これまで移送された刑務所では度々不良囚として扱われ、およそ人間的な対応をされなかった白鳥は、煙草をもらうという親切な扱いを受けたことで心が動いたと話している。札幌高裁で審理が再開し、苛烈な待遇や虐待の事実など、一部白鳥の主張が認められ懲役20年となる。府中刑務所では白鳥を一般の受刑者と同様に扱ったため、白鳥は模範囚として刑に服した。1961年(昭和36年)に仮釈放。出所後は建設作業員として就労。1979年(昭和54年)2月24日、心筋梗塞で死去した。71歳没。白鳥は無縁仏として供養されそうになるが、白鳥が仮出所した際に近所に住んでおり仲良くしていた女性が引き取り、埋葬された。
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