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『産霊山秘録』(むすびのやまひろく) は半村良によるSF伝奇ロマン。
SF総合誌『S-Fマガジン』に1972年4月号から12月号まで連載され、1973年に早川書房から書籍化された。1973年、第1回『泉鏡花文学賞』受賞[1]。
高皇産霊神の末裔とされる"ヒ"は、山野を跋渉し一族に伝わる三種の神器「御鏡・依玉・伊吹」の特殊能力を駆使する異能の一族だが、当世は帝を扶け泰平の世の成就を使命としていた。本来俗世から超然たる"ヒ"は皇室の存続に傾注していたが、戦国騒乱の世となると不干渉もきびしくなった。帝からの宣下を賜り"ヒ"のまつりごとへの関与が始まったが、江戸幕府の治世になると里人化していく者も少なくなく、幕末の頃になると図らずも"ヒ"同士が干戈を交えるに至った。
三種の神器には未知の部分が多く、使い方によっては傷つき斃れる者、時空の彼方へ転移してゆく者もあった。明智光秀の従者飛稚もその一人で、彼は目的地を定めぬ空ワタリで比叡山の戦火から逃れるが、1945年3月10日、B-29による空襲で燃え拡がる東京市城東地域へ出現した。飛稚は親にはぐれた幼女の手を引いて、炤に覆われた巨大な町を走り抜けて行った。
難を逃れた飛稚は道連れとなった福島一家や、戦災孤児らと焼け跡にバラックを建てて住み、日常生活を取り戻そうとしていた。彼が戦国時代から転移したことを、福島家の武郎と令子の二人は識った。飛稚が東京での生活に慣れた頃、8月15日を迎える。
※太字の人名は"ヒ"一族
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