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日本の漫画、メディアミックス作品 ウィキペディアから
『漂流教室』(ひょうりゅうきょうしつ)は、楳図かずおの漫画。『週刊少年サンデー』(小学館)にて1972年から1974年にかけて連載された。
荒廃した未来世界に校舎ごと送られてしまった主人公の少年・高松翔ら、小学校児童たちの生存競争を描いた作品。
担当編集者の「のっけから、ドーンと盛り上がるモノにしてほしい」という要望を快諾した楳図かずおは、以前から考えていた「『十五少年漂流記』を学校ぐるみでやる」という構想を元として、「時間を越えた母子の愛」と当時問題となりつつあった公害をテーマに盛り込んだ。以前からの構想やアイデアがあったため、冒頭からラストまでのかなり細かい部分を頭の中で作り上げてから書き始めたという[1][要ページ番号]。楳図は、本作においての編集者との会話は、先述の一言と、膨大な量のメモを見たときの「もうそろそろいいんじゃないの」だけであったと述べている。
作品名は編集会議で決まったが、楳図はもう一つの作品名として「ただいま」を挙げている。ミュージシャンでもある楳図は、後に「ただいま」という曲を発表している[2]。
こうして『週刊少年サンデー』1972年23号から1974年27号まで連載された本作は、1974年に刊行が始まった少年サンデーコミックスに初めて収録された作品でもある。楳図の元々の持ち味である恐怖漫画のテイストに加え、意表をついた物語の展開も読者に衝撃を与え、楳図は本作も含めた一連の作品で1975年に第20回小学館漫画賞を受賞している。
連載終了後に続編の企画が持ち上がることにより、楳図は「最終話に出たロケットで子供たちが宇宙へ飛ぶ」という設定を考えたが、その言葉が浮かんだ時点で違和感を覚えたため、続編執筆の話は取り止めになった。しかし、その設定は後の楳図が「続編」と銘打った『14歳』で描かれることになる。また、楳図は「『14歳』ではなぜ本作の地球が砂漠と化したのかを描いてみたかった」とも語っている[3]。
2007年10月から12月にかけて発売された復刻版には、コミックス版で入れられなかった雑誌掲載時の扉絵や製作時にカットされたページも挿入された。また、2012年に刊行が始まった『14歳』復刻版の全巻購入者特典として、本作の創作ノートが刊行された。
高松翔は、大和小学校の6年生。ある日、翔は母親とケンカをしたまま学校に行き、授業中に激しい地震のような揺れに襲われる。揺れはすぐに収まったが、学校の外は岩と砂漠だけの荒れ果てた大地に変貌していた。突然の出来事に皆パニックに陥り、教師たちは全員亡くなってしまう。やがて荒廃した世界の正体が、文明の崩壊によって滅んだ未来の世界だと知った子供達は互いに協力し、大和小学校を拠点とした「国」を築くことを決意する。大和小学校国の総理大臣として児童の代表となった翔は、児童たちみんなが家族であるという意識の下、規律正しい生活のもとで困難を乗り越えていけるよう精一杯の努力を重ねようとする。
しかし、飢餓や未知の事象に対する恐怖心からくる狂気や内部対立、伝染病の蔓延、唯一生き残った大人である関谷の暴虐、荒廃した未来に棲息する未来人類の襲撃などの脅威により、児童たちの数は日を追う毎にじわじわと減っていく。更に、学校をタイムスリップさせる原因となった手製のダイナマイトによる爆発事件の犯人が翔であったというデマが流れ、翔は次第に孤立してしまう。
常識を超越した出来事が次々と振り掛かる中、翔と過去の世界を繋ぎ止め、翔にとっての唯一の心の支えとなっていたのは、5年生の少女・西あゆみのもつ不思議な力で時空を超えて母とコンタクトを取れるという、不思議な現象だけだった。周囲が子供達の帰還を諦める中、息子の帰還を信じる翔の母は、西の不思議な力によって未来にいる翔と仲間達に必死の思いで援助の手を差し伸べ続けていた。
その後、自らの意思で学校を出て行った後、息も絶え絶えの状態で戻ってきた女番長の口から「天国」の存在を知らされた翔たちは、学校一帯を覆わんとする高濃度の光化学スモッグの雲から逃れるため、富士山にあるという「天国」の存在に一縷の望みを託し、生き残った児童たちを連れて「天国」を目指して荒野を行進する。迫りくる化学スモッグや広大な地割れを乗り越え、翔たちがたどり着いた「天国」。そこは未来の科学力で築かれたレジャーランドの残骸の残る場所であった。暴走したロボット達の襲撃から逃れた翔たちは、その奥に鎮座するコンピューターから、自分たちが元の世界に戻るための重要な糸口が大和小学校そのものにあることを知る。
しかし、飢餓による苦しみと、翔の存在を疎み対立する同級生の大友らのグループとの抗争の激しさはついに頂点に達し、狂気に駆られた子供達は無残な殺し合いを始めてしまう。理性でこの事態を耐え切った翔は自分が爆発事件の犯人だと告白する振りをしてみんなをおびき寄せつつ学校に戻り、今こそ元の世界に帰ることができる最後のチャンスだと説得する。しかし、大友たちは聞く耳を持たず翔を殺そうと一斉に攻め寄った。
今まさに翔が殺されようとした時、大友はとっさにみんなから翔を庇い、事の真相を激白した。大和小学校を未来に飛ばすことになった大地震は、優等生であることを求め続けられる苦悩から逃れんがために、校舎を吹き飛ばそうとして彼が仕掛けた手製のダイナマイトが原因だったこと。罪悪感のあまり、翔に全ての責任を押し付けていたこと。全ての真相が明らかになった今、翔は大友と固く手を握り合って和解し、再び友情を取り戻す。
「強大なエネルギーの発生によって次元の裂け目を生み出すこと」。それが、「天国」のコンピューターが語った、過去の世界に帰る唯一の手段であった。大友の残したダイナマイトの最後の1本に望みを託し、翔たちはエネルギーの発生源を生み出すべくダイナマイトを爆発させるが、思惑は外れる。爆発の影響で火山活動が活発になってきたことを利用して再び挑戦するも、失敗に終わってしまうのだった。
落胆の中、翔たちが見たものは荒れ果てた世界に垣間見えた、命の再生の片鱗であった。その様を見た翔は、「荒廃した世界の復興こそ自分たちが未来世界に来た意味だった」と結論付け、ここに留まることこそが自分たちの選ぶべき道なのだとみんなに力強く語る。そして、過去の世界から母親の手で送られてきた援助物資により、過去と未来の世界に繋がりが生まれたことに希望を見出した翔たちは、過去への帰還を諦める代わりに、爆発に巻き込まれ一緒に未来に来てしまった幼稚園児のユウちゃんをなんとか過去の世界に送り届けようとする。幼いながらも、悲惨な未来の姿をその目で見続けてきたユウちゃんは、未来の地球を絶対に荒廃させないよう努力することを翔たちに誓い、みんなに見守られながら過去の世界へと帰っていった。
翔が未来に来てから書き綴ってきた日記はユウちゃんの手から翔の母親へと手渡され、それによって未来と過去を繋ぐ架け橋が生み出された。未来の世界で息子が元気に生きていることを知った翔の母は、天を見上げて未来の世界への希望に想いを馳せるのだった。
関谷は#主要人物を参照。
原作:楳図かずお、著:風見潤。原作では語られなかった詳細が、一部で科学的考察も交えて記載されている。また、原作では名字のみだった多くの登場人物の下の名前が明らかになっている。
楳図はノベライズについて、「文章にするのではなく、小説にしてほしい」という注文をつけ、翻訳もしていた風見に直接白羽の矢を立てたという。風見はノベライズに当たって、大和小学校が位置する港区を歩き回ったり、友人の作家である久美沙織と討論をするなどして、第1巻の出版までに2年を費やしている[4]。
2007年10月より12月にかけて、月刊IKKI協力の下、ブックデザイナー・祖父江慎の手で新たな装丁が施され、UMEZZ PERFECTION!第8弾として『漂流教室』が出版された。全三巻(ISBN 978-4-09-181498-2 、ISBN 978-4-09-181499-9、ISBN 978-4-09-181500-2)。
主な特徴として、
が挙げられる。
1987年、劇場公開作品。東宝東和配給。原作者である楳図かずおや東宝特撮の名監督でもあった本多猪四郎も出演している。
重い内容の原作に対し未来志向の前向きな作品となっており[7]、舞台が神戸のインターナショナル・スクールに変更される、未来人類のデザインや描写が全く違うなど余りにも原作とかけ離れたストーリーだったため、原作者の楳図は自宅(まことちゃんハウス)の縞模様の外壁に怒った近隣住民と同じくらい怒っているといわれる[8](試写以来、一回も見ていないという[9])。大林宣彦のフィルモグラフィーの中でも最も影の薄い映画と評される[10]。
当初はオーストラリアの砂漠でロケーション撮影するはずであったが中止となり、全てスタジオ撮影になった[7]。スタジオに大量の砂を持ち込んで、それが教室に流れ込んだりするシーンが特に大変だったという。背景はマットペインティングによるが、『日本特撮・幻想映画全集』(勁文社、1997年)では砂漠の広さを表現できず閉塞的な画面になったと評している[7]。
下記の通り脚本は橋本の個人名義だが、実際は完成した脚本を、大林が全面的に書き直した[11]。怪物がピアノを弾くシーンでは大林が着ぐるみの中に入り、自身が作曲した曲を演奏している[7]。大林はこの怪物の描写にはドラキュラ伯爵をイメージしたという[7]。
大林は「完全な請負仕事で、職業監督に徹した」と回想している[11]。
当時、受験勉強のために俳優業を休業していた林泰文を大林が「お前は俳優としていいものを持っているから、その時期に映画界と離れて過ごすのは人生にとって損失になる。映画も受験も両方やればいいじゃないか」と説得してメインキャストに抜擢した。本作を通しての経験で、林は英語を上手く話せるようになり、英会話留学を志すきっかけとなった[11]。
ビデオテープ、レーザーディスク、VHDディスクで発売されたが廃盤。その後はソフト化されていない。
1995年公開。アメリカと日本の共作ではあるが日本では劇場公開されておらず、オリジナルビデオ作品として発売。
アメリカの高校が舞台となった。米軍が秘密裏に保持していた殺人衛星の誤射が物語の発端になっていることを始め、原作との違いが非常に多い。(製作当時はまだ初歩的なものであったが)CGが部分的に使用されている。
主演に教師役の常盤貴子と窪塚洋介を据え、フジテレビ系列で放映された[12]。全11話。DVDは全6巻。
なお、1980年代にもフジテレビ系列でドラマ化の計画があったが、諸事情により『ピーマン白書』に企画変更された。
NHK-FM「公園通り21」内のラジオドラマコーナー「アドベンチャーロード」にて放送された。
『漂流教室〜大人たちの放課後〜』のタイトルで上演された。物語の舞台は蝮谷高校(夜間部)に変更されている。
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