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山梨県甲州市大和町木賊にある寺院 ウィキペディアから
棲雲寺(せいうんじ・栖雲寺)は、山梨県甲州市大和町木賊にある寺院[1]。臨済宗建長寺派寺院で[1]、山号は天目山、本尊は釈迦如来。創建時には護国禅寺と称した。県指定名勝である[1]。また、裏山の斜面には庭園が存在する[1]。
棲雲寺は、天目山山中の標高約1,050mの日川渓谷の上流左岸にある。日川渓谷のさらに4.6kmほど下流の田野には、曹洞宗寺院の天童山景徳院がある。
南北朝時代の貞和4年/正平3年(1348年)、開基業海本浄(ごうかいほんじょう、通称ごっかい、1284-1352年)は、当時木賊山と呼ばれていたこの山を訪れた。業海は文保2年(1318年)に、仲間5人と元に渡り、天目山において普応国師中峰明本(ちゅうほうみんぱん、1263-1323年)から教えを受け[1]、印可を授かって、嘉暦元年(1326年)に帰国した。その後、師の教えを実践させる、修行の場に相応しい地を求めて、20年以上にわたって諸国を旅して、木賊山が天目山を髣髴とさせる景勝地であるとして、この地に天目山護国禅寺を創建した。
業海は、当時一世を風靡した、夢窓疎石の一派を強く批判し、岩窟に普応国師像を安置し、樹下で座禅を組み、地元の住民とはほとんど交わらず、牛に使いをさせた(『本朝高僧伝』)という伝説を残している。業海は4年後に没するが、その後は、甲斐守護・武田氏の庇護を受けて栄え、木賊山もいつしか「天目山」と呼ばれるようになり、兵庫県丹波市にある瑞巌山高源寺(開基の遠谿祖雄(遠渓祖雄)は業海本浄とともに元に渡った1人)とともに、「東天目」「西天目」と併称された。
応永23年(1416年)、上杉禅秀の乱に加担したとして、室町幕府の討伐を受けた、甲斐守護武田信満がこの山中で自害した。信満の遺骸はこの寺に運ばれて葬られたとされ、棲雲寺には信満の宝篋印塔や、ともに自害した家臣達の五輪塔が存在している。武田信玄も軍旗・軍配・陣中鏡を同寺に奉納したと伝えられている。
戦国時代末期に、武田氏を滅ぼした徳川家康も、天正11年4月30日(1583年6月20日)の日付で、この寺に約3貫文の寺領保障と、3ヶ条の禁制を発している。また、寛永20年(1643年)には、家康の孫で江戸幕府3代将軍徳川家光からの寺領安堵の朱印状が発給されている。正徳6年(1716年)の検地帳による朱印地は約20石であったとされている。
業海本浄禅師書『甲斐国社記寺記』
寺之貢乾維山間ニ湖水有り。三日河之濫觴ニシテ水氾レル所也。名ヅケテ三日河此処ニ権與ス。往古山崩レ堕チ止メテ此ノ湖水ヲ為ス。其ノ時流レザルコト三日故世人呼ビテ三日河ト日ウ此ノ西岸上ニ座禅岩有リ、開山所定ノ坐処也。文和元壬辰七月二十七日、師淹然トシテ示寂。門徒、寺ノ西北隅ニエイリス。塔ヲ伝燈トイウ。武田安芸守信満公、師之道風ヲ追慕シテ当寺ヲ恢興シ若干ノ殿堂ヲ造営シ過多恒産之地ヲ寄附シ、開基檀越ト為る。信満公不幸ニシテ久痾ニナ染ミ、良医其ノ妙術ヲ尽クスモ卒ニ治ス能ワズ。是二於テ公自ラ謂ウ。是レ必ズ夙業ノ為ス所、深ク天目山ニ入リ仏前ニ対シ辛勤刻励シテ仏之加護ヲ憑ミ力メテ祈求スレバ当二病即チ癒エ其ノ時ニ於テ若シ平復ヲ得ザレバ密ニ自殺セン。即チ国位ヲ令嗣刑部大輔信重公ニ譲禅リ、天目山ニ登リ新タニ薬師瑠璃堂ヲ経始シ、傍ニ交厦ヲ構エテ居ス。是ヲ武田木賊殿ト謂ウ。 — 古明地義勇著『「武田信満と栖雲寺」2010年8月 続解の試み 抜粋
大原考治翁「天目山栖雲寺石庭復元」
規模の雄大さは著者の素人目で見ての通りだが、あれだけの岩石を如何にして据えたかとなると、皆目見当たらない。当時、動力も重機もある訳なく、想像を絶するばかりで、巨岩を据えたり大石を動かす術はなかった筈なのにと、大きな謎である。
「業海禅師の着目したのは水の力である。山の上から大量の水を落とすことによって、斜面の土砂を洗い流せば、土中の大きな岩石が露出する。そこに、人の力で動かせる石を噛ますなどして安定を図った。水の高きより低きに流れるは自然の理であり、力となる。下へ下へと流す程に石組は実現した筈だと言う。鮮やかな謎解きは翁自身、山上に導水路の跡を発見し実証している。」 — 無為飯袋子著『稀代の庭師「大原孝治翁」』を偲ぶ 平成12年11月より抜粋
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