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現代日本で常用される漢字 ウィキペディアから
常用漢字は、漢字使用の目安であって制限ではない。一方、日本の学習指導要領では、義務教育の国語で習う漢字は常用漢字のみと規定している[注 1]。日本の主な報道機関は、日本新聞協会が発行する『新聞用語集』(新聞用語懇談会編)に掲載される新聞常用漢字表や共同通信社が発行する『記者ハンドブック』に基づき[2]、各社で多少の手を加えて漢字使用の基準としている場合が多い。
なお、このページでは5.および6.について解説する。
昭和56年内閣告示第1号「常用漢字表」(1,945字/4,087音訓[2,187音・1,900訓])では、当用漢字表と比べて字数の上では、以下の95字が増加した。削除された字種はなかった。
文化審議会は2010年6月7日、改定常用漢字表(2,136字/4,388音訓[2,352音・2,036訓])を答申した。これは同年11月30日に平成22年内閣告示第2号「常用漢字表」として内閣告示された。その際、昭和56年内閣告示第1号「常用漢字表」は廃止された。
また音訓が以下の通り追加、変更、削除された。
備考欄などについて以下の通り変更された。
付表は以下の通り追加、変更された。
2005年(平成17年)2月2日に国語分科会が「情報化時代に対応する漢字政策の在り方を検討することが必要」であるとした報告書[4]を文化審議会に提出した。これを受けて、同年3月30日、中山成彬文部科学大臣は常用漢字表の見直しの検討などを文化審議会に諮問した[5]。同年9月から文化審議会国語分科会の漢字小委員会が常用漢字見直しの審議に入った。
その後、第6回漢字小委員会では、「『常用漢字』と『準常用漢字(読めるだけでいい漢字)』に分けることの是非」という文言[6]を含む資料が配付された。また答申時期については、第15回漢字小委員会で2010年2月の新常用漢字表答申を目指すと述べられている。なお、その後の漢字小委員会で表の煩雑化に疑問の声があり、「準常用漢字」などの区分は最終的に行われなかった。2008年(平成20年)1月9日、都道府県名に使われている漢字で常用漢字に現在含まれていない「阪・鹿・奈・岡・熊・梨・阜・埼・茨・栃・媛」の11字を常用漢字に含めることを決めた[注 8]。これは固有名詞については常用漢字表の対象としないのが原則であり、今後も維持するが、特に公共性が高い都道府県名について例外として扱ったものである。またその後、「韓・畿」が追加候補に入ったが、これは都道府県名に準じる漢字としての位置付けである。
2008年(平成20年)5月12日の第21回漢字小委員会で、第1次字種候補素案[7]218字が発表された(220字と明記され、主要新聞社もそのように発表したが、実際には「闇」がデザイン差で重複しており、また既に常用漢字表に入っている「靴」が誤って入っていたため218字が正しい[注 9])。この時点では特定の語に限って常用漢字と同様に認める熟語が「別表」として付記されていたが、「なるべく単純明快な漢字表を作成する」という考え方に基づき、その後の6月16日の第23回漢字小委員会では第2次字種候補案[8]が「別表」を統合した形で発表され、同日の審議でもその旨了承された。なお、第2次字種候補案では「本表に入れる可能性のある候補漢字」は188字とされた。また「斤」が削除候補から外された。
同年7月15日の第24回漢字小委員会では、7月31日の第39回国語分科会に提出する資料について「最終的な扱いについては前田主査に一任する」ことが了承された[注 10]。また、国語分科会で字種候補案が了承されたとしても、今後、行われる音訓の検討過程で字種の出し入れの可能性があることも確認された。実際にその後の9月22日の第25回漢字小委員会では、追加候補に「刹・椎・賭・遡」の4字が追加され、「蒙」が削除された。これにより追加候補は191字となった。2009年(平成21年)10月23日の第37回漢字小委員会および11月10日の第42回国語分科会で了承された修正案では「柿・哺・楷・睦・釜・錮・賂・勾・毀」の9字が追加、「聘・憚・哨・諜」の4字が削除され、追加候補は196字となった。なお、漢字表の名称は現行と同じ「常用漢字表(改定常用漢字表)」とすることが確定した。
文化審議会は2010年6月7日の第51回文化審議会総会で、改定常用漢字表を答申した。
また、文化庁は「『新常用漢字表(仮称)』に関する試案」を公開、パブリックコメント募集を行い、2009年(平成21年)3月16日から行われたものの結果がニュースなどで報道された。これは第31回漢字小委員会以降で配付された資料に基づくものである。それによると、新たに302字[注 11]の追加希望があったという。
最も追加要望が多かったのは「鷹」の22件である。三鷹市[10]、鷹栖町、白鷹町など名称に「鷹」を含む自治体が意見書を出していた。三鷹市によれば、「鷹」は「都道府県名や動植物名等の固有名詞を中心とした使用例が多い」との理由で追加字種候補から除外されたが、市はこれに反論して四字熟語を含む熟語や故事・諺など多数の用例を挙げ「社会生活や日本の伝統文化を表す語が多数存在する」と主張した[10]。またもう一つの根拠として和文書体データのフォント作成の際に、全ての漢字の構成要素が凝縮されているとして「鷹・東・永・国・室・道・機・識・闘・愛・警・酬」の12文字を基準に作成されていることを挙げて「鷹」の追加を強く要望した[10]。この三鷹市の取り組みに対しては全国から多くの反響が寄せられたという[10]。
続いて「碍」の20件は、一部の障害者団体が「障害」を「障碍」と表記するよう主張していることが関係している。その他、6件以上意見があったのは「睦・柿・迂・哺・蘇・棲・疹・楷・揃・叩・濡・吊・悶・牽・挽・捏・膿・噓・禄」であった。
一方、削除希望の漢字も挙げられ、最も多かったのは「鬱」、次いで「顎」であった。そのほか「聘・憚・憬」などが挙がっており、「埼・阪・阜」など都道府県に用いられる漢字に対しても削除の要望があった。今回のパブリックコメントでは約220件の意見が寄せられ「敬語の指針(報告案)」の際の5倍に上った。文化庁は、このパブリックコメントを加味した上で、再度指針案を練り直すとしていた。
その後、2009年(平成21年)11月25日から12月24日まで再度、修正案を対象にしたパブリックコメントが実施され、272件の意見が寄せられた。追加希望が最も多かった字は「玻」の95件で、この字が人名用漢字でないことを理由に子供の出生届を不受理とされた処分の無効を求めていた愛知県在住の夫婦[注 12]とその支援者による組織票により、前回の0件から一転して95件の追加希望が寄せられた。また、前回のパブリックコメントでは20件であった「碍」は86件と大幅に追加希望が増加。「鷹」は前回より2件増の24件であった。
この結果に基づいて審議が行われた結果、2010年(平成22年)4月13日に開催された第41回漢字小委員会は「玻・碍・鷹」のいずれも追加を見送り[11]、2009年11月の試案通り字種を「196増5減」とする案が了承された。ただし「碍」については内閣府の障がい者制度改革推進本部で「障害」の表記の在り方について検討しているため、その結果によっては改めて検討することとした[12]。
「改定常用漢字表」(文化審議会答申)では「現行の常用漢字表制定時に追加した95字については、表内の字体に合わせ、一部の字体を簡略化したが[注 13]、今回は追加字種における字体が既に『印刷標準字体』及び『人名用漢字字体』[注 14]として示され、社会的に極めて安定しつつある状況を重視し、そのような方針は採らなかった」ため、「現行の常用漢字表で示す『通用字体』と異なるものが一部採用される」ことになった。
「改定常用漢字表」(文化審議会答申)では「固有名詞を対象とするものではない。ただし、固有名詞の中でも特に公共性の高い都道府県名に用いる漢字及びそれに準じる漢字は例外として扱う。」とした。これにより、都道府県名に用いる漢字で常用漢字表になかった11字と、近畿の「畿」・韓国の「韓」の2字が常用漢字になった。この13字について整理すると以下の通り。
字種 | 音訓 | 専用 | 1字下げ | 備考欄 | 表内 | 表外 |
---|---|---|---|---|---|---|
茨 | いばら | 都道府県名専用 | 1字下げ | 注記あり | 茨城県のみ | 茨の道、茨姫など |
媛 | エン | 一般使用可 | - | 注記あり | 才媛など | - |
愛媛県のみ | 媛(ひめ) | |||||
岡 | おか | 都道府県名専用 | 1字下げ | 注記あり | 岡山県、静岡県、福岡県のみ | 岡っ引き、岡持ち、岡目八目など |
韓 | カン | 地名専用 | - | - | 韓国など | (その他) |
畿 | キ | 地名専用 | - | - | 畿内、近畿など | (その他) |
熊 | くま | 一般使用可 | - | - | 熊、白熊など | - |
埼 | さい | 都道府県名専用 | 1字下げ | 注記あり | 埼玉県のみ | (その他) |
鹿 | しか | 一般使用可 | - | - | 鹿 | - |
か | 1字下げ | - | 鹿の子など | - | ||
栃 | とち | 都道府県名専用 | 1字下げ | 注記あり | 栃木県のみ | 栃の木、栃餅、栃麺棒など |
奈 | ナ | 一般使用可 | - | - | 奈落など | - |
梨 | なし | 一般使用可 | - | - | 梨、洋梨など | - |
阪 | ハン | 地名専用 | - | 注記あり | 阪神、京阪など | 阪路など |
大阪府のみ | 阪(さか) | |||||
阜 | フ | 都道府県名専用 | 1字下げ | 注記あり | 岐阜県のみ | 陰阜など |
「都道府県名専用」および「地名専用」で示した8字が、固有名詞の例外として追加された「都道府県名に用いる漢字及びそれに準じる漢字」に該当する。
※「都道府県名専用」は「1字下げで示した音訓のうち、備考欄に都道府県名を注記したものは、原則として、その都道府県名にのみ用いる音訓であることを示す」という記述に基づくものである。茨木市の場合、茨城県ではないため都道府県専用に当てはまらない。
なお、日本新聞協会新聞用語懇談会では「岡」は「都道府県名専用」とはせず、限定的な熟語(岡っ引き、岡目八目、岡持ち)には使用するよう決めている[13]。
法令では常用漢字のみを使用することを原則として[14]、常用漢字外の字は、語そのものの言い換えが行われるか、その字のみ平仮名書きするか、常用漢字外の字を使用しつつ初出の箇所にのみ振り仮名(ルビ)をつける運用がなされる。
同音の漢字による書きかえは、第二次世界大戦後、当用漢字告示後から多用されている。「慰藉料」を「慰謝料」と表記するなどである。
平仮名書きは、機械的に行えるために多く使用されてきたが、同音異義語がある場合や、「だ捕」(拿捕)「改ざん」(改竄)など語の一部のみ平仮名書き(交ぜ書き)される不自然さがあり、次第に避けられるようになりつつある。
初出箇所にのみ振り仮名を振る方式は、常用漢字使用の原則に沿いつつ、自然な記載をなしうるため、法令の条文の記載において、多く用いられるようになりつつある。平成に入って口語化された刑法・民事訴訟法などはいずれもこの方式によっている例である。
法令以外の公用文においても、「公用文作成の考え方」[15]により、常用漢字のみを使用することを原則とするように定められている。
日本国憲法に用いられている漢字は全て当用漢字表に採られ、常用漢字表にも引き継がれている[注 15]。一般的に用いられない漢字が常用漢字である一因はこのためである。
近年、手書き文字と印刷文字の表し方に習慣に基づく違いがあることが理解されにくくなっている。また、文字の細部に必要以上の注意が向けられ、正誤が決められる傾向が生じている。
文化庁では、平成26年度から文化審議会国語分科会漢字小委員会において、「手書き文字の字形」と「印刷文字の字形」に関する指針の作成」に関して検討を進めていたが、その検討結果が国語分科会で「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(案)として示された[22]。
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