吉田戦車

日本の漫画家 (1963-) ウィキペディアから

吉田 戦車(よしだ せんしゃ、1963年8月11日 - )は、日本漫画家岩手県水沢市(現:奥州市)出身。和光大学出身。第37回文藝春秋漫画賞受賞。妻は漫画家の伊藤理佐(お互いに再婚)[1][2]サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムの通訳を務めた千田善は従兄。

概要 よしだ せんしゃ吉田 戦車, 生誕 ...
よしだ せんしゃ
吉田 戦車
生誕 (1963-08-11) 1963年8月11日(61歳)
日本岩手県奥州市
職業 漫画家
活動期間 1985年 -
ジャンル 青年漫画
代表作伝染るんです。
ぷりぷり県
受賞 第37回文藝春秋漫画賞
第19回手塚治虫文化賞短編賞
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経歴

作風

雑誌、新聞、WEBサイト等で漫画、エッセイ、挿絵、企業のキャラクターデザイン等を手がける。一時は不条理ギャグマンガの代表的な存在とされたが、その興味の中心は、人間以外の動植物、宇宙生物、さらには非生物までが意志や言葉を持つ、童話的ともナンセンスともいえる世界にある。動物やラーメンが突然喋りだしたりする現象は、『学活!つやつや担任』では、皆が勝手に原因を決めつける繰り返しギャグとして、『おかゆネコ』では原因不明の奇病「しゃべり病」の一言で片づけられてしまっている。ファンタスティックで楽しげな世界は幼児層との親和性も高く、『ちくちくウニウニ』のような低年齢層向け作品もある。初期はあまり自身について語ることのないタイプだったが(後書きも当初はギャグめかしていた。時おり作品に登場する本人も猫や非生物と漫才をするキャラクターである)、近年はエッセイマンガ、さらにはエッセイも手掛けている。

不条理ギャグ

マンガ解説者の南信長は著書において、吉田戦車の作風が不条理ギャグというジャンルの確立に寄与し、他の漫画家とともに1990年代前半の不条理ギャグブームを支えたとしている[3]

南は、吉田戦車の作風には「異質なもの同士の出会いによる違和感、動物や無生物の擬人化による異世界感」があるとし、吉田戦車の作風からは「我々が認識している現実がぐにゃりと曲げられるような奇妙な感覚」や、「幼児がTPOもわきまえずに意味不明な発言をするように、脈絡のないナンセンスな展開で、どう反応していいのか分からなくなる」といった「ある種の居心地の悪さ」を感得するという。南は、このような居心地の悪さを笑いに変えた吉田戦車の作風が不条理ギャグと呼ばれるようになったとしており、1990年代前半の不条理ギャグブームを支えた作家として吉田戦車、中川いさみ朝倉世界一榎本俊二和田ラヂヲらを挙げている[3]

南は、これらの「才能」が吉田戦車の登場と相前後して同時多発的に生まれてきたとし、お互いにほぼ同世代であるこれらの作家の活躍が相乗効果を生み、不条理ギャグというジャンルが確立されたとしている[3]

ペンネームについて

『戦え!軍人くん』第一巻のあとがきによると、「友人がつけてくれた」とのこと。それに続けて「戦車とゆー名前は割と気にいっているし、(周囲の)評判もいいのだけど、ミリタリーもんに興味があるわけじゃねーんだよということをここで言っておきたい」とも述べており、ミリタリーファンゆえに名付けたペンネームというわけではないことを主張している[4]朝倉世界一も同じ友人による命名である[6]

作品リスト

要約
視点
凡例
  • 2017年3月現在。
  • 各作品の詳細等についてはリンク先の記事を参照のこと。
  • 発行所、初出掲載は発行当時の名称を記載している。
  • 文庫版と新装版の表記については原版と同名称で発行した作品のみ記載している。新たな名称が付けられて発行された作品は原版扱い(細字)としている。
  • デフォルトでの表記は作品を関係毎にまとめ、発行年順としている。他列でのソート後にデフォルトの順へと戻すには、最左列を利用する。

漫画単行本

さらに見る 作品(原版), 巻数 ...
作品(原版)巻数初版発行年発行所備考文庫版新装版初出掲載
1戦え!軍人くん全2巻1989年
1990年
スコラ短編集全1巻
1996年、スコラ
全1巻
2000年、ソニー・マガジンズ
コミックバーガー、他
2甘えんじゃねぇよ!全1巻1995年スコラ『戦え!軍人くん』に収録されていた「甘えんじゃねぇよ」をまとめ、再編集した単行本。全1巻
1999年、筑摩書房
全1巻
2000年、ソニー・マガジンズ
スコラ
3鋼の人全1巻1989年白泉社短編集コミック・ボーイ、他
4くすぐり様全1巻1989年白泉社短編集劇画ジャンプ、他
5酢屋の銀次全1巻1998年白泉社『鋼の人』、『くすぐり様』を1冊にまとめ、再編集した文庫本。
6伝染るんです。全5巻1990年 - 1994年小学館全5巻
1998年 - 1999年、小学館
週刊ビッグコミックスピリッツ
7いじめてくん全1巻1991年スコラ全1巻
2001年、筑摩書房
全1巻
2000年、ソニー・マガジンズ
コミックバーガー
8タイヤ全1巻1992年マガジンハウス短編集全1巻
2000年、筑摩書房
全1巻
2010年、マガジンハウス
ビッグコミックスピリッツ増刊号、他
9ちくちくウニウニ全1巻1992年小学館週刊少年サンデー
10超ちくちくウニウニ全1巻1995年小学館週刊少年サンデー
11ちくちくウニウニ 全全1巻2003年小学館『ちくちくウニウニ』、『超ちくちくウニウニ』を1冊にまとめ、再編集した単行本。
12火星田マチ子全1巻1993年スコラ全1巻
2001年、筑摩書房
全1巻
2000年、ソニー・マガジンズ
コミックバーガー
13はまり道全1巻1994年アスキー週刊ファミコン通信
14ゴッドボンボン全1巻1997年アスキー週刊ファミコン通信、他
15ニューはまり道全1巻2000年アスキー週刊ファミ通、他
16吉田戦車のゲーム漫画大全全2巻2004年エンターブレイン『はまり道』、『ゴッドボンボン』、『ニューはまり道』を2冊にまとめ、再編集した単行本。
巻数は第1巻が"兄"、第2巻が"弟"となっている。
17火星ルンバ全1巻1995年スコラ全1巻
2002年、筑摩書房
全1巻
2000年、ソニー・マガジンズ
コミックバーガー
18ぷりぷり県全5巻1995年 - 1998年小学館全4巻
2012年、小学館
週刊ビッグコミックスピリッツ
19若い山賊全1巻1996年双葉社短編集WEEKLY漫画アクション、他
20象の怒り全1巻2002年エンターブレイン月刊コミックビーム
21象の怒り 若い山賊全1巻2008年エンターブレイン『象の怒り』、『若い山賊』を1冊にまとめ、再編集した文庫本。
22一生懸命機械全2巻1996年
1999年
小学館短編集ビッグコミックスピリッツ21、他
23一生懸命機械 全全1巻2003年小学館『一生懸命機械』全2巻を1冊にまとめ、再編集した単行本。
24歯ぎしり球団全1巻1997年スコラ全1巻
2000年、ソニー・マガジンズ
全1巻
2005年、太田出版
コミックバーガー、他
25油断ちゃん全1巻1999年講談社モーニング
26スカートさん全2巻2000年
2002年
第1巻:ソニー・マガジンズ
第2巻:幻冬舎
全1巻
2008年、エンターブレイン
月刊コミックバーズ、他
27学活!!つやつや担任全2巻2001年小学館巻数は第1巻が"A"、第2巻が"B"となっている。週刊ビッグコミックスピリッツ
28武侠さるかに合戦全2巻2003年
2004年
エンターブレイン巻数は第1巻が"天の巻"、第2巻が"地の巻"となっている。全1巻
2008年、エンターブレイン
月刊コミックビーム
29殴るぞ全11巻2002年 - 2006年小学館週刊ビッグコミックスピリッツ
30山田シリーズ全2巻2004年小学館週刊ビッグコミックスピリッツ増刊号 MANPUKU!、他
31サマータンク全1巻2005年講談社イブニング、他
32スポーツポン全5巻2007年 - 2009年小学館週刊ビッグコミックスピリッツ、他
33吉田戦車の漫かき道全1巻2008年エンターブレイン短編集COMIC CUE、他
34フロマンガ全4巻2006年 - 2009年小学館ビッグコミックオリジナル、他
35出前姫 民話ボンボン全1巻2010年エンターブレイン月刊コミックビーム
36まんが親全5巻2011年 - 2017年小学館ビッグコミックオリジナルにて連載。
第2巻にビッグコミックオリジナル増刊号にて連載中の『吉田戦車のフロマンガ』も収録。
ビッグコミックオリジナル、他
37ひらけ相合傘全2巻2012年小学館巻数は第1巻が"赤"、第2巻が"白"となっている。週刊ビッグコミックスピリッツ
38おかゆネコ全7巻2013年 - 2016年小学館週刊ビッグコミックスピリッツにて連載。週刊ビッグコミックスピリッツ
39忍風! 肉とめし全3巻2017年 - 2019年小学館世界観は「ぷりぷり県」と共通。同作の続編としても扱われている[7]週刊ビッグコミックスピリッツ
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書籍

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作品(原版)巻数初版発行年発行所備考文庫版新装版初出掲載
1たのもしき日本語全1巻1994年角川書店川崎ぶらとの共著
対談形式のエッセイ
全1巻
2001年、角川書店
月刊カドカワ
2失敗成功中ぐらい全1巻1996年角川書店川崎ぶらとの共著
対談形式のエッセイ
月刊カドカワ
3吉田自転車全1巻2002年講談社エッセイ、紀行文全1巻
2006年、講談社
Web現代
4吉田電車全1巻2003年講談社エッセイ、紀行文全1巻
2007年、講談社
Web現代、他
5エハイク全1巻2004年フリースタイル俳句とエッセイほぼ日刊イトイ新聞
6惡い笛 エハイク2全1巻2004年フリースタイル俳句とエッセイほぼ日刊イトイ新聞
7なめこインサマー全1巻2005年太田出版エッセイ集全1巻
2008年、講談社
エアーニッポン機内誌、他
8吉田観覧車全1巻2006年講談社エッセイ、紀行文全1巻
2009年、講談社
MouRa
9戦車映画全1巻2006年小学館映画作品についてのエッセイビッグコミックスペリオール
10エハイク紀行全1巻2008年講談社俳句とエッセイほぼ日刊イトイ新聞
11逃避めし全1巻2011年イースト・プレス料理についてのエッセイほぼ日刊イトイ新聞
12日本語を使う日々全1巻2012年小学館日本語についてのエッセイWeb日本語
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絵本

  • あかちゃん もってる(2011年、河出書房新社)
  • 走れ! みかんのかわ(2017年、河出書房新社)

作詞

その他

  • 小学館発行の任天堂ゲームの攻略本(『スーパーマリオワールド』等)に4コマ漫画を描き下ろす(後に『はまり道』等の単行本に一部収録)。
  • 高見映著、丸善メイツ発行『ノッポさんのドクトルふくろうの処方箋』の挿絵を担当(1992年)
  • NHK教育の『まんが日本史』にてキャラクターデザインを担当(1992年)
  • 石川銀行のキャラクターデザインを担当。キャラクター名は「ガンバルくん」(1997年)
  • 音楽バンド たまの8thアルバム「パルテノン銀座通り」(『ぷりぷり県』のイメージアルバム)に作詞、コーラスで参加(1997年)
  • NHKの情報番組『ものしり一夜づけ』の題字とイラストを担当(2003年)
  • ニフティ特設サイト『ウイルスの恐怖展』に4コマ漫画「それいけ!!新型ウイルス君」を描き下ろす(後に『吉田戦車の漫かき道』に収録)(2004年)
  • 読売新聞(土曜朝刊)にて連載された中沢新一著の小説『無人島のミミ』の題字と挿絵を担当(2007年 - 2008年)
  • トヨタファイナンスの「おサイフくんQUICPay」のキャラクターデザインを担当。キャラクター名は「おサイフ」(2008年)
  • 『マンガ百花繚乱-いわての漫画家50の表現-展』に 『ぷりぷり県』、『殴るぞ』、『スポーツポン』の原画、『伝染るんです。』関係のカラーイラストの原画を展示。ポスター、チラシも担当(2009年)
  • 岩手県出身の落語家 桂枝太郎の真打昇進時、手ぬぐいと幕にイラストを寄稿(2009年)
  • 河出書房新社発行『KAWADE夢ムック 文藝別冊 総特集 吉田戦車』に著名人との対談、インタビュー等が掲載されている(2009年)
  • 太田出版発行『クイック・ジャパン vol.85』に楳図かずおとの対談等が掲載されている(2009年)
  • ブルボン小林著、筑摩書房発行、文庫版『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』の解説を担当(2009年)
  • 『私の龍馬イラスト展 IN ハウステンボス』に坂本龍馬のイラストを寄稿(2010年)
  • 第3回したまちコメディ映画祭in台東のメインビジュアルを担当(2010年)
  • 東海林さだお著、文春文庫発行『パイナップルの丸かじり』の解説を担当(2010年)
  • 岩手日報社発行『コミックいわて』(2011年)、『コミックいわて2』(2012年)に描き下ろし漫画を掲載。
  • 音楽バンド くるりのライブツアー「くるり ニューアルバム発売記念ツアー ~言葉にならしまへん、笑顔を見しとくれやしまへんやろか~」の先行予約特典チケット等のイラストを担当(2011年)
  • 赤坂憲雄他著、イースト・プレス発行『「東北」再生』の装画を担当(2011年)
  • フリースタイル発行『フリースタイル vol.16』の特集「READING LIKE A CHILD くりかえし読む一冊の本」に篠原勝之著「人生はデーヤモンド」について寄稿している(2011年)
  • 電子書籍「AiR (エア)」の第2号より『ニュー吉田自転車』を掲載。(2011年 -)
  • 長嶋有原作、光文社発行『長嶋有漫画化計画』に「ジャージの二人」の漫画を寄稿(2012年)
  • 『WE LOVE KOKESHI!展 at 西田記念館 -こけしが好き 東北が好き- 戦前から現代まで クリエイターの伝統こけし愛』に絵付けをしたこけしを展示(2012年)
  • webコミックサイト『やわらかスピリッツ』のマスコットのナマズのイラストを担当(2012年)
  • 松尾スズキの新聞小説『私はテレビに出たかった』のイラストを担当(2012年12月 - )。
  • タカラトミートレーディングカードゲームデュエル・マスターズ』のカードイラストを担当(2012年)
  • 山善 洗えるサーキュレーターシリーズ テレビCM(2023年6月 - )[10][11]
  • 奥州市公式マスコットキャラクターをデザイン。キャラクター名は「おうしゅうたろう」(2024年)[12]

など

連載中の作品

吉田戦車のフロマンガ
出かけ親 漫画家 屋外活動覚え帳
かわうそセブン

関連番組

関連書籍

  • 斎藤環『文脈病 ラカン・ベイトソン・マトゥラーナ』青土社、1998年9月。ISBN 978-4-791-75659-9 - 吉田についての評論がある。著者は岩手県出身の精神科医。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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