2005年9月3日より東映系で公開された日本の映画作品 ウィキペディアから
『劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼』(げきじょうばん かめんライダーヒビキとしちにんのせんき)は、2005年9月3日より東映系で公開された日本の映画作品。特撮ヒーロー番組「平成仮面ライダーシリーズ」『仮面ライダー響鬼』の映画化作品である。同時上映は『魔法戦隊マジレンジャー THE MOVIE インフェルシアの花嫁』。
キャッチコピーは「伝説の鬼戦士、集結。古文書に記された、戦国時代の壮絶な戦い。」。
本作品は戦国時代を舞台の中心とした仮面ライダーでは史上初となる時代劇であり[2]、テレビシリーズ『響鬼』の番外編にあたる。プロデュースは、テレビ版前期のプロデューサーの髙寺成紀ではなく、白倉伸一郎が担当した。そのため、テレビシリーズにはなかったライダー同士の戦いが描かれている他、現代の描写もテレビ版『響鬼』とは若干異なっており、映画公開時までのテレビシリーズにおける展開の予測に基づき、明日夢がヒビキのサポーターとして活動している設定になっている。また「ライダー」であることを意識して、冒頭では珍しくヒビキがバイクを運転する場面がある[3]。
時代劇という案は白倉が提示した。髙寺も同様の構想を抱いていたが、現代を舞台とするテレビ版撮影用の素材が使えないので新規作成が必要となることから、無理と判断していた[4]。
ヒーローの武器のモチーフがギターやトランペットである以上、辻褄合わせは不可能であるため、時代考証は全くされていない。劇中では、カブキが登場早々に英語のセリフをしゃべることによって、「スーパー時代劇」であることを明確にしている[4]。脚本の井上敏樹の「時代劇は差別の多い時代である」という考えから、戦国時代では鬼(仮面ライダー)は忌み嫌われる存在として描かれている[5]。
タイトルは黒澤明の映画『七人の侍』に似ているが、内容を参照しているわけではない[4]。
「全国各地に一人ずつ鬼(ライダー)がいる」というテレビシリーズの初期構想を下敷きに、日本各地を出身とする5人の劇場版限定仮面ライダーが登場する[出典 1]。この5人のライダーは「ご当地ラーメン」に準え「ご当地ライダー」と称された[出典 2]。北海道・東京・名古屋・大阪・福岡という地域の選定は、日本のプロ野球チームの本拠地から来ているが、同時にロケやキャンペーンを意識して東映の営業所所在地が選ばれている[4][6]。ご当地ライダーのデザインは何十分という限られた時間の中で一人一人のキャラクターを見せるだけでなく、認識してもらうため、腕と隈取りのグラデーション、楽器の特徴を胸に出してディテールに意味を持たせるなどのテレビシリーズの鬼の法則から外れ、テレビ版ライダーと比べるとカラーリングやシルエットが鮮明になっており、武器のモチーフは企画の初期に検討されたさまざまな楽器を発展させた突飛なものとなっている[4][9]。この他、当時の新聞では「響鬼の忍者バージョンが登場」「仮題は『戦国大決戦』」という、完成品では没案となった情報も報じられた[7]。
オープニングは、和太鼓を通じて文化公演や福祉活動を行う「富岳太鼓」の協力を得て本作品に登場する8人の鬼たちによる5.1chの音響設計を活かした太鼓の演奏で幕を開ける(作曲は山内強嗣が担当。)[2]。
関東近郊を中心に撮影が行われ、戦国時代の村は軽井沢にオープンセットを建てて撮影された[2]。家一棟の予定だったのに村が丸ごとできてしまったと白倉は語っているが、美術の大嶋修一は台本を見た当初から一棟だけでは不足であることを察しており、白倉の発言に関しては「多分おとぼけでしょう」と笑っている[4]。
エキストラの一般公募が実施されたが、混乱をなくすために参加条件は厳しく、オーディションは「自前の戦国時代風衣装を着て朝8時に東映太秦映画村に集合」というものだった[2][10]。審査基準は「レベルが高いカラフルな衣装で、芝居への気合を感じられる」というもので、オーディション参加者は340名で、そのうち審査判定で最高位を獲得した117名が合格した[2][10]。そのシーンの撮影には専用のクレーンが使用された[10]。
撮影は6月中を予定していたが、雨などの天候不順によって7月上旬に順延したという[4]。
現代の日本の海岸で巨大魔化魍オロチが出現し、ヒビキと明日夢が駆けつけ戦うが、ヒビキはオロチに敗れて深手を負い意識不明の状態になって入院する。自責の念に駆られる明日夢はヒビキを救う手がかりを猛士の古文書のオロチの記述に求めるが、その文献には自分と同じ「明日夢」という名と、鬼たちの物語が載っていた……。
古文書に書かれていたのは戦国時代のとある村。そこではオロチが毎年生贄を要求していた。その生贄に明日夢の知り合いであるひとえが選ばれ、明日夢はなんとかしようと立花藤兵衛に相談、鬼に救ってもらおうという案の元、明日夢たちは鬼探しに行く。
最初に出会った鬼のカブキへ協力を約束、彼の紹介である鬼の元へ行く。しかし明日夢はその男ヒビキを一目見るや激怒した。彼は明日夢の兄である猛士の師匠だったが、明日夢は猛士をヒビキに殺されたと思っていたからであった。ヒビキも「自分は鬼を辞めた」と言い協力を断る。その後、明日夢たちはトウキ、イブキ、キラメキ、ニシキ、ハバタキ、トドロキを仲間に加え、オロチ退治を目指す。
本作品に登場する戦国時代の鬼は現代の鬼と異なり、変身を解いても服は着たままである。
歌舞伎役者をモチーフとした、江戸(東京)出身の鬼。骸骨のようなディテールが、派手な色合いの隙間に見え隠れしている[11]。音撃武器以外にも鎖鎌や唐傘などを扱った
仮面ライダー凍鬼 | |
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身の丈 |
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目方 | 51貫(約190 kg) |
白熊をモチーフとした、札幌(北海道)出身の鬼。冷気や念道の術を操る[29]。体色はパールホワイトで手はメタリックスカイブルー[30]。胸部には黒い装甲を纏っている。額には鬼面の代わりに大きな熊の面があり、その口から猛吹雪を吐く[11][29]。キアカシシ、ニビイロヘビ、アサギワシを所有している[11]。
仮面ライダー煌鬼 | |
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身の丈 |
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目方 |
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鯱(シャチホコ)をモチーフとした、名古屋(東海)出身の鬼。水中戦を得意とする。体色はダークブルーで、その上からゴールドとシャンパンゴールドの装甲を纏っている[30]。手の色は銀色。頭部には鬼面の代わりに大きな鯱がある[11]。ルリオオカミ、キハダガニ、ニビイロヘビを所有している[11]。
仮面ライダー西鬼 | |
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身の丈 |
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目方 |
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虎をモチーフとした、大阪(関西)出身の鬼。体色は黄色で両肩に金色の装甲[30]、黒の縞模様が所々にある。手の色は黒。額には鬼面の代わりに虎を象った紋章がある[31]。野生の鬼闘術で戦う。キハダガニ、ニビイロヘビ、アカネタカを所有している[11]。
仮面ライダー羽撃鬼 | |
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身の丈 |
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目方 |
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鷹をモチーフとした、九州代表の鬼。肩に備えた羽根によって短時間ならば飛行可能な鬼翔術[33]を使用する。体色はカッパーで手の色は黒[30]。頭部には鬼面の代わりに鷹を象った面がある。威吹鬼同様、管楽器のモチーフが身体に引用されている[31]。アカネタカ、ルリオオカミ、リョクオオザルを所有している[11]。
いずれも本作品にのみ登場。戦国時代の鬼たちが携帯する、動物の魂が込められたカラクリ動物。現代のディスクアニマルの始祖で、ディスク状態の起動前も起動後と同様の色である[11]。また、等身大まで巨大変形することもできる。録音機能も持つ。
名称 | 速度 | 最大稼働時間 | 最大録音可能容量 |
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茜鷹 | 最大飛行速度:200 km/h | 20時間 | 18時間分 |
岩紅獅子 | 最大走行速度:80 km/h | 18時間 | |
白練大猿 | 最大走行速度:50 km/h | 9時間 | 9時間分 |
消炭鴉 | 最大飛行速度:160 km/h | 16時間 | 16時間分 |
古来より妖怪や物の怪として伝承されている怪物。戦国時代ではバケガニのように自然発生した個体のほかに、複数の魔化魍が海辺に浮かぶ鬼岩城を根城として集まり、
オロチ | |
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身の丈 |
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目方 |
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ヒトツミ | |
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身の丈 |
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目方 |
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火焔大将 | |
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身の丈 |
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目方 |
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バケガニ | |
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身の丈 |
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目方 |
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イッタンモメン | |
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体長 |
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目方 |
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飛行速度 | マッハ3 |
キャスト面では、テレビシリーズでザンキ / 仮面ライダー斬鬼役を演じた松田賢二が劇場版オリジナルライダーとして出演したほか、多数のテレビシリーズのレギュラー陣が戦国時代の別人物を演じている。
ゲストとしては、芸人の塚地武雅(ドランクドラゴン)や、主演の細川茂樹の友人である俳優の小泉孝太郎、タレントの安倍麻美が出演している。とりわけ塚地は仮面ライダーファンを公言し、本作品の特番では司会も担当した。カブキ / 仮面ライダー歌舞鬼役には『仮面ライダー555』でゲスト出演経験がある松尾敏伸を起用。
前4作ではテレビシリーズのパイロット監督が映画も監督するのが定番となっていたが、本作品ではテレビシリーズのパイロット監督であった石田秀範ではなく、坂本太郎が担当している。同時に坂本にとっては劇場用作品初監督作品となった[3]。東映プロデューサーの白倉伸一郎・脚本の井上敏樹はテレビシリーズには未参加であり、彼らは当初『響鬼』を手掛けるのは劇場版のみの予定であったが、後にテレビシリーズ後期のメインスタッフとしても関わることになった。
音楽はテレビシリーズ同様佐橋俊彦が担当。劇場版ではオーケストラサウンドを起用。劇場版限定の多数のライダーが登場するが、ヒビキには和太鼓、トドロキにはギター、イブキには金管といった楽器によってそれぞれのライダーの特徴を表現する手法は避けられている。また歌舞鬼と煌鬼以外、各々の鬼のテーマ音楽は作られていない。
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