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甲殻類の分類群 ウィキペディアから
ムカデエビ綱(ムカデエビこう、学名:Remipedia)は、ムカデエビ(ムカデエビ類、remipede)と総称される甲殻類の分類群(綱)である[4]。海底洞窟に生息する洞穴生物で、ムカデに似た細長い姿をしている。和名に反してエビ(軟甲綱十脚目)ではない。
生態面に謎が多く、毒腺を持ち[5]、体に胸腹の区分がないという甲殻類として特異な形態を持つ[3]。その系統分類学上の位置付けについて多くの議論が繰り広げられ、特に汎甲殻類説においては昆虫などとの類縁関係が注目される分類群である[6]。
約30種が知られ、知られる化石種記録はおよそ3億2,000万年前の石炭紀後期まで遡る[1]が、その起源はさらに早い4億8000万年前のオルドビス紀にあるとされる[7]。現生種は全てムカデエビ目(泳脚目、学名:Nectiopoda)に分類される[8]。
学名「Remipedia」はラテン語で「櫂(オール)のような脚」を意味し、櫂のような形をもつ胴肢に因んで名づけられた[3]。
体長は15mmから45mm[9]。無色透明で、体は頭胸部(単に「頭部」とも呼ぶ)と、ムカデのように細長い胴部という2つの合体節のみに分かれている[10]。付属肢(関節肢)として頭部には触角と発達した口器、胴部には櫂のような遊泳用の胴肢が並んでいる。
頭胸部(cephalothorax)は先節と第1-5体節でできた元の頭部が直後の元の第1胴節(第6体節)と癒合したものであり、その背面は1枚の背甲(head shield)に覆われるが、多くの甲殻類に見られる幅広いもの(carapace)ではない[11]。なお、この部分はしばしばこうして「頭胸部」と呼ばれるものの、ムカデエビの体制にそもそも「胸部」というの区分はなく(後述参照)、英語の文献記載においてもこの頭胸部全体を「cephalon」(頭部)と呼ぶ方が一般的である[3][11][12][9][13]。
現生種に眼はない[11][14]が、頭胸部の前端に複眼を持つと考えられる化石種はある[11]。
頭胸部は前端の下に1対の額糸(frontal filaments)という短い付属肢のような構造体があり[3][9]、主幹部である「main filaments」とそれに付属した枝のような「accessory branches」という2パーツからなる。額糸の直後は2対の二叉型の触角が備わる。第1触角(antennule)は感覚毛(aesthetasc)を持つ基部から2本の細い枝に分かれ、そのうち上側の枝(dorsal ramus)は長く、下側の枝(ventral ramus)はやや短く、いずれも途中は複数の節に分かれている。第2触角(antenna)はかなり短く、分節のない葉状の外肢(exopod)と湾曲した3肢節をもつ内肢(endopod)からなる[12]。
触角に続けて口器があり、1枚の上唇(labrum)に覆われる1対の大顎(mandible)、および第1小顎(maxillula ないし first maxilla)・第2小顎(maxilla ないし second maxilla)・顎脚(maxilliped)という3対の捕獲用の付属肢からなる[3]。口器の付属肢はいずれも単枝型で、大顎に大顎髭(mandibular palp)はなく、第1小顎は先端が牙状で、毒腺の開口部がある[15][5]。第1と第2小顎は7節からなり、基部は噛み合った数本の内葉(endite)がある。顎脚は9節からなり、元の第1胴節に由来するとされるが、頭部由来の第2小顎に似た形態を持ち、いずれも先端の爪には棘・剛毛・小孔などの構造が集約した複合体(terminal claw complex)がある[12][16]。
第1・第2小顎と顎脚は付け根から先端まで、基部をなす「proximal segments」・上腕のような「lacertus」・前腕のような「brachium」という3部として大別され、lacertus と brachium の接続部に当たる肘のような部分は「elbow」と呼ばれる。その構成は次の通り[12]。
付属肢/肢節に当たる部位 | Proximal segments | Lacertus | Brachium |
---|---|---|---|
第1小顎 | 3節:第1-3肢節 基本としてそれぞれの肢節に1本の内葉を持つ |
1節:第4肢節 | 3節:第5-7肢節 第7肢節は牙をなし、毒腺の開口部がある |
第2小顎 | 2節:第1-2肢節 基本として第1肢節に3本の内葉を持つ |
1節:第3肢節 | 4節:第4-7肢節 第7肢節の先端は terminal claw complex を持つ |
顎脚 | 3節:第1-3肢節 | 1節:第4肢節 | 5節:第5-9肢節 第9肢節の先端は terminal claw complex を持つ |
胴部(trunk)は細長く、尾端の肛門節を除いて最少16胴節、最多42胴節の体節からなる[9]。体節に胸部と腹部への分化は見られず、ほぼ同じものの繰り返し(同規的)である[14][17]。体節に応じて、背面は左右がやや張り出した背板(tergites、単に張り出した部分を指す場合は「pleurotergites」[12])、腹面は腹板(sternites)とその後方に「sternal bars」という左右が胴肢に繋がった細い外骨格が並んでいる[12]。
胴節にはそれぞれ1対の、櫂のような形をした胴肢(trunk limb)が両側に備わる[3][18]。胴肢は基部の肢節(原節、protopod)から、それぞれ3肢節と4肢節からなる外肢と内肢に枝分かれした二叉型付属肢[12]。その外縁には剛毛が密生し、遊泳に適している[14]。外葉と内葉は存在しない[3]。胴肢の中で生殖孔をもつものは、生殖肢(gonopod)扱いともされる[19]。
胴部後端の部分は肛門節(anal somite, 尾節 telsonとも)と呼ばれ、終端は肛門と両腹側に1対の尾叉(caudal rami)がある。
2対の触角・ニ叉型付属肢・尾叉・ノープリウス幼生期などを有することから、ムカデエビは明らかに甲殻類である[17]。ただし甲殻類では、胴部が胸部や腹部など複数の合体節(tagma)に分かれて、部位ごとに異なった形態・機能を持つのが普通である。ところがムカデエビの胴部は胸部と腹部という機能的分化が見当たらず、甲殻類として非常に特異である[18]。このような同規的体節制は、むしろ多足類に似通っている[17]。胴肢が体節の両側に備わるのも、付属肢は多くが体節の下側に備わる甲殻類において例外的である[3]。また、どの現生節足動物も体節制的に中大脳性の付属肢(第1触角と鋏角)より前に備わる付属肢は存在しないため、ムカデエビが第1触角の前に額糸という付属肢らしい構造体を持つのが甲殻類どころか、節足動物全般にしても異質である[3]。
他方、頭楯・背板・尾叉の発達具合(カシラエビ類に類似)、ニ叉型の第1触角(軟甲類に類似)、短い第2触角とニ叉型で櫂状の胴肢(カイアシ類に類似)、多数の体節(一部の鰓脚類に類似)など、複数の甲殻類の分類群に似通う特徴を併せ持つ所も見られる[3]。
頭胸部に備わる脳は他の節足動物と同様に3つの脳神経節(前大脳・中大脳・後大脳)からなるが、軟甲類と六脚類に劣らないほどの特殊化が見られる[20]。前部にあるはずの前大脳は上向きに180度ほど曲がり返し、中大脳の後上方に備わるようになる[20]。眼を欠くことで視覚情報の入力はないためか、前大脳の中心体(central body)は相対的に小さい[20]。第1触角に対応の中大脳は嗅神経(olfactory neuropils)が大きく発達して前へ突き出し、脳の大部分を占める[20][21]。胴部の腹神経索の神経節は1体節に1対ずつ並んでいるという、節足動物として典型的なはしご形であるが、その神経細胞の配置は六脚類に似た派生的な形質が見られる[22]。消化管は分岐(消化腺、gut diverticulae)を持ち、1胴節につき左右1対並んでいる[23]。呼吸色素として六脚類に似たヘモシアニンを持つ[24][25]。
甲殻類として珍しく、ムカデエビは毒腺をもち、それをもつことが最初に証明された甲殻類でもある[5]。1対の毒腺は開口部の直前、すなわち第1小顎の先端3節(brachium)にあたる段で毒液を貯蔵できるような嚢に変化し、その直後は細長い管で、胴部の前端数節まで伸ばした毒腺に繋ぐ[15][5]。毒液からプロテアーゼ、キチナーゼなどの分解酵素と多種類のペプチドが確認され[26]、神経毒をも含むと考えられる[5][26]。
ムカデエビは雌雄同体であり、雌性生殖孔と雄性生殖孔は、それぞれ第7胴節と第14胴節の胴肢の原節に一対ずつ備える[14]。
アンキアライン洞窟(anchialine cave)と呼ばれる種類の海底洞窟に生息する。アンキアライン洞窟は沿岸部にあって陸水と海水の両方が流入する洞窟のことで、その内部には下に重い海水、上に軽い淡水が溜まった塩分躍層(halocline)が形成される。ムカデエビ類はこの躍層より下の海水中に見つかる[18]。この環境は貧栄養で、また酸素も乏しいことが多い[18]。バハマ諸島の海水のみに満たされた洞窟に生息する種が例外的に1種だけ知られている[18]。
ムカデエビ類はカリブ海、カナリア諸島、西オーストラリアの3か所で分布が確認されている[18]。このように遠く離れた複数の海域から見つかる傾向(隔離分布)は、アンキアライン洞窟に生息する他の分類群でも確認されており、その成立要因について生物地理学の議論が行われている[27]。
ムカデエビが生息する3つの海域はいずれも、中生代にはテチス海と呼ばれる1つの大洋に含まれていた。そこで、ムカデエビ類はかつてテチス海に広く分布していたが、大陸移動によってその分布が分断されたとするのが1つの仮説である[18]。ただし、ムカデエビの分布域がすべてかつてのテチス海に含まれるものの、逆にテチス海に含まれていたにもかかわらず、ムカデエビのいない場所(地中海沿岸とインド洋東部)もあり、この仮説ではこれらの地域ではかつて生息していたものの絶滅したと考える必要がある。このほかにもいくつかの仮説が提唱されている。
ムカデエビの生息地である海底洞窟は人では到達しにくい場所であるため、その生態への調査は難しく、未だに不明点が多い[17]。胴肢は常に前後方向で波打つような動きを続けており、遊泳していないときもその動きが止まることはない[28]。その姿はオヨギゴカイやスカイフィッシュを彷彿とさせ、普段は裏返しと垂直の姿勢でゆったりと遊泳するが、捕食と回避の際には瞬発的に胴部を湾曲して泳ぎ出せる[28]。
食性の全貌は解明されていないが、少なくとも捕食を行えることは明らかである。捕食の際に把握型の小顎と顎脚で獲物を掴み、第1小顎から毒を分泌し、獲物を麻痺・体外消化できると推測されている[26]。洞窟内の生態系における頂点捕食者であると考えられており、飼育下での迅速な捕食行動[28]、洞窟内で Typhlatya 属のエビの一種を食べている様子も観察されている[18]。しかし、前述の捕食行動は偶発的で頻度は低いこと、海底洞窟では餌となる動物の個体数は少いこと、消化管は常に内容物に満たされることから、むしろ安定な食物源である水中のバクテリアや微粒子を取り込む濾過摂食に多くを依存していると推定される[28]。常に第2触角を拍動し、特に垂直で遊泳する際に小顎と顎肢が不規則に動いており、これらは濾過摂食に関わる行動ではないかと考えられる[28]。また、洞窟内で魚の遺骸を食べているという洞窟潜水から得た情報もある[20]。
卵は発見できず、繁殖行動も観察されていないため、詳細は不明[28]。バハマで採集されたノープリウス幼生の研究から、少なくとも8つのノープリウス期があること、発生過程のかなり遅くまで摂食せずに卵黄の栄養に依存すること、体節数は発生過程で徐々に増えていくことが判明しているが、その生活史の全容は解明されていない[29][30]。
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2019年現在で有力視されるムカデエビ類の系統的位置[6]。青い枠以内の分類群(六脚類以外の汎甲殻類)は側系統群である甲殻類に属する。 |
ムカデエビ類は胴部に同規的体節制を持つのが、甲殻類として非常に特異である[3]。これは典型的なはしご形神経系を持つことを含め、多足類の様に、節足動物の体節制として祖先的な特徴と考えられる[22]。他方で特殊化した小顎と顎脚を持つこと、派生的な甲類類である軟甲類に似通う脳をもつこと[20][31][22]など、むしろ派生的な特徴も併せ持つ所も見られる。
そのような形質を持つことから、ムカデエビ類の系統的位置付けは諸説に分かれていた。基盤的な甲殻類から分岐した原始的なグループ[11]、甲殻類における派生的なグループ[20]、六脚類と多足類の共通祖先から分岐したグループ[32][33]、など形態学に基づいた見解が挙げられる。
2000年代をはじめとして、六脚類(広義の昆虫類)は多足類とは遠縁で、むしろ甲殻類と単系統群の汎甲殻類(Pancrustacea)をなし、側系統群の甲殻類から派生していることが分子系統解析で徐々に明らかになった[6]。そこで多くの甲殻類の分類群と同様に、ムカデエビ類の系統位置も大きく書き替えられた。中でも従来の推測を覆し、ムカデエビ類は六脚類に最も近縁な甲殻類という意外な系統関係が多くの解析結果に示唆される[34][35][7][36][37][6]。他方、ムカデエビ類とカシラエビ類は姉妹群で奇エビ類[38](Xenocarida)をなし[39][40]、もしくはそれ以外の甲殻類が六脚類の姉妹群になる[41]というやや異なった解析結果もあるが、いずれも後に否定的とされる向きがある[36][37]。
2019年現在に至って、ムカデエビ類と六脚類に関わる様々な系統仮説の中で両者が姉妹群になる説が最も有力視される[37][6]。この2群からなる単系統群は Labiocarida と名付けられた[37]。この系統仮説を支持する可能性があるとされる両者の共有形質は、下唇(labium)のように機能する第2小顎[36]、腹神経索における神経細胞の構造[22]、ヘモシアニンの構成[24]などが挙げられる。
現生種はすべてがムカデエビ目(泳脚目 Nectiopoda)に含まれる。もう1つの目である Enantiopoda には、2種の化石種が分類されている。小顎の内葉や爪など細部の構造が主な同定形質として重要視される。
最初に発見されたムカデエビ類は1955年で記載される石炭紀の化石種 Tesnusocaris goldichi である。しかし当初は原記述に頭部の付属肢で甲殻類として判別できたが、それ以降の分類は不確実で、鰓脚類もしくはカシラエビ類に近いと考えられた[42]。後に現生ムカデエビの1種 Speleonectes lucayensis が1979年にバハマ諸島から発見され、この現生種は他の甲殻類に分類できないほど独自の特徴があることから、1981年にこの現生種を含んだ甲殻類の新しい綱「Remipedia」(ムカデエビ綱)が創設された[3]。その後は他の現生種も徐々に記載され、そして1986年の再検証により、前述の化石種はムカデエビ類の構造を持つことが分かり、ムカデエビ綱に分類されるようになった[11]。
化石記録は乏しく、2019年現在では Tesnusocarididae科に分類される石炭紀の2種のみが記載されている[18]。最初期に記載されたムカデエビ類を含むが、本目がムカデエビ綱に分類されるようになったのは1986年以降である[11]。複眼があるとされる[11]。
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Hoenemann et al. (2013) に基づいたムカデエビ目の内部系統関係[16]。 △ = スペレオネクティス科に含まれる経緯があった分類群 ◎ = ゴジラ科に含まれる経緯があった分類群 |
すべての現生種を含む。一時期ではゴジラ科[43] Godzilliidae、スペレオネクティス科 Speleonectidae、Micropacteridae の3科に分類されていたが、この分類は系統関係を適切に反映していない可能性が指摘され[44][18]、その後も2013年の分子系統解析でこの分類の非単系統性が証明された[16]。そこで従来のゴジラ科とSpeleonectidae科から別系統の種を新設した科へ再編成し、破棄されたMorlockiidae科も再び採用され、2017年では以下の8科からなる分類体系に至った[13]。2020年現在では13属29種が記載される[8]。
部位 | 共有形質[16] |
---|---|
額糸 | Accessory branches は基部近くに備わり、親指状で main filaments より短い。 |
第1触角 | 上側の枝は非常に長く、胴部の長さの半分以上ほど伸び、少なくとも14節がある。 |
第2小顎と顎脚 | 細くなり、顎脚は明らかに第2小顎より長い。先端の爪は蹄鉄状。 |
胴部 | Sternal bars の後方両側は突起を持ち、第1-13番目は凹んで14番目は凸状になる。 |
カリブ海のバハマ諸島に生息する[13]。本科に属する アンギラス属[43] Angirasu は、怪獣映画『ゴジラシリーズ』のアンギラス(Anguirus)に因んで名付けられた[16]。本科の種はかつてスペレオネクティス科に分類された[16]。2020年現在では3属6種が記載される[45]。
2021年現在ではカリブ海に分布する2属5種が記載される[50]。模式産地がタークス・カイコス諸島である Godzillius robustus 以外はすべてバハマ諸島のみで確認されている。タイプ属である Godzillius がムカデエビ類としては巨大であることなどから[11]、怪獣映画『ゴジラシリーズ』のゴジラ(Godzilla)に因んで名付けられた[10]。Godzilliognomus はタイプ属名に伝説上の小人であるノームの名を組み合せたものである。2020年現在では2属4種が記載される[51]。
部位 | 共有形質[16] |
---|---|
第1触角 | 上側の枝は13節、下側の枝は10-12節。 |
第1小顎 | 第2節の内葉は頂点辺りに密集した長い毛束を持ち、第3節の内葉は5本の中位の長さの剛毛と基部の広い1本の剛毛を持ち、第4節の内縁は密集した長い毛束を持つ。 |
第2小顎と顎脚 | Brachium は lacertus より長く、羽毛様に密生した剛毛を持つ。先端の爪は短い棘に覆われる1本の発達な棘を持つ。第2小顎の第3節は球根状で幅広く、内葉は強大。 |
胴部 | 尾叉は肛門節より長い。 |
2020年現在では、西オーストラリアに生息するクモンガ属の Kumonga exleyi という1種のみが記載される[54][13]。属名はゴジラ属と同じく怪獣映画『ゴジラシリーズ』のクモンガ(Kumonga)に因んで名付けられた[16]。かつてスペレオネクティス科に分類された[16]。
部位 | 共有形質[16] |
---|---|
頭楯 | 亜長方形。 |
第1触角 | 下側の枝は非常に短い。 |
第1小顎 | 第3節の内葉は退化的。 |
第2小顎と顎脚 | 長さはほぼ同様、brachium は同じ長さの2節へ癒合。ただし両者は先端の爪の構造が異なる。第2小顎は大きな爪1本と小さな爪4本を持ち、小孔は途中にある。顎脚は蹄鉄状に並んだ9-10本の癒合した爪を持ち、小孔は先端にある。 |
胴部 | 16節からなり、背板両側の突起は不発達、sternal bars は異規的だがほぼ完全に退化消失。肛門節は胴部の後端2節(第15-16節)と癒合し、楕円形の後端をなす。 |
2020現在では、カリブ海のタークス・カイコス諸島に生息する Micropacter 属の Micropacter yagerae という1種のみが記載される[56][18]。
部位 | 共有形質[16] |
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額糸 | 幅広く、accessory branches は先端に備わって main filaments より長い。 |
第1小顎 | 第3内葉における2本の頑丈な剛毛は数少ない単純な剛毛に隣接し、先端の牙は90度ほど長く湾曲する。 |
第2小顎と顎脚 | 節はやや細い。先端の爪は蹄鉄状、弧状の棘を持つ。 |
胴部 | 19-25節からなる。肛門節と尾叉の長さはほぼ一致、尾叉の剛毛は少ない。 |
2020年現在では、カリブ海のバハマ諸島、ドミニカ共和国、キューバ、およびカナリア諸島のランサローテ島に生息する[13] Morlockia 属の4種のみが記載される[57]。属名はハーバート・ジョージ・ウェルズのSF小説『タイム・マシン』の暗黒に適応した種族モーロック(Morlock)に因んで名付けられた[58]。本科の種は一時期ではスペレオネクティス科に分類された[16]。
2020年現在では、カリブ海のバハマ諸島に生息するオヨギモスラ属 Pleomothra の2種のみが記載される[59][13]。属名はゴジラ属と同じく怪獣映画のモスラ(Mothra)に、泳ぐことを意味するギリシャ語の「pleo」を付けたものである[53][60]。本科の種はかつてゴジラ科に分類された[16]。
部位 | 共有形質[16] |
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頭楯 | 亜長方形から台形。 |
第1触角 | 上側の枝は12節、下側の枝は8-10節。 |
第1小顎 | 第3内葉は発達で、第1-2内葉より短い2本の棘状の剛毛を持つ。 |
第2小顎と顎脚 | 第2小顎は顎脚より小さい。Lacertus と brachium に一連の長い剛毛を持つ。Lacertus は膨大し、brachium は lacertus より長い。先端の爪は蹄鉄状に並んだ突起が密生している。小孔は爪の後側にある。 |
胴部 | 肛門節と尾叉の長さはほぼ一致、尾叉の尾端に毛束を持つ。 |
カリブ海のバハマ諸島、タークス・カイコス諸島、およびキューバに生息する[16]。学名はギリシア語の「洞窟」(spelaion)と「泳者」(nectes)の合成である[3]。いくつかの現生ムカデエビ類はかつてこの科のタイプ属 Speleonectes に分類された[16]。2020年現在では2属7種が記載される[62]。
部位 | 共有形質[16] |
---|---|
頭楯 | 亜長方形。 |
額糸 | 幅広く、accessory branches は基部近くに備わって main filaments より短い。 |
第1小顎 | 第3内葉と lacertus はいずれも噛み合わせた2列のノコギリ状の剛毛と数少ない単純な剛毛を持つ。 |
第2小顎と顎脚 | Lacertus はやや膨大し、数少ない単純な剛毛を持つ。Brachium は節ごと後端に数少ない単純な剛毛を持ち、最初の節の後端は幅広い。先端の爪は蹄鉄状に並んだ突起が密生し、片側にやや離れた1本の頑丈な突起がある。顎脚は明らかに第2小顎より長い。 |
胴部 | 体節は最多42節、成体では通常は30節を超える。sternal bars は同規的。尾叉は非常に長く、肛門節の長さの2.5倍を超え、剛毛は少ない。 |
2020年現在では、カリブ海のユカタン半島に生息する Xibalbanus 属の4種のみが記載される[63][13]。本科の種はかつてスペレオネクティス科に分類された[16]。
オーストラリア、バハマ諸島、ユカタン半島では、ムカデエビ類の保全活動が行われている。ダイバーの呼気が洞窟水に溶け込み、溶存酸素量を増やして生態系に影響するおそれがあるため、洞窟潜水の際には閉鎖式リブリーザーを使うことが求められる[18]。
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