全日本実業団対抗女子駅伝競走大会予選会(ぜんにほんじつぎょうだんじょしえきでんきょうそうたいかいよせんかい)は、2015年から毎年秋に福岡県宗像市・福津市で催されている駅伝大会。コースが6つの区間で構成されている大会で、上位に入ったチーム(基本として16チーム)に全日本実業団対抗女子駅伝競走大会(全日本大会)への出場権が与えられる。
全日本大会が2012年から「クイーンズ駅伝 in 宮城」という愛称を公式に定めていることに合わせて、大会の公式愛称は「プリンセス駅伝 in 宗像・福津」。岩谷産業(Iwatani)が特別協賛を始めた2021年からは、TBSテレビ系列で放送される生中継に「Iwataniスポーツスペシャル プリンセス駅伝○○」(いわたにスポーツスペシャル プリンセスえきでん、○○は開催年の西暦を表す4桁のアラビア数字)というタイトルを使用している[1]。
概要
全日本大会では1990年から、地域別の予選会を導入。2008年までは、「東日本実業団対抗女子駅伝」(対象地域は北海道を含む東日本)、「淡路島女子駅伝競走大会」(対象地域は関西・中部・北陸・中国)、「九州実業団対抗女子駅伝競走大会」(対象地域は九州・沖縄)の3大会が開催されていた。淡路島大会がスポンサーの撤退などから同年で終了したことを機に、中部・北陸地区の予選会は2009年から「中部・北陸実業団対抗女子駅伝競走」として独立(翌2010年から「実業団女子駅伝中日本大会」に改称)。関西・中国地区は九州地区予選会と統合し「実業団女子駅伝西日本大会」として宗像市と福津市で開催されていた。
しかし、主催の日本実業団陸上競技連合は、全日本大会への出場権の扱いを2015年から一新。上位の8チームに次回大会へのシード権(予選会を経ずに出場できる権利)を自動的に与える一方で、予選会の一本化を図るべく、当大会を「全国統一予選会」として創設するに至った。開催地には前述した宗像・福津の両市を選んだものの、コースを西日本大会から変更。また、全日本大会が2012年から「クイーンズ駅伝 in 宮城」という愛称を公式に使用していることを踏まえて、当大会では「プリンセス駅伝 in 宗像・福津」という愛称を公式に定めた。
岩谷産業が特別協賛を始めた2021年からは、同社が水素ステーションの整備を進めていることから、燃料電池自動車のトヨタ・MIRAIを大会の運営車両として導入している[1]。また2023年から、燃料電池を搭載したテレビ中継車「地球を笑顔にするくるま」を使用している。
コース概要
福岡県宗像市と福津市を通る6区間・42.195km。
- 第1区(7.0km):宗像ユリックス→宗像大社
- 第2区(3.6km):宗像大社→勝浦浜
- 区間記録:10分48秒 大西響(ユニバーサル)第7回(2021年)
- 第3区(10.7km):勝浦浜→宮地浜
- 第4区(3.8km):宮地浜→福津市文化会館
- 区間記録:11分19秒 アグネス・ムカリ(京セラ)第9回(2023年)・第10回(2024年)
- 第5区(10.4km):福津市文化会館→宗像大社
- 区間記録:34分02秒 逸木和香菜(九電工)第8回(2022年)
- 第6区(6.695km):宗像大社→宗像ユリックス
いずれの中継所でも、先頭のチームが中継所を通過してから10分経過すると繰り上げスタートとなる。第4区は「インターナショナル区間」として、外国人競技者の登録が認められている。
全日本大会への出場枠
基本として、上位で完走した複数のチームに全日本大会への出場権を与えている。ただし、出場枠の総数は、本大会の時期によって異なる。
出場枠の変遷
- 第1回(2015年) - 第6回(2020年):上位14チーム
- 第7回(2021年):上位20チーム
- 2020年の全日本大会が第40回記念大会として開催されることを受けて、当初は第6回大会で出場枠を増やすことを予定していた。実際には、この年の初頭から新型コロナウイルス感染症が日本国内で流行していたことを受けて、増枠措置を第7回大会に持ち越していた。
- 第8回(2022年)・ 第10回(2024年):上位16チーム
- 第9回(2023年):上位16チームおよびマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)出場権を持つ選手が所属するチーム[2][3]
- 本大会の1週間前にMGCが開催されることに伴って、出場権を有する選手や所属チームへの負担が懸念されていたことから、MGC出場権を持つ選手が所属するチーム[4]を対象に特例措置を適用。対象チームには、当該選手の出走の有無や最終順位に関係なく、本大会ででの完走を条件に全日本大会の出場権を与えていた。
大会成績
太字は全日本実業団対抗女子駅伝競走大会への出場権獲得チーム。(AC=アスリートクラブ)
- 大会記録:2時間16分41秒 資生堂 第7回(2021年)
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テレビ中継
2015年の第1回大会では、BS-TBSで生中継を実施したほか、TBSテレビ系列の地元局であるRKB毎日放送が途中から地上波で北部九州地区(福岡県・佐賀県)向けにサイマル放送。他のTBS系列局の一部でも、生中継の映像を2時間に編集したうえで後日に放送された。
2016年の第2回大会から、TBSテレビ系列全28局で放送(制作協力:RKB毎日放送、製作著作:TBSテレビ)。ただし、この大会では北陸放送が金沢マラソンのローカル向け中継を優先したため、他の27局からの時差放送で対応した。2017年の第3回大会からは、同局を含めたTBSテレビ系列全28局のフルネットへ移行している。
なお、「TBS陸上ちゃんねる」(TBSテレビがYouTube上に開設している陸上競技関連の公式チャンネル)では、2021年(第7回)以降の大会で移動中継車(同年は3台→2022年は2台)・リポートバイク・複数の固定点から撮影された動画のライブ配信を地上波向けのテレビ中継に合わせて実施。大会の翌日からは、テレビ中継の素材映像を基に、スタートから優勝チームへの選手インタビューに至るまでの動画も「ほぼOAのたっぷり見せ」と銘打って配信している。「ほぼOAのたっぷり見せ」については、本大会での配信開始を皮切りに、クイーンズ駅伝や東日本実業団駅伝(TBSテレビと一部の系列局で録画中継を放送している大会)でも同年から実施されている。
また、第7回大会までは、中継所の実況をTBSテレビとRKBの男性アナウンサーだけで分担。2022年(第8回)以降の中継では、実況や進行をTBSテレビのアナウンサーだけで賄っている。TBSテレビでは、2021年のクイーンズ駅伝中継で日比麻音子が中継所での実況デビューを果たしていたことを背景に、本大会の中継で2022年から佐々木舞音と篠原梨菜[5](いずれも現職の女性アナウンサー)が中継所の実況を1ヶ所ずつ担当。2024年(第10回)には、本大会の中継では初めて、中継所の実況を女性アナウンサー(日比・佐々木・御手洗菜々)だけで分担している。
中継への出演者
- 肩書を特記していない出演者はいずれも、出演の時点でTBSテレビの現職アナウンサー。
2024年(第10回大会)
移動車に搭乗する実況アナウンサー・解説者以外の人物は、東京(TBS放送センター)からのオフチューブ方式で出演。
- 放送センター(TBS放送センターに設置)
- 実況:熊崎風斗(5区固定点での実況担当を兼務)
- 解説:横田真人(男子800メートル競走の元・日本記録保持者、TWOLAPS TC 代表兼コーチ)
- 大会当日(10月20日)の午前中には、東京都内で開催された第3回東京レガシーハーフマラソンのテレビ中継(BS-TBS)で「センター解説」を担当。
- 第1移動車
- 第2移動車
- 中継所実況
2023年(第9回大会)
2022年(第8回大会)
この年は開催当日が『SASUKE』の収録日と重なったため、熊崎・南波は実況に参加していない。
2021年(第7回大会)
2020年(第6回大会)
2019年(第5回大会)
2018年(第4回大会)
2017年(第3回大会)
2016年(第2回大会)
2015年(第1回大会)
- 放送センター
- 解説:増田明美(スポーツジャーナリスト)
- 実況:新タ悦男
- 第1移動車
- 実況:伊藤隆佑
- 第2移動車
- 実況:櫻井浩二(RKBアナウンサー)
- 中継所実況
- 土井敏之
- 宮脇憲一(RKBアナウンサー)
- 選手・監督リポーター
- 小林由未子
- 優勝チームインタビュアー
- 福田典子(RKBアナウンサー)
エピソード
本大会では、レース中に選手が骨折や脱水症状に見舞われる事態が過去に何度も発生。2018年の第4回大会で以下のアクシデントが相次いだことを受けて、日本実業団陸上競技連合では、レース中に選手が故障などで「走行不能」に至った場合の「競技中止」に関する規定の明文化に踏み切った。
- 2区では、飯田怜(岩谷産業)が中継所まで残り300mの地点で転倒。自力で立ち上がれない状況に陥りながらも、四つん這いで前進した末に襷を繋いだ(当該項でも詳述)[9]。
- 3区では、岡本春美(三井住友海上)が先頭を走っていた最中に脱水症状を発症。中継所まで残り1km地点から蛇行や逆走を繰り返した後に、沿道に倒れ込んだ。もっとも、審判長車が岡本のすぐ後ろを走っていたことから、チームの要請を受けた直後に途中棄権の措置が取られている[10][11]。
日本陸上競技連盟の「駅伝競走規準」第5条2項には「競技者が走行不能になった場合の続行の判断は、審判長や医師(医務員)に委ねられる」との規定が明記されている。2018年の第4回大会では、この規定があくまでもレース運営の「目安」に過ぎないことや、出場選手の健康管理と安全に関する明確な規則が存在しないことが浮き彫りになった。これに対して、日本実業団陸上競技連合では、「レース中に選手が故障などで『走行不能』に至った場合には、選手の安全を最も優先する立場から、本人が競技の続行を希望しても審判が競技を中止できる」という規定を大会後に明文化[12]。全国大会では2018年[13]、本大会では翌2019年(第5回)からこの規定を適用している。
脚注
外部リンク
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