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アメリカの映画作品 ウィキペディアから
『セブン』(Seven、劇中の表記は"SE7EN")は、1995年のアメリカ合衆国のサスペンス映画。キリスト教の「七つの大罪」をモチーフにした連続猟奇殺人事件と、その事件を追う刑事たちの姿を描いたサイコ・サスペンスである[3]。
この項目には暴力的または猟奇的な記述・表現が含まれています。 |
セブン | |
---|---|
Seven | |
監督 | デヴィッド・フィンチャー |
脚本 | アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー |
製作 |
アーノルド・コペルソン フィリス・カーライル |
製作総指揮 |
ジャンニ・ヌナリ ダン・コルスルッド アン・コペルソン |
出演者 |
ブラッド・ピット モーガン・フリーマン グウィネス・パルトロー R・リー・アーメイ ケヴィン・スペイシー |
音楽 | ハワード・ショア |
主題歌 |
「ハーツ・フィルシー・レッスン」 デヴィッド・ボウイ |
撮影 | ダリウス・コンジ |
編集 | リチャード・フランシス=ブルース |
配給 |
ニュー・ライン・シネマ ギャガ |
公開 |
1995年9月22日 1996年1月27日 |
上映時間 | 127分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | US$33,000,000[1] |
興行収入 | US$327,311,859[1] |
配給収入 | 26億5000万円[2] |
アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが1991年に書き上げた自主執筆の脚本であり、4年間を経てプロデューサー・アーノルド・コペルソンに渡り制作が実現した[4]。先鋭的な映像センスと、ノイズを活用した音響により、シリアスかつダークな独特の世界を描いている。
4週連続で全米興行成績1位に輝いた大ヒット映画であり、IMDbでは『第三の男』、『シャイニング』を上回る評価を得ている。
役名 | 俳優 | 日本語吹替[5] | |||
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ソフト版 | フジテレビ版 | テレビ東京版 | テレビ朝日版[6] (吹替補完版) | ||
デビッド・ミルズ刑事 | ブラッド・ピット | 松本保典 | 真地勇志 | 堀内賢雄 | 森川智之 (森川智之) |
ウィリアム・サマセット刑事[7] | モーガン・フリーマン | 坂口芳貞 | 池田勝 | 黒沢良 | 勝部演之 (勝部演之) |
トレイシー・ミルズ | グウィネス・パルトロー | 金沢映子 | 日野由利加 | 田中敦子 | 大坂史子[8] |
警部 | R・リー・アーメイ | 大塚周夫 | 青野武 | 加藤精三 | 加藤精三 (斎藤志郎) |
マーティン・タルボット検事 | リチャード・ラウンドトゥリー | 石波義人 | 秋元羊介 | 有本欽隆 | 廣田行生 |
マーク・スワー弁護士 | リチャード・シフ | 目黒光祐 | 上田敏也 | 石井敏郎 | 岩田安生 |
ジョン・ドゥ[9] | ケヴィン・スペイシー | 野沢那智 | 小川真司 | 磯部勉 | 田中秀幸 |
テイラー刑事 | ダニエル・ザカパ | 星野充昭 | 中庸助 | 水野龍司 | |
カリフォルニア | ジョン・C・マッギンリー | 田中正彦 | 大塚芳忠 | 宝亀克寿 | 諸角憲一 |
マッサージ店にいた被害者の男 | リーランド・オーサー | 伊藤和晃 | 牛山茂 | 坂東尚樹 | 大黒和広 |
マッサージ店の受付係 | マイケル・マッシー | 宇垣秀成 | 金尾哲夫 | 手塚秀彰 | 松本大 |
ワイルド・ビル | マーティン・セレン | 坂東尚樹 | 天田益男 | ||
ベアーズリー医師 | リチャード・ポートナウ | 石波義人 | 上田敏也 | 藤本譲 | 佐々木敏 |
オニール医師 | ピーター・クロンビー | 金尾哲夫 | 秋元羊介 | ||
デイヴィス巡査 | ジョン・カッシーニ | 平田広明 | 牛山茂 | 石井隆夫 | 遠藤純一[8] |
ジョージ | ホーソーン・ジェームズ | 高瀬右光 | 水野龍司 | 宝亀克寿 | 松本大 |
脂ぎったFBI捜査官 | マーク・ブーン・Jr. | 稲葉実 | |||
図書館の警備員 | ロスコー・デヴィッドソン | 坂東尚樹 | 秋元羊介 | ||
グールド夫人 | ジュリー・アラスコグ | 野沢由香里 | さとうあい | 火野カチ子 | 藤生聖子 |
ミルズに詰め寄る女記者 | ドミニク・ジェニングス | 佐藤ゆうこ | |||
ニュースキャスター | ビヴァリー・バーク | 金野恵子 | |||
案内する警官 | デヴィッド・コレイア | 石波義人 | 星野充昭 | ||
配達員 | リッチモンド・アークエット | 平田広明 | 星野充昭 | ||
その他 | 内川藍維 柳沢栄治 村瀬喜一郎 棚田恵美子 | 叶木翔子 松井菜桜子 | 秋間登 中嶋聡彦 幸田夏穂 あらいしずか 佐藤晴男 小原雅一 よのひかり 追加録音分出演 小松史法[10] こばたけまさふみ[11] | ||
日本語版スタッフ | |||||
演出 | 岩見純一 | 吉田啓介 | 小山悟 | 清水勝則 | |
翻訳 | 栗原とみ子 | 松崎広幸 | たかしまちせこ | 武満眞樹 (浅香真規子) | |
調整 | 高橋久義 | 金谷和美 | 高橋昭雄 | ||
効果 | リレーション | 南部満治 | |||
担当 | 小笠原恵美子 | 別府憲治 | 福吉健 | ||
プロデューサー | 深澤幹彦 渡邊一仁 | 小久保聡 | |||
配給 | ギャガ | ||||
制作 | ACクリエイト | グロービジョン | テレビ東京 ケイエスエス | ザック・プロモーション | |
制作協力 | 武市プロダクション | ||||
初回放送 | 1998年5月16日 『ゴールデン洋画劇場』 正味約124分 |
1999年10月14日 『木曜洋画劇場』 正味約108分 |
2001年4月8日 『日曜洋画劇場』 正味約96分 |
フィンチャーは「フリードキンが『エクソシスト』の後に作ったかもしれない種類の映画」としてセブンを製作した。彼は映画撮影技師のダリウス・コンジと仕事をし、「肩越しに後部座席から徐々に見えるようカメラを動かす」というような(『全米警察24時 コップス』の影響を受けた)単純な撮影技法を採用した[13]。
銀残しという現像の手法を使い、コントラストの強い映像となっている。特に捜査官が用いるゴム手袋、図書館のライト(バンカーズ・ランプ)、街頭で配られるクーポン(割引券)など、淡いグリーンの配色に執着している。
騒々しい住人や常に降り続くように見える雨、込み合った都市の通りは本作の不可欠な要因である。フィンチャーは「汚い、暴力、倫理の欠如といった、憂鬱にさせる表現。視覚的に、そして文体的に私たちはこの世界を描写したかった。できるだけ本物で、かつ生きるためには必要とされるものすべてを」と述べている。この目的のために、陰気で、しばしば不気味な世界を作るようデザイナーのアーサー・マックスは注文された。「私たちは、都市の中の人々のモラルの腐食を反映させるためセッティングした」とマックスは述べている。
欧米で「ブリーチ・バイパス」と呼ばれる銀残しを多用した本作の映像について、同様の現像処理は日本で実用化され、色彩を制御する研究の一環として撮影監督のヴィットリオ・ストラーロがテクニカラー現像所とともに試行錯誤を繰り返して来たこと、また銀残し処理が行われた本作の上映プリントが100本のみの配給と限られていたという事実があるにもかかわらず、手法として殆ど忘れ去られていた銀残しの大流行とさらなる技術進化を促し、デジタル撮影機器でも同様の画質をより簡便に得られるような機能が付される現状に至っている。フィンチャーは銀残しを含め反映される画質が意図により近くなるようレーザーディスク・DVD・ブルーレイディスクといった先進メディアによるビデオソフトリリースの度に時間を掛けてフィルムスキャンやリマスター作業を繰り返した。
リマスターされたDVDではオリジナルのネガフィルムからHDスキャンされた。そのため、上映用フィルムやマスター・ポジなど複製を繰り返したものよりもシャープで鮮明な画質を得ている。ポジ現像前のネガフィルムからのスキャンなので、製作時にこだわったブリーチ・バイパスの色調整は1からやり直しになり、コンピューター処理によって当時のフィルムを参照しながら色調整するという手段が取られている。
さらにスーパー35で撮影されていたため、画面を上下に微調整でき、上映時に切れてしまった被写体の調整なども行っている。
脚本のほとんどはアンドリュー・ケビン・ウォーカーがニューヨークにいた期間に書かれている。「ニューヨークで過ごした過去は嫌いだったが、もしそのことがなければ、私はおそらくセブンを書いていなかっただろうことは事実だ」と語っており[14]、毎日犯罪の絶えないニューヨークでの生活と、それに見て見ぬふりする自身に嫌気が差したことを述べている。図書館でミルトンの『失楽園』やダンテの『神曲』などの古典を読み漁りながら数年かけて脚本を書き上げ、本編中にもそれらはそのまま反映されている。サマセットは俳優のウィリアム・ハートがモデルで、名前はウォーカーが好きな著者であるサマセット・モームにちなんで命名されている[14]。
フィンチャーは、長編デビュー作の『エイリアン3』が酷評され興行的にも失敗したことで意気消沈し、「新たに映画を撮るくらいなら、大腸癌で死んだ方がマシだ」と述べて、1年半にわたって脚本を読まなかった。その後配給会社から提示されたウォーカーの脚本を読み、一度は放っておいたものの、読み返すうちに魅力を感じ、監督することを承諾した[13]。フィンチャーはウォーカーの許可を得て脚本の一部を書き直した[14]。
結末については、あまりにも過酷であることなどから、配給会社から「サマセットがジョン・ドゥを射殺する」という筋書きも検討されたものの、フィンチャーとウォーカーが反対したため採用されなかった。
企画段階では、アル・パチーノがサマセット役として検討されたが、『訣別の街』に出演するため話はお流れとなった。一時はジェレマイア・チェチックの名も挙がっていた[14]。
ミルズ役には、デンゼル・ワシントンも候補に入っていた。
同時期にブラッド・ピットには、『アポロ13』への出演オファーがあったが、こちらの作品の出演を選んだ。本編でピットはジョン・ドゥを追跡するシーンで左腕を怪我しているが、実際に腕を骨折している。これはアクションシーンで、スタントマンを用いずに本人が行ったためである。
撮影前のオーディション(すでにミルズ、サマセット役は決定済)の際、後に警部役となるR・リー・アーメイがジョンを演じて観せたが、フィンチャーやピット、フリーマンは「なんというか、容赦が無さ過ぎる」とコメント、結局正キャストとしてケヴィン・スペイシーがジョン役を引き受けるという経緯があった(DVDコメンタリー)。
スペイシーは「映画が公開されるまで自分が出演していることは絶対に宣伝しないでくれ」と言い、観客のサプライズを狙っていたが、宣伝の際に映画会社のクリエイターがうっかり彼の名前を書いてしまい、激怒したという逸話がある。本編では名前はオープニング・クレジットには入っておらず、代わりにエンド・クレジットで最初に名前が表示される。フィンチャーは「主役2人とグウィネス、その次くらいが犯人だろうと予想されるのを防ぎたかった」と述べている。
オープニングクレジットで流れる音楽は、ナイン・インチ・ネイルズの「クローサー」のリミックスヴァージョンである。カフェで流れるBGMにはヘアカット100の「ラブ・プラス・ワン」が使われている。
サマセットが図書館を訪れているシーンでは、バッハのG線上のアリアが流れる(図書館の警備員がサマセットの為に図書館のスピーカーで流す)。
エンディング曲はデヴィッド・ボウイの「ハーツ・フィルシー・レッスン」。アルバム『アウトサイド』に収録されている。プロデュースはボウイ70年代の3部作を手がけたブライアン・イーノ。
本作は1995年9月22日に2,411の映画館で公開され、初週で1390万ドル売り上げた。最終的に北米で1億10万ドル、それ以外の地域で2億2710万ドル、世界合計で3億2730万ドルの総収益を上げた[15]。この総収益は1995年における7番目に高い記録である[16]。第68回アカデミー賞では編集賞にノミネート、第22回サターン賞では脚本賞とメイクアップ賞を受賞した。
本作は批評家達から高い評価を受け、「Rotten Tomatoes」でも2023年現在でも83%の肯定的評価を受けている。「本作のとっておきの切り札(ace in the hole)は、若く頑固な新人刑事と、老練なベテラン刑事を演じたピットとフリーマンである。だからといって、その差異が素晴らしい、現実味があるというわけではない。彼らの卓越した演技によって、未完成のキャラクターが完全なものになっている」と、ゲイリー・アーノルド(ワシントン・タイムズ)はキャストを称賛している[17]。シーラ・ジョンストンは、インデペンデント紙上の彼女のコーナーでフリーマンの演技を称賛した。彼女は「映画は、犯人逮捕を諦めない疲れきった引退間近の男を演じきったフリーマンの演技を完全にものにしている」と述べている[18]。『Sight & Sound』のレビューでJohn Wrathallは「セブンはジョルジュ・シュルイツァーの『ザ・バニシング 消失』(1988年の映画)以来最も恐ろしい結末の作品であり、連続殺人鬼との攻防を扱った作品としては『刑事グラハム/凍りついた欲望』以来だ」と書いている[19]。
カイル・クーパーが担当したオープニング・クレジットは公開当時、映画本編と同様に大変な評判となり、日本のテレビドラマやバラエティ番組のオープニング・クレジットに数多く模倣された。
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