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星座 ウィキペディアから
エリダヌス座(エリダヌスざ、Eridanus)は、トレミーの48星座の1つ。全天の星座の中で6番めに大きい。南端のα星は、全天21の1等星の1つであり、アケルナル[2]と呼ばれる。星座の南端部やアケルナルは、九州南部や沖縄などを除いて日本の多くの地点で見ることはできない。
国際天文学連合 (IAU) は以下の20個の恒星に固有名を認証している[3]。
その他に、以下の恒星が知られている。
この星座のモデルとなった川については古代ギリシャ・ローマ時代から複数の説が出されている。紀元前3世紀頃のマケドニアの詩人アラートスは伝承上の川であるエーリダノス川としたが、2世紀頃の学者プトレマイオス(トレミー)の著書アルマゲストでは、単に「川」を意味する Ποταμός (Potamos) とされた[25]。紀元前3世紀頃のエラトステネースや1世紀頃のヒュギーヌスは、エーリダヌス川のモデルはナイル川であるとしたが、他のギリシャ・ローマ時代の著述家はイタリア北部のロンバルディア平原を流れるポー川のことであるとした[25]。
古代ギリシャ・ローマ時代のエラトステネースやヒュギーヌス、プトレマイオスらはエリダヌス座の領域の南端をθ星としており、アケルナルまで拡大されたのは16世紀末になってからであった[25]。そのため、θ星にはアラビア語で「川の果て」を意味する「アカマル (Acamar)」という名前が残っている。エリダヌス座の領域を拡大したのはオランダのペトルス・プランシウスであった。プランシウスは、ペーテル・ケイセルとフレデリック・デ・ハウトマンの観測記録を元に1598年に製作した天球儀の上にα星まで拡大したエリダヌス座を描いた[25]。ヨハン・バイエルもプランシウスに倣って、1603年に刊行した『ウラノメトリア』の中で、旧来のエリダヌス座に現在のι・κ・φ・χ・αの5つの星を加えたエリダヌス座を描き、最も明るいアケルナルをα星とするバイエル符号を付している[26]。
中国の天文では、エリダヌス座の星々は二十八宿の昴宿、畢宿、参宿にまたがって位置している。昴宿では、γ・π・δ・ε・ζ・η・τ1・τ2・τ3・τ4・τ5・τ6・τ7・τ8・τ9の15の星が、くじら座π星とともに「天の牧場」を表す「天苑」という大きな弧形の星官を形作る[25]。畢宿では、39・ο1・ξ・ν・56・55の5つの星と不明の4つの星が、中国全域の方言の通訳を表す「九州殊口」という円形の星官を成す。北から南へと続くμ・ω・63・64・60・58・54とうさぎ座1番星、不明の星の9つの星は、皇帝の軍旗を表す「九斿」という星官を作る[25]。北東から南西へと続くυ1・υ2・υ3・υ4・g・f・h・θ・s・κ・χの12の星は、ほうおう座δ星とともに「天の果樹園」を表す「天園」という星官を成す[25]。参宿では、λ・ψ・βとオリオン座τ星の4つの星がオリオン座のリゲルのすぐ西側に玉で作った井戸を表す「玉井」という星官を成している[25]。最も南方にあるアケルナルは二十八宿には含まれておらず、明朝末期の17世紀にイエズス会士アダム・シャールや徐光啓らが編纂した天文書『崇禎暦書』で、新たに追加された「水委」という星官に充てられた[27]。
アラートスの『ファイノメナ』やエラトステネースの『カタステリスモイ』、オウィディウスの『変身物語』では、太陽神ヘーリオスの息子パエトーンにまつわる以下の神話を伝えている。パエトーンは父を尊敬し、息子であることを自慢していたが、友人達は全く信じず、相手にしなかった。そこでパエトーンは自分がへーリオスの息子である証拠を得るため父に会いにいった。へーリオスに何か一つ願いを叶えると言われたパエトーンは、父の操る太陽の車・日車を御することを乞い、許しを得た。しかし、彼には日車を御する技量がなく、馬車は暴走してしまった。暴走を食い止めるために最高神ゼウスは雷を落とした。パエトーンはエーリダノス川に落ち、死んでしまった[25][28]。
1879年(明治12年)にノーマン・ロッキャーの著書『Elements of Astronomy』を訳した『洛氏天文学』が刊行された際は、「エリドアニュス」というラテン語の発音と「リヴァルイリダニュス」という英語の発音が紹介されていた[29]。その後、日本天文学会の会誌『天文月報』の1910年(明治43年)2月号の記事「星座名」では既に「エリダヌス」と訳が充てられており[30]、『理科年表』でも1922年の初版から継続して「エリダヌス」という呼称が使われている[31]。以降、1944年(昭和19年)に学術研究会議が定めた『天文術語集』や1952年(昭和27年)に日本天文学会が定めた『天文述語集』の中でいくつかの星座名が改訂されたが、「エリダヌス」という表記は継続して使用されている[32][33]。
山本一清は、ラテン語読みに拘らなくとも原語の意味を写せばよいのだからフランス語風に読んだ「エリダン」でもよい、と考えており[34]、自身が編集に携わった『天文年鑑』では「エリダン河」という呼び名で紹介している[35][36]。
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