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『さよなら渓谷』(さよならけいこく)は、吉田修一による日本の小説、およびそれを原作とする2013年の日本の映画。『週刊新潮』(新潮社)にて2007年7月26日号から同年12月27日号まで連載され、2008年6月に刊行された。
さよなら渓谷 | ||
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著者 | 吉田修一 | |
発行日 | 2008年6月20日 | |
発行元 | 新潮社 | |
ジャンル | ミステリー、サスペンス[1]、純文学[2] | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判 | |
ページ数 | 202 | |
コード | ISBN 978-4-10-462804-9 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
都心からほど近い山間の景勝地の渓流で幼い男児の遺体が見つかり、間もなく男児の母親・立花里美が殺害容疑で逮捕される。事情聴取で黙秘を続けていた里美が、隣人の尾崎俊介と肉体関係があったと供述を始め、俊介の妻・かなこもそれを裏付ける証言をする。記者の渡辺一彦は、事件を取材するうちに尾崎夫妻の暗い過去にたどり着く。尾崎は大学時代、野球部のエースとして将来を嘱望されていたが、夏休みのある日仲間らと共に集団レイプ事件を起こす。そんな過去を持つ尾崎に対し、なぜか完全に否定的な気持ちを持つことができない渡辺は、同僚の小林と共に事件の周辺を洗いなおす。そこで明らかになったのは、事件の被害者である水谷夏美が自殺未遂のあと行方不明になっている、という残酷すぎる事実だった。
すでに死亡しているのではないかという二人の予想とは裏腹に、男と歩いていたという目撃情報があがった。湧き上がる胸騒ぎを抑えることができない渡辺。二人が確認した事実はあまりにも衝撃的だった。
2013年6月22日公開。R15+に指定されている。主演は真木よう子。監督は『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』が第60回ベルリン国際映画祭で上映されるなど海外からも注目されている大森立嗣[4]。実の弟である大森南朋も夫婦の秘密を明らかにする週刊誌記者役で出演している[4]。
真木よう子にとっては『ベロニカは死ぬことにした』以来、7年ぶりの単独主演作となる[4]。15年前に自分をレイプした男性と奇妙な夫婦生活を送る主人公という難役だったため[6]、引き受けるには迷いがあったというが、作品自体に魅了されたことと、この役を他の女優に渡したくないという気持ちからオファーを受諾[7]。演じるには女性としての覚悟が必要だったが[7]、松田翔太や瑛太、松田龍平など大森監督を知る俳優仲間から前評判を聞いていた大森組という本当に信頼できるチームと撮影に臨めたこと[8]、固形物を見ると吐くという状態になるくらい[6]過酷な撮影の中でも支えてもらっていることの幸せが倍に感じられたことで乗り越えられたと振り返っている[8]。
エンディングテーマも真木自身が担当している[9]。真木が以前参加したアルバムを聴いた大森が「声の雰囲気がこの作品には合う」と思い、本人にオファー[10]。これに真木は「自分は歌手ではないから」と最初はためらったが[10]、信頼できる人と仕事ができるならとかねてよりファンで個人的に親交を深めていた椎名林檎に作詞作曲を依頼し実現した[9][11]。
キャッチコピーは「ごく普通に見える夫婦。だがふたりは残酷な事件の被害者と加害者だった―。」であり、ネタバレを含んだこのキャッチコピーは議論を呼んだ[12]。
東京・有楽町スバル座他、主要都市を中心に13スクリーンで封切られ、順次全国へと拡大[13]。初日6月22日から7月7日までの16日間で動員3万4113人、興収4217万6900円を記録[14]。公開3週目でも有楽町スバル座で前週比116%や大阪のシネ・リーブル梅田で130%など大都市の劇場では週を重ねるごとに興収が伸びており、夏休みの大作が多く公開された中でも映画ファンから一般の20代 - 60代にまで幅広く支持され、順調な興行を維持した[14]。
完成した作品を観た原作者の吉田修一からは、6月22日に有楽町スバル座で行われた初日舞台挨拶の場で「真木よう子という女優に出会えて本当に良かったと思います」「かなこを演じてくれて、本当にありがとうございました」など賛辞の言葉がオンパレードの手紙をサプライズで読み上げられ[13]、真木は目にうっすら涙を浮かべて聞き入っていた[7]。吉田はこの他にも真木との対談の場で「自分が書いたカギカッコの中の文章が、まったくニュアンスが違って聞こえたり、強くなったりする」「原作者の自分でさえ価値観がガラッと変わった」と作品自体にも評価の言葉を述べている[10]。
世界四大映画祭の一つである第35回モスクワ国際映画祭のコンペティション部門出品に日本映画として唯一出品され[15]、「洗練された演出と人間関係の深い理解」が審査員に評価され、審査員特別賞を受賞した[16]。日本映画の同賞受賞は1965年の『手をつなぐ子ら』(羽仁進監督)以来、48年ぶり[16]。モスクワ入りしていた大森立嗣監督、真木よう子、大西信満の3人は映画祭最終日の6月29日、レッドカーペットを歩いて授賞式会場に入場[17]。トロフィーは大森が代表して受け取り、「僕の映画はいつも賛否が激しいのだけれど、自分がやってきたことが間違っていなかった。今回の作品は、次の新しい所へ向かっていく最初の1本」と喜びの言葉を述べ、その後行われた記者会見で真木よう子は「こんな素晴らしいチームが日本映画界にあるのなら、私は一生、女優を辞めたくない」と語った[17]。
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