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水蒸気を含んだ大気の水蒸気が小さな水粒となって空中に浮かんだ状態 ウィキペディアから
霧(きり)とは、地表近くの空気中に細かい水滴が浮遊するもので、気象観測では水平視程 1 キロメートル(km)未満の場合をいう。ふつう、空気が白みがかって見える[1][2]。
名前 | 距離 |
---|---|
濃霧 | 陸上100m以下、海上500m以下 |
霧 | 1km未満 |
もや | 1km以上~10km未満 |
水蒸気を含んだ大気が冷やされるなどして飽和状態に達し凝結、含まれていた水蒸気が小さな水滴となって空中に浮かんでおり、それが地表に接している状態[1][3][4]。
発生原理も構成する水滴も雲とは変わらない。観測上、地面に接しているものを「霧」、地面に接していないものを「雲」と定義している[4]。特に山にかかる霧(雲)のような場合、霧が差す山肌に立つ観測者からは霧と認識されるが、麓の観測者からは雲と認識されるような、場所により呼称が変わることが生じうる[3][4]。なお、登山の場面などで霧や低い雲のことをガスと呼ぶことがある[5][6][7][8][9][10]。
霧よりも薄く灰色がかっている。水滴や微粒子の浮遊により生じ、霧の延長線上にある現象で、視程が1 キロメートル以上のものを靄と呼んで区別する。気象観測では視程が1 キロメートル以上のものを靄と呼んで区別する[1][2]。
その発生要因によって、主に以下のように分類される。
複数の要因、例えば放射霧と移流霧の要因を持つ霧なども発生することがある。盆地霧にも放射霧と移流霧の性質を併せ持つものがみられる[3][11]。
層雲が発達して次第に厚みを増し、雲底が地面に接して霧となることがある[14]。反対に、地表の加熱や風の強まりによって、霧が地表から離れて層雲に変化していくことがある[20]。
霧が発生している状態では大気中に浮遊する水滴が光を散乱するために、大気は白く霞んで見え、視程(見通すことのできる水平距離)が狭くなる。霧に十分に光が当たっているときは霧粒をはっきりと確認することができる[1]。視程の低下度は、霧の水滴の密度や粒径に相関がある[2]。霧に煙や塵埃が混じると、灰色や黄色みがかって見えることがある[1][2]。
通常、霧の中の相対湿度は100 %に近く、湿っぽく冷たい感触の環境である[1]。
霧虹は太陽光や月の光が霧に投影する虹。白虹ともいう。白色の帯で、たいていは外側に細く赤みがかった領域、内側に青みがかった領域がある。色彩を生じる光の回折が少ないためこのような色味を呈する[31]。
ラジオ気象通報などの日本式天気図における霧の天気記号は「」。観測時に視程1 km未満の霧が出ており、雨や雪が降ったり雷が鳴っていないとき、天気を霧と記録する[33][34]。
また、陸上において視程が100 メートル以下、海上において視程が500 メートル以下のときは「濃霧」ともいう[注 1][35]。
国際気象通報式[注 2]では、観測時に霧が存在しているか消えたか、空を透視できる(低い霧)かどうか、前1時間内の濃度変化(うすくなった/変化がない/濃くなった)、散在するか連続するか、観測所付近になくとも遠方に見えるかどうか、細氷・霧雪・雪を伴うかどうかの組み合わせで区分される天気から選択して報告する。基本の記号は霧が、低い霧が、地霧が[36][37]。
航空気象の通報式[注 3]では、「視程障害」の欄の FG が霧を表し、併せて「特性」覧の MI (地)、BC (散在)、PR (部分)、FZ (着氷性)を用いる[38]。例えば、MIFG が地霧、FG が(地霧・散在などではない)霧。
濃霧注意報は、濃霧によって交通機関への障害が出ることが予測されるときに地元気象台から発表される[39]。大体の地方では、視程が陸上で100メートル、海上で500メートルを下回る場合に出されるが、より厳しい基準の地域もある。例えば、釧路地方気象台をはじめとする北海道では、陸上での視程が200メートルで濃霧注意報が発表される。海上では、海上の視程が約500メートル(瀬戸内海では1キロメートル)以下の状態に既になっているか、24時間以内にその状態になると予想される場合の警戒喚起として「海上濃霧警報」が発表される。
順位 | 霧日数 | 観測地点 |
---|---|---|
1位 | 101.4 日 | 北海道釧路市 |
2位 | 52.0 日 | 北海道帯広市 |
3位 | 43.7 日 | 千葉県銚子市 |
参考 | 121.4 日 | 栃木県日光市(奥日光)(1997-2010年) |
参考 | 98.4 日 | 熊本県人吉市(2000-2010年) |
参考 | 97.4 日 | 岡山県津山市(2002-2010年) |
参考 | 75.1 日 | 山形県新庄市(1998-2010年) |
参考 | 69.5 日 | 北海道広尾町(1999-2010年) |
参考 | 43.7 日 | 大分県日田市(2001-2010年) |
参考 | 40.7 日 | 埼玉県秩父市(1998-2010年) |
参考 | 2.7 日 | 東京都千代田区 |
霧が発生すると視界が遮られる、陸上、海上、航空いずれにおいても交通障害の原因となる。状況によっては高速道路など道路の閉鎖、鉄道の運行中止、空港の滑走路閉鎖などの事故予防の対応が取られる[40]。また、産業活動にも影響を与える[41]。
主に、本現象による、農業で生じる被害をいう。日射の長期間遮断による温度低下と光合成の阻害により、作物等の生産量が減少する。日本では、岩手県三陸地方のやませや北海道太平洋岸の海霧が代表例。対策として、根釧原野では防霧林(多くは防霧保安林)を設定して、林帯で霧粒の捕捉を行っている[42]。
スモッグは、もとは霧に大気汚染を伴うものを指していたが、霧を伴わないものを含め重度の大気汚染により視程が悪化する状態を指すようになった[2][47]。
酸性雨と同様大気汚染によって、主に硫酸や硝酸などを溶媒として取り込み酸性を示すようになった霧を酸性霧(さんせいむ)と呼ぶ。酸性霧の水素イオン指数(pH)はふつう酸性雨よりも低い。また植物に対しては、葉への吸着性が高く長く滞留することから葉や枝などへの直接の影響が大きい[48][49][50]。
都市化の進行はその都市の湿度の低下、すなわち乾燥化を招くことが知られているが、乾燥化によって霧の発生日数も減少する例が多数ある。東京、大阪など多くの都市で20世紀中盤から21世紀にかけて減少傾向が確認されている[51]。また大気汚染の影響もあり、大気汚染物質の微粒子が地表付近の凝結核となって生成に寄与すると考えられている。大阪や京都では終戦後数年間は発生日数が減少し、その後再び増加に転じているが、これは戦時中の空襲により工場等が被害を受け大気汚染が緩和、復興によって再び大気汚染が悪化したことが原因とする見方もある。なお、大都市の中でも仙台では減少がほとんど見られないが、これは仙台のものは主に厚い移流霧であることが1つの原因と考えられている。
スプレーノズルを用いて発生させた、水粒およそ数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度の人工霧により、冷却・冷房・液体散布・加湿などを行う(ミスト散布)ほか、超音波を液体に照射することでも発生させることができ、加湿(ネブライザー・加湿器[52]などに利用)・消臭や、液体の分離・濃縮(超音波霧化分離)[53][54]などに利用される。
気象学上の用語ではないが、春に起こる霧状の現象(特に山腹などの遠景に淡く掛かっているもの)は一般に「霞」と呼ばれ、「霧」は主として秋に用いる使い分けがされている。季語では霞が春、霧が秋と分類されている[55]。
外国映画
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