奈良教育大学
奈良県奈良市にある国立大学 ウィキペディアから
奈良教育大学(ならきょういくだいがく、英語: Nara University of Education)は、奈良県奈良市にある国立大学。
国立大学法人である奈良国立大学機構によって運営されている。略称は奈教(なきょう)、奈良教(ならきょう)[注 1]、奈教大(なきょうだい)、NUE。
概観
大学全体
「学芸の理論とその応用とを教授研究し、高い知性と豊かな教養とを備えた人材、特に有能な教育者を育てるとともに、この地方に特色のある文化の向上を図ること」を目的とする大学である[1]。
「人・環境・文化遺産との対話を通した教育の追究」、「持続可能な社会づくりに貢献できる教員の養成」、「教員養成と教員研修の融合」を、3つの柱としている[2]。
また、ESD(持続可能な開発のための教育)の取り組みが大きな特色となっており、日本の大学で初のユネスコスクール加盟承認を受けている。
沿革
そもそも奈良教育大学の淵源は明治7年(1874年)6月に興福寺東室に開校した「寧樂書院」という教員伝習所にある。これは近畿圏では和歌山県小学校教員取立学校(1872年10月)、大阪講習所(1873年8月)、豊岡県教員伝習所(1874年4月)に続いての開校である。なお、京都府小学校教員講習所を設置したのも本学と同じく1874年6月4日のことである。 1876年10月奈良県が堺県に併合されたことにより、奈良師範学校が「堺縣師範學校分局奈良學校」と改称される。 明治10(1877)年某月、興福寺食堂・細殿を転用した擬洋風建築のいわゆる「寧樂書院校舎」が竣工される。明治14年(1881年)3月1日、堺県が大阪府に併合されたことにより、「大阪府立堺師範學校分校奈良學校」と改称、8月「大阪府立奈良師範學校」と改称される。 明治19(1886)年1月9日、一時奈良師範学校が廃止され、府立大阪師範学校に統合される。 明治21(1888)年5月29日、大阪府から奈良県が分離独立したことに伴い、県が尋常師範学校開設伺書を提出し、同年7月31日大阪府尋常師範学校から「奈良縣尋常師範學校」が分離独立した。校舎は登大路町・駆黴院跡 (現・奈良公園バスターミナル)に設置された。 (文部大臣認可 『乾学第六号』)[3]
略歴
- 明治7年6月4日
- 教員伝習所として興福寺内に「寧楽書院」を創設
- 明治8年3月1日
- 伝習所を奈良(小学)師範学校と改称
- 明治21年7月31日
- 奈良県尋常師範学校を創設し、校舎は奈良町大字登大路23番地の公園地借用(同年11月18日開校式)
- 明治22年1月24日
- 奈良県尋常師範学校附属小学校を設置
- 明治31年4月1日
- 師範教育令により、奈良県尋常師範学校を奈良県師範学校と改称
- 明治38年4月1日
- 奈良県女子師範学校を創設(奈良県師範学校女子部を廃止)
- 昭和 2年4月6日
- 奈良県女子師範学校附属小学校後援会昭徳幼稚園を設置
- 昭和18年4月1日
- 師範教育令の改正により、奈良県師範学校及び奈良県女子師範学校が官立に移管、合併し、奈良師範学校と改称
- 昭和19年4月1日
- 奈良県青年師範学校教員養成所及び青年学校教員養成所臨時養成科が官立に移管、合併し、奈良青年師範学校と改称
- 昭和22年4月1日
- 奈良師範学校附属中学校を設置
- 昭和24年5月31日
- 国立学校設置法の公布により、奈良師範学校及び奈良青年師範学校を包括し、奈良学芸大学を設置
- 昭和25年4月1日
- 医学進学課程(理科丙類)を設置(昭31.3廃止)
- 昭和27年4月1日
- 課程を第1部(小学校課程)第2部(中学校課程)に区分
- 昭和33年1月20日
- 特別教科(書道)教員養成課程を設置
- 昭和33年10月10日
- 大学が米軍キャンプ奈良C地区(現在地・高畑町)に移転
- 昭和36年11月8日
- 技術科を設置
- 昭和37年4月1日
- 専攻科(教育専攻)を設置
- 昭和40年4月1日
- 専攻科(書道専攻)を設置
- 昭和41年4月1日
- 国立学校設置法の一部を改正する法律(昭和41年法律第48号)により、奈良教育大学と改称養護学校教員養成課程を設置
- 昭和42年4月1日
- 特別教科(理科)教員養成課程を設置
- 昭和44年4月1日
- 幼稚園教員養成課程を設置
- 昭和48年4月12日
- 保健管理センターを設置
- 昭和52年4月18日
- 附属教育工学センターを設置
- 昭和55年4月1日
- 臨時教員養成課程として情緒障害教育教員養成課程(1年課程)を設置
- 昭和58年4月1日
- 大学院教育学研究科(修士課程)を設置(専攻科を廃止)
- 昭和63年11月18日
- 創立100周年記念式典を挙行
- 平成2年6月8日
- 情報処理センターを設置
- 平成3年4月12日
- 附属教育実践研究指導センターを設置(附属教育工学センターの改組)
- 平成4年4月1日
- 特殊教育特別専攻科情緒障害教育専攻を設置(臨時教員養成課程・情緒障害教育教員養成課程を廃止)
- 平成4年4月16日
- 教育資料館を設置
- 平成6年6月24日
- 附属自然環境教育センターを設置(附属農場、附属演習林の改組)
- 平成7年4月1日
- 総合文化科学課程を設置(特別教科(理科)教員養成課程を廃止)
- 平成11年4月1日
- 学校教育教員養成課程を設置(小学校教員養成課程、中学校教員養成課程、幼稚園教員養成課程、養護学校教員養成課程、特別教科(書道)教員養成課程を廃止)、総合教育課程を設置(総合文化科学課程を廃止)
- 平成12年4月1日
- 附属教育実践総合センターを設置(附属教育実践研究指導センターの改組)
- 平成13年4月1日
- 副学長の設置 学生部の事務局への一元化
- 平成16年4月1日
- 国立大学法人法の公布により国立大学法人奈良教育大学を設置
- 平成16年4月1日
- 教育学研究科(大学院)の改組、教育実践開発専攻の設置
- 平成18年3月24日
- 学術情報研究センターの設置(附属図書館、情報処理センター、教育資料館の改組)
- 平成18年4月1日
- 教育学部二課程の再編、学校教育教員養成課程定員を50名増員、地域推薦枠の設置
- 平成19年3月23日
- 特別支援教育研究センターを設置
- 平成19年4月1日
- 特殊教育特別専攻科情緒障害教育専攻を特別支援教育特別専攻科情緒障害・発達障害教育専攻と改称
- 平成20年4月1日
- 大学院教育学研究科専門職学位課程(教職大学院)を設置
- 平成20年4月1日
- 大学院教育学研究科修士課程を改組
- 平成20年11月22日
- 創立120周年記念式典を挙行
- 平成21年2月27日
- 理数教育研究センターを設置
- 平成23年3月24日
- 教育研究支援機構が発足 大学附置センターを再編
- 学術情報研究センターを学術情報教育研究センターと改称
- 教育実践総合センターを教育実践開発研究センターと改称
- 持続発展・文化遺産教育研究センターを設置保健管理センターを保健センターと改称
- 平成24年4月1日
- 教育学部を改組(入学定員255名すべてを学校教育教員養成課程で募集、総合教育課程の募集停止)
- 平成24年10月1日
- 京阪奈三教育大学連携推進室を設置
- 平成25年7月1日
- 次世代教員養成センターを設置
- 平成26年4月1日
- 教育研究支援機構を再編
- 平成28年4月1日
- 大学院教育学研究科を改組(特別支援教育特別専攻科を廃止)
- 平成29年9月1日
- 地域教育研究拠点を設置 教員組織の一元化
- 教育連携講座を設置
- 各センター所属の専任教員を各講座所属へ
- 平成30年7月27日
- 国立大学法人奈良女子大学と連携協議に関する合意書を調印
- 令和元年5月20日
- 奈良県内文部科学省4機関(奈良教育大学、奈良女子大学、奈良国立博物館、奈良文化財研究所)における連携・協力に関する協定書を調印
- 令和元年6月28日
- 国立大学法人奈良女子大学と国立大学法人奈良設立に関する合意書を調印
- 令和4年4月1日
- 国立大学法人奈良女子大学と法人統合し、国立大学法人奈良国立大学機構 奈良教育大学を設置 大学附置センターを再編(ESD・SDGsセンター、情報センターを設置) 大学院教育学研究科専門職学位課程(教職大学院)、修士課程を改組
年表
→「奈良師範学校 § 沿革」も参照
- 1949年(昭和24年)5月31日 - 奈良師範学校および奈良青年師範学校より、新制大学の奈良学芸大学が発足。学芸学部を設置。
- 1958年(昭和33年)10月10日 - 現在地にキャンパスを移転。
- 1962年(昭和37年)4月1日 - 専攻科(教育専攻)設置。
- 1963年(昭和38年)3月27日 - 学生会館が竣工。
- 1965年(昭和40年)4月1日 - 専攻科に書道専攻を増設。
- 1966年(昭和41年)4月1日 - 大学名を奈良学芸大学から奈良教育大学と改称。あわせて、学芸学部を教育学部に改称。
- 1973年(昭和48年)4月12日 - 保健管理センター設置。
- 1977年(昭和52年)4月18日 - 附属教育工学センター設置。
- 1983年(昭和58年)4月1日 - 専攻科廃止、大学院教育学研究科を設置。
- 1990年(平成2年)6月8日 - 情報処理センター設置。
- 1991年(平成3年)4月12日 - 附属教育工学センターを附属教育実践研究指導センターに改組。
- 1992年(平成4年)
- 1993年(平成3年)3月28日 - 国際学生宿舎(北寮)竣工。
- 1994年(平成6年)6月24日 - 附属農場・演習林を附属自然環境教育センターに改組。
- 1995年(平成7年)4月1日 - 特別教科(理科)教員養成課程を廃止、総合文化科学課程を設置。
- 1999年(平成11年)4月1日 - 小学校、中学校、幼稚園、養護学校の各教員養成課程を統合し、学校教育教員養成課程に再編。総合文化科学課程を総合教育課程に名称変更。
- 2000年(平成12年)
- 3月28日 - 講義棟を改築。
- 4月1日 - 附属教育実践研究指導センターを附属教育実践総合センターに改組。
- 2004年(平成16年)4月1日 - 国立大学法人法の公布により、国立大学法人奈良教育大学を設置。
- 2007年(平成19年)
- 2008年(平成20年)
- 2010年(平成22年)2月 - 新食堂が「なっきょん食堂」に改称。
- 2011年(平成23年)3月24日 - 教育研究支援機構を設置、大学附置センターを再編。
- 2012年(平成24年)
- 2013年(平成25年)7月1日 - 次世代教員養成センターを設置。
- 2016年(平成28年)4月1日 - 大学院教育学研究科を改組[7]。
- 2022年(令和4年)4月1日
- 2023年(令和5年)4月1日 - 奈良国立大学機構に国際戦略センター(Nara ISC)が設置されたことに伴い、国際交流留学センターを移行[9]。教育研究支援機構を廃止[10]。
- 2024年(令和6年)4月1日 - 奈良教育大学附属幼保連携型認定こども園が、国立初の認定こども園として、奈良教育大学附属幼稚園から移行し開園[11]。
基礎データ
所在地
象徴
学章・シンボルマーク
学歌
山村公治作詞、牧野英三作曲。
公式キャラクター
- 大学のイメージキャラクターは、「なっきょん」である。詳細は「なっきょん」の項を参照されたい。
教育および研究
要約
視点
組織
学部
- 教育学部(2011年度以前入学者)
- 学校教育教員養成課程
- 総合教育課程
研究科
- 教育学研究科(2016年度~2021年度入学者)[17]
- 教育学研究科(2015年度以前入学者)
- 学校教育専攻(修士課程)
- 教育科学専修
- 教育心理学専修
- 教育臨床・特別支援教育専修
- 教科教育専攻(修士課程)
- 国語教育・日本語日本文化教育専修
- 社会科教育専修
- 数学教育(情報を含む)専修
- 理科教育(文化財科学を含む)専修
- 音楽教育専修
- 美術教育(書道、伝統文化・文化財を含む)専修
- 保健体育専修
- 英語教育(異文化理解を含む)専修
- 生活科学教育専修
- 教職開発専攻(専門職学位課程・教職大学院)
- 学校教育専攻(修士課程)
専攻科
大学院改組に合わせて2016年度入学者からの学生募集は停止している。
- 特別支援教育特別専攻科(修業年限は原則として1年)
- 情緒障害・発達障害教育専攻
教員組織(講座)
- 学校教育講座
- 国語教育講座
- 社会科教育講座
- 数学教育講座
- 理科教育講座
- 音楽教育講座
- 美術教育講座
- 保健体育講座
- 技術教育講座
- 家庭科教育講座
- 英語教育講座
- 教職開発講座
- 教育連携講座
附属機関
- 図書館
- 教育資料館
- ESD・SDGsセンター
- 情報センター
- 特別支援教育研究センター
- 教育実践支援部門
- 発達支援部門
- 理数教育研究センター
- 教育プログラム推進部門
- 先端科学教育部門
- 自然環境教育センター
- 教育研究部門
- 地域開放部門
- 奈良実習園
- 奥吉野実習林
- 国際戦略センター
- 保健センター
学生生活
学生団体
下記の学生団体がある[18]。
- 学生自治会
- 執行委員会
- 体育会
- 文化会
- 安全企画委員会
- 大学祭実行委員会
クラブ・サークル
下記のクラブ・サークルがある[18]。
文化系クラブ・サークル
|
体育系クラブ・サークル
|
大学祭
大学祭「輝甍祭(きぼうさい)」を、毎年10月末から11月にかけての時期に開催している。輝甍祭の名称は、1975年(昭和50年)に学内で募って決められた。学歌の一節である「輝く甍に」から採るとともに、「希望」を掛け合わせている[19]。
大学関係者と組織
大学関係者一覧
→「奈良教育大学の人物一覧」を参照
同窓会
同窓組織として、奈良教育大学同窓会が存在する。国立大学法人奈良教育大学とその前身校の卒業者・修了者を会員としている。1954年(昭和29年)3月14日、奈良県師範学校同窓会の「興東会」と奈良県女子師範学校同窓会の「和光会」、奈良青年師範学校同窓会の「向陵会」が合併して、奈良学芸大学同窓会が発足した。学名改称に伴い、1966年(昭和41年)5月3日に現在の名称とした。
施設
高畑キャンパス
- 奈良県奈良市高畑町
- 使用学部:教育学部
- 使用研究科:教育学研究科
- 使用附属施設:附属小学校、附属幼稚園、附属中学校(特別支援学級)、および上記部局等に関連する附属機関・施設
- 法人本部の置かれているメインキャンパスである。
- 学内各所に鹿(ニホンジカ)が出没する。理科2号棟と文科・文美棟の間、図書館周辺、グラウンド周辺、附属小学校南東側、新薬師寺旧境内遺跡などで、鹿が草を食む姿が頻繁に見られる。
- キャンパスの一部は、新薬師寺の旧境内である。2008年8月からおこなわれた埋蔵文化財調査の結果、8世紀半ばの奈良時代に建立された金堂と推定される大型基壇建物遺構が検出されている[6][20]。
- キャンパスは奈良聯隊跡の一部であり、奈良教育大学教育資料館として現在使われている赤レンガの建物は、1908年に旧陸軍歩兵第38連隊の糧秣庫として建てられたものである[21]。
- キャンパス北部に吉備塚古墳がある。6世紀初頭頃に築造されたと考えられ、古くから吉備真備の墓として伝承されてきた[20]。数回にわたる調査の結果、多くの鉄製品などの遺物が出土している。
附属中学校(本校)
- 奈良県奈良市法蓮町2058−2
- 使用附属施設:附属中学校(本校)
自然環境教育センター奈良実習園
- 奈良県奈良市白毫寺町802
- 使用附属施設:自然環境教育センター奈良実習園
自然環境教育センター奥吉野実習林
- 奈良県五條市大塔町赤谷
- 使用附属施設:自然環境教育センター奥吉野実習林
国際学生宿舎
- 奈良県奈良市高畑町1252
- 使用附属施設:国際学生宿舎(日本人男子学生と外国人留学生(男女)の混住。定員100名。)
学生宿舎(橘宿舎)
- 奈良県奈良市紀寺町864
- 使用附属施設:橘宿舎(女子。定員64名。)
対外関係
他大学との協定
国内他大学との協定
- 奈良女子大学とともに国立大学法人奈良国立大学機構が設立されており、同一法人である奈良女子大学の教養科目の一部(連携開設科目)を受講し、卒業に必要な単位とすることができる[22]。また、奈良女子大学との間で大学院における特別聴講学生受け入れの交流を行っている[23]。
- 放送大学学園と単位互換協定を結んでおり、放送大学で取得した単位を卒業に要する単位として認定することができる[24]。
- 京阪奈三教育大学(奈良教育大学・京都教育大学・大阪教育大学)間において、学部レベルによる単位互換の協定が締結されている[25]。
- 奈良県内の他の7大学との単位互換を実施している[26]。
- 滋賀大学、京都教育大学、大阪教育大学、および和歌山大学との間で大学院における特別聴講学生受け入れの交流を行っている[27]。
海外の協定締結大学
附属学校園
- 奈良教育大学附属幼保連携型認定こども園 -2024年3月までの奈良教育大学附属幼稚園を移行。
- 奈良教育大学附属小学校
- 奈良教育大学附属中学校
脚注
関連項目
外部リンク
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