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朝鮮民主主義人民共和国による核兵器の開発および核拡散に関する問題 ウィキペディアから
北朝鮮核問題(きたちょうせんかくもんだい)は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による核兵器の開発および核拡散に関する問題。
北朝鮮の最高指導者である金正恩は、2013年に「経済建設と核武力建設の並進路線」をみずからの総路線とする談話を発表し、核保有の恒久化を宣言した[1]。また、2016年以降、北朝鮮が核保有国であることを正式に認めている[2]。2013年4月、北朝鮮は「自衛的核保有国の地位をより強固にする法律」を採択し、「敵対的核保有国」であるアメリカ、米韓相互防衛条約を結んでいる韓国、日米安全保障条約を結んでいる日本を「核兵器による攻撃対象」に定めた[1]。
北朝鮮はこれらに先立つ1993年と2003年にはNPT脱退を表明し、2006年、2009年、2013年、2016年1月、2016年9月、2017年に核実験を実施した。また1998年のパキスタン核実験への関与疑惑、1993年以降の核弾頭運搬手段ともなりうるミサイル発射実験、第三国やテロリストへの核兵器技術移転の疑惑あるいは懸念が持たれている。
北朝鮮は労働党機関紙「労働新聞」(2018年2月23日付)に「私たちの共和国が核を放棄することを望むのは海の水が乾くのを待っているよりも愚かなこと」として核放棄を条件にするいかなる交渉の拒否を表明している。[3][4]
北朝鮮は建国以来、核兵器に関して関心をもっていたとされる。当時の東側諸国の中で核開発能力を持っていたのはソビエト連邦(ソ連)、のちに中華人民共和国(中国)が加わることになるが、ともに原子力の平和利用を行う分には熱心に協力したが、核武装の協力に関しては消極的であった。北朝鮮が本格的に核開発に取り組んだのは朝鮮戦争休戦後とされる。具体的には1956年3月と9月、ソ連との間に原子力開発に関する基本合意を行い、数人の科学者をソ連のドゥブナ核研究所に派遣した。また、小規模の研究用原子炉であるIRT-2000研究用原子炉の供与を受け、寧辺核施設に建設された。ソ連は、原子力の協力は平和利用に限定されるべきとの立場を崩さなかった。しかし北朝鮮はあくまで核兵器を持つことに執着し、1964年に原爆を保有した中国に支援を要請したが、これも拒否されたと伝わっている。
この後も核開発計画は放棄されることはなく、東側諸国の政府関係者の証言とアメリカの偵察衛星が1982年以降に撮影した写真の分析から、平安北道寧辺郡に新たな原子炉が建設されていることが判明した。アメリカは当時のソ連に対して北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)に加盟するように働きかけた。結果として北朝鮮はNPTに加盟することになり国際原子力機関(IAEA)の監視下に置かれたが、その後も核開発計画を進行させている疑惑がくすぶり続けた。そして1986年3月、寧辺の衛星画像で幾つかの円筒状のクレーターが確認され、これが高性能爆発実験の痕跡と判明し、原爆開発計画を進めているとされる証拠となった。その後、寧辺や泰川郡(平安北道)に大型黒鉛減速炉が建設されていく様子も偵察衛星から判明し、徐々に国際問題化していった。
1991年には、韓国と朝鮮半島の非核化に関する共同宣言を行い、朝鮮半島の非核化や相互査察を宣言したが、それによる相互査察は実行されることは無く、実効性を伴わなかった[5]。
北朝鮮は2003年1月10日、アメリカの軍事的脅威を理由に挙げ、核拡散防止条約第十条を根拠にNPTからの脱退を通告した。そして2005年2月10日、公式に核兵器の保有宣言を行い、2006年10月9日に地下核実験を行ったことから当条約上で定義された「核兵器国」以外の事実上の核保有国となった。
NPT脱退については、同条約の第十条に脱退条項が存在し、国際法上は通告から3ヶ月後に有効になると解されているため、国際法上は当条約上の拘束を受けないかたちとなる。しかし、アメリカは北朝鮮のNPT上の義務について判断しない立場をとっており、NPTの運用機関においても、議長が北朝鮮のネームプレートを「預かる」ことで北朝鮮の立場を曖昧にしておく異例の政治判断が継続して採られている[6]。
開発初期の原子爆弾、たとえば米国が長崎に投下したファットマンは5トンもあり、北朝鮮の能力だと核兵器ないしミサイル弾頭の開発は不可能という見方があった。しかし、米シンクタンクの憂慮する科学者同盟(UCS)のミサイル問題専門家は、第二次世界大戦当時の原子爆弾は技術的不安が多く、計算よりもかなり大量の爆薬を使って構造も頑丈にしているため重量があるのにすぎず、現在では核兵器に関して既知となっている研究も多く、当時とは技術的背景も異なるため、現在の北朝鮮の原子爆弾と単純に比較することは不適切としている[7]。また、米シンクタンク科学国際安全保障研究所(ISIS)の研究者らは原子爆弾のサイズを小さくすること自体は原子爆弾の設計が初歩的であったとしても可能としている[8][9]。
2006年の核実験を皮切りに、北朝鮮は2013年までに3回の核実験を行った。また、中国が1960年代に開発した弾道ミサイルに搭載可能なウラン爆縮型原子爆弾の設計図が核の闇市場かパキスタンから直接北朝鮮に入っている可能性が高く、2000年代後半から2010年代前半の時点で700 kgから1,000 kgまでの小型化に成功しているのではないかといわれていた[10][11]。水爆開発の基礎実験を行った疑惑も浮上し、水素爆弾や強化原爆も開発中だと考えられた[12]。特に強化原爆については2013年2月12日に行った3回目の核実験にて、最大40 キロトン(kt)という解析[13]も出ており、保有に至った可能性も否定できない状況となった。
2010年時点では保有数についてはファットマンのような初期型原爆の技術水準で20 ktの出力を狙った場合、最大6個と考えられていたが、核の闇市場からの技術流入や核実験の成果を想定した場合、インド・パキスタンのような中級技術と同程度と考えられ、その場合、20 ktの出力を狙うと最大17個保有していると考えられた。これはプルトニウムだけの想定であり、濃縮ウランを加えると、最大23個保有していると考えられている[14]。一方、ミサイル開発では2010年時点で日本のほぼ全土を射程に収める弾道ミサイル「ノドン」を200から300基配備しており、アメリカ本土に到達する長距離弾道ミサイルの開発も進めていると推測された[15]。
金正恩は、2013年に「経済建設と核武力建設の並進路線」をみずからの総路線とする談話を発表し、核保有の恒久化を宣言した[1]。そして、アメリカや国際社会との対決こそが経済再建の道であるかのように主張している[16]。同年4月、北朝鮮は「自衛的核保有国の地位をより強固にする法律」を採択し、「敵対的核保有国」であるアメリカ、米韓相互防衛条約を結んでいる韓国、日米安全保障条約を結んでいる日本を「核兵器による攻撃対象」に定めている[1]。
2010年代後半からは火星シリーズをはじめとするミサイルの発射実験を本格化した。
2020年代には2022年のロシアのウクライナに侵攻を受けて、さらに開発が加速した可能性が指摘されている[17]。
国際社会の批判にもかかわらず、北朝鮮が核開発に固執する理由には、冷戦終結後も朝鮮戦争が「休戦」状態で継続しており、核抑止力によって「体制保証」を得ること、「瀬戸際外交」における交渉カード獲得、海外への技術移転による外貨獲得、国際的および国内的な国威発揚、イラクフセイン政権やリビアが2011年の内戦で崩壊した教訓[18]などが考えられる。
防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄は「米韓への抑止力としての核兵器保有が真の目的。そう理解せざるを得ません」と指摘し[19]、「もう非核化の意思はない」とも指摘した[20]。
1992年のジュネーブ合意以降、北朝鮮は核兵器に関する国際的な約束をアメリカと8回行っている。「核開発はしない」とそのうち4回言ったが、核開発の現場が発覚すると廃棄すると約束したことが4回ある。北朝鮮問題を担当するブルース・クリングナーヘリテージ財団上級研究員は「8回とも約束を破って、2018年3月5日の約束が9回目となる」と指摘している。
北朝鮮は対話を時間稼ぎと対外支援獲得に利用してきた。北朝鮮は2005年の合意もテポドンミサイル発射と2006年の初の核実験で不履行している。金正恩がトップになった直後である2012年2月29日に北朝鮮が核長距離ミサイル発射を中止する代わりに、アメリカは24万t規模の食糧を支援することを骨子とした米朝合意が行われたが、北朝鮮は直後に弾道ミサイル技術を利用した長距離ロケットである銀河3号を発射して、米朝合意を守らなかった。
そのため、2018年3月の繰り返されてきた北朝鮮による「非核化宣言」にもアメリカ上院議員のコーリー・ガードナーは、「北朝鮮の言葉にだまされてはならない、一時的に北朝鮮が核やミサイル実験をしていなくても技術開発は継続している」と述べている。朝鮮半島問題の専門のビクター・チャ教授も「北朝鮮の姿勢は、経済的利益を得るための戦術変更であるだけだ」と述べている[21]。
国連安全保障理事会・北朝鮮制裁委員会(1718委員会)専門家パネル元委員の古川勝久は北朝鮮が体制への「脅威」のために核開発していると主張しているために、話すべき、制裁を緩めるべき、核を容認すべきだという人たちについて「対話と合意の裏で各国で違法な資金集めや部品の隠蔽輸入して核・ミサイル開発してきた北朝鮮である。日本で護憲や平和を主張している人ほど対話を絶対視しているが、北朝鮮の核を容認することは核兵器の売買による拡散・北朝鮮を見て核保有国になる国の激増を望むのと同義なのを理解していない、大局的視点の欠けた井の中の蛙」と批判している。
アメリカ財務長官のスティーヴン・マヌーチンは「2018年は過去10年の合計よりも厳しい対北朝鮮制裁を実施した」と説明し、韓国国会情報委員長によれば北朝鮮の資金源を締め上げた結果、2018年10月にも北朝鮮の外貨準備が底をつく。上級研究員のクリングナーは「北朝鮮を動かすには、コブラのようにすばやく毒牙にかけるよりは、ニシキヘビのように徐々に巻き付いて締め付ける戦略の方が効果的だ」と最大限の圧力の継続だけが北朝鮮に通用すると指摘している[22][23][24]。2018年3月の南北間の暫定合意案のある「北朝鮮非核化」に北朝鮮研究所長の鄭永泰は合意案の内容を精査すると「在韓米軍撤収」が要求されていると説明している。
朝鮮戦争の1950年当時に釜山付近を除いて、 ほぼ朝鮮半島を占領して韓国を滅ぼすことで半島を共産化できたところをアメリカによって阻止されたと考えている北朝鮮は、赤化統一を阻止したアメリカを平和協定によって半島から米軍を撤収させて最終的に韓国を影響下に置くことが目的であると指摘されている[25][26]。
上述の古川勝久は、北朝鮮が対話に応じた時期をふりかえると、20世紀末の「苦難の行軍」と呼ばれる大飢饉、核・ミサイル開発への国際社会から制裁に耐えられない時など、上位層や軍部からも不満がでて武力でも抑えきれなくなった時に限られることを指摘している。そして、その都度、北朝鮮としては会談や対話をテコにして制裁を突破することに成功してきた。北朝鮮が「体制の安全」を条件に「非核化」を諸外国に示している本当の目的は、まず最初に在韓米軍が撤収するよう誘導し、それに成功した後に日本や東南アジア・グアムなど太平洋にある米軍基地を言い訳にして、「まだ体制への安全が確保出来ていない」としてどんどん要求して時間稼ぎしている内に開発をさらに進めていくことだと述べている。「北朝鮮との対話」とは、北朝鮮にとって要求が拒否されて在韓米軍が撤収されなくても、それを口実にして金一族専制体制の持続と核開発の既成事実化という一石二鳥の行為だと古川は説明している。そして、SLBMなどはまだ完成していない北朝鮮にとって、北朝鮮への爆撃など先制攻撃が行われると核ミサイル一辺倒にしてきたためにその他が時代遅れである軍備、比較的上位の兵士にさえ体内に寄生虫がいる状態のため降伏を推奨したならば戦いにもならず、独裁下で不満が溜まっている北朝鮮の人々が蜂起して支持に回る恐れが高い軍事行動を阻止するために「非核化」の嘘を繰り返していると解説している[27]。
アメリカでは北朝鮮の「魅力攻勢」を「繰り返し上映される映画」とたとえている。韓国は北朝鮮をなだめるために、経済協力事業を北朝鮮との共同で官民合わせて2017年までに約240件の合意を行ったが、北朝鮮の核開発を遅らせることもやめさせることもできなかった。
非公式を含まない韓国政府による現代グループの対北送金、開城工業団地や金剛観山光山、交易など北朝鮮への公式送金は1998年3月から2010年6月までに35億2380万USドル(約3兆9400億ウォン)になっている。 キム・デジュン政権が13億4千500万ドル(約1兆5千億ウォン)、ノ・ムヒョン政権時には、14億1000万ドル(約1兆6000億ウォン)を北朝鮮に送金した。イ・ミョンパク政権では2010年6月まで7億6500万ドル(約8600億ウォン)を北朝鮮に送金している[28]。
このように、北朝鮮が核・ミサイルの「開発凍結」を約束する度に、日米韓などが食糧支援・経済支援・制裁解除を何度も実施したが北朝鮮は裏で開発を続けてきた。その結果、北朝鮮の核・ミサイル開発進行を許してきた。対話と援助による北朝鮮の核・ミサイル開発放棄は裏切られて失敗を繰り返してきたといえる。ロイター通信は2018年に北朝鮮が韓国大統領であるムン・ジェインとの首脳会談に合意したことやトランプとの対話を希望してきた背景を制裁による外貨準備高の急減・貿易収支の大幅な赤字・「譲歩をちらつかせて支援を確保後、合意反故」のパターンを狙っているためと解説している[29]。
2013年、科学国際安全保障研究所の専門家らは北朝鮮の核開発がこのまま続くと、2016年までに最大48個の核兵器を製造可能だとする報告書を出した。それによると、2013年時点で確認されているウラン濃縮施設での製造で年間2個、寧辺の軽水炉を稼動したとすると年間1~4個、ウラン濃縮施設の存在が疑われている施設での生産で年間2~3個となり、3つの施設を稼動させた場合、年間5個~9個の原子爆弾を製造することが可能で、これまで製造してきた原爆を合算すると48個程度になると推定した[30]。
2013年の時点では、寧辺の5万kW、泰川の20万kWの大型黒鉛減速炉の建設は中断しており、新規のプルトニウムによる核開発は中断し、代わって高濃縮ウランによる核開発に軸足を移していると推測された。これはプルトニウムによる核兵器は品質劣化に伴う維持管理が煩雑な一方、高濃縮ウランによる核兵器は劣化がほとんどなく、維持管理がやりやすく、隠蔽もしやすい。また北朝鮮のウラン埋蔵量は莫大であり、核兵器を作る上で制限がないからだと推測されている。しかし、北朝鮮は寧辺に30MWの実験用軽水炉を建設中であり、この軽水炉からプルトニウムを生産する可能性もあるとされた。通常、軽水炉では原爆用のプルトニウムを生産するのに適してはいないとされるが、運転期間を短いものにして、プルトニウム239がプルトニウム240に大きく変化する前に使用済み核燃料を取り出して再処理すれば、原爆製造可能なレベルのプルトニウムが得ることが可能であり、懸念材料となっていた[31]。
2015年1月6日に発表された韓国の国防白書では、北朝鮮の核兵器製造能力が相当水準に至っており、核兵器の小型化が可視化段階に入ったと評価、アメリカ本土も脅かすことができるミサイル能力を得ていると推定した[32]。
2010年代後半から2020年代初頭にかけての予測では、20発~116発の間で様々な説が出た[33]。
2023年3月28日に朝鮮中央通信が火山(ファサン)31という戦術核弾頭の写真を掲載し、小型化に向かって開発を行っていることが明らかとなった[34]。
現在まで北朝鮮が保有しているプルトニウム原子爆弾の原料を生成した寧辺の5MWの実験用黒鉛減速炉は無力化対象となり、冷却塔の解体により使用できる状態ではない。
寧辺の50MW黒鉛減速炉と泰川の200MW黒鉛減速炉は年間55個、4-5年で220個のペースで核兵器を量産できるとされるが、建設途中で工事が中断した状態と考えられている。
寧辺に30MWの実験用軽水炉を建設中であり、これが稼動すると年間で最大4個の原子爆弾を製造可能である[30]。
2015年9月、黒鉛減速炉の再稼働を表明した。2016年、アメリカ国家情報長官のジェームズ・クラッパーは「我々は北朝鮮が寧辺のウラン濃縮施設を拡張し、プルトニウム生産炉を再稼働することで、宣言を実行したとみている」と指摘し、アメリカ政府としても黒鉛減速炉の稼働を正式に確認したことを明らかにした[35]。
韓国国防研究院は2013年の時点で最大で原子爆弾6個分の高濃縮ウランを保有しているとしている[36]。
北朝鮮は2010年11月に元ロスアラモス国立研究所長にウラン濃縮施設を公開した。所長は2000台の遠心分離機があると報告しているが、寧辺のウラン濃縮施設以外にも複数ヶ所のウラン濃縮施設があるとされている[37]。
ドイツ政府系の研究所である連邦地質資源研究所は包括的核実験禁止条約を元に設置されているドイツ国内の核実験監視施設のデータを元に、北朝鮮で試験された核爆弾の出力は40ktに達すると発表した[13]。このデータは日本の気象庁が感知したデータと同じで、この地震規模から解析すると、今回の核実験で用いられた核爆弾の威力はリトルボーイの3倍程度となり、核実験直前に懸念されていた[38][39]強化原爆の可能性がある。強化原爆の製造技術は、核爆弾の小型化はおろか、軽水炉の通常運用を行って得たプルトニウム240を相当含む粗悪なプルトニウムをも有効な原爆に仕立てることが可能になってしまう(軽水炉を小刻み運用して、核燃料棒のプルトニウム240が大きく増加する前に取り出して再処理する、という煩雑な工程も不要になる)ため、大きな懸念材料となる。
度重なる経済制裁などにより、核開発の資金調達先は限定されている。2021年、CNNは国連安保理の関係筋から得た文書から、北朝鮮が兵器開発や経済立て直しのため、金融機関や仮想通貨取引所を狙ったハッキングをしていることを報道。北朝鮮のハッカーが2019年から2020年11月までの間に、総額3億1640万ドル相当を調達したことを明らかにしている[40]。
北朝鮮の核兵器重量は核の闇市場からの技術流入と3度の核実験により小型化が進んでいると考えられているが、アメリカ国務省で核問題を担当していたイギリスの国際戦略研究所 (ISS) のメンバーによると、原子爆弾そのものの重量は450kg程度としている。また、弾道ミサイルとして使うなら付属品を入れると弾頭重量は700kgになると推定している[11]。北朝鮮で配備中または開発中の弾道ミサイルと、搭載可能と考えられる運用中の軍用航空機は以下の通りである。
北朝鮮は外貨獲得のため、ミサイル関連技術を他国へ輸出しており、大量破壊兵器の拡散に繋がらないかと各国から懸念されている。北朝鮮の軍備については、射程100km~13000kmほどある数種類の弾道ミサイルを保有しており、日本全土だけでなく、アメリカの大半も射程内に入るとされる。もしこれらのミサイルに核弾頭を搭載すれば周辺諸国はもとより北アメリカ大陸のアメリカの州までミサイルでの核攻撃が可能となる。また、核を小型化する技術は時間が経てば経つほど進歩していると考えられ、2013年までに公式的にも3度の核実験を行い、信頼性のある原爆を弾道ミサイルに搭載することが可能になったのではないかと考えられている。
核ミサイルをブラフと見なし、北朝鮮にはミサイルに実装できる小型核弾頭はないとする意見が1990年代から2000年代前半にかけて一定の支持があった。日本の右派は脅しに乗ることが援助を毟られる原因になると主張しており、韓国の左派は同胞に核ミサイルを向けるはずはなく援助が欲しいからやっているので援助を与えれば止めさせることができると主張しており、日本の右派やアメリカの左派はブッシュ政権の強硬路線の結果態度を硬化させ不完全な核爆弾を持っただけであると主張した。
楽観論は北朝鮮が工業的な後進国であるというイメージが一人歩きした上での主張に過ぎず、技術的な根拠はなく、危険性を軽視すべきではないとする意見。いかなる工業レベルであろうと資金を投入している以上、時が経つほど危険性が増すことは自明であるので、冷静に技術的レベルを分析して対策を練ろうとする考えであった。
以上のことから、慎重論の専門家らは1998年のパキスタンにおける代理核実験で基本的なプルトニウム原爆の爆縮レンズの作動確認を行い、2000年代までの核の闇市場からの技術移転で小型化への大いなる助けとなり、2006年の公式核実験では一定の成果は上げたが、少ない核物質でより強力な原爆を作ろうと模索し、2009年からは威力を増すための実験を繰り返した、と認識されている。しかし、これらの専門家の認識は必ずしも政府見解と一致するとは限らず、注意が必要である。日本やアメリカ、韓国は特に強い利害関係があり、北朝鮮の核による圧力の効果を減少するため、矮小化する傾向があることはEU系の公的機関から指摘されている[13]。それを実証するかのような出来事も起きている。2013年4月11日、アメリカ国防総省傘下の国防情報局 (DIA) は、「北朝鮮の核開発は進展しており、一定の信頼性ではあるものの、弾道ミサイルに核弾頭を搭載することが可能とみられる」と報告書を出していたことが判明した[51]。
しかし、これはアメリカ政府幹部にまでは情報が届いていない時点で明らかになったため、政府関係者がコメントを控える等の火消しに奔走する事態に発展しており[52]、オバマ自らが否定する結果を招いた[53]。
事実、これらの国々は北朝鮮を核保有国として認めることはあり得ないとしており、核実験が行われたという技術的な事実があっても核保有国としては扱っておらず、今後も技術的な事実の判断はともかく、外部へのプロパガンダの側面が強い公式見解においては矮小化を続ける政治判断が採られるだろう、と考えられた。
2010年代後半以降北朝鮮のミサイル発射回数が増え、脅威であることが認識された[54][55]。
北朝鮮は北朝鮮当局が運営に関わる組織である「わが民族同士」が「われわれには、世界が見たことも聞いたこともない現代的武器があり、それは単なる見せかけではない」などと主張する動画をインターネット上に公開したことがあるが、これは放射線強化型の原爆ではないか、といった指摘がある。
慶応義塾大学の小此木政夫名誉教授によれば、北朝鮮の核ドクトリンは戦術核と戦略核の開発の同時進行であり[56]、武力衝突が起きた場合は通常兵器が老朽化し使える状態でない[56]ことから「核兵器を使用せざるを得ない」危険な状態だとしている[57]。
2024年にはロシアと包括戦略条約を結んだ[58]。北朝鮮の核兵器の能力の高まりから、アメリカがそれを放棄させることが困難になっている指摘[59]。中国とロシアが抜け穴になることによる経済制裁の効果の薄れや[60]、ロシアが北朝鮮との取引でロケットやミサイル技術などを提供するという、「安保理体制にも相当な衝撃を与えた」「安保理決議違反である」「危険な取引」[61]の可能性や[62]、北朝鮮が日本との交渉に応じずミサイル開発を進める現状などから、根本的な解決策がないことが指摘された[60]。
かつて北朝鮮核問題についての日米韓の利害は微妙にズレがあり、3ヶ国の足並みの乱れの主因となっていた。アメリカにとって日本、韓国を狙う弾道ミサイルは射程上、遠いアジアのことであり、北朝鮮製の核兵器がテロリストの手に渡るのが脅威であったが、2010年代には実用に目処が出てきたICBMによって自国が直接攻撃されかねなくなったため、利害関係が変化した。日本にとっては朝鮮半島での戦争は自国にとって関係のない「対岸の火事」で、あくまで弾道ミサイルが脅威としている。韓国は首都ソウルが長距離砲の射程内であり、弾道ミサイルよりも通常戦力の脅威が主である。
アメリカと韓国は、1970年代から北朝鮮の核実験を警戒していたが日本は警戒が遅れた[63]。2020年版防衛白書まで北朝鮮の核攻撃能力について言及がなかった[64]。
北朝鮮の地下核実験場となっている豊渓里の万塔山一帯には地下空洞が存在し、2017年9月の地下核実験の直後には一部が山崩れを起こし小規模な地震も複数発生している[81]。
2017年10月31日、テレビ朝日は豊渓里の地下坑道で9月10日頃に崩落事故が起き約200人が死亡したと報じたが、朝鮮中央通信はこの報道を否定した[82]。
韓国の気象庁は豊渓里の万塔山での追加核実験や地震による陥没での放射能物質の外部漏出のおそれを指摘しており、ソウル大学教授の徐鈞烈[83]も万塔山での追加核実験は困難であり山が崩壊した場合には偏西風で北海道からアラスカに放射性物質が飛散するおそれがあると指摘している[81]。
2023年2月21日、韓国の「転換期正義ワーキンググループ」の報告書によれば、核実験場の周囲にある8つの市や郡に放射性物質が拡散した可能性があり、北朝鮮から韓国、中国、日本に密輸入されたものからも、放射性物質の影響を受ける可能性があるとしている[84]。
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