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児童の権利について定める国際条約 ウィキペディアから
児童の権利に関する条約(じどうのけんりにかんするじょうやく、英語: United Nations Convention on the Rights of the Child)は、児童(18歳未満の者)の権利について定める国際条約である。通称は子どもの権利条約(こどものけんりじょうやく)[3]。略称はCRCあるいはUNCRC 。
1959年に採択された「児童の権利に関する宣言」の30周年に合わせ、1989年11月20日に国連総会で採択。1990年9月2日に発効し、日本国内では1994年5月22日から効力が発生した[4]。世界で158番目。条約批准から28年たってようやく、条約に基づく国内法(こども基本法)の議論が始まりました[5]。
締約国は児童の最善の利益のために行動しなければならないと定める(第3条)。子供に関わることについて、現在や未来において子供によりよい結果をもたらす関与をしなければならないとする考え方である。
児童を「人間」と置き換えてもそのまま当てはまるような、「子どもの人権宣言」と呼べる内容となっている。
日本ユニセフ協会は、児童の権利条約の主な理念として「児童の最善の利益」「差別の禁止」を挙げ、児童の権利を4つに分類している。
国際人権規約のA規約(経済・社会・文化権規約)及びB規約(自由権規約)で認められている諸権利を児童について広範に規定し、さらに意見表明権や遊び・余暇の権利などこの条約独自の条項を加え、児童の人権尊重や権利の確保に向けた詳細で具体的な事項を規定している。
2015年10月時点で196の国・地域が締結しており、アメリカ合衆国は条約に署名はしたが批准していない。
条文は前文および54箇条からなり、児童(18歳未満)の権利を包括的に定めている。
以下、日本ユニセフ協会公式サイト「子どもの権利条約」全文を出典として要約。
条約の正文で定められた正式な名称としては、
が等しく存在している。日本国内では、「児童」が法律用語としては主に小学生を指すため、「子ども」という枠語を使うべきだとの議論がなされたが、国会承認及び官報では「児童の権利に関する条約」の訳名で公布されており、国による正式和訳名称はこの表記を使用している。
なお、文部省は「本条約についての教育指導に当たっては、『児童』のみならず『子ども』という語を適宜使用することも考えられる」[6]という案を示しており、マスメディア・団体・個人も「児童」を「子ども」などに置き換えることがある。その場合、主に「子どもの権利条約」と称される。
児童の権利に関する条約が定めている児童の権利がどの程度達成されているか、実現されているか、どの程度未達成であるか、侵害されているかは、加盟国や地域の実情により大きな差がある。戦争・内戦・テロの継続による死亡が日常的な国、経済的に著しく貧困な国、経済的低開発国、安全な食料・水・飲み物を入手するのが困難な国、保健・医療制度が未整備で、基礎的な衛生や医療を受けられない国、初等教育や中等教育が未整備で必要十分に供給されず非識字率が高い国、人為的・社会的に作られた考えや慣習により児童の権利が侵害されている国は、2013年現在でも多数存在している[7][8][9][10][11]。
締約国は、第44条において、条約において認められる権利の実現のためにとった措置や権利の享受についての進捗状況を児童の権利に関する委員会に報告することを義務付けられているが、締約国が増えるに従って報告の数が増し、委員会の報告審査業務に遅滞が生じるようになった。そこで、この問題を解消するべく、1995年に委員会の委員数を10人から18人に増やす第43条2の改正案が採択され、第50回国連総会において採択された。
日本は、条約への批准に際し、条約第37条C(自由を奪われた児童の取り扱い、「成人と分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離される」こと)への留保と第9条1(出入国管理法に基づく退去強制の結果としての父母からの分離の手続き)及び第10条1(家族の再統合に対する配慮)に関する解釈宣言を付しているが、児童の権利に関する委員会はこれらの撤回を勧告している。この詳細は外部リンクの外務省の公式発表で見ることができる。
一部の自治体では、条約を基にした条例として「子供の権利条例」を制定している。
また、条約44条の報告審査義務に従い、日本政府は外務省が中心となって作成した報告書を「児童の権利に関する委員会」に提出している。その際、同委員会は、審査の精度を増すために、国内NGO団体などにもカウンターレポートの提出を求めている。日本では、日本弁護士連合会、子どもの権利条約 市民・NGO報告書をつくる会、子どもの人権連、の3団体がカウンターレポートを提出している。
2008年4月22日、予定から約2年遅れで、外務省は第3回政府報告書を国連に提出。 2010年5月27・28日、第3回の政府報告審査会が行われる。同年6月20日、国連子供の権利委員会は、日本政府に対し最終所見を提出(政府訳「国際連合 児童の権利に関する条約」外務省公式サイト、2010年6月20日)。
第3回政府報告書の最終所見では、
「50. 日本社会における家族の価値が恒久的な重要性を有していることを認識しているが,委員会は,親子関係の悪化に伴って,児童の情緒的及び心理的な幸福に否定的な影響を及ぼし,その結果,児童の施設収容という事態まで生じているとの報告に懸念を有する。委員会は,これらの問題が,高齢者介護と若者との間に生じる緊張状態,学校における競争,仕事と家庭を両立できない状態,特に,ひとり親家庭に与える貧困の影響といった要因に起因している可能性がある問題であることに留意する。
51. 委員会は,締約国が,子育ての責任を果たす家族の能力を確保できるように男女双方にとっての仕事と家庭の間の適切な調和を促進すること,親子の関係を強化すること,及び,児童の権利に関する意識を啓発することなどにより,家族を支援し強化するための措置を導入することを勧告する。
60. 委員会は,著しい数の児童が情緒面での健康状態が低いとの報告をしていること,また両親や教師との関係の貧しさがその決定要因となっている可能性があることを示すデータに留意する。
66. 委員会は,財政経済政策(労働の規制緩和や民営化戦略等)が,賃金削減,女性と男性の賃金格差及び児童の養護・教育支出の増加により,親,特にシングルマザーに影響を与えていることを懸念する。」
と指摘されている。
児童の権利に関する条約の理念に基づいた条例。2000年12月21日、川崎市において「川崎市子どもの権利に関する条例」[12]として日本国内で初めて制定[13]。その後、北海道奈井江町(2002年3月)、岐阜県多治見市(2003年9月)など、日本全国の複数の自治体において制定された[13]。
札幌市子供未来局のホームページにおいて、条例施行自治体、条例策定中の自治体の一覧が紹介されている[14]。札幌市では2008年11月7日に「札幌市子どもの最善の利益を実現するための権利条例」を制定した(施行は2009年4月1日から)[15]。
条約12条の子供の意見表明と、その正当な尊重を規定した条項。かつては条約第13条の「表現の自由」と同じように解釈されるか、裁判などにおける聴聞権として解釈されることが多かった。[要出典]ユニセフが発行している子どもの権利条約に関する逐条解説書では、この条文を子どもを権利の積極的な主体と位置づけ、基本的な権利を持つ個人として認めるものと解しており、親との関係におけるパターナリスティック的な本条文の理解を明示的に排している[16]。国連子どもの権利委員会の一般所見では、「乳幼児は、話し言葉または書き言葉という通常の手段で意思疎通ができるようになるはるか以前に、さまざまな方法で選択を行ない、かつ自分の気持ち、考えおよび望みを伝達しているのである」[17]とし、たとえ幼い子どもであっても、その意見が正当に尊重されるべき、という事が強調されている。
(英語)Article 12
1. States Parties shall assure to the child who is capable of forming his or her own views the right to express those views freely in all matters affecting the child, the views of the child being given due weight in accordance with the age and maturity of the child.
2. For this purpose, the child shall in particular be provided the opportunity to be heard in any judicial and administrative proceedings affecting the child, either directly, or through a representative or an appropriate body, in a manner consistent with the procedural rules of national law.
(日本語訳)第12条
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。
2つの選択議定書が2000年5月25日の国連総会で採択された。日本政府は、「武力紛争における子どもの関与に関する選択議定書」を2004年8月に、「子ども の売買、子ども買春および子どもポルノに関する選択議定書」は2005年1月に批准。
略称はOPACCRCあるいはOPAC。少年兵などとして戦争や武力紛争に子どもを関与させることに関する選択議定書。2002年2月12日から批准が始まり、2007年10月22日発効。現在、日本を含む180の国が批准し、173の国によって署名されている。
略称はOPSCCRCあるいはOPSC。子どもの人身売買、児童買春、児童ポルノに関する選択議定書。2002年1月18日に批准が始まり、2007年10月11日発効。現在、日本を含む178の国が批准し、121の国が署名されている。
権利侵害を受けた個人が、この個別またはグループで自分の国で法的救済関連する国際的・地域的人権条約機関に直接的に申立てをおこない、その救済を求めることができる制度。 18人の独立した専門家で構成された児童の権利に関する委員会に苦情を申し立てることができる。
国連総会で2011年12月19日に採択され、2014年1月14日には10番目の批准国としてコスタリカが批准し、その3か月後の2014年4月14日に発効。2023年までの間に52カ国が署名、50カ国が加盟。日本は議定書の提案国であったが加盟していない。
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