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文書による国家間の合意 ウィキペディアから
条約(じょうやく、英: Treaty)は、文書による国家間の合意[1]である。国際法に基づいて成立する合意であり、国家および国際機構を拘束する国際的文書が条約であると狭く解す場合もある[2]。法源の一種。
現代では当事者能力を持つのは独立国家に加えて公的な国際機構があり、国際連盟(1920年-1946年)および国際連合(1945年-現在)などの国際機関も締結の主体となり得る[2]。当事国は原則として、当事国の憲法ないし基本法における手続・制約に基づいて、国際法が禁止しない一切の内容を、交渉によって自由に作成することができる[2]。
合意した文書には、「条約」という名称以外に「協約」「協定」「規約」「憲章」「宣言」「交換公文」「議事録」「議定書」などの名称も使用されるが、名称が異なる事によって効力の優劣があるわけではない(詳細後述)[2]。外務省設置法では、これら広義の条約を「国際約束」と称している[3]。
歴史上確認されている最も古い条約は、国家間での交渉が始まった紀元前2400年ごろ、古代メソポタミアにおけるラガシュ・ウンマ戦争において都市国家ラガシュとウンマの間で締結された国境画定のための条約であるといわれ、国境には両者の取り決めにもとづいて石碑が建てられたとされている[2]。
条約法に関する一般条約である条約法に関するウィーン条約(条約法条約[注 1])では、条約を以下のように定義している。
- 第二条1
- (a)「条約」とは、国の間において文書の形式により締結され、国際法によつて規律される国際的な合意(単一の文書によるものであるか関連する二以上の文書によるものであるかを問わず、また、名称のいかんを問わない。)をいう。
「名称のいかんを問わない」としているのは、国家間などで結ばれる個別の文書による合意(広義の「条約」)には、形式についての統一的な規則がなく、各種の名称が用いられているためである[4]。広義の条約には狭義の条約(treaty、convention、例:生物多様性条約)以外に、協定(convention,、agreement、accord、例:WTO設立協定)、議定書(protocol、例:京都議定書)、宣言(declaration)、憲章(charter、constitution、例:国際連合憲章)、規約(covenant)、盟約(pact)、決定書(act)、規程(statute)、取極(arrangement)、暫定協定(modus vivendi)、交換公文(exchange of notes)、交換書簡(exchange of letters)、合意覚書(memorandum of agreement)、合意議事録(agreed minutes)等の様々な名称を持つものがある[4]。これらは法的拘束力において相違はないが、主に慣習によって使い分けられているもので、例えば、議定書は一般に既存の条約を補完する条約の名称として用いられる(例:京都議定書は気候変動枠組条約を補完する内容を持つ)。
なお、条約法条約は「国際法によって規律される(第2条)」という要件を規定している。従って国家間の合意であっても、国際法ではなくその国家の国内法によって規律される私法上の契約と同様の合意が起こり得るが、このような合意は条約法条約の適用範囲外である[5]。
二国間条約の場合、政府代表が署名を行った時点で効力を発する行政協定(行政取極)[注 2]あるいは簡易協定と、議会による批准等の承認を受けて初めて発効の手順(批准書の寄託等)を踏むことのできる通常協定[注 3]がある。いずれの場合においても、二国間の協定において「加入」するという手続を踏むことはない。すなわち、行政協定(行政取極)の場合は政府代表間で相互に署名を行うことで当該協定を締結したことになるが、通常協定の場合は相互の政府代表者による署名後に、議会による批准等の承認を得るまで当該協定は発効しないことになる。
例えば日本の場合、日米安全保障条約(安保条約)は議会の承認が必要な「通常協定」に当たり、2007年8月に閣議決定を経て署名・締結された「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国との間の協定」(GSOMIA)は「行政協定(行政取極)」に当たる。これらの二国間条約は、いずれも加入の対象とならない。
多国間条約の場合、政府代表間での批准書の交換という手続は採らず、代わりに国連の条約局、専門機関、地域間条約などを管理・運営する事務局、条約作成地の政府などが、批准書、受諾書、加入書等の寄託を受ける仲介機関(寄託者)の役割を担う。
国家が条約に拘束されることへの同意を表明する方法としては、署名・批准・加入・受諾・承認等があり、これらは締結と総称される。締結の具体的方法は各条約に規定されており、複数の方法が認められる場合もあれば、特定の方法が指定されていることもある。表明が代表者個人に対する脅迫、その他の行為による場合、その条約は絶対的に無効となる。国家そのものに対する強制によるときは、かつて一般に有効と解されてきた。しかし、武力禁止を謳う国連憲章2条2が条約法条約52条で準用されることになった。条約法条約は4条で原則遡及しないが、通説として憲章成立後の条約に遡及適用されると解されており、このことは草案における国際法委員会の注釈に明記されてもいる。もちろん、侵略国に対する強制はこの限りでない。武力ではない強制については、「条約締結時における軍事的、政治的または経済的強制の禁止に関する宣言」が条約本文と別に、最終議定書の一部として採択された[6]。
国内法と国際法の関係については二元論や一元論などが主張されている[4]。
国際法のうち、英米法の国では慣習国際法については国内措置をとらなくても国内法としての効力を認めており、日本でも「確立された国際法規」(日本国憲法第98条2項)は特別の変型手続が無くても国内法としての法的拘束力を認める[4]。
これに対し、一般の条約の国内法秩序への編入方式には、国際法に直接的な国内的効力を認めず国内法での別個の立法措置を必要とする変型方式(イギリス、カナダなど)と、国際法にそのまま直接的な国内的効力を認める一般的受容方式(アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、日本など)がある[4]。
日本国憲法第73条第1項第3号は、条約を締結することを内閣の職務としており、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とするとしている。日本国憲法第73条第1項第3号にいう条約(国会承認条約)とは、法律事項を含むもの、財政事項を含むもの、その他政治的に重要であり、それ故に発効のために批准を必要とすることが締約国の間で合意されている国際約束をいう[10][1]。また、日本国憲法第98条は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」としている。日本国憲法第98条第2項にいう「条約」は、日本国憲法第73条第1項第3号にいう「条約」よりも広く、日本が締結した全ての国際約束をいう[10]。締結した条約は、天皇が国事行為として公布を行う(憲法第7条)。
国内法秩序における条約の優劣は各国で異なる。
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