Loading AI tools
ウィキペディアから
『レリオ、あるいは生への復帰』(Lélio, ou Le retour à la vie )作品14bisは、エクトル・ベルリオーズが作曲した語り手、声楽と管弦楽のための作品。「叙情的モノドラマ」(Monodrama lyrique )と題されており、『レリオ、あるいは生への回帰』などとも訳され、『レリオ』と略されることもある。
『幻想交響曲』の続編として作曲されたが、この作品はベルリオーズの失恋体験がもとになり作曲につながったという。
1829年に、後に妻となるハリエット・スミッソンへの恋が受け入れられることがなく、その後間もなくしてカンタータ『サルダナパールの死』[注 1]によって念願のローマ大賞を獲得し、1830年末からローマに留学することになった。同年12月5日の『幻想交響曲』の初演で大成功を収めたベルリオーズは、女性ピアニストのマリー・モークと婚約して、2年間の留学が義務づけられたローマへと旅立った。しかしローマに着いて間もなく、マリーの母親から、娘は有名なピアノ製作者プレイエルの息子と結婚すると知らされ、結果的に2度目の破局となった。ベルリオーズはひどく怒り、母娘とプレイエルの息子を殺して自分も自殺しようと、女装してピストルと自殺用の薬物を買い込んで馬車に乗り、パリへと疾走したが、フランス国境近くで何とか思いとどまって正気を取り戻し、その後ニース[注 2]で1ヶ月ほど静養してローマに帰った。
ベルリオーズはその後、この体験をもとにして『レリオ』の作曲を始めたが、それ以前に作曲したいくつかの旧作も組み入れた。組み入れられた作品は、1829年にローマ賞のため提出したカンタータ『クレオパトラの死』や、1830年の『山賊の歌』と『テンペスト』、1831年の『幸福の歌』などである。1831年に「叙情的モノドラマ」(あるいは「6部のメロローグ」)として完成し、1832年12月9日、ベルリオーズがパリへ戻って最初の演奏会で『幻想交響曲』(再演)と共に初演された。指揮はアブネックによる。
この初演にはスミッソンも出席していた。この時まで彼女はベルリオーズのことは記憶に留めておらず、これらの作品で実は自身が主題となっていることにも気づかなかったが、この演奏会を契機として交際が始まり、翌1833年10月に結婚にいたる。また総譜の出版の際、初版はスミッソン、改訂版は2人の間の息子ルイに献呈されている。
ベルリオーズは、自身の自伝的な告白ともいえる『幻想交響曲』と『レリオ』の2つの作品を対にして演奏することを意図し、はじめは『ある芸術家の生活の挿話、5部からなる幻想交響曲』として1845年に出版した後、1855年に「ある芸術家の挿話 第1部」とし、『レリオ』をその第2部(作品14bis)として出版した。
本作は『幻想交響曲』に知名度や人気で遠く及ばず、音楽付きの独白劇という演劇的性格が強く形式上類例のほとんどない作品であるため、特に日本では言語の問題もあり演奏されることは非常に少ない。
全部で6曲からなり、曲の間には俳優による語りが入る。演奏時間は約53分であるが、ベルリオーズは2作続けて演奏するように指示しているため、仮に『幻想交響曲』と一緒に演奏した場合は約1時間50分以上となる。
第6曲の開始までは語り手のみが舞台の前に立ち、オーケストラ、独唱者、合唱団は舞台に下ろされたカーテンの裏で演奏する。第6曲を演奏する時にはカーテンが上げられる。これは、第6曲以外は全て主人公レリオの空想上のものとするためである。
指揮者 | 管弦楽団・合唱団 | 配役 | 録音年 | レーベル | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
ピエール・ブーレーズ | ロンドン交響楽団 ロンドン・シンフォニー・コーラス | ジャン=ルイ・バロー (ナレーション) ジョン・ミッチンソン ジョン・シャーリー・カーク | 1967 | Sony | 『幻想交響曲』有 |
ジャン・マルティノン | フランス国立放送管弦楽団 フランス放送合唱団 | ジャン・トパール (ナレーション) ニコライ・ゲッダ ジャン・ヴァン・ゴール | 1973 | EMI | 『幻想交響曲』有 |
コリン・デイヴィス | ロンドン交響楽団 ジョン・オールディス合唱団 | ホセ・カレーラス トーマス・アレン他 | 1980 | Philips | ナレーション無し 『幻想交響曲』有 |
エリアフ・インバル | フランクフルト放送交響楽団 フライブルク声楽アンサンブル フランクフルト聖歌隊 | ダニエル・メスギッシュ (ナレーション) キース・ルイス ウォルトン・グロンルース | 1987 | DENON | 『幻想交響曲』有 |
ズデニェク・マーツァル | ミルウォーキー交響楽団 同合唱団 | ウェルナー・クレンペラー (ナレーション) グレン・シーバート ウィリアム・ダイアナ | 1994 | Koss | 『幻想交響曲』有、 英語版での録音 |
ロルフ・ロイター | ベルリン・コーミッシェ・オーパー管弦楽団 ベルリン放送合唱団 | ハンス・ペーター・ミノッティ (ナレーション) ミヒャエル・ラープジルバー ベルンド・グラボウスキー | 1994 | Berlin Classics | 『幻想交響曲』有、 独語版での録音 |
シャルル・デュトワ | モントリオール交響楽団 同合唱団 | ランベール・ウィルソン (ナレーション) リシャール・クレマン フィリップ・ルイヨン ゴードン・ギーツ | 1996 | Decca | 『幻想交響曲』有 |
トーマス・ダウスゴー | デンマーク国立交響楽団 デンマーク国立合唱団 | ジャン・フィリップ・ラフォン (ナレーション兼バリトン) ゲート・ヘニング・ジャンセン スーネ・ヘリルド | 2004 | Chandos | 『幻想交響曲』無し |
リッカルド・ムーティ | ケルビーニ管弦楽団、 イタリア・ユース管弦楽団 ウィーン国立歌劇場合唱連盟 | ジェラール・ドパルデュー (ナレーション) マリオ・ゼフィリ(テノール) フランク・フェラーリ(バリトン) | 2008 | Zyx Music | 『幻想交響曲』有、 PALのDVD(リハーサル)付 |
リッカルド・ムーティ | シカゴ交響楽団 シカゴ・シンフォニー・コーラス | ジェラール・ドパルデュー (ナレーション) マリオ・ゼフィリ(テノール) カイル・ケテルセン(バリトン) | 2010 | King International | 『幻想交響曲』とセット、 2010年9月のシカゴ交響楽団 音楽監督就任記念コンサート のライヴ録音 |
フィリップ・ジョルダン | ウィーン交響楽団 | ジャン・フィリップ・ラフォン
(ナレーション) シリル・デュポワ(テノール) フローリアン・センペイ(バリトン) イングリッド・マルソナー(ピアノ) |
2018 | Wiener Symphoniker | 『幻想交響曲』とセット、ベルリオーズの没後150周年記念アルバム |
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.