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『ソード・ワールドRPG』は、グループSNEが制作したテーブルトークRPG (TRPG) 。略称はSWRPGあるいはSW。
1989年に富士見書房から文庫版として発売。1996年には「完全版」と銘打った改訂版がA4判ハードカバー書籍にて発売された。2006年には関連書籍が120冊を超え、2008年のゲームシステムのバージョンアップまで二十年近く展開された国内有数のTRPG作品であった。(ただし、リプレイやライトノベルが大半を占めているため、純粋なゲームのサプリメントに限れば飛びぬけて多いとは言えない。また、既に絶版となったものも多い)。長年、「国内で最も普及した国産TRPGである」と紹介されてきた[1]。
2008年4月にルールと世界設定を刷新した『ソード・ワールド2.0』が、2018年7月には『ソード・ワールド2.5』が発売されたが、本記事ではそれ以前のエディションを中心に説明する。
剣と魔法の世界フォーセリアを舞台にした典型的なファンタジーRPGであり、グループSNEの代表作である。総監修は安田均。ワールド・デザインは水野良。システム・デザインは清松みゆき。その他、山本弘(西部諸国の設定やシナリオ集の制作)や友野詳(ワールドガイドデータの作成やアザーン諸島の設定)、川人忠明(SWツアーシリーズ。清松みゆきとの共著)などが制作に関わる。
ソード・ワールドRPGの背景世界となっているフォーセリア世界の初出は1986年にリプレイ連載が開始され人気を博したロードス島戦記である。ソード・ワールドRPGではこのロードス島戦記の舞台となったロードス島の北にある「アレクラスト大陸」を主な冒険の舞台としているが、神話や歴史などにロードス島と共通する設定は多い。このことから、ソード・ワールドRPGの発売当時に、ロードス島戦記からテーブルトークRPGに興味を持ったファンでも違和感なくゲームができるようになっていた。後に、ソード・ワールドRPGでロードス島を舞台にゲームを行うためのサプリメントも発売された。
基本システムは、複数の職能(クラス)を1人のキャラクターに持たせることができる「クラススキル制」(いわゆるマルチクラス制に近いもの)を採用。乱数発生には6面ダイス2個だけを使用する。これは、6面以外の多面体ダイスが入手しにくいことに対する配慮でもある[2]。
ゲームのルールブックや関連製品の多くは文庫の形態で提供されている。ソード・ワールドRPGが発売された1989年当時はテーブルトークRPGの多くは玩具店で高価なボックス版で売られていたが、ソード・ワールドRPGはトンネルズ&トロールズやファンタズム・アドベンチャーと同様に一般書店でボックスよりも安価な値段で販売された。時代が下るにつれてルールやデータ、世界設定などが煩雑化していき、文庫の形態では量的に提供しにくくなったこともあって、関連書籍の多くが大判書籍で出版されるようになっていったが、リプレイや小説などは文庫での提供を続けていった。2008年に発売されたソード・ワールド2.0では、文庫の形態を中心とした形での関連書籍の提供を再び行っている。
富士見書房が刊行している『月刊ドラゴンマガジン』での関連記事掲載をメインとしつつ、現在では新紀元社刊行の『Role&Roll』やゲーム・フィールド社刊行の『ゲーマーズ・フィールド』にも記事を提供している(後者は広告記事)。以前は同じ富士見書房から刊行されたTRPG専門誌『RPGドラゴン』を主軸に展開していたが、同誌が休刊してからは一時期サポート体制に滞りが生じたことがある。『RPGドラゴン』に掲載された記事の中には、単行本未収録の企画や休刊とともに未完となった企画が存在する。
2003年にグループSNEは、本作のゲームシステムを他ゲームにも適用することを企図し、米国のd20システムに倣って、2d6システムと名付けたが、現在この呼称は公式には使われていない[3][4]。
本作の作品展開として特筆すべきものにリプレイ集が挙げられる。1980年代後半、TRPGを遊ぶ様子を紹介する手法として、演劇の脚本のように役名付きの台詞を中心として構成し、ト書きで補足するリプレイという形態が発明され、パソコン雑誌『コンプティーク』連載の『ロードス島戦記』誌上リプレイ(システムは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』 (略称はD&D))で火が付いた。本作のリプレイはその人気を継いで、新作ゲームの紹介を企図してルールブック発売前に雑誌掲載されたところに特徴がある[5]。山本弘が担当したこのリプレイは、単なるゲームの紹介という枠を超えて、ゲーム的読み物あるいはライトノベルの一種として読者に受け入れられた。後に『第一部』(または『スチャラカ冒険隊編』)と称された当シリーズは、ソード・ワールドRPG普及の原動力となっただけに止まらず、その後の日本のTRPG業界において「リプレイで作品を紹介する」という他国にはみられない日本独自の慣習を根付かせることになった。
サプリメントとして、シナリオ集・ワールドガイドなどが多数販売されている。また、小説はシェアード・ワールドとして展開しており、水野良の小説『魔法戦士リウイ』シリーズはソード・ワールド・ノベルの1作品である。この他、漫画やコンピュータRPG、CDドラマなどにメディアミックス展開している。同じくフォーセリアを舞台にした作品として『ロードス島戦記』シリーズおよび『クリスタニア』シリーズがあり、フォーセリアを舞台としたシリーズとしては『ロードス島戦記』が最も早くに書かれている。ヴァリアントとして『迷探偵デュダ』シリーズがある[6]。
以下の記述は基本的な説明に限定。実際にプレイするためには正規のルールブック等が必要。
プレイヤーは、アレクラスト大陸を主な舞台にする冒険者であるプレイヤー・キャラクター(PC)を作成し、その架空のキャラクターに扮してゲームを進める。種族・性別・年齢や能力値・出自・技能などを、プレイヤーの選択とサイコロを用いて決定することでPCを作成するが、シナリオ集などに収められた作成済みのサンプル・キャラクターを使用することもできる。
SWでは通常5人から6人のPCでパーティを組んで遊ぶことが多い。PCの技能はある程度好みで選択できるが、パーティ内で特定の技能を持つキャラクターが偏ったりしないよう調整することが望ましいとされる。しかし、あくまでも強制ではなく、GMとプレイヤー間で同意さえあれば、偏った編成を組むことも可能(全員が種族グラスランナーを選ぶなど)。
6面ダイス2つ(以下、2D6と表記)とチャート表に沿って全ての判定を行う。これを「成功ロール」という。基本は「技能レベル」 + 「能力値ボーナス」 + 「ダイスを振って出た目(出目)」を合計して出した値と、ゲームマスター (GM) が用意した目標値(または難易度 + GMのダイスの出目)を比べて、PC側の値がGM側の値以上であれば成功になる。ゲーム上よく使う技能と能力値ボーナスの組み合わせパターンもチャート表にまとめられている。
戦闘時などのダメージ決定には、特に「レーティング表」というチャートを使用する[7]。これは2D6のみを用いて様々な範囲の乱数を導き出すための対照表である。武器の強さや魔法の力によって定められたキーナンバーを横軸に、2D6の出目を縦軸に置き、互いが交差した部分に記された値を使用する。
キーナンバー0から50まで、51列の表がルールブックに掲載されている。いちいち当該ページを参照しなくても良いよう、各キャラクターに必要な列を転記する欄がキャラクターシートに用意されている。非公式だが、キーナンバー51以上の列を作成する方法が、ドラゴンマガジンの『ソード・ワールドRPG Q&A』に掲載されたことがある[8]。
剣と魔法が支配する架空の世界フォーセリア。古代魔法王国と呼ばれるカストゥール王国が崩壊し、剣の時代あるいは力の時代と呼ばれるようになって、およそ500年余りが過ぎた。
冒険者と呼ばれる者達は、古代王国の遺跡から失われた魔法技術の遺産を発掘したり、人々の揉め事の仲裁などをして生計を立てている。プレイヤーは冒険者となり、あるいは一攫千金を、あるいは立身出世を夢見て、仲間達とパーティを組み、ともに冒険の旅へと出発するのである。
なお、『ロードス島戦記』シリーズはほぼ同時代、『クリスタニア』シリーズは約300年後の時代という設定である。『迷探偵デュダ』シリーズは一部の設定が異なっている。
ここでは、ゲームシステム上の特徴について説明する。
稀に隔世遺伝により、人間の両親からエルフやハーフエルフが生まれることがある(逆にエルフの両親から人間やハーフエルフが生まれることもある)。彼らは「チェンジリング」(取替え子)と呼ばれ、通常のハーフエルフより更に強い迫害を受ける傾向にある。非常に特殊な事例のため、チェンジリングのキャラをPCとして使用するにはGMの許可を要する。
フォーセリア(その中でもアレクラスト大陸)のエルフとドワーフは、世界観の源流の一つであるD&Dなどとは違い、それほど互いを嫌いあってはいない。
上記以外の種族でも、ダークエルフ、マーマン、リザードマンなどキャラクターデータ化されているものもあるが、種族内で個性が存在することを示すものであり、基本的にPCとしては選択できない。
ソード・ワールドRPGにおける技能は、基本的に1つの職業が扱う分野の知識と技術をまとめて1つの技能として扱う、実質的なマルチクラス制(兼業可能なゲーム的分業制)である。
以下に、PCが「ゲーム的に活躍するために必要」な8つの技能(「冒険者技能」)を紹介する。
これらの冒険者技能は、定められた経験点を支払うことにより取得することができる。上記以外にも、原則としてノンプレイヤーキャラクター (NPC) 専用の冒険者技能「ダークプリースト(前述の邪神官用技能)」「ドラゴンプリースト」が存在する。
技能の選択は、各種の制限の範囲内でプレイヤーの任意であり、複数の技能を同時に取得することも可能である。ただし、技能への制限は各技能について個別に課されるため注意が必要である。例えばソーサラー技能とファイター技能の両方を持つキャラクターは、重い鎧を着、剣を振るって戦うこともできるが、その状態では(ソーサラー技能を使うための制限を逸脱しているため)ソーサラー技能による魔法を使うことはできない。この場合、魔法を使うためには鎧を脱ぎ、杖などの発動体を手にしなければならない。
魔法の使用など特別なものを除き、一般に技能がなくても行為を試みることは可能であるが、技能レベルの値を加算できないことはもちろん、能力値ボーナスの加算も行えず、サイコロの出目のみ(状況によるボーナス値、ペナルティ値が加算されることはある)で判定を行うことになる。一方、技能があると成否や効果の判定の際に技能のレベル数と能力値によるボーナスポイントをダイスの出目に加算できる。従って該当する技能を持つ方が、その技能や能力値が高い方が、行為の際には当然ながら有利となる。例えば魔法を使う場合、知力が高いほど魔法の成功率や効果も高くなる。
冒険者技能の他に、冒険にはそれほど関係のないクラフトマン(職工)やマーチャント(商人)、コック(料理人)、ハンター(狩人)、ファーマー(農民)、フィッシャー(漁師)、バトラー(執事)、セイラー(船乗り)、ヒーラー(薬草師)、テーラー(裁縫師)などの「一般技能」があり、こちらは冒険の結果としての経験点では取得できない。出自が「一般市民」である人間は最初から何らかの一般技能を、「商人」はマーチャント技能を修得しており、またドワーフもクラフトマン技能を修得しているが、他は基本的にゲームマスターの裁量による。
ソード・ワールドRPGのリプレイ集。『xS』および『Waltz』を除き、連載時の掲載誌は全て富士見書房の『月刊ドラゴンマガジン』である。
単行本書名, 巻数 | 通称等 | 連載時期 | ゲームマスター | イラストレーター |
---|---|---|---|---|
ソード・ワールドRPGリプレイ集(1)-(3) | 第1部, スチャラカ編 | 1988-1990 | 山本弘 | 草彅琢仁 |
ソード・ワールドRPGリプレイ集(4)-(5) | 第2部 | 1990-1992 | 山本弘 | 幡池裕行 |
ソード・ワールドRPGリプレイ集(6)-(9) | 第3部, バブリーズ編 | 1992-1995 | 清松みゆき | 中村博文 |
ソード・ワールドRPGリプレイ風雲ミラルゴ編, 全2巻 | 1995-1996 | 清松みゆき | ぴぃたぁそると | |
ソード・ワールドRPGリプレイアンマント財宝編, 全2巻 | 1996-1997 | 清松みゆき | 伊藤勢 | |
新ソード・ワールドRPGリプレイ, 全10巻 | へっぽこーず編 | 2001-2004 | 秋田みやび | 浜田よしかづ |
新ソード・ワールドRPGリプレイNEXT, 全9巻 | ぺらぺらーず編 | 2004-2007 | 藤澤さなえ | かわく |
ソード・ワールドRPGリプレイxS, 全4巻 | 猫の手冒険隊 | 2005-2008 (Role&Roll誌掲載) | 清松みゆき | 牛木義隆 |
新ソード・ワールドRPGリプレイWaltz, 全5巻 | 2006-2008 (書き下ろし) | 篠谷志乃 | 桐原いづみ |
ソード・ワールドRPGを元とした小説は、複数の作家によるシェアード・ワールド・ノベルとして発表されている。1冊1話、あるいは数冊に渡って1つの物語を為す長編小説を「ソード・ワールド・ノベル」、1冊に複数の作品を掲載する短編小説群を「ソード・ワールド短編集」と呼ぶ。その他には、投稿企画から生まれた「アドベンチャー」および「シアター」がある。
詳細はソード・ワールド短編集参照。
『ソードワールドSFC2 いにしえの巨人伝説』のラジオドラマ化。全国6局(北海道STV、東京TBS、名古屋東海ラジオ、大阪ABC、広島RCC、福岡RKB)で1994年に全12回放送された。
パーソナリティは声優の堀秀行と宍戸留美。ラジオドラマとトークによる二部構成。出演声優の柳沢三千代や塩沢兼人、小説版作者の白井英を始め安田均、清松みゆき等もトークゲストとして出演した。後に出演声優4名(堀秀行、塩沢兼人、渡辺菜生子、久川綾)が担当したキャラクターで遊んだ誌上リプレイもドラゴンマガジンにて公開されている。また登場人物サレムの姉の名前であるシスティナ(演:柳沢三千代)はこのラジオドラマの公募で決定したものである。ドラマ部分は後にドラマCDとして発売された。
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