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『新ソード・ワールドRPGリプレイWaltz』(しんソード・ワールドアールピージーリプレイワルツ)は、グループSNEによるソード・ワールドRPGのリプレイシリーズの1つで、全5巻15話から成る。ゲームマスター・執筆者は篠谷志乃、イラストレーターは桐原いづみ、監修は清松みゆきである。プレイヤーキャラクターはナジカ、ディケイ、アイル、キーナ、ブランシュの5人で、「へっぽこーず編」や「ぺらぺらーず編」のような特に決まった呼び名はなく、シリーズ名からWaltzと呼ばれる。
Waltzは前作同様、前シリーズが進行中に開始されたリプレイシリーズである。雑誌掲載はなく、文庫書きおろしであった[1]。なお本作のプレイヤーにはTRPG未経験者が含まれていたり、TRPGの経験はあってもソード・ワールドRPG未経験者も含まれていたように、ソード・ワールドRPGのリプレイであるにもかかわらず、ソード・ワールドRPG自体に不慣れなプレイヤーが複数名関わっていることもWaltzの特徴である。このためかルールは、後述のSEコンバットを用いるなど簡略化されており、ロールプレイ重視のシリーズとなっている。本作と、同時期に展開した猫の街の冒険の2つのリプレイシリーズの完結を以って、フォーセリアを舞台としたソードワールドRPGのリプレイシリーズは一旦幕を下ろした。以降はソードワールド2.0のリプレイシリーズが展開されていった。
Waltzのリプレイ集各巻のサブタイトルは、以下の通り、全て単語を3つ並べ、中点で結ばれている。全5巻15話だが、13話の前に12.5話が挿入されている。
ドラゴンマガジンに掲載された特別編。ナジカ・アイルと別行動中のキーナ・ブランシュ・ディケイがガルガライスの別荘地でとある依頼を受けることになる。キーナが「戦士4レベル・グレートソードとモールを操る」と紹介されていることから一行は3巻終了時の状態であり、同時期発売の雑誌の夏特集に合わせた記事の為、本編と矛盾する(3巻から4巻冒頭、一行はゴーバに滞在しており、また4巻12話、子供たちはドレッドノートで初めて海を見ている)。
リプレイではないが、キャラクター達がソード・ワールドRPGの記事に登場している。
Waltzは1992年に発表されたソード・ワールドRPGリプレイ第2部以来、約14年ぶりに西部諸国を舞台とした作品であった[2]。その存在自体を無かったことにされることすらあった「西部諸国ワールドガイド」「ソード・ワールドRPGアドベンチャー」において作られた設定が、Waltzでは活かされた。
Waltzのパーティメンバーは「かつてないほどの善良なメンバー」と評されることが多い[3]。また、冒険で得た報酬の使い道も、自分達のためのマジックアイテム購入などよりも、元々自分達が身を寄せていた孤児院にいる子供達のためにと、その多くを孤児院への仕送りに使ってしまう有様だった。その上、依頼者に対して提示された報酬よりもさらに多い報酬を要求するどころか、正当な報酬ですら逆に断ろうとするなど、既存のリプレイのパターンから大きく外れる面が度々見られる。
また、TRPG初心者が参加していることを割り引いても[4]、プレイヤーがルールを逆手にとってGMを困らせたりする様子もない。戦略戦術面ではむしろかなり優秀と言ってよい程であるが、それが陰性の方向へ向かうことがほとんどない稀有な例と言える。
しかし、「情けは人の為ならず」的に、彼らの善行が有利なコネを生んだりしている側面もあり、行く先々で彼らの後援者的なNPCが生まれ、それが実際に役立ったケースもある。3巻では遂に王族にお目通りさえしている。
ところが、4巻でナジカが誘拐された事でパーティ全体(特にキーナとブランシュ)が暴走状態に陥り、目的の為には手段を選ばない非常にブラックな一面が明らかになる。GM自身、この回のセッションを「黒ワルツ」と呼んでいる。この事件の後遺症は重く、パーティ内の人間関係が微妙にギクシャクし始めるようになった上に、次のセッションで死者を出してしまう。これ以降、最終回に至るまで、プレイヤーキャラクター同士の人間関係、特に恋愛関係が詳細に描かれたのも特徴と言える[5]。
本作は簡略戦闘ルールSEコンバット[6]の紹介を目的の1つに掲げたシリーズであり、同ルールが採用されている他、Waltz第1巻の巻末には同ルールの詳細が記載されている。ちなみに猫の街の冒険では、SEコンバットの原型であるVEコンバットが採用されている。なお、VEコンバットにはソード・ワールドRPGの通常の戦闘ルールとは違った要素も入るが、このSEコンバットはソード・ワールドRPGの通常の戦闘ルールの単純な簡略化という位置付けである。例えば通常の戦闘ルールは、予め行動を宣言(味方と敵の知力を比較して、より知力の低い側が先に行動宣言し、次に知力の高い側が行動宣言)して、その後、戦闘に参加している者の敏捷度(素早さ)順に処理が行われる。これに対しSEコンバットでは、予め行動宣言をするというのが省かれているし、敏捷度の順番も把握しておく必要はない。まず、戦闘開始前にサイコロを振って先攻と後攻を決め、その後は、先攻が任意の順番で行動して全ての処理が終わったら、後攻が任意の順番で行動して処理をするという形で戦闘が進められる。また例えば通常の戦闘ルールでは、単位時間当りにできることがある程度細かく定められている(SEコンバットに比べて複雑であり、一文で書けるようなものでもないので詳細は省略する)。これに対しSEコンバットでは、戦闘時に取ることができる行動を「主行動」と「副行動」に分類されていて、副行動は主行動の前に任意の回数行え、主行動を行ったら行動終了といった形に整理されている。他にSEコンバットでは魔法の効果範囲なども単純化されていることなどが、通常ルールを簡略化した点として挙げられる。
このような簡略化が行われているため、通常の戦闘ルールとは有効な戦術が変わるし、戦闘のバランスも変わってくる。そしてWaltz第2巻でも言及されているように、通常の戦闘ルールよりもレンジャー技能の有用性が増すために、キャラクターの有用な成長のさせ方も少し変わってくる。SEコンバットを、キャンペーンの途中から導入することは勧められないとされる所以である。
人間関係としては、ナジカを先生とした教え子4人という構成。孤児院が農作物の不作により財政難かつ食糧難になったため、15歳になった子供達3人が、大食らいであるナジカともども口減らしに出されたのを機に、冒険者パーティーとして結成された。17歳のディケイは既に孤児院を出ていたものの、冒険者としてやっていくには性格的に不安な4人をリードさせるため、孤児院の院長によって呼び戻され、兄貴的役割を負うことになった。なおソード・ワールドのリプレイでは、しばしばプレイヤーズキャラクターのパーティーに通称が付いてきたが、このパーティーの場合は通称が最後までつかなかった。
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