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トイレに行けない人の下腹部に着用させ、排泄物を受け止めるもの ウィキペディアから
おむつ(御襁褓)、は、尿や便を捕捉するため下腹部に着用する布や紙である。使用形態や元々の素材から大きく布おむつと使い捨ておむつ(紙おむつ)に分類される。
主として、赤ちゃん(乳幼児)や一部の高齢者・障がい者・入院患者など、排尿や排便を自己の意思で制御できない者や、体の自由が利かないためにトイレに行くことが困難な者、ABDLが使用する。また、普段はトイレで用を足せるが、失禁・過敏性腸症候群・夜尿症などを患っている人の対策としても使われる。
基本的には乳幼児・高齢者・障害者・病気を理由に使用する例が殆どであるが、特殊な例としては、長時間不自由な状況下に置かれる以下のような職業で使用されることがある。
犬や猫などのペットに使わせる場合もある。ペット専用の物は尻尾を通す穴がある物もある。
尿や便の水分を保持する目的から吸水性を求められ、水分の漏れを防ぐために防水性のある素材で外側を覆い、脱落を防止するために固定、あるいはゴム状の素材などである程度締め、固定する必要がある。肌に直接触れ、かつ特に肌の弱い乳幼児に使用される性質上、素材の肌触りもまた重視されている。
古来よりの言葉「むつき(襁褓)」が口語として変化したものとする説と、1反のさらしから6枚分のおしめが取れることからおむつと呼ぶようになったとする説がある。 ちなみに、源氏物語の桐壷の巻に、光の君(光源氏)が繦緥(むつき)にくるまれていたという記述があるが、古来よりの言葉「むつき(襁褓)」は、嬰児の産着を指していたのであって、現代のおむつ(おしめ)を指していたのではない。
綿やポリエステルなどの布製のおむつ。輪型のドビー織のおむつや形成おむつ、ポケット式の形成おむつなどの種類がある[3]。
吸水性のある布や綿でできた吸水部分を股間にあて、全体を覆うようなカバーを使って体に密着するように固定する。おむつもカバーも、洗濯して繰り返し使用する。おむつとカバーが一体化したオールインワンと呼ばれる形式もある[3]。
乳幼児用の輪型のおむつの場合には重ねて使用するが、乳幼児の月齢に比例して尿量が多くなると重ねる枚数が増えるため、通気性を考慮する必要 がある[3]。
おむつは1日に多いときは20回ほども替えるので最低で20組、余裕をもたせるには30-40組ほどは必要になる。おむつカバーは4-5枚、赤ちゃんの成長に合わせてサイズの大きい物に買い替える[4]。
1970年代までの日本では、三角おむつや巻きおむつと呼ばれる腰に巻きつけるようなおむつの当て方による股関節脱臼児が多かった為、1980年代以降、布おむつは股おむつと呼ばれる当て方で使用するように徹底的な指導が行われた。
布おむつと紙おむつの摩擦感を比較した試験では、紙おむつの方が滑らかとする結果が出たが、洗濯による布の劣化の影響もあると考えられている[3]。
紙おむつは、表面材、吸水材、防水材、止着材、伸縮材、結合材などから構成され、このうち吸水材に吸収紙、綿状パルプ、高分子吸収材などを用いているものである[3]。かつての使用素材は紙や綿やパルプであったが、1980年代以降は高吸水性ポリマーや不織布を使用するなどの工夫により、布おむつを凌ぐ性能を有するようになっている[6]。
世界初の乳児用紙おむつは1940年にスウェーデンで誕生した[8][9]。当時、スウェーデンではドイツによる経済封鎖で綿布が不足しており、紙を重ねてメリヤスの袋で覆った紙おむつが開発された[8]。このおむつはヨーロッパスタイルと称され、第二次世界大戦後にアメリカに伝わってさらに発展を遂げた[8]。
日本では1950年頃に初めて紙おむつが発売された[8]。1977年にはアメリカからテープで止めるタイプの紙おむつが輸入された[8]。日本の国産のテープ型紙おむつは1981年に発売された[8]。
一方、大人用紙おむつは1962年にクレープ紙を重ねたフラット型のものがまず誕生した[9]。
1974年にはアメリカで自重の200~1000倍の水を吸収できる高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer ; SAP)が開発された[8]。1978年には世界で初めて日本企業が高吸水性樹脂(SAP)の商業生産を開始し、さらに1983年には世界で初めて日本企業が高吸水性樹脂(SAP)入りの紙おむつを発売した[8]。この高吸水性樹脂(SAP)入り紙おむつは、薄くてコンパクトなことや、取り換え回数が大幅に減少できるなどの特長を持ち広く普及した[8]。
さらに1991年にはベビー用パンツタイプ紙おむつ、1994年には大人用のパンツタイプが発売された[8]。特に大人用のパンツ型は被介護者が自ら装着することができ、高齢者の排泄自立に貢献した[8]。
紙おむつの種類には乳幼児用と大人用がある[10]。
乳幼児用の紙おむつの形状には、フラット型、テープ型、パンツ型がある[10]。2000年代後半以降、おねしょや夜尿症・昼間の失禁を抱える小学生以上の者の使用にも視野を入れた「ビッグより大きいサイズ」「スーパービッグサイズ」のラインナップが拡充している。
大人用の紙おむつの形状には、フラット型、テープ型、パンツ型のほか、尿取り用パッドと失禁用パッドがある[10]。
乳幼児、高齢者や障がい者向けの需要がほとんどを占めるが、比較的年齢が若くて心身に障害がない学童期から中年期の健常者でも、失禁、頻尿、夜尿症や過敏性腸症候群などの症状を抱えていたり、入院や手術の時、スキーやスクーバダイビングなどトイレまで遠い雪山や海中でのスポーツの時、高所・深海[11]・宇宙空間[12]での作業や駅伝・マラソン等のスポーツ中継のアナウンサーの実況などの長時間トイレに行けない特殊な環境下に拘束される業務に従事する者、そして変わった所ではバラムツやアブラソコムツ等の有害魚類を食した時の油脂が肛門から漏れるのを防止する際[13]にも使用する事もある。
テープ止めタイプはフラットタイプのおむつにおむつカバーの機能の一つである面ファスナーの固定部と横漏れ防止のギャザーを一体化させたものであり、基本的におむつカバーは不要である[注釈 1]。乳幼児用と大人用では形状が違い、大人用の方が股上部分が大きく[14]、へそまで隠れやすい。
紙おむつの中ではランニングコストは比較的安価であり、ズボンを完全に脱がさなくても交換できるメリットがあるため、世界的に紙おむつの主流となっているが、おむつ替えの際は使用者を寝かせて装着・交換することが望ましく、乳幼児は外出先でもベビーベッドや授乳室などおむつ替えを行うスペースを確保しやすいのに対し、大人(幼児期を過ぎた子供を含む)は一部の多目的トイレに設置してあるユニバーサルベッド[注釈 2]があるトイレや介護福祉施設などの更衣室、新幹線や一部の在来線特急列車に設けられている多目的室など、大人のおむつ替えができる場所を把握しなければならないため、大人のお出かけ用にはあまり向いていない。そのため、日本では自由に歩ける前の低月齢の乳幼児や寝たきりの人に使われることが多く、それ以外の人でも寝ている状態ではパンツタイプより吸収体が大きくて漏れにくいことから就寝時に使われることが多い。日本では多くの乳幼児が乳幼児用「Mサイズ」から「Lサイズ」に切り替わる時に立てるようになって活発に動き回りじっとしていなくなる時期を迎えることが多く、立ったままでもおむつを交換できるパンツタイプの需要が多くなるため、1990年代中頃からは乳幼児用「ビッグサイズ」のテープ止めタイプを取り扱う銘柄が少なくなっている[注釈 3]。国内メーカーでは大王製紙の1社のみが乳幼児用「ビッグサイズ」と「スーパービッグサイズ」のテープ止めタイプを取り扱い、「スーパービッグサイズ」は障がい児を持つ家庭の需要に応えて大王製紙が開発した製品である[15]。なお、リブドゥコーポレーションなどが取り扱う大人用「SSサイズ」も「スーパービッグサイズ」とほぼ同様の目的で開発された製品であるが、股上部分の形状など双方で大きく異なる点も少なくない[14][15]。
大人用は尿とりパッド併用を前提とする製品も多く、吸収体を薄くしたりドーナツ状としている製品も見られる。各社とも乳幼児用は1990年代後半以降、大人用は2000年代前半以降の製品から外側の素材がビニールむき出しから不織布へと変化し、肌触りや通気性が改良されている。
パンツタイプはゴムのシャーリングが入った不織布製の使い捨てパンツとギャザー・吸収体が一体化したものである。ユニ・チャームが最初に開発し、乳幼児用は1992年[16]、大人用は1995年に登場した[17]。使用者本人でもブリーフやショーツといった一般的な下着と同じ感覚で装着・交換ができ、自分で歩ける人のお出かけ用や、ある程度立ち上がれる人のトレーニングパンツ的な用途としても用いられている。しかし、ズボンを完全に脱がさないと交換できず、テープ止め紙おむつと比べて吸収体の面積が小さく、寝ている状態ではテープ止めタイプに比べて漏れやすいため、寝たきりの者や就寝時の使用には向かない。ただし大人用ではズボンを完全に脱がさなくても交換できるように、パンツタイプながらもテープでも固定ができる製品も発売されている[18][注釈 4]。なお、テープ止めタイプやフラットタイプと比較してランニングコストは高価である。パンツタイプの方がウンチが漏れにくいという意見もある一方で、ポイントを押さえ、慣れればパンツタイプが楽だがウンチの時にはコツが必要という人もいる[19]。
乳幼児用のパンツタイプの中には特殊用途として、トイレトレーニング用、夜尿症(おねしょ)対策用、水遊び用パンツも発売されている。トイレトレーニング用は吸収体の表面におしっこの水分が付着すると濡れた感じがするような加工が施され、商品によっては絵柄の色が変わるように施されているものもある。夜尿症対策用は長時間おむつを取り替えなくても漏れないよう、昼間用の紙おむつより吸収体を強化し、商品によっては布製の下着の質感に近づけたものもある[20]。高月齢の幼児や小中学生が着用することも想定されている夜尿症対策用や「スーパービッグサイズ」も含めて「パンツ」の文字が強調されているが、日本衛生材料工業連合会のガイドラインでは「乳幼児用紙おむつ」と標記され、多くの商品は低月齢の乳児向けの製品と同じブランド及びパッケージの装丁を踏襲している。一方で水遊び用パンツは海やプールでの水遊び用に便漏れ防止のギャザーのみ付いており吸収体が入っておらず、尿や軟便はすり抜けるため、日本衛生材料工業連合会のガイドライン上は「紙おむつ」に当たらず「使い捨てパンツ」の標記である。単独でも水着と併用でも使用できるが、プールで使用する場合は水遊び用パンツを含めたおむつ着用を禁止しているところもあるため注意が必要である。
フラットタイプは布おむつをそのまま紙おむつに置き換えたものである。紙おむつの登場時からあり最も歴史が古く、排便に対応するおむつでは最も安価であるが、布おむつと同様におむつカバーとの併用が必要である。そのためお出かけ用には全く向いていない。2023年現在、日本国内で発売されている製品はほとんどが大人用である。乳幼児用はテープ止め紙おむつの普及により市販品からは消滅したが、助産院などで超未熟児に使用される業務用製品として2019年に復活した[21]。
おむつと性器の間に装着する補助パッドである。2023年現在、日本国内で発売されている製品はほとんどが大人用である。
おむつを使用しない軽失禁者・中失禁者の布製下着に装着する補助パッド及び、幼児や学童のトイレトレーニング及び夜尿症対策として布製下着に装着する補助パッドについては、尿吸収パッドの項で述べる。
この他、トイザらス(NEWウルトラプラス)・イオングループ(トップバリュ ベビーぱんつ)等、プライベートブランドのおむつを販売しているケースがある。
なお、ユニ・チャームは日本国内においては上記のとおり「ナチュラルムーニー(マン)」「ムーニー(マン)」「マミーポコ」と3種類のブランドを使い分けている。「ナチュラルムーニー(マン)はオーガニックコットンを採用しており品質・機能性最重視、「ムーニー(マン)」は中間、「マミーポコ」は経済性(価格)重視のブランドとなっている。なお、2020年現在は全てのテープタイプ及びパンツの新生児・Sサイズ・Mサイズ(はいはい)・スーパーBIGサイズは「ナチュラルムーニー(マン)」・「ムーニー(マン)」のみの展開である。(2018年までは「マミーポコ」もテープ止めタイプを発売していた。)海外では「マミーポコ」がメインブランドとなっており、テープ止めタイプも引き続き展開、台湾では「ナチュラルムーニー(マン)」相当の商品も「マミーポコ」ブランドで発売されている。
日本国内で発売されたブランドのみ記載。
乳児用おむつ及びABDL向けおむつにはおしっこサインが存在する。おしっこサインはおむつを着用している人がおしっこをすると色が変わる線のことであり、おむつ替えのタイミングが一目でわかるようになっている。
保護者が乳児の排泄サインを察してサポートし、なるべくおむつの外で排泄する機会を増やしていく育児方法[32]。日本においては、2006年に津田塾大学教授の三砂ちづるが提唱したことが始まりとされている[33]。
「早期トイレトレーニング」ではなく、あくまで、排泄を通した親子のコミュニケーションや、乳幼児にとって気持ち良い排泄をさせ、結果として排泄の自立につなげることを目的としている[32]。
乳児向け紙おむつを重ね合わせて、ケーキの様に形成させた、主に妊娠出産祝いに向けたギフト商品。
おむつ皮膚炎は、おむつ内の湿潤環境で皮膚が傷つきやすくなっているところに、摩擦が加わって刺激物質が侵入し、また皮膚のpHが上昇することで刺激性のある細菌の活性が起こることで生じる[34]。一般的には「おむつかぶれ」と呼ばれている[35]。
日本では長らくはユニチャームが製造しているマナーウェアだけであった。マナーウェアは犬用は2015年、猫用は2020年に発売した。 なお、マナーウェアは大型犬には非対応。
2023年9月にエリエールが犬用のオムツ「アクティブウェア」と「リラックスウェア」の発売となった。
なお猫のオムツはユニチャームのマナーウェアが唯一となっている。
おむつを乳幼児・幼児に使用する場合、1日5回から10回程度と、頻繁に交換使用される。布おむつの場合汚れた部分を洗い流し、何度かリユースすることができるが、使い捨ておむつの場合、リユースやリサイクルを前提には作られておらず、吸水部分のみならず、体に固定するカバーに相当する部分も含めて捨てることになる。紙おむつに使われる高吸水性高分子を使った吸水部は焼却やリサイクル時に問題となっている[37]。
イギリスでは下水道に流す者もおり、しばしば下水道内で異物(ファットバーグ)を成長させて詰まらせる原因となる[38]。
日本においては大量の廃棄物を出す原因として、自治体やゴミ処理場の負担となっている[37]。廃棄方法は自治体によって違う可能性はあるが、基本的には、汚物をトイレに捨て、おむつ本体は可燃物として廃棄するよう求められている。また、紙おむつに着いた便をそのままにしてごみに出した結果、収集車がごみを詰め込む過程で破裂してし尿が飛び散るという事故が頻発したことや、乳幼児が外出時に交換した使用済み紙おむつを公園などに捨てることが多発した報告を受け、メーカー側は紙おむつのパッケージに使用済み紙おむつの処分方法のマナーを絵表示している[39]。
2020年頃から使用済みの紙おむつを回収・処理し原料として新しい紙おむつを製造する試みが行われている[40]。ユニ・チャームでは鹿児島県の自治体に回収ボックスを設置しモデル事業を行っている[37]。花王では京都大学や愛媛県と連携し、保育所などに設置した装置で熱分解することで体積を減らし原料として回収する計画を進めている[37]。
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