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天体現象 ウィキペディアから
食[1](しょく、英語: eclipse[1]、古代ギリシア語: ἔκλειψις「力を失う」に由来)とは、ある天体が別の天体の動きによって隠される天文現象である[2]。
食は移動する天体の動きに従う光量の変化として観測される。観測者が、光源天体からの光を隠す天体を見ているのか、光を隠している天体が別の天体表面に投射した影(像、写像)を見ているのかによって区別できるが、どちらも食と呼ばれている。
区別されるときは、前者は「掩蔽」(例:日食)といい、後者は影による食(例:月食)という。掩蔽のうち、隠す天体が隠される天体に比べ極端に視直径が小さい場合を通過といい、隠されるほうの天体が太陽の場合を特に太陽面通過という。
食を説明するときは、概ね観測者を地球に置くことが多かったが、探査機の開発により、地球外での観測も可能となっている。地球上で日食が起きているとき、これを月面から見るとすると地球上に「影による食」が見える。また、地球上から月食が見られているとき、これを月面上の「影による食」の部分で日食が起きている。
「食」は食物を囓った痕が歯型により残った湾曲した形に因むが、日食・月食以外にはその意はほとんどない。日食や月食が起きるしくみが知られていなかった時代には、インドなどではラーフやケートゥなどの見えない星が食の原因と説明されていたことがあった。
英語「エクリプス」は天文以外の他分野でも用語として用いられている。
「食」は「蝕」の代用表記である[3]。日本での日食の最古の記録である日本書紀では「日蝕え尽きたり」と表記されているが[4]、明治2年前の文献では「食」と「蝕」が混在しており[5]、更に1956年の第3期国語審議会[3]では、「食」と表記するように決定している[6]。2010年代の天文書・天文辞典では「食」と表記されているが[7][8][9][10][11]、「蝕」との表記例もある[12]。
また曲名など学術的でない分野においては『蝕』と表記する事もある。
原理的に、ある天体の光を太陽が隠すことは起きているが、光度の差が大きすぎるために観測された事例はほぼない[13]。
惑星や衛星、小惑星などによって恒星が隠される現象を恒星食といい、地球の月によって恒星が隠される場合は特に「星食」という。天王星や海王星の環は恒星食による恒星の明るさの変化から発見されている。
1990年代から小惑星の位置予報の精度が向上し、アマチュア天文家による掩蔽の多点同時観測により正確な軌道だけでなく、大きさや形、衛星の有無まで観測することができるようになった。
軌道面が観測者の方向と一致している連星は掩蔽により光度が変化する。これを食連星(食変光星)と呼ぶ。確認されていなかった連星や太陽系外惑星が食(通過)を要因とした減光から発見された例もある。
月面上に地球の影が射す現象を月食と呼ぶ。厳密にはこれを地球上から観測している場合である。
地球の影に月が入る現象を月食と呼ぶ。
惑星上に衛星の影が射す現象を衛星の食と呼ぶ。「掩蔽」とは厳密に区別される。
水星と金星は衛星を持たないため、これらの惑星では衛星による食は起こらない。また内惑星が太陽面通過する際に地球上には原理的に内惑星の影が射す(あるいは光量が減っている)ことになるが、変化が小さすぎるため内惑星の影は観測できない。
外惑星は地球に昼の面が向いていれば、望遠鏡により惑星面上に衛星の影が観測できることがある。
火星表面には火星の衛星の影が射すことがある。フォボスの影を参照のこと。
木星や土星などの多くの衛星を持つ巨大惑星では惑星表面に衛星による食が頻繁に起こる。最も特筆すべきは木星での現象である。木星には4個の大きなガリレオ衛星があり、これらの衛星の軌道傾斜角が小さいために食現象が頻繁に見られる。これらの衛星が円形の影を木星表面に落としている光景はよく見られる。
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