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墓石(ぼせき、はかいし、英: tombstoneあるいはheadstoneあるいはgravestone)とは、墓の上に設置される大きめの石や石材加工品。墓碑(ぼひ)ともいう。
日本においては五輪塔、宝篋印塔、宝塔、多宝塔、層塔、板碑なども含まれる。
旧石器時代以降、死者は様々な形で土中に埋葬されるようになった。縄文時代後期から弥生時代より後には、墳丘墓など有力者が葬られた、一見してそれと分かる墓所も造営されるようになった。古墳が姿を消した後の平安時代、公家や地方豪族、高僧らが亡くなると、主に仏教に基づく供養塔や墓石としての五輪塔、宝篋印塔、宝塔、多宝塔、層塔などが建てられるようになった。その後、鎌倉時代から室町時代にかけて、禅宗の到来とともに位牌と戒名が中国から伝わる。その影響からか、位牌型の板碑や今日の墓石に近い角柱型のものも作られるようになった。薄い板碑と違って紙面に文字を刻むことができ、家族墓として利用しやすいためである。
庶民が墓石を建てる習慣は、戦国時代の畿内に始まった。江戸時代になると檀家制度が確立され、人々に先祖に対する供養や葬儀、墓など仏事が生活の中に定着したことにより、全国的に見られるようになった。船で遠方の石材を運んだり、各地に石切り場や石工が増えたりしたことで、以前より墓石を安く入手できるようになったことも背景である。苗字帯刀が許されなかった庶民も、墓石に苗字を記すことは黙認されていたと推測される[1]。墓石に家紋を入れるようになったのはその頃からである。
はじめ墓石は個人や夫婦のためのものであったが、明治中期以降は家制度の確立により、家単位で建立される習慣が定着した。その為、正面には以前は故人の戒名(法名)を彫っていたものから、「○○家(先祖代々)之墓」といった形に変わっていった。
第二次世界大戦後、霊園の洋型の墓石が登場。現在ではデザイン墓石など多様化している。
近年では、少子化の影響や墓地の区画整理により本来の位置から移転することも増えてきている。
現在、日本で建立される墓石の形状は大きく和型、洋型、デザイン墓石に分けられる。以下の説明にあるように、和型は基本的な形がある程度決まっている。墓地の場所や墓の形が家族の吉凶を左右すると唱える、家相や風水に通じる墓相(学)という考えがある[2]。
基本的には台石を2つ重ねた上に細長い石(棹石)がのる「三段墓」。全体的に縦に長く背が高い。
親族がいなくなったり、墓の管理を拒否したりすると、墓はいわゆる無縁仏となり、墓石の処理が問題になる。永代供養でも期限付きであることが多い。不用になった墓石は魂抜きの供養など宗教行為の後、産業廃棄物のがれき類として処分され[5]、一般的には砕石され路盤材などに利用される[6]。
このため個人の死生観や宗教観に基づく理由のほか、子供がいないなどで一族が絶えることを想定したり、子孫に負担となることを嫌ったりして、墓石を建てない人もいる。その場合、散骨や自然葬、他人と共用の屋内納骨堂[7]といった方法が選ばれる。
18世紀には髑髏や智天使、王冠、骨壷、墓掘り人のつるはしやシャベル等のメメント・モリの意を含む装飾が彫られた。その他の珍しい例としては、時の翁(「時」の擬人化)等の寓話上の人物や家紋などのエムブレム、故人の生涯(特に死因など)がある。
19世紀には墓石は多様化し、簡素なものから豪奢な装飾を施したものまである。十字架や天使などの装飾のほか、高度な加工をほどこしたものもあった。
墓石には、基部は直方体状や半円状や球状などがあり、頭頂部は楕円形や錐形等がある。
装飾に用いられた各種エムブレムはキリスト教など宗教上のテーマに関連している。
現代では、簡素な形状の墓石も多い。
墓石ではなく金属、木材や植物を墓碑の素材とすることがある。
昔は、鑿と金槌で彫っていたが、現在、文字の彫刻はサンドブラストという研磨材を高圧で吹き付けて、徐々に表面を削る手法で掘られている例がほとんど。まず、墓石の表面を研磨してから、彫るべき部分を切り抜いたゴムシートを張り、彫らない部分を保護しておくと、磨いた表面は傷つかず、彫るべきところのみを削ることができる。
墓石は葬られた人物の生没年や事績などを知る歴史的史料としても活用され、生没年が複数説ある人物の場合は刻まれた年記の歴史的背景を探るための資料としても活用される。石材である墓石は比較的堅固な史料であるが、長年の歳月により表面は摩耗し、文字の解読が困難となる場合もある。
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