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団体交渉(だんたいこうしょう, Collective Bargaining)とは、労働組合が、使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉すること[1]。団交(だんこう)と呼ぶことも多い。
OECDは団体交渉システムを以下の5つに分類している[1]。上位レベル(産業セクター)で締結された協定を、企業レベルで変更可能な余地があるかは様々である[1]。場合によっては、賃金調整(輸出セクターと国内セクター間、もしくは企業間)がなされることがある[1]。
OECDは、中央集権型または組織化された分散型のグループは、完全分散型なグループよりも、より良い労働市場をもたらしていることを示唆している[1]。たとえば女性・若者・低スキル労働者の失業率、不完全雇用パートタイマー率の低さに表れている[1]。
国際労働機関(ILO)第98号条約(団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約)は、団体交渉権を認め、政府はそれを促進する措置を行うよう求めている[2]。Fundamental convention(中核的労働基準)のひとつであり、日本はこれを批准している。
第4条 労働協約により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者又は使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続の充分な発達及び利用を奨励し、且つ、促進するため、必要がある場合には、国内事情に適する措置を執らなければならない。 — 1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)
日本では、労働組合と会社間の交渉のうち、特に日本国憲法第28条及び労働組合法によって保障された手続きにのっとって行うものをいう。これらの手続きによらない交渉は一般に労使協議として区別される。団体交渉にこのような手続きを保障しているのは、労働組合法は労使の対立を前提とした法制度であり、交渉が決裂したときにはストライキなどの争議行為を予定しているためである。
使用者は、誠実交渉義務により、労働組合より申し入れられた団体交渉を正当な理由なくして拒否する事はできない。正当な理由のない団体交渉拒否は不当労働行為となる(労働組合法第7条第2号)。
実際には多くの会社において、団体交渉の前に、事前の労使交渉において会社の問題状況の把握と意見交換が行われていて、その席で主要な労働条件等について協議されることも多い。また、企業別労働組合が圧倒的な主流である日本においては、企業外の労働組合が参加する団体交渉は多くない。
労働組合法に定める要件を満たす労働組合のみが使用者に対して団体交渉を要求でき、それが拒否された場合には不当労働行為として労働委員会に救済申し立てをなしうる。
労働組合は団体交渉を第三者へ委任する事が可能で(労働組合法第6条)、これをもって、上部組織や下部組織、外部の労働組合が交渉に参加する権限を持つ。委任が明らかであれば当該組合の組合員である必要もないので、弁護士等の専門家でも構わない。
労働組合の交渉相手となる「使用者」は、原則として労働契約上の使用者と一致するのが通常である。しかしながら、組合員との間で労働契約に近似する関係にある者については、例外的に労働組合法上の規範を及ぼすべき場合がある。具体的に認定されたケースとして以下の例がある。
2007年6月25日、宮城県労働委員会は、親会社に対し、親会社の経営方針により解散した子会社の従業員で組織する労働組合との団体交渉に応じるよう命じた[3]。親会社が子会社を全面的に支配し、子会社が親会社の意思決定に反することができない構造であり、実質的な影響力などを行使していた場合には、直接の雇用関係のない親会社に使用者性と雇用責任を認めた。団体交渉とは、雇用関係がある使用者と労働組合との間で行われるものであり、直接の雇用関係のない親会社にその義務があるかが争われた。
住友ゴム工業の工場内で石綿を使用する工程に携わり、その後1997年及び2000年に退職後に中皮腫を発症した元社員2人及び遺族1人が、労働組合『兵庫ユニオン』を通じ、同社に対し、健康診断や補償制度確立を求め団体交渉を要求したが同社は拒否し、2006年11月に同ユニオンが、兵庫県労働委員会に救済を申し立てたが却下されたため、神戸地裁に提訴。2008年12月の一審判決は遺族1人を除く残り2人について団体交渉権を認める司法判断を示す判決を言い渡し、2009年12月の二審(大阪高裁)もこれを追認。最高裁は2011年11月11日付で兵庫県及び同社側の上告を棄却する決定をし、退職者の団交権を認める司法判断が確定した[4]。
団体交渉における議題は、法律では特段決まっていないが、その内容により区別して考える必要がある。
厚生労働省の調査によると、過去3年間(平成26年7月1日 - 平成29年6月30日)において、使用者側との間で行われた団体交渉の状況をみると、「団体交渉を行った」67.6%(平成27年調査67.8%)、「団体交渉を行わなかった」32.0%(同32.2%)となっている。「団体交渉を行った」労働組合について、交渉形態(複数回答)をみると、「当該労働組合のみで交渉」84.1%(同87.7%)が最も多く、次いで「企業内上部組織又は企業内下部組織と一緒に交渉」12.0%(同11.4%)、「企業外上部組織(産業別組織)と一緒に交渉」4.3%(同3.0%)などとなっている[5]。
1960年代の学生運動が盛んな時期には、学校の運営当局、教授陣と学生らが団体交渉を行う事例も現れた。1969年10月28日の朝日新聞広告欄には、法政大学法学部長から学生に向け、団体交渉の開催を通告する広告が掲載されるなど大掛かりなものもあった[6]。
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