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相撲などで用いられる日本語としての四つ(よつ)とは、日本の相撲用語「四つ身(よつみ)」の略語である[1][2][3]。また、武道や、レスリングなどの格闘技で流用されることもある。
相撲の場合、「四つ」すなわち「四つ身」とは、対戦する2人の力士が互いに差し合い、体を密着させるように組み合う形を言う[4]。
右差し左上手の型を「右四つ(みぎよつ)」、左差し右上手の型を「左四つ(ひだりよつ)」と言う[5]。
「なまくら四つ」は、 右四つでも左四つでも同じように取れることを指し、相手十分の四つに組んでしまうような「良くない」意味で用いられることが多い[6]。しかし、相手不十分の四つ身になる「良い」意味でのなまくら四つを持ち味とする力士もなかにはおり、『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』では、幡瀬川邦七郎と綾曻竹藏の名を実例として挙げている[6]。
力士がしっかりと組み合うことは「がっぷり」といい[7]、互いに上手・下手廻しを引き合う体勢を「がっぷり四つ」という[5]。「#転用」も参照のこと。
両腕を差し込めば「もろ差し(もろざし)」「二本差し(にほんざし)」といい[5]、もろ差しを許した体勢は「外四つ(そとよつ)」という[5]。外四つの中でも廻しを取らずに相手の腕を上から抱き込むようにする行為については、「抱える(かかえる)」「抱え込む(かかえこむ)」と表現する[5]。
取り組む2人の力士がそれぞれに得意とする四つが同じであることは「相四つ(あいよつ)」という[5]。また、右四つを得意とする力士と左四つを得意とする力士の対戦は「喧嘩四つ/けんか四つ」という[5]。「相四つ」と「喧嘩四つ」は対義語の関係にある[8][9]。
なお、得意の差し手を狙って両者が争うことは「差し手争い(さしてあらそい)」という[5]。四つの中でも、片足を前に、もう片足を大きく後ろに引いて構える、防御に特化した型は、「半身(はんみ)」という[5]。
「手四つ(てよっつ[10])」は、両手を (右手と左手、左手と右手) 掴み合って攻撃の機をうかがう体勢を指す[10]。「手車(てぐるま)」ともいう。片手 (右手なら相手の左手と) だけを掴み合っている場合は「片手四つ」「片手車」という[10]。
また、「頭四つ(あたまよつ[11]、ずよつ)」という語もある。これは、対戦中の力士が互いに廻しを取れないでいるかもしくはあえて取らない作戦を執っていて、(それぞれが手は相手の腕に当てがうことになるが、)互いの頭を押し付け合うことになる、そのような形・状態といい、戦況としては互いに相手の出方をうかがっている状態にある[11]。
四つの体勢になることを指しては、「四つに組む(よつにくむ)」あるいは「四つに渡る(よつにわたる)」という表現がある[12]。それぞれは「よっつにくむ」「よっつにわたる」と読むこともある[12]。夏目漱石が随筆『思ひ出す事など』[注 1](1910年・1911年〈明治43-44年〉刊)の一九で、「力を商ひにする相撲が、四つに組んで、かっきり合った時、」と述べているのは、相撲用語としての用例である[12]。
四つ身(四つ)を得意(あるいは信条)とする相撲の取り方を、「四つ相撲(よつずもう)」という[13][14]。これと対極にあるのは、突き押しを得意(あるいは信条)とする「突き押し相撲(つきおしずもう)」(別名:押し相撲[15][16])で、体の大きさと動きが生み出す圧力によって相手を土俵外へ押し出そうとする相撲の取り方である[14]。突き押し相撲の力士にとって四つ身に持ち込まれることは負けに等しく、それとは逆に、四つ相撲の力士が突き押し相撲の力士との取組で四つ身に持ち込めずにいる場合は、一気に土俵外まで突き出されるなどする[15]。
梅暮里谷峨が江戸時代半ばの寛政11年(1799年)に著した洒落本で人情本である『傾城買二筋道(けいせいかい ふたすじみち)』後篇「廓の癖」の序[注 2]には、「或は足(かわつ)らあるい四(ヨ)つたとへ合臥になるともひきわけらるるのむだ骨折に」とある[3]。
元横綱・北の富士は、NHKの『大相撲中継』における解説で、突き押し相撲の稽古量は四つ相撲よりずっと多いと語っている[17]。
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相撲用語の「がっぷり」は、比喩表現という形で通用語化(副詞化)してもおり、「しっかり組み合ったり、噛み付いたりするさま」を表わす語となっている[18]。
相撲用語「がっぷり四つ」も同様、比喩表現という形で通用語化してもおり[19]、「物事などに正面から取り組むこと」や「相手と互角に勝負をすること」を意味する[19]。
相撲用語の「四つに組む」「四つに渡る」は、「互いに正面からぶつかって堂々と争う」意味に転じて通用語化してもいる[12]。坂口安吾が1946年(昭和21年)に著した評論『デカダン文学論』[注 3]の中で「藤村は人生と四つに組んでゐるとか、最も大きな問題に取組んでゐるとか」と記述しているのは、通用語としての「四つに組む」の用例である[12]。
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