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備蓄(びちく、羅: acervum、仏: stock、réserve、英: store、stockpile)とは、将来の需給の逼迫に備えて物資(資源や食料)を蓄えること。大和言葉で「たくわえ」とも。
備蓄とは、将来的に予測される需要と供給のバランスが崩れる事態、あるいは戦争、災害、パンデミックなどに伴い発生すると予想される供給の停止・激減などに備えて、必要な物資を蓄えておくことである。なお平時の流通においても、生産側から消費側に物資が流通する過程で、在庫の形により一定の変動に対応可能なシステムが備わっているが、備蓄と表現する場合には、より積極的にそれら物資を貯蔵し、異常事態に備えることを指す。
保存性が高く、長期間の貯蔵をしても問題が生じにくい性質の物資や、保存食などは、コスト(在庫コスト、倉庫の費用など)さえ見合えば行えることになる。保存性の低い物資の場合は、使用期限(食品・飲料では消費期限)に注意を払いつつ、備蓄する必要が出てくる。大抵は先入れ先出し(FIFO)の方法で、つまり先に入手したものから先に使う、という方法で順次入れ替えが行われるのが一般的である。ただし、組織の性質や、物資の性質によっては、ある物資に関しては定期的に「総入れ替え」される場合もある。例えば防災用の非常食は、「総入れ替え」される傾向が顕著である。
特定の物資が欠乏することが、組織や個人の存続に関わるような場合は特に注意深く備蓄が行われる傾向がある。「生存戦略」を考える場合、必須物資の備蓄が行われるのである。様々な国・組織・集団(=社会)が、何らかの形で、必要物資の調達と備蓄を進めている。国家的レベルで行うものも、組織レベル、家庭レベル、個人レベルで行うものも、どれも指しうるわけである。
政府レベルでは、古くは飢饉や飢餓・天災に備えた食糧備蓄が行われてきた。近代では食料品、戦略物資、衛生物資などの備蓄が進められている。
食糧が無くなれば、国民・市民の生命が失われるような危機的な状況に陥ってゆくことになる。そこで、多くの国家が基本的な食品に関しては備蓄を確保する傾向がある。食糧自給率が高い場合は比較的安全なのだが、食糧自給率が低い国では食料備蓄に注意深くならざるを得なくなる傾向がある。
燃料は照明、調理、暖房など幅広い用途につかわれる。交通機関については、人が馬に乗り、車が馬に引かれ(馬車)、船が帆で進んでいた時代はさほど問題にはならなかった。近代以降、石油で乗り物の多く(自動車、船舶、航空機等)が動くようになり、石油なしではほとんどの乗り物が動かなくなった。19世紀~20世紀以降は、燃料の備蓄が途絶えると、基本的に、車、船舶、航空機等々を動かすことができなくなるので、経済の諸活動が停止してしまう。また軍用機、艦船、軍用車 等々が動かせなくなり、軍隊の機能も停止してしまい、まともに戦うこともできなくなる。石油は、石炭や天然ガスなどとともに、発電も支えている。したがって、近代・現代では、石油の備蓄は国家戦略上、非常に重要視されている。
流通の専門家や防災の専門家などからは、店舗の商品棚に並んでいる商品も一種の備蓄としての機能を持っている、ということが指摘されることがある。いざ災害となった場合は、商品棚に並んでいる商品も、地域住民の生命をつなぐ上で重要な役割を果たすことになる。[注釈 1]
ただし、備蓄というのは基本的に、普段から、将来を見越して先手を打って行っておくことである。災害などが起きてしまってから、「後手に回って」あわてて購入するようなことは基本的には「備蓄」とは言わない。災害などが起きてしまってから大量買いするような行為は「備蓄」とは呼ばず「パニック買い」と言う。例えば、1973年の日本では、石油ショックが起きてしまってから、噂に翻弄されてトイレットペーパー騒動や洗剤騒動を起こした。あくまで、備蓄は、平時からそれぞれの判断で先手を打って行うのが肝要である。
中国の食糧備蓄に関する資料がある[1]。
日本では古くから各共同体、各家庭が食糧などの備蓄を行ってきた。そのために様々な保存食が発明された。
縄文時代には縄文土器に様々な食品が蓄えられた。弥生時代には弥生土器に取って代わり、高床建築の木造建物内に備蓄された。食品を備蓄する場合、ネズミなどによる食害を防ぐ工夫も必要だった。
最近では、2000年問題やインフルエンザの流行、東日本大震災、新型コロナウイルスの蔓延などの反省も踏まえて、各家庭がそれぞれしっかり備蓄を行うことを、日本の行政機関も奨励するようになった。
東京都は2005年、11月19日を「備蓄の日」に定め、保存食などを各家庭に備えるよう呼び掛けている。日取りは、「1」年に「1」度は、びち(1)く(9)の確認をという趣旨から選ばれた[2]。
4年に一度備蓄計画の見直しが行われている[3]。
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