シュレーフリ記号(シュレーフリきごう、Schläfli symbol)は、正多胞体を {p,q,r,...} の形で記述する記法。なお日本語ではシュレーフリの記号とも言うが、Schläfli's symbolとはあまり言わない。19世紀スイスの幾何学者ルートヴィヒ・シュレーフリ (Ludwig Schläfli (en), 1814-1895) が発案した。
正多胞体とは、正多角形・正多面体の一般次元への一般化である。なお、線分は1次元、正多角形は2次元、正多面体は3次元の正多胞体とみなす。また、星型正多胞体と正空間充填形を正多胞体に含めて述べる(ただし、正空間充填形は1つ上の次元の正多胞体とみなす)。たとえば、3次元では星型正多面体と正平面充填形を正多面体に含める。
一様多胞体を記述できる拡張シュレーフリ記号 (extended Schläfli symbol) を含めてシュレーフリ記号と言うこともあるが、ここではまず狭義のシュレーフリ記号について述べ、拡張シュレーフリ記号については最後に述べる。
定義
次のように再帰的に適用される。
- 線分のシュレーフリ記号は {} である。
- 正p角形のシュレーフリ記号は {p}である。
- n ≧ 3 のとき、各ピークに n - 1 次元正多胞体のファセット {p1, p2, ... ,pn - 2} が q 個集まった n 次元正多胞体のシュレーフリ記号は {p1, p2, ... ,pn - 2, q } である。
ピーク (peak)、リッジ (ridge)、ファセット (facet) とは、n 次元多胞体のそれぞれ n - 3、n - 2、n - 1 次元要素 (element) である。例えば、多面体(3次元多胞体)に対しては頂点(0次元要素)・辺(1次元要素)・面(2次元要素)、4次元多胞体に対しては辺(1次元要素)・面(2次元要素)・セル(3次元要素)である。
ある低次元要素に集まるファセットの様子は、その要素の次元が高いほど単純である。ただし、最も高次元なリッジに集まるファセットは、単純すぎて常に2個であり(たとえば、正多面体の辺には常に2面が集まる)、正多胞体の性質を現さない。そこで、次に高次元な、ピークに集まるファセットの個数を使えば、最も簡潔に多胞体の性質を表すことができる。
非整数は 5/2 のようにスラッシュを使った分数で記述する。分母(先の例では2)は、星型多角形の密度を表す。ピークに集まるファセットも、星型多角形のように密度を持ちえ、その場合分数表記される。
性質
n次元正多胞体とそのシュレーフリ記号 {p1,p2,...,pn - 1} には以下の性質がある。
- 数値の個数は n - 1 個である。
- 正多胞体では数値は全て整数だが、星型正多胞体では1つが分数である。
- 3次元以上の狭義の正多胞体では、数値は 3, 4, 5 の3種類しか現れない(星型正多胞体では5/2、ユークリッド空間充填形では6が加わる)。5次元以上では3, 4の2種類しか現れない。
- m 次元要素は m 次元正多胞体 {p1,p2,...,pm - 1} である。
- m 次元要素の近傍の適切な n - m - 1 次元超断面(n - m - 1 次元超平面との共通部分、断面の一般次元への拡張)は、 n - m - 1 次元正多胞体 {pm + 2,pm + 3,...,pn - 1} である。
- 双対多胞体は {pn - 1,pn - 2,...,p1} である。
特に、正多面体とそのシュレーフリ記号 { p, q } には以下の性質がある。
- 面は正 p 角形である。
- 各頂点には q 個の面が集まっている。つまり、頂点近傍の適切な平面での断面は正 q 多角形である。つまり、頂点を切頭すると正 q 多角形が現れる。
- 双対多面体は { q, p } である。
例
2次元多角形
- 正n角形 - {n}
- 正n/m角形 - {n/m}
2次元多角形による平面充填
3次元多面体
3次元多面体による空間充填
- 立方体による空間充填形 - {4,3,4}
4次元多胞体
- 正五胞体 - {3,3,3}
- 正八胞体 - {4,3,3}
- 正十六胞体 - {3,3,4}
- 正二十四胞体 - {3,4,3}
- 正百二十胞体 - {5,3,3}
- 正六百胞体 - {3,3,5}
- 大壮星型百二十胞体[訳語疑問点](great grand stellated 120-cell) - {5/2,3,3}
- 壮六百胞体[訳語疑問点](grand 600-cell) - {3,3,5/2}
- 大星型百二十胞体(great stellated 120-cell) - {5/2,3,5}
- 壮百二十胞体[訳語疑問点](grand 120-cell) - {5,3,5/2}
- 壮星型百二十胞体[訳語疑問点](grand stellated 120-cell) - {5/2,5,5/2}
- 小星型百二十胞体[訳語疑問点](stellated 120-cell) - {5/2,5,3}
- 二十面体百二十胞体[訳語疑問点](icosahedral 120-cell) - {3,5,5/2}
- 大二十面体百二十胞体[訳語疑問点](great icosahedral 120-cell) - {3,5/2,5}
- 大壮百二十胞体[訳語疑問点](great grand 120-cell) - {5,5/2,3}
- 大百二十胞体(great 120-cell) - {5,5/2,5}
4次元多胞体による4次元空間充填
- 正八胞体による4次元空間充填形 - {4,3,3,4}
- 正十六胞体による4次元空間充填形 - {3,3,4,3}
- 正二十四胞体による4次元空間充填形 - {3,4,3,3}
一般次元 (n≧5)
直積
複数のシュレーフリ記号を { ... } × { ... } × ... × { ... } と記載することで、直積集合を表現できる。
3次元の例
拡張シュレーフリ記号
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シュレーフリ記号を拡張した拡張シュレーフリ記号は、一様多胞体を表すことができる。拡張シュレーフリ記号を含めてシュレーフリ記号ということもある。
一様多胞体とは、各ファセットが1次元低い一様多胞体(必ずしも合同ではない)で、各頂点の近傍が合同な多胞体である。たとえば、一様多面体(3次元一様多胞体)には正多面体、半正多面体、アルキメデスの正角柱、アルキメデスの反正角柱、およびそれらを一般化した星型多面体が含まれる。
なお、一様多胞体は各頂点の近傍が合同なため、拡張シュレーフリ記号以外に、ディンキン図形(コクセター・ディンキン図形)や頂点形状でも記述できる(ただし、4次元以上の一様多胞体の頂点形状を簡潔に記述することは難しい)。一様多面体はワイソフ記号でも記述できる。またすでに述べたとおり、アルキメデスの正角柱(およびその高次元への一般化)はシュレーフリ記号の直積でも記述できる。
3次元の例
- アルキメデスのp角柱 - t{2,p}
- アルキメデスの反p角柱 - s{2,p} (正式には )
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