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カイウサギ(飼兎)は、ウサギの1種アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)を原種とする家畜である。ペットとして家庭で飼育するものはイエウサギ(家兎)とも呼ぶ。
毛用、肉用、実験用動物やペットとして利用されている。
なお、日本で ミニウサギ として流通しているものは、ブリーダーやペットショップが売買の便宜上に付けた名前であり、ミニウサギという独立した品種ではない。また、「ミニ」と名づけられてはいるが、交配した品種系統により、個体によっては成長すると中型 - 大型に育つ場合もある。
日本における飼育の始まりは、欧州等を原産とするアナウサギを改良して近世以降に輸入・飼育されるようになったものであるとされる。移入された時期は天文年間(16世紀前半)で、オランダ人がペットとして日本へ連れて来たと伝えられているが、正確な移入時期と経緯は確定されていない。
江戸時代中期には、ウサギを飼うことはある程度普及しており、人見必大著『本朝食鑑』では体毛が白色で赤い目をしたウサギが飼育され、人によく馴れることが書かれている。また、小野蘭山著『本草綱目啓蒙』や山本亡羊著『百品考』などには、ウサギが家で飼育されていることが書かれている[7]。喜多川歌麿の浮世絵『浮世七ツ目合』にはペットとして飼われているウサギが描かれている。当時、ペットのウサギは高価だったため裕福な商人などが飼っていた[8]。
明治になると愛玩用に耳の長い外国種のウサギがもてはやされた。1872年に在来と外国の混血から生まれた更紗模様のある種雄は200–600円で売られ、種付けは 2–3円/回であった。子ウサギはコロと呼ばれ10円以上の値が付いた。この流行はウサギバブルとも呼ばれる[9]。空前のウサギ・ブームにより、販売や飼育に手を出して破産する者、珍しい高値な毛色に見せかけるために白毛の色を柿色に染めるなどして金儲けする詐欺[10]、ウサギの売却価格をめぐった親子間の殺人事件[11]などが起こり、社会問題にまで発展した。常軌を逸した熱狂を抑えるべく、行政は取り締まりを強化した。
明治中期より、貧しい農家のタンパク源として、また防寒具用の毛皮を得るための飼育のために、農家の副業としてウサギの飼育が盛んになった。品種改良も行われ、2-3kg 程度であった在来種に対し、大型の外国種を交雑することで 5kg を超えるウサギが開発された。日清戦争 (明治27年) や 日露戦争 (明治37年) が起こると、ウサギの肉と毛皮は軍事物資としても利用された。食糧の確保および兵士の防寒着のために飼育が奨励され、太平洋戦争中には、日本がアンゴラウサギの飼育頭数の世界一にもなった。
これらの飼育を通じて、白い体毛・赤い目という特徴を持つ「日本白色種」や、体毛の長い「日本アンゴラ種」等の、日本独自の品種が開発された。
戦後、小学校などで情操教育の一環として飼育が推奨され、全国に広まりをみせた。
実験動物として利用されるようになり、ウサギの耳は毛細血管を生きたまま観察しやすいことをから、薬品や化粧品の安全性の確認に用いられた。近年では動物実験に対する考え方の見直しの動きもある。
20世紀末ころより、ウサギの脂質代謝や冠動脈の動脈硬化病変の発生部位や病変、心機能がヒトに類似している(マウスやラットのそれはヒトと異なる)ため、メタボリックシンドローム、高脂血症、動脈硬化などの成人病の解明のためのモデル動物として注目され、現在も改良が続けられている。さらに、糖代謝異常(糖尿病)の研究のため他の成人病との関連から糖代謝異常(糖尿病)などのモデル動物としての改良も進められている。そのほか、動物工場として医療で有用な抗体作成に利用される。
カイウサギ(ペット)として品種改良されたウサギは、人に慣れるといった特性を有し、トイレも躾しやすく、他のペット(猫や小動物、よく躾された犬)とも仲良くなれる。飼育方法と注意点は後述する。
適切で良い飼育環境の室内飼いの場合、8-12年、生きるといわれる。ウサギは体温調節が難しく、品種によっては、高温で体温が上がりすぎて屋外飼いに適さず死に至る事もある。しかし、犬猫と違い鳴かないからと言って、室内のケージに閉じ込めて置くのはウサギにとっては不健康な環境である。カイウサギ(ペット)の歴史が長い欧州などの欧米では、屋外のウサギ小屋で飼うのが一般的である。他の生物や人間と同様、日を浴びることは重要である。健康上の理由からも、ウサギが必要とするだけ日光浴をさせるべきだとされる。本来、自然界では日中、広大なテリトリーエリアを駆け回っている生態である。ウサギは、飛んだり走り回ったりすることがとても大好きで、ウサギを健康で幸せにするために運動は大変重要である。室内飼いの場合、運動不足から食欲低下やストレスや病気を招き、不本意な死に至らせない様、最低限サークルで囲った専用の飛び回れる十分なスペースを設けることが望ましい。住む環境が変わっただけで、個体により時には死んでしまう場合もある。とても繊細な動物でもある。草食動物のウサギは、外敵から身を守る特色の1つに、狙われない様に自分の弱さ・病気を見せないという我慢強さがある。しかしこのために、体調異変・病気・ストレスなど、飼い主が気づける頃には手遅れになっている事も多い。サークル飼いができずやむをえずケージ飼いをする際の注意点については後述。
抱かれることに慣れていないウサギは、安易に抱くとウサギが抱きかかえられることに恐怖心を持って本能的に暴れ蹴り出し、落下する場合がある。ウサギの骨はもろく、数十cmの高さからでも骨折する危険があり、ウサギが防衛で相手を蹴る行為もウサギ自身に危険で骨折したりする恐れもある。ウサギの骨折は回復困難である。正しいウサギの抱き方は、犬猫同様に片手で身体全体を抱え、もう一方の手でお尻を支える。ウサギの耳には神経が集中しており、生きているウサギの耳を持つ持ち方は、ウサギに苦痛を与える行為とされる[13][14]。(耳を持つのは、狩猟や食肉用に殺したウサギを扱う場合である。)
カイウサギは新鮮な水、干し草(チモシー、オーツ等)と生野菜を主食とし、固形ペレットは補助食用として与えるのが望ましい。干し草は消化器官や胃腸の働きを助け毛玉症や胃腸内鬱滞などにかかりにくくするほか、不正咬合の予防にもなるためウサギにとって不可欠である。干し草は24時間食べ放題にし不定期に食せる状態にする。生野菜はよく洗い水気を切ったものを与える。野菜の種類によっては毒性のあるものや高糖分のものもある。毎日濃緑色あるいは濃黄色の野菜の中で異なる3–5種類を選ぶ。
ウサギの食糞行為は、正常な行為であり、新鮮であれば問題ない。
アルファルファの芽、ビーツの若葉、ブロッコリー、芽キャベツ、ニンジンの葉、コラードの若葉、エンダイブ、パセリ、ドクダミ、パクチ、コスチャ、ケール、キャベツの外側の葉、キイチゴの葉、カモジグサ類、シバムギ、エンドウのさや(エンドウではない)、びわの葉、カボチャ、カボチャの葉、タンポポの葉、カブの葉、アスパラガス、カリフラワーの茎・葉、小松菜、クローバー、ミントの葉、マスタードグリーン、オクラの葉、ペパーミントの葉、ピーマン、パプリカ(赤、黄、緑)、ラズベリーの葉、スクワッシュ、ズッキーニ、バターナッツ、ロメインレタス、ワイルドストロベリー、バジル、コリアンダーの葉、ヤロー(西洋ノコギリソウ)、コハコベ、ラベンダー、オレガノ、セージ、フェンネル、ディル、スイバなど。
絵本やアニメに登場するウサギはニンジンが好物として描かれることが多く、事実ニンジンの根はよく食べるが、高糖分なので時々与える程度にする。キャベツはガスを溜めるのであまり与え過ぎないほうがよい。
リンゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、パイナップル、メロン、パパイヤ、モモ、プラム、ナシ、ラズベリー、バナナ、イチゴ、ワイルドストロベリーなど。果物は基本的に高糖分なので普段は与えず病気のときなどに与えるとよい。
ひまわり、カレンデュラ(キンセンカ)、デージー(ヒナギク)、マリーゴールド、キンレンカ(ナスタチウム)、アザミ、シオン属、バラ、マーガレット、ゼラニウム、ルリジサ(ボリジ)など。農薬や他の化学製品が使用されていない場合に限る。[15]
アカシア、ヒヤシンス、スズラン、スノードロップ、チューリップ、アヤメ属、トリカブト、ポピー、ミゾカクシ属、ナツシロギク(フィーバーフュー)、デルフィニウム属、イチリンソウ属、ジギタリス、カキドオシ、クレマチス、など。[15]
アボカド、タマネギ、ニンニク、ニラ、ショウガ、ホウレンソウ、りんごの種、トマトの葉、ジャガイモの芽、カカオ(チョコレート、ココア)、カフェイン(コーヒー、紅茶、炭酸飲料水など)、塩分、糖分、香辛料、ナッツやタネ類(人間用)、生卵の白身、ルバーブ(葉の部分も)、などは中毒症状を引き起こす。
ケージ飼いでは運動不足や食欲低下、ストレスを招くため、最低限サークルで囲った専用の飛び回れる十分なスペースを設けることが望ましい。ケージ飼いをするしかやむを得ない場合は、最低背伸びできる十分な高さがあり、横は十分に伸びて寝そべることができる、最小でも体長3倍程度の広さのあるものを選ぶことが必要。ケージ飼いの際は、毎日必ずケージから出して広い場所で最低数時間は飛び回り運動できる時間を与え、そして日光浴もさせるなどの配慮が望ましい。
サークルは、犬用など高さ70 cm以上あるものが望ましい。ウサギのジャンプ力は驚くべきもので 1 m は軽くジャンプする個体(小型種でも)も多いため、個体に合わせ安全性が確保できる高さのあるものを選ぶことが望ましい。サークルは8–10パネル続きのもの、もしくは2つのサークルをつなぎあわせるなどしてできる限り広い範囲で囲い走り回れるスペースを確保したい。床の汚れ、傷防止のためにラグ等を敷くと良い。サークル内には清潔な水、トイレ、24時間十分に食せる干し草、トンネル、かじったり掘ったりできる無着色の安全なおもちゃをいくつか入れることも忘れてはならない。大きなスペースを囲えない場合は、ケージ飼い同様に1日最低数時間は室内に解放し、広い場所で運動できる時間を設け、日光浴もさせる。
新鮮な水が必要。専用フード(ペレット)や生野菜等の食餌以外に消化作用に大量の繊維質を必要とするため、牧草(ペット店で市販の干し草:チモシー、オーツ)は24時間食べ放題の状態にする必要がある。牧草を食すことで胃腸が常に動いている状態になるため、胃腸内鬱滞や毛玉症などの病気予防になり、お腹からガスを逃がす働きがある。また歯が常に伸びるウサギに多い不正交合の予防にもつながることから牧草と生野菜をウサギの主食として扱い、ペレットは補助食として扱う。
健康管理は毎日の掃除、運動、飼い主との交流時間以外に歯や糞のチェック、毛のブラッシング、定期的な爪切りなどをし毎日の健康チェックを行う。獣医を活用する場合、ウサギの専門獣医師による定期検診を行ったり(犬猫病院ではウサギを診られない医師が多いため、評判の良いウサギの専門獣医師を探す必要がある)、5歳以上で高齢になるため、5歳以上になったら定期検診時に年1回レントゲンと血液検査で健康状態を把握する事も可能ではある。
イヌやネコを飼うときの注意と同様、人間とは違って一度に複数個体が生まれるのが通常であることを考え、繁殖計画がないのであれば、雄雌を共に生活させないなどの注意をすること。去勢手術を行う場合は満1歳以上が好ましい。去勢によって無計画妊娠を防ぐ以外にウサギの健康状態を保つのに有効という考え方もある。イヌやネコの場合と同様に、去勢した個体は高齢になったときの子宮癌や睾丸の癌予防の効果が期待でき、スプレイ等の行為も軽減されることが多い。
本来、原種のアナウサギは群れを形成し生活する生態からも、多数飼いの場合、グルーミングをお互いがし合うため、病気予防につながり長生きしやすくなるといわれる。元々単独飼いしていたウサギに同居するウサギを増やしたい場合は、時間をかけてお互いを慣らす必要があり、いきなり一緒にするのは危険なので配慮する。お互いをケージ越しに置き2週間程度様子を窺う。この時、ケージは、お互いのウサギの歯や爪が相手に届かないように、必ず8–10cm離して置き、ウサギが暴れてもその隙間が狭くならないようにする。万が一ケージ越しに噛み付くと、その後の関係改善が困難になる。慣れた頃に、お互いの臭いがない場所に2分間程度一緒にする。喧嘩をするようであればすぐに引き離す。これを毎日少しずつ行い、徐々に時間を増やし、数週間繰り返していけば大抵の場合仲良くできる。また、いちど仲良くなったウサギを引き離すのは好ましくないとされる[誰?]。顔合わせを開始した時点から2週間以上経っても喧嘩を繰り返すようであれば、相性が悪い場合がほとんどなので、検討する必要がある。無理に続ければお互いのストレスになりストローク等を引き起こす可能性がある。相性が悪い場合は、双方が接触しない場所を設け、単独飼いにする。
室内飼いの場合、電気コードやケーブル類や紙類、家具・柱など、ウサギは何でも噛むので気をつける。ストレスから、自分の毛を毟りとる行為をする。
人間に飼われていたウサギが野生化して繁殖している島や大陸がいくつかある。ウサギのペットブームを背景に、飼い主の都合で公園や川岸などに捨てられたペットのウサギが群れ、繁殖したケースもある。室内飼い専用の品種として販売されていても、野外で生き延びる場合がある。
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