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顆粒球(かりゅうきゅう、英: granulocytes)は白血球の一種で、自然免疫系を担う細胞であり、細胞質内に特異顆粒が存在することが特徴である[1]。これは、多形核白血球(polymorphonuclear leukocytes、PMN、PML、PMNL)とも呼ばれ、核の形が変化して、通常は3つの小葉に分かれている特徴がある。これにより、単核無顆粒白血球とは区別される。多形核白血球という用語は、顆粒球の中で最も多い好中球(好中性顆粒球)を指すことが多く[2]、他の種類(好酸球、好塩基球、肥満細胞)は小葉の数が少ない特徴がある。顆粒球は、骨髄で顆粒球形成によって産生される。
顆粒球(正式名は多形核顆粒球)には4つの種類がある[3]。
肥満細胞を除き、名称はその染色特性に由来している。たとえば、最も多く存在する顆粒球の好中性顆粒球では、細胞質の顆粒が中性色素で染色される。
好中球は通常は血液中に見られ、最も多く存在する食細胞の種類で、循環する白血球全体の60~65%を占め[4]、好中球キラーと好中球ケケージャーという2つの亜集団 (英語版) から構成されている。1リットルのヒトの血液には、直径約12~15マイクロメートル[5]の好中球が約50億個(5x109)[6]含まれている。好中球は適切なシグナルを受け取ると、血液から離れて感染部位に到達するまでに約30分かかる[7]。好中球は血液に戻ることはなく、膿細胞に変わって死滅する[7]。成熟した好中球は単球よりも小さく、いくつかの小葉(2~5葉)からなる分葉した核を持っており、その各葉はクロマチンフィラメント(核糸)でつながっている。好中球は通常、成熟するまで骨髄から出ることはないが、感染症にかかると骨髄球や前骨髄球と呼ばれる好中球前駆体が放出される[8]。
好中球には、微生物を直接攻撃するための3つの戦略がある。すなわち、食作用(摂取)、可溶性抗菌剤(顆粒タンパク質を含む)の放出、好中球細胞外トラップ(NET)の生成である[9]。好中球はプロフェッショナルの食細胞であり[10]、抗体や補体で覆われた侵入者や、損傷した細胞や細胞の破片を素早く飲み込むどう猛な捕食者である。ヒト好中球の細胞内顆粒は、タンパク質を破壊して殺菌する特性を持つことが長い間知られている[11]。好中球は、単球やマクロファージを刺激する物質を分泌することができ、これらの分泌物は、食作用や、細胞内殺滅に関与する活性酸素化合物の形成を促進する[12]。
好中球は、一次顆粒(アズール親和性)(若い細胞に見られる)、および二次顆粒(特異顆粒)(より成熟した細胞に見られる)という、2種類の顆粒を持っている。一次顆粒に含まれているものは、細菌を殺すためのカチオン性タンパク質やディフェンシン、(細菌性)タンパク質を分解するタンパク質分解酵素やカテプシンG、細菌の細胞壁を分解するためのリゾチーム、およびミエロペルオキシダーゼ(細菌を殺す毒性のある物質を生成する)がある[13]。さらに、好中球の一次顆粒からの分泌物は、IgG抗体で覆われた細菌への食作用を刺激する[14]。二次顆粒には、毒性酸素化合物の生成に関与する化合物、リゾチーム、ラクトフェリン(細菌から必須鉄を奪い取る)が含まれている[13]。好中球細胞外トラップ(NET)は、クロマチンとセリンプロテアーゼで構成される繊維の網目状の構造を持ち、細胞外で微生物を捕獲して死滅させる。細菌の捕捉は、血管内でNETが形成される敗血症で特に重要な役割である[15]。
好酸球は、腎臓の形をした分葉した核(2~4個の小葉)を持っている。好酸球は、血流中で脱顆粒する傾向があるため、顆粒の数はさまざまに変わる[16]。好酸球の顆粒には、独特の毒性を持つ塩基性タンパク質とカチオン性タンパク質(例 カテプシン[13])が含まれているため、寄生虫(腸内線虫など)の殺滅に重要な役割を果たしており[17]、IgEに結合する受容体はこの作業を助けるために用いられる[18]。これらの細胞はまた、食作用に関与する限られた能力を持ち[19]、プロフェッショナルな抗原提示細胞であり、他の免疫細胞(CD4+T細胞、樹状細胞、B細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球)の機能を制御し[20]、腫瘍細胞の破壊に関与し[16]、損傷した組織の修復を促進する[21]。インターロイキン-5と呼ばれるポリペプチドは好酸球と相互作用し、好酸球の成長と分化を引き起こす。このポリペプチドは、好塩基球とTヘルパー2細胞(TH2)によって産生される[17]。
好塩基球は、骨髄や血液中でもっとも少ない細胞の一つである(全細胞の2%未満)。これは、好中球や好酸球と同様に分葉した核を持つが、小葉は2つしかなく、それらをつなぐクロマチンフィラメントはあまり見られない。好塩基球は、IgE、IgG、補体、ヒスタミンと結合できる受容体を持っている。好塩基球の細胞質には、さまざまな量の顆粒が含まれており、通常はこれらの顆粒は核を部分的に隠すのに十分な数である。好塩基球の顆粒内容物には、ヒスタミン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ペルオキシダーゼ、血小板活性化因子、その他の物質が豊富に含まれている。
感染症が発生すると、成熟した好塩基球が骨髄から放出され、感染部位に移動する。好塩基球が損傷を受けると、ヒスタミンが放出され、侵入した生物と戦うための炎症反応に寄与する[22]。ヒスタミンは、好塩基球に近い毛細血管の拡張と浸透性の増加を起こす。損傷した好塩基球や他の白血球は、感染部位への血流を増加に寄与するプロスタグランジンと呼ばれる別の物質を放出する。これらのメカニズムにより、血液凝固成分を感染部位に送達することができる(これにより回復プロセスが開始し、体内の微生物が他の部位に移動するのを阻止する)。また、炎症組織の浸透性が高まると、感染部位により多くの食細胞が移動して微生物を食べ尽くせるようになる[19]。
肥満細胞(マスト細胞とも呼ぶ)は、組織内に存在する顆粒球の一種で[3]、病原体(寄生虫など)に対する生体防御や、アレルギー反応、特にアナフィラキシーを媒介する[3]。肥満細胞はまた、炎症と自己免疫の仲介、神経免疫系の応答の仲介と制御にも関与している[3][23][24]。
顆粒球は、骨髄に存在する幹細胞に由来する。これらの幹細胞が多能性造血幹細胞から顆粒球に分化することを顆粒球形成と呼ぶ。この分化過程には、骨髄芽球や前骨髄球など、複数の中間細胞型が存在する。
微生物の摂取に伴う顆粒球の脱顆粒によって生成または放出される有毒物質には次のような例がある。
顆粒球減少症(granulocytopenia)は、血液中の顆粒球が異常に低濃度となる疾患である。この状態は、多くの感染症に対する体の抵抗力を低下させる。これと近い用語として、無顆粒球症(語源的には「顆粒球がまったくない」、臨床的には顆粒球レベルが正常値の5%未満)、および好中球減少症(好中球顆粒球の欠乏)がある。顆粒球は循環中で1~2日しか生きられないので(脾臓または他の組織では4日)、治療戦略として顆粒球の輸血をしても効果は非常に短期的になる。加えて、このような処置には多くの合併症がある。
研究結果によると、感染症予防のために顆粒球を輸血すると、血液中に細菌や真菌に感染した人の数が減ったことが示唆されている[25]。さらなる研究では、治療用顆粒球の輸血を受けた患者は、同時感染の臨床回復に差がないことを示唆している[26]。
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