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小型の数値計算用電子機器 ウィキペディアから
電卓(でんたく)は、電子式卓上計算機また電子式卓上加算機の略であり、加減乗除の四則演算を中心とする比較的簡単な計算を内蔵された電子回路で行う小型計算機である[1]。JISの用語では、1979年のJIS B 0117で電卓の呼称が標準化した。世界初の電卓は1963年につくられたANITA。
カード型のものが現れたり、また「電卓」という名前のソフトウェアがパソコンや携帯電話に搭載されるなどしたりして、現在では必ずしも卓上ではなくなっている。消費税の導入後には消費税の計算を簡単にワンタッチでできる機能なども付加されるようになった。
四則演算や百分率の計算ができる電卓。一般に使われている電卓の多くはこれである。8桁以上の計算ができる機種が多い。ルートキーのある機種とない機種に分かれる。また税抜キーや税込キー(一部の機種では税率キー[2][3])があるものもある。たとえば日本(消費税率:10%)の電卓の場合、数字を入力して税抜キーを押すと1.1で割った値が表示される。同じように税込キーを押すと1.1を掛けた値が表示される。将来の消費税率の変更に備え、税率設定が変更できるようになっているものが多い。時間計算(60進法の計算)や商売計算(原価、売価、利益率のうち2つから残る1つの値を求める)、通貨や単位の換算などができるものもある。大きさは手帳程度が一般的だが、中にはキーリングつきで数センチのものもある。
普通電卓の派生として以下の電卓がある。
外見は通常の電卓とほとんど変わらないが、USBケーブルでPCに繋げることでテンキーとしても使用できる。また、電卓モードとテンキーモードを切り替えながら使うことで、計算結果をPCへ送信もできる。この分野では多様な商品が発売されている。ポケットに入るような小型なもの、通常のテンキーのサイズのもの、卓上型電卓くらい大きいもの。さらには、付加機能として、ワイヤレスで接続できるタイプや、トラックボール機能を搭載し電卓、テンキー、マウスの1台3役の機能を持つものなどがある。√ キーのない機種が多い。
小学校の算数の授業で用いることを目的に、他の電卓では関数電卓などにしか見られない有理数の機能などを持っており、余りのある除算や分数の加減乗除、約分や仮分数と帯分数の相互変換などを行える。円周率キーを備える機種では、同キーには普通、小学校の算数で用いられる3.14がプリセットされている。
一般の電卓は計算式を入力すれば自動で答えが計算されるが、計算ドリル内蔵電卓では計算ドリルモードにすると自動で計算式が表示され、暗算によって計算し、答えを電卓に入力しなければならない。携帯ゲームの一種とも言える。いわゆる百ます計算に対応している機種、脳年齢が測定できる機種なども存在する。
現代では「実務電卓」と言う名称の方が一般的である。大量の事務計算を素早く正確に行うことを目的とした電卓であった。普通電卓が事務電卓の機能を取り込んできたため、現在では普通電卓との区別は明確ではなくなっている。
表示桁数は10桁から12桁程度のものが多い。数字入力の効率化のため 00000 キーがあったり、+ キーが大型であったり、その他のキーや表示も大きくなっている。伝票計算などで確認がしやすいように、1度目の計算の際に入力値を保存しておき、2度目の計算の時に保持している値と入力中の値に食い違いがないかを比較してくれる機種もある。普通電卓と同じく時間計算や商売計算に対応したもの、入力した値や計算結果を紙に印字するプリンターを内蔵したものもある。
事務用電卓の一部に見られる[注釈 1]加算器方式について説明する(「加算器方式」はカシオの用語で[注釈 2]、シャープは「加算機方式」・キヤノンは「加算式」。なお、キヤノンではこれに対し通常の方式を「算式」としている)。加算器方式では = キーの代わりに +=、-= キーがあり、加算の場合は += キーを加数の後に入力し、減算の場合は -= キーを減数の後に入力する。3-2+6を計算するとき、通常の電卓では3 - 2 + 6 = と入力するが、加算器方式の電卓では3 += 2 -= 6 += と入力する。乗算、除算の場合は通常の電卓と同じく ×、÷ キーを乗数または除数の前に入力し、= キーの代わりに += キーを入力する。7×8÷2を加算器方式の電卓で計算する場合は、7 × 8 ÷ 2 += と入力する。これは機械式キャッシュレジスターなどとして、電子化以前の時代に普及した adding machine の操作法や動作を模したものであり、電卓としてもこちらのほうが内部的に単純であることから以前にはよく見られた。
関数電卓は三角関数、対数など、主に科学・工学系の技術分野で必要な計算機能のある電卓[4]。関数電卓の登場によって計算尺が駆逐され、またたいていの計算では数表を繰る必要もなくなった。数学関数以外にも統計、2, 8, 16進の換算、60進計算(角度の分秒の処理及び小数表現との換算)、有理数計算などの機能を持つものが多い。通常の電卓と違い、数値が指数部を持っており、括弧の処理ができ、加減算より乗除算を優先する。表示桁以上の精度で計算し結果が丸められて表示されるため、機種によっては 1÷3×3 のように計算途中で誤差が発生する計算が表示上正しく表示される。簡易プログラム機能を有するものや、紙に書くような数式で表示されるものや、グラフ表示が可能なものもある。今日では主に教育現場で用いられているが、土木・測量向けに防水・防塵・耐衝撃構造としたものもある。近年では、前述の学習用電卓のように、余りのある除算や分数の加減乗除、約分や仮分数と帯分数の相互変換などを行える機種もある。
1973年に登場した HP-80 が最初の金融電卓と思われる。1972年に発売された世界最初のポケットに入る関数電卓 HP-35 の派生製品と思われる。
現在、欧米ではTVM(Time Value of Money : 貨幣の時間的価値)に基づいた高度な金融電卓が主流である。HP 12c シリーズ と BA II Plus シリーズ がその代表的存在である。
一方、日本では質問に答えるだけで計算できる金融電卓が主流である。
プログラミング可能な電卓のことである。
関数電卓を発展させたものとよく誤解されるが、世界最初の関数電卓 HP 9100A(1968年)はプログラミング可能であった。つまり、プログラミング可能な関数電卓の方が普通の関数電卓よりも先に誕生している。
それ以前、1963年の オリベッティ・プログラマ101 は事務用電卓であり、四則演算、平方根、絶対値、小数部の取り出し程度のことしかできなかった。しかし、プログラミングが可能であった。
金融電卓のうち上位機種には、ある程度のプログラミングが可能なものもある。
プログラム関数電卓からさらにコンピュータ寄りに進化したものが、ポケットコンピュータである。
関数電卓やプログラム電卓に数式処理やグラフ処理能力を加えたのがグラフ電卓である。関数電卓を電卓として更に進化させたものといえる。関数電卓・プログラム電卓の基本機能に加え、数式処理やグラフ描写などを行える(グラフ描写しか行えない機種も存在する)。数式処理システムにより因数分解や微積分などの数式を直接計算でき(他の電卓は数値的にしか処理できない。グラフ電卓では数値的にも解析的にも取り扱える)、プログラム機能では数式処理に用いる組み込み関数を用いて高度なプログラムを簡単に組み込める。入力もGUIから入力できるので初心者でも比較的簡単に扱え、CUI風の入力でも計算できるのでコマンドを暗記した上級者は更に簡単に扱える。しかも任意の精度で計算できる(計算精度を設定可能)。このため科学技術分野などの高度な数学的計算を行うことに優れている。多くの機種はPCに接続してプログラムやデータの通信が可能で、計測器からのデータ入力、カラー表示、外部メモリ(SDメモリーカードなど)、表示画面のビデオ出力やOHP投影、プリンタ出力などにも対応している機種もある。さらには近年、オペレーティングシステムを持つ電卓も販売されている。日本ではシャープ、カシオが製品を販売していたがシャープは撤退、カシオは海外向け製品を国内販売している程度である。おもにアメリカのテキサス・インスツルメンツなどが開発している。数式処理システムも参照のこと。
その他にも時間を計算する電卓等がある。
電卓は長方形の形状をしていることが多く、縦長が基本だが、事務用の一部や折りたたみタイプ・カードタイプのものには横長のものも存在する。表示部に傾きが付いていることが多く、傾き角度を変えることができるものもある。
電卓はサイズの違いによりそれぞれ名称が付いているが、メーカーによって名称が異なる。
極端に小さいものでは、縦50mm程度で小判型のキーホルダーとなっている製品などもある。
ごく初期には、従来の加算機(機械式計算機#バロースの加算機を参照)などに合わせ、数字の桁ごとに10個の数字キーを並べたものもあったが、電卓以前のリレー式であるカシオ14-Aが既にテンキー式であることからわかるように技術的にはそのようにする理由はほとんどなく、もっぱらほぼ全てテンキー式である。
キー配列はセミデスクトップタイプ以上では横に6列、ジャストタイプ以下では横に5列としたものが多く、縦はどの大きさでも6段か5段としたものが多い。
また、基本的には同じメーカーのものであれば、操作性が大きく変わることは少ない。これは、機種により大きく変わるとユーザーが再度操作を覚えなおさなければならないためである。
一般的にテンキーの配列にはいわゆる「プッシュホン配列」(左上から順に1、2、3)と「計算機配列」(中段のみがプッシュホンと同じで最上段最下段が入れ替わっている)があるが、電卓はもっぱら「計算機配列」である。
四則演算の演算子キーの他、% などの演算キーがあるものもある。加算器方式の場合は = と +・- が独立しておらず、+= と -= キーがある。
一般的にキーは右利き用に配置されているが、左利き用に配置された機種や、+ や = キーがテンキーの下段に配置された左右共用の機種も存在している。
歴史的には操作性には細かい変更が重ねられてきたが、現在は基本的な操作はほぼ全機種が同じである。定数計算や百分率計算についてはカシオとそれ以外で少々異なる。カシオ機では演算子キー連打で定数モードに入り「K」シンボルが表示されるのに対し、他社の場合は通常の演算操作で「自動定数モード」になっている。以下の表ではカシオ、カシオ以外、他に参考としてHPの逆ポーランド記法順(RPN方式)での例を示す。
casio | シャープなど | HP(RPN) | ||||
定数計算 2+3=5 6+3=9 |
3 ++ 2 = 6 = |
K 3. K 5. K 9. |
2 + 3 = 6 = |
5. 9. |
3 ENTER ENTER ENTER 2 + CLx 6 + |
5. 0. 9. |
百分率計算 500の5%増しを求める |
500 × 5 %+ | 525. | 500 + 5 % | 525. | 500 ENTER 5 %+ | 525. |
カシオ機では、定数とする方の値の入力後に +-×÷ のどれかの演算子キーを連続して押すと定数計算モードになり、「K」シンボルが表示される。その後、変化させる方の値を入力しては = を押すという操作を繰返すことができる。このモードでは、通常と演算対象の入力順序が逆に(先に入力した値が演算子の右に、後から入力するほうが演算子の左に)なるので、減算や除算では注意する必要がある。
他の多くの機種では、通常の計算結果を求める操作における = キーの押下により、自動定数モードとなり、その状態で、変化させる値を入力しては = を押すという操作を繰返すことができる。このとき、加・減・除算では演算子の右側(後から入力した値)が固定となり、演算子の左側(先に入力した値)を変える操作になるが、乗算だけは、演算子の左側(先に入力した値)を固定し演算子の右側(後から入力した値)が変化する。
RPN電卓(HP)では、定数計算モードは存在しないが、Tスタックを定数の保持に利用することにより、加数、減数、乗数、除数を再設定することなく、そのまま加算/減算/乗算/除算が可能である。なお、定数による減算/除算を行う場合は、x⇔y でXレジスタとYレジスタを入れ替えればよい。
古くはニキシー管から蛍光表示管やLEDとなり、現在では液晶ディスプレイ表示のものがほとんどとなっている。7セグメント方式のものが多いが、ドットマトリクス表示の製品もある。
初期の電卓は商用電源であったが、数字表示がニキシー管から蛍光表示管や LED となり回路の集積回路化が進むことによって消費電力が減り、乾電池での動作が可能となった。その後、CMOS 型集積回路と液晶ディスプレイ表示の採用により劇的に消費電力を抑えることに成功し、本体の小型化に合わせて、使用する乾電池も単3型から単4型、ボタン型電池へと小型化された。さらには太陽電池の採用により、電池交換不要のものが殆ど占めている。一部の太陽電池方式電卓には、ボタン電池を内蔵したものがあり、低照度時の利用・次回使用時までのデータ保持を可能にしている。プリンター内蔵タイプでは、乾電池やAC電源が必要となる。
ここでは、普通電卓または事務用電卓という前提で記す。このような電卓でエラー表示(E)となる状況は、大きく次の3通りに分けられる。
なお、計算結果の絶対値が厳密な0ではないが表現可能な最小値より小さい値になった場合(アンダーフロー。8桁の場合の0.0000001未満の場合など)は0として扱われ、エラー表示はされない。
電卓の歴史の中で重要な点に、以下がある。
1960年代に登場した電卓は重量が20-30kgもある大型のものもあったが、その後、演算を行う素子を当初の真空管からトランジスタを経て集積回路へと世代交代させ、また表示装置も蛍光管やニキシー管から液晶パネルに置き換えることで急速にコンパクト化していった。1970年代前半には重量1kg程度で電池駆動も可能な電卓が現れ、1980年代になると太陽電池で駆動可能なカードサイズ大の超小型・超薄型の電卓も現れる。この時期はちょうど半導体産業が発展していく時期とも重なっている。
また、部品を小型化・高集積化することはコストを下げる効果もある。初期には軍事用など特殊な用途にしか使えなかったものも、次第に企業の業務用にも使えるものになり、さらには一家に一台、個人に一個という具合に身近に利用することのできる道具となった。この循環は、コンピュータや現在のパソコンにも見られる大きな要素である。
当初は個別の電卓製品毎に専用の集積回路を設計、製造していたが、日本計算器販売(のちのビジコン)がプログラマブルな電卓の開発を企図し、その過程でインテルがはじめて製作したマイクロプロセッサである4004が生み出された。その後、同社のプロセッサはパーソナルコンピュータのCPUとして、世界に大きな影響を与えることになった。
4004を用いた電卓はCPU、読み書き可能メモリ、プログラムを格納するROM、入力部であるキー、出力部である表示装置(およびプリンター)からなり、その構成はコンピュータそのものである。マイクロプロセッサを用いた電卓は、電卓に特化した専用のハードウェアを用いるのではなく、ハードウェアは汎用のものを利用し、プログラム(ソフトウェア)によって計算機の機能を実現している点で従来の電卓とは異なる。
1971年に電卓市場に価格破壊をもたらしたTIのTMS-0105は、同様の構成をチップに集積したもので、マイクロコントローラの初期のものである。
この意味では、電卓はそれまでコンピュータに縁のなかった人々が初めて身近に手にしたコンピュータ製品であるという側面も持っている。
電卓以前の計算機械の歴史などについては計算機の歴史や機械式計算機の記事を参照のこと。ここではそれらであまり触れられていない点について述べる。
19世紀に機械式のキャッシュレジスターが発明され、店頭の代金の勘定のような簡単な処理が機械で行われるようになった。のちに電動化され、高級モデルは電動となる。
今日の電卓のような、ポケットに入る計算機器には、クルタのような特別に小型の機械式計算機の他に、そろばんや計算尺やen:Addiatorのような器具があった。
電卓と同程度のスペックの機械としては、電子式以前にリレー式のものがあった。日本では、カシオ計算機がまず機械電磁式の計算機を開発するが商品化には至らず[7]、その後1957年に完成させた14-Aが最初に商品化されたリレー式の計算機である。これは机程度の大きさであった。リレー式の計算機はその後、タイプライタと連動し伝票を打ち出す「作表計算機」TUC、計算手順を自動実行できるAL-1など、電卓登場以前の一時代を築いた[7]。
1960年代に登場した電卓は、重量が15kgから20kg以上、消費電力も50Wから100Wを超える大型の卓上計算機だった。また、当時の物価からすると電卓はまだ高価なもので、1964年頃の製品は車1台分の値段だった。電卓は、1970年頃までは主に企業向けに販売された。1970年頃から激化した電卓戦争により価格が急激に下落し、個人でも手にすることのできる製品となった。
この頃は、名称もまだ一定していなかった。「電卓」という語については日本国語大辞典が1970年の用例を収録している[11]が、その一方で1970年代前半の製品でも「電子計算尺」「電子ソロバン」といった名称のものがあった[12]。
価格の下落とともに、電卓は企業で使用される業務用計算機から個人が所有する身近なツールへとすそ野を広げていった。また、この過程で世界初とされるマイクロプロセッサのひとつで、インテルのCPUのルーツである4004、マイクロコントローラの先祖とされるTIのTMS0100シリーズ[13]、フェアチャイルドPPS25などが誕生している。
価格下落が一段落してくると、価格競争とは別に使い勝手をよくする高付加価値化の方向でさまざまな試みが行われ、実用化されていった。液晶の採用、超小型化・薄型化(カードサイズ電卓)、太陽電池の採用、高機能化(電子辞書、電子手帳、後には携帯情報端末(PDA)へと発展した)などがある。
関数電卓とプログラム電卓はさらに進化して、ポケットコンピュータやグラフ電卓に進化した。
ポケットコンピュータは QWERTY配列キーボードを搭載し、高級言語 BASIC が使えるため、プログラム電卓よりもプログラミングが容易であった。そのため、PCが普及する前はよく使われていた。
グラフ電卓はプログラム電卓にグラフを描画する機能が追加されたものである。プログラミング可能であるが、QWERTY配列キーボードを搭載しているものは少数派である。アプリケーションのインストールが可能だったり、CAS(数式処理システム)を搭載したものもある。タッチパネルを搭載したものまである。
普通電卓と事務用電卓に関しては、完全にコモディティ化する。
PCの普及によりポケットコンピューターは衰退していった。工学向けのグラフ電卓も同様に衰退していった。
しかし、テキサス・インスツルメンツは自社初のグラフ電卓 TI-81(1990年)を教育向けに作ることによって活路を見出した。
グラフ電卓の目的は工学から教育に方向転換を余儀なくされたが、その流れについていけなかったシャープはグラフ電卓から撤退した。 ヒューレット・パッカードは工学向けと教育向けの二足のわらじを履いた結果、シャープ同様にその流れについていけなくなり、2017年現在は HP Prime しかグラフ電卓を発売していない。現在のグラフ電卓市場はテキサス・インスツルメンツとカシオの2社がほとんどを占めている。
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