近藤 宏子(こんどう ひろこ、1960年〈昭和35年〉1月29日 - )は[2]、日本の裁判官(第38期・女性)[3]。
東京都出身[3]。1983年(昭和58年)3月の慶應義塾大学法学部卒業後の1983年(昭和58年)4月に第38期司法修習生(司法修習地:東京)、1986年(昭和61年)4月11日に浦和地方裁判所判事補任官[3]。その後の経歴は以下の通り。
- オウム真理教事件・岡崎一明(教団元幹部)に対する第一審・東京地裁刑事第5部(判決宣告:1998年10月23日)にて陪席裁判官を務めた(裁判長:山室惠)。
- 男性信者殺害事件・坂本堤弁護士一家殺害事件で起訴され、死刑を求刑された被告人・岡崎に求刑通り死刑判決を言い渡した[6]。岡崎は「坂本弁護士一家事件後に犯行を自白したことは自首の要件を満たし、量刑の減軽事由になる」と主張していたが、同地裁は「自首そのものは成立するが、動機は真摯な反省ではなく、教団に殺されることから身を守るため(自己保身)であり、量刑を軽減することは相当ではない」として、岡崎の主張を退けた[6]。
- 闇サイト殺人事件(2007年発生) - 名古屋地裁刑事第6部で開かれた第一審の審理(判決宣告:2009年3月18日)にて裁判長を務めた[5]。
- 死刑を求刑された被告人3人のうち、犯行後に自首した被告人1人には無期懲役判決を、残る2人(堀慶末および「KT」)に対しては死刑判決をそれぞれ言い渡した[7]。名古屋地裁 (2009) は「被告人3人の刑事責任は同等で、計画性も高い。インターネットの闇サイトを悪用した本犯行は凶悪化・巧妙化しやすく危険。また匿名性が高いため発覚が困難で模倣性も高く、社会の安全に与える影響・一般予防の必要性も高い」と指摘した[7]。一方、自首した被告人1人については「自首しなければ捜査は相当難航したことも予想され、その場合は次の犯行が行われた可能性が否定できない」として死刑を回避した[7]。
- 被告人3人はいずれも名古屋高裁に控訴したが[8]、死刑判決を受けた被告人のうちKは後に自ら控訴を取り下げて死刑が確定、2015年に死刑を執行された。
- 2011年4月12日に名古屋高裁(下山保男裁判長)は残る被告人2人に対し、いずれも無期懲役判決(堀は第一審判決を破棄)を言い渡した[9]。2人とも後に無期懲役が確定したが[8]、近藤が死刑判決を言い渡した堀は後に碧南市パチンコ店長夫婦殺害事件(1998年発生)で逮捕・起訴され、同事件の刑事裁判で2019年に最高裁判所にて死刑が確定した[10]。
- 川崎市中1男子生徒殺害事件(2015年発生)
- 群馬県前橋市における女子高生2人死傷事故(2018年1月9日発生)[15] - 控訴審判決公判[15](東京高裁第8刑事部[16]/判決宣告:2020年11月25日)にて裁判長を務めた[15]。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた被告人(控訴審判決当時88歳)[注 1]に対し、「事故の発生を予見できなかった」として無罪を言い渡した第一審判決を破棄自判し、逆転有罪(禁錮3年)を言い渡した[15]。
注釈
この被告人は第一審・前橋地方裁判所で禁錮4年6月を求刑されていたが[17]、同地裁刑事第2部(国井恒志裁判長)[18]は2020年3月5日に「被告人が運転中に意識障害を発症する危険性を予見できた可能性は認められなかった」として無罪判決を言い渡し[17][19]、検察官が控訴していた[20]。控訴審で被告人は第一審とは別の弁護人を選任し[21]、一転して自ら有罪を求める主張をしていた[22]。
出典
日本民主法律家協会司法制度委員会 編『全裁判官経歴総覧 第三版[第一分冊] 期別異動一覧編』(第3版第1刷発行)公人社、1998年4月1日、222頁。ISBN 978-4906430581。 - (1987年12月10日・第1版第1刷発行 / 1990年12月10日・第2版第1刷発行)
“静岡家庭裁判所長”. 裁判所ホームページ. 最高裁判所. 2020年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月25日閲覧。
『毎日新聞』2009年3月18日中部夕刊社会面7頁「愛知・女性拉致殺害:闇サイト殺人、2被告死刑 母、遺影を胸に涙」(毎日新聞中部本社 記者:飯田和樹、福島祥、中村かさね、木村文彦)
東京地方裁判所刑事第5部判決 1998年(平成10年)10月23日 『判例時報』第1660号25頁・『判例タイムズ』第1008号107頁、『TKCローライブラリー』(LEX/DBインターネット) 文献番号:28045035、平成7年(合わ)第332号・平成7年(合わ)第379号、『殺人被告事件』、“オウム真理教の信者であった被告人が教祖(麻原彰晃)および幹部らと共謀の上で男性信者1人の頸部をロープで絞めつけて殺害し、また教団をマスコミなどにおいて批判していた弁護士・坂本堤とその妻・長男の計3人を窒息死させて殺害したとの公訴事実で起訴された事案にて、被告人が坂本堤弁護士一家殺害事件に関して自白したのは自首の要件を満たしており自首そのものは成立するが、その主要な動機は真摯な反省ではなく「教団に殺されることから身を守る」という自己保身であったことなど諸事情に鑑みると、(量刑を)自首軽減することは相当ではなく、被告人のために斟酌し得る事情を最大限考慮しても、被告人に対しては極刑をもって臨まざるを得ないとして、被告人を死刑に処した事例。”。
『中日新聞』2011年4月13日朝刊一面1頁「闇サイト殺人 2被告に無期懲役 名高裁判決 死刑破棄 『模倣性高いといえず』」(中日新聞社)「被害者1人判例を踏襲 破棄、より丁寧な説明を」(社会部:加藤文)