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感知器で火災により発生する熱や煙を自動検知し、受信機、音響装置の鳴動で建物内に報知して、避難と初期消火を促す設備 ウィキペディアから
自動火災報知設備(じどうかさいほうちせつび)は、感知器を用いて火災により発生する熱や煙を自動的に検知し、受信機、音響装置(ベル)を鳴動させて建物内に報知することにより、避難と初期消火活動を促す設備である。日本では消防用設備、火災報知機の一種であり消防法と条例により、一定面積以上の建物や店舗がある雑居ビル・重要文化財などの防火対象物に設置が義務付けられている。略称で「自火報(じかほう)設備」とも呼ばれる。
ここでは日本の総務省消防庁が省令「受信機に係る技術上の規格を定める省令」に定めている内の主要な分類を挙げる。
感知器や発信機の電気的な接点が閉じ、電流が流れることにより火災信号を受信するシステム。規模と機能によりP型1級とP型2級及びP型3級がある。また近年では、アドレス式感知器と従来の接点式感知器を同一回線内に混在させ、接点式の感知器が発報した際は回線単位での火災表示、アドレス式感知器が発報した際は個々の感知器のアドレスを表示するといった、R型とのハイブリッド仕様ともいえる受信機も登場しているが、法規上はP型受信機に分類される。
受信機のパネルに回線(警戒区域)の数だけ表示窓(地区窓)が並び、ランプ(地区灯)が点灯する事により火災の発生場所(警戒区域)を特定する。受信機〜感知器、発信機間の配線は回線数(建物の規模)に応じて本数が増える。
感知器や発信機に固有番号(アドレス)を設定し、伝送信号(通信)により火災信号を受信するシステム。
警戒区域が増えても一定の配線本数で対応できる事と、固有番号(アドレス)で火災の発生場所をきめ細かく特定できることから、大規模な建物に適している。受信機のパネルには地区窓ではなく液晶などの表示装置が設けられ、文字情報で火災の発生場所などを表示するものが一般的。P型とは違いプリンター機能がついている。
なお、ガス漏れを検知して知らせるガス漏れ火災警報設備はG型受信機と規定され、P型受信機やR型受信機と統合したものはそれぞれGP型受信機、GR型受信機と呼称される。
感知器や発信機からの火災信号を受信し、主音響(ブザー)と地区表示により、火災の発生とその場所を管理者に知らせるとともに、建物内に設置された地区音響装置(ベル)を鳴動させ、避難と初期消火活動を促す装置である。
さらに、火災信号を受け、屋内消火栓のポンプを始動する、防排煙設備の防火扉や防火シャッター等を制御する、通報装置と連動し警備会社や消防署へ自動通報する等、他設備と連動するための信号も出力する。
システム全体に電源を供給する役割も担っており、平常時は商用電源で動作するが、停電に備えて一定時間火災の発生を警戒できるように予備電源(蓄電池)を内蔵している。予備電源には寿命があり、5年前後に1度交換が電池メーカーにより推奨されている。
建物の各警戒区域に設置され、火災の熱、煙、炎を検知し、受信機に信号を送る装置。
火災の熱を検知するもの。
定温式スポット型感知器および差動式スポット型感知器についてはサーミスタを使用した熱半導体式、差動式スポット型感知器の熱電対式タイプも普及が進んでいる。サーミスタは温度変化に応じて電気抵抗が変化する半導体であり、それにより測定した温度変化を電子回路で解析し、定温式または差動式の動作をさせることができる。環境に影響されにくい安定した性能が特徴である。また、バイメタル式、ダイヤフラム式の熱感知器は発報を示す表示灯が熱を感知している間しか点灯しないのに対し、サーミスタを使用した場合は受信機側で復旧をかけるまで自己保持させることが可能であり、発報した感知器が特定しやすいため、非火災報発生時の対処がより適切に行える。
火災の煙を検知するもの。防火シャッター・防火扉・空調設備の防火ダンパーなどと連動する場合もある。
火災の炎を検知するもの。
それぞれの方式に一長一短があるため、複数の方式を組み合わせた複合型が開発されている。
人が火災を発見した場合、手動で火災信号を発信する装置。また、従来では発信機の押しボタンの他に、ホース格納部等に消火栓起動ボタンが設置されていたが、近年では機能が統合され、屋内消火栓の消火ポンプを起動するスイッチを兼ねる場合もある。
P型発信機の押しボタンには、火災時以外に誤って押すことを防ぐための保護板が取り付けてある。この保護板はかつてはクラッカープレートが用いられており、悪戯などで押された場合は保護板を新品に交換する必要があった。また点検などで押す場合はネジを外して保護板の取付枠を外す必要があるなど保守点検に難があった。そこで、現在では強く押すことでロック機構を押し外す(カバーが割れずそのままボタンを押す事が出来る)タイプが主流となっている。こちらは復旧レバーを操作するだけで容易に復旧が可能である。
また、前述の通り、自動火災報知設備の受信機においては蓄積機能を有するものがほとんどであり、火災信号が受信されても一定時間以上継続しないと発報しないが、発信機は人が火災を発見して押すものであり、その時点で火災が確定しているため、蓄積機能が作動すると周知や避難に遅れが出てしまう事になる。そのため発信機には蓄積機能をカットするA(アンサー)端子が接続され、発信機の押しボタンを押すと即時に発報するようになっている。その場合、''発信機が押されています''と受信機に表示されるメーカーもある。また、後述の非常用放送設備による放送も、感知器による発報時は「〇階の火災感知器が作動しました。係員が確認しておりますので次の放送にご注意ください。」と放送されるが、発信機による発報時は即時火災放送が放送される。(消防との相談で発報放送の後火災放送移行タイマーが作動せず、発報放送が終わると即時に火災放送に切り替わる場合もある)
建物内の各所に配置され、受信機が受信した火災信号を受けて鳴動するベル。建物全体に火災を知らせ、避難と初期消火活動を促す。
なお最近では、音声警報機能を持つ非常放送設備を受信機に連動させ、自動的に音声警報音を放送するシステムで地区音響装置の代用とする例が多い。
非常用放送設備の放送音及び機器性能等は消防法施行規則第二十五条の二 及び消防庁告示第六号(昭和48年2月10日告示)によって基準が定められている。
以下、重要項目の抜粋
発信機や屋内消火栓などの位置を明示するために併設され、常時点灯する赤色ランプ。従来は壁面から突出した三角錐型のカバーに電球またはLED電球が入っている構造が多かった。これは消防法に15°以上の角度から10m離れていても見えなければならないと規定(消防法施工規則第24条8の2の二)されているためであるが、近年はLEDが台頭し、さらに表示部の工夫を行い、前述の規則をクリアできたことから、発信機と一体化して壁面からの突出を無くす、あるいは微小化したものも登場している。
また、従来では表示灯とは別に、ホース格納部に消火ポンプ起動表示灯を備えていたが、消火栓起動リレーの進化により、表示灯を点滅させるという動作ができるようになったため、近年では表示灯が消火ポンプ起動表示灯を兼用する場合がほとんどである。
発信機、地区音響装置、表示灯を一つの箱に収容したもの。総合盤とも呼ばれる。屋内消火栓設備のある建物の場合、消火栓箱と一体になっている事が多い。なお、地区音響装置を非常放送設備の音声警報で代用している場合は発信機と表示灯のみとなる。また、差動式分布型感知器の本体や、R型システム用の中継器を収容する場合もある。
主に聴覚障がい者や高齢者に火災が発生したこと(自動火災報知設備が発報したこと)を知らせるための補助装置。設置の義務は無いが、総務省消防庁では主に聴覚障がい者が利用する福祉施設や障がい者が利用する可能性の高い建物、大規模な空港や駅等には設置が望ましいとしており、平成28年には「光警報装置の設置に係るガイドライン」(平成28年9月6日付け消防予第264号)[2] 等も策定されている。
これらの装置については、住宅用火災警報器においても光警報装置や臭気発生装置など一部の補助装置が実用化されている。詳しくは「住宅用火災警報器」を参照。
日本では総務省消防庁が省令で定める技術上の基準に適合している事を確認するため、第三者機関である日本消防検定協会が試験および検査を行う。検定は「型式承認」と「型式適合検定」から成る。
検定合格品でないものは、販売し、販売目的で陳列し、又は工事に使用することを禁止されている。
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