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イタチ属 Mustela に含まれる哺乳類の総称 ウィキペディアから
イタチ(鼬、鼬鼠)は、食肉目イタチ科イタチ属(Mustela)に含まれる哺乳類の総称である。オコジョ、イイズナ、ミンク、ニホンイタチなどがイタチ属に分類される。ペットとして人気のあるフェレットもこの属である。
日本語における「イタチ」の語は元来、日本に広く棲息するニホンイタチ(Mustela itatsi)を特に指す語であり、現在も、形態や生態のよく似た近縁のチョウセンイタチ(M. sibirica coreana)を含みながら、この狭い意味で用いられることが多い。また、広義にはイタチ亜科やイタチ科といった高次分類群の動物全般(アナグマ、カワウソ、テンなどを除く)を指すこともある[3]。
属名Mustela(ムステラ)はラテン語で「イタチ」を意味し、イタチ類に多く使われる英名weasel(ウィーゼル)はもともとイイズナを指す語である[3]。ケナガイタチ類はpolecat(ポールキャット)と呼ばれる[3]。
イタチ属の動物は、しなやかで細長い胴体に短い四肢をもち、鼻先がとがった顔には丸く小さな耳がある。多くの種が体重2 kg以下で、ネコ目(食肉類)の中でも最も小柄なグループである。中でもイイズナ(Mustela nivalis)はネコ目中最小の種であり、体重はアメリカイイズナ (M. n. rixosa)で30 - 70 g、ニホンイイズナ(M. n. namiyei)で25 - 250 gである。
イタチ類は、オスに比べメスが極端に小柄であることでも知られ、この傾向は小型の種ほど顕著である。メスの体重は、たとえば前述のアメリカイイズナやチョウセンイタチ(M. s. coreana)ではオスの半分、ニホンイタチではオスの3分の1である。
小柄な体格ながら、非常に凶暴な肉食獣であり、小型の齧歯類や鳥類はもとより、自分よりも大きなニワトリやウサギなども単独で捕食する。反対にイタチを捕食する天敵は鷲・鷹・フクロウと言った猛禽類とキツネである。
肛門腺が発達しており、そこから強い悪臭を帯びた分泌液を噴出することで外敵から身を守る。
水辺を好み、泳ぐのも上手い。
Mammal Diversity Database (2024) における狭義のイタチ属の現生種は以下の通り[4]。フェレットはヨーロッパケナガイタチが原種と考えられており、その亜種とされることもあるが、頭骨にステップケナガイタチに似た特徴がある[5]。また、ニホンイタチはシベリアイタチの亜種とされることがある[5]。
以下の種は、伝統的な分類ではイタチ属とされていた[5]。2000年にミンクとウミベミンクがミンク属Neovisonに分割され[1]、2021年以降はミンクを含む以下の種がNeogale属に再分類されている[6]。
イタチ属 Mustela に属する動物は、日本には5種8亜種が棲息する。このうち、アメリカミンクは外来種であり、在来種に限れば4種7亜種となる。
比較的大型のイタチ類(ニホンイタチ、コイタチ、チョウセンイタチ)に対して、高山部にしか分布しないイイズナ(キタイイズナ、ニホンイイズナ)とオコジョ(エゾオコジョ、ホンドオコジョ)はずっと小型であり、特に、ユーラシア北部から北米まで広く分布するイイズナは、最小の食肉類でもある。
4種の在来種(ニホンイタチ、チョウセンイタチ(自然分布は対馬のみ)、イイズナ、オコジョ)のうち、ニホンイタチ(亜種コイタチを含む)は日本固有種であるが、前述のように(チョウセンイタチと同じく)大陸に分布するシベリアイタチの亜種とされることもある。また、亜種のレベルでは、本州高山部に分布するニホンイイズナとホンドオコジョが日本固有亜種であり、これにチョウセンイタチとエゾオコジョを加えた4亜種は、環境省のレッドリストでNT(準絶滅危惧)に指定されている。
外来種問題に関わるものとしては、西日本では国内移入亜種のチョウセンイタチが在来種のニホンイタチを、北海道では国内外来種のニホンイタチと外来種のアメリカミンクが在来亜種のエゾオコジョを、一部の島嶼部ではネズミ類などの駆除のために移入されたニホンイタチが在来動物を、それぞれ圧迫している。
「イタチ(以太知)」の呼称は遅くとも平安時代初期には存在したが、テンとイタチの呼称は平安時代初期から現代にかけて混称または混同される傾向があった[7]。
以下はニホンイタチ(対馬のみシベリアイタチ)に対する日本語方言である[7]。「イタチ」が転訛した呼称のほか、「キッキ」、「チーチ」「キチキチ」など鳴き声の擬音語、その他「トマ」、「ズット」、「オサコ」などがある。異名が多いのは、イタチは縁起の悪い動物と見做されていたため、忌言葉を用いたなごりとされる[8]。
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イタチの毛皮は衣類、日用品などに利用されてきた。ミンクは高級品として、ファーコートなどの大型の衣類製造にも用いられる。
イタチの毛を使った毛筆は高級品とされる。価格を抑えるために、中心の長い部分だけにイタチの毛を使う場合もある。
日本古来からイタチは妖怪視され、様々な怪異を起こすものといわれていた。江戸時代の百科辞典『和漢三才図会』によれば、イタチの群れは火災を引き起こすとあり、イタチの鳴き声は不吉の前触れともされている。新潟県ではイタチの群れの騒いでいる音を、6人で臼を搗く音に似ているとして「鼬の六人搗き」と呼び、家が衰える、または栄える前兆という。人がこの音を追って行くと、音は止まるという[10]。
またキツネやタヌキと同様に化けるともいわれ、東北地方や中部地方に伝わる妖怪・入道坊主はイタチの化けたものとされているほか、大入道や小坊主に化けるという[10]。
鳥山石燕の画集『画図百鬼夜行』にも「鼬」と題した絵が描かれているが、読みは「いたち」ではなく「てん」であり[11]、イタチが数百歳を経て魔力を持つ妖怪となったものがテンとされている[12]。別説ではイタチが数百歳を経ると狢になるともいう[13]。
イタチを黒焼にして飲めば、こわばりなどに良いという伝承が長野県にある[14]。
ギリシャ神話では、ヘーラクレースの母アルクメーネーがヘーラクレースを出産する際、ヘーラーに命じられた出産の女神エイレイテュイアによって出産を封じられていたが、これに気付いたアルクメーネーの侍女ガランティスが「アルクメーネーが出産した」と虚報を唱えた。驚いたエイレイテュイアが封印を緩めたためにアルクメーネーは無事に出産が出来たが、エイレイテュイアの怒りを買ったガランティスはイタチの姿に変えられてしまったのだという[15]。
説教節『愛護の若』の主人公は、家宝を売りに出したと父親に疑われ、縛り上げられて木に吊るされる。愛護の苦難を知った亡き母は、閻魔大王に頼んでいたちに姿を変え、息子を吊るした縄を食い切る[16]。
かまいたちとは、何もしていないのに突然、皮膚上に鎌で切りつけたような傷ができる現象のことを指す。かつては「目に見えないイタチの妖怪のしわざ」だと考えられていた。
なお、「かまいたち」は「構え太刀」が転じたもので、元来はイタチとは全く関係がない、とする説もある。
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