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アグスタウェストランド AW101(AgustaWestland AW101)は、イギリスのウエストランド社とイタリアのアグスタ社が共同開発した汎用ヘリコプターである。両社は2000年に合併し、現在はアグスタウェストランド社が販売と製造を請け負っている。
アグスタウェストランド AW101
イギリスにおける愛称は、コチョウゲンボウを意味するマーリン(Merlin)[1]。ポルトガルとデンマークでもこの愛称が採用されている。
大量の機材と長大な航続距離を求めた結果、3発のエンジンと巨大な床下燃料タンクを搭載する大型機となったが、オプションのテールブーム及びメインローター折り畳み機構によって艦載機としての運用を可能としている。またシーキングの後継機として開発されたため、機体の寸法・重量はシーキングに合わせて設計され、胴体は大型化しながらもメインローターも含めた全長はシーキングと同じ22m級に納まっている。
巨大な機内空間は左舷にステップ付きドア、右舷にスライド式カーゴドアを備え、民間輸送型で30人、軍用輸送型で兵員24人分の座席を備える。後部にランプ・ドアを装備することも可能であり、ランプ・ドア搭載機は後部胴体の形状が異なるため対潜型とは容易に識別できる。5枚のメインローターはウエストランド社がリンクスで取り組んだBERPブレードを採用し、特徴的な外見を備えている。エンジンはイギリス向けの機体はロールス・ロイス/チュルボメカ RTM322を搭載するが、イタリア向けではゼネラル・エレクトリック T700-T6A1が搭載される。
対潜型は対潜魚雷の他、対艦ミサイルの搭載も可能である。輸送型は3,050kgまでの貨物を機内に搭載することができ、5,440kgまでの貨物を吊り下げ輸送することもできる。
哨戒ヘリコプターとしてイギリス海軍で44機が発注された。当初は、マーリン HAS.1と命名されたが、すぐマーリン HM.1(Merlin HM Mk.1)に変更された。1997年5月17日にイギリス海軍へ納入され、2000年6月2日に運用が開始された。コーンウォールのRNAS カルドローズに4個飛行隊が編成された。23型フリゲートやインヴィンシブル級軽空母を始め、イギリス海軍の艦艇で作戦行動に従事した。
2004年にテール・ローターの破損で事故を起こし、運用が中止された。その後、テール・ローターハブに製造欠陥が確認され、翌年に運用が再開された。カリブ海では、麻薬取締やハリケーンの救済活動を行い、テリック作戦(イラク戦争)に揚陸ヘリ空母「オーシャン」ともに参加した。
輸送機としてイギリス空軍も1995年に22機を発注した[8]。マーリン HC.3と命名され、2001年1月に部隊編成が行われた。Mk.2との違いは、空中給油機構の装備、燃料タンクの拡張、複列車輪が採用されていることである。
HC.3の初任務は、平和安定化部隊の支援であった。その後、Mk.2同様にテリック作戦にも参加した。2007年にデンマークへ引き渡される予定であった6機を購入した[9]。マーリン HC.3Aとして追加導入し、空軍参謀総長のグレン・トーピー大将はアフガニスタンやイラクでの運用を加速できると発言した[10]。
2014年から空軍のマーリンは全機海軍のコマンドヘリコプター軍へと移管されている。同年からマーリンMk.1のうち30機が改修されマーリンMk.2とされた[4]。
海上自衛隊では、AW101を掃海・輸送ヘリコプターMCH-101と呼称し、掃海機および輸送機として運用する。2023年3月末時点のMCH-101の保有機数は10機[11]、機体単価は約73億円。
ローターと尾部に自動折り畳み機能を持ち、艦載機としての運用性を持たせている[12]。また、自動飛行制御装置(AFCS)、能動制振装置(ACSR)といった電子機器を搭載しており、飛行性の向上と機体への負担を軽減している[13]。2012年にはノースロップ・グラマンが開発したポッド式LIDAR装置である空中レーザー機雷探知システム(AN/AES-1 ALMDS)を導入すると発表された。ALMDSはアメリカ海軍ではMH-60Sで運用される予定で、低率初期生産が開始されたばかりである[14][15]。
海上自衛隊では、MH-53E掃海ヘリコプターの減勢にともなう後継機として、護衛艦へ発着可能で掃海具の小型化に対応した新型ヘリコプターを必要とし、2003年(平成15年)予算で新掃海・輸送ヘリコプターとして初めて1機が取得された[16]。MCH-101の初号機は完成品輸入として2006年(平成18年)に納入された[12]。2号機は川崎重工業によりノックダウン生産、3号機以降はライセンス生産が行われる[12]。2003年の防衛力整備では、MH-53Eの事故による損耗分を含めた11機の取得が必要だと予算要求された[17]。MCH-101の最終的な調達数は10機で、2017年3月29日に最終号機が納入された[18]とされていたが、中期防衛力整備計画 (2019)期間中に1機を追加調達することとされ、2022年度(令和4年度)予算に計上された[19]。さらに2023年度(令和5年度)予算に2機の追加調達予算が計上された[20]。
MCH-101は平成16年度防衛白書において、ひゅうが型ヘリコプター護衛艦に輸送ヘリとして搭載、運用することが示唆されている[21]。
また、三代目南極観測船「初代しらせ」艦載機のS-61A-1の後継として、四代目南極観測船「二代目しらせ」用にCH-101が文部科学省予算で調達され、海上自衛隊によって運用されている。CH-101はその任務上極寒冷地対応とされており、所定の追加装備が施されているが、外観上の変化はわずかである。平成16年度と平成17年度に各1機、平成24年度補正予算で1機の計3機が調達された。
2007年5月にCH-101初号機がライセンス生産により川崎重工業から「しらせ飛行科」へ納入され、岩国基地の第111航空隊支援の下で試験と訓練を経て、2009年10月に「二代目しらせ」に搭載された[22]。しらせ配備機は、効率的な航空機整備を考慮して今後も第31整備補給隊、第111航空隊の支援を受ける。
2017年8月17日14時20分頃、岩国基地でCH-101 1機(8193号機)がホバリング中にバランスを崩し横転したまま墜落した。事故で機体の一部が損傷したほか、乗員8人のうち4人が負傷した。機体は、岩国基地の飛行艇用スロープ地区でドラム缶の機外吊り下げ訓練中だった[23]。同年9月22日海上自衛隊は事故原因は飛行中機体振動発生時の機長の処置判断不適切等の人的要因と推定し、器材上の要因ではなかったと発表[24]。
予算計上年度 | 調達数 |
---|---|
平成15年度(2003年) | 1機 |
平成16年度(2004年) | 1機 |
平成20年度(2008年) | 3機 |
平成23年度(2011年) | 2機 |
平成24年度(2012年) | 1+2機[25] |
令和4年度(2022年) | 1機 |
令和5年度(2023年) | 2機 |
合計 | 13機 |
警視庁では世界で最初の民間型EH101(機体番号:JA01MP)を1999年より導入、「おおぞら」の愛称で運用していたが航空の用に供さないとの理由で2018年6月に登録を抹消した[26]。
イタリア空軍は2015年よりHH-101A CAESAR(シーザー)を運用。特殊作戦支援・捜索救難仕様に改装し、赤外線対策(LAIRCM)、直接接続ストレージ(DAS)、指向性赤外線対策(DIRCM)等の自己防御システムやM134ミニガン用マウント、空中給油プローブ、レーダー等を装備している。
出典: AW101 - DETAIL - Leonardo - Aerospace, Defence and Security
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