ロジャー・ペンローズ OM FRS(Sir Roger Penrose、1931年8月8日 - )は、イギリス数理物理学者数学者科学哲学者。2020年ノーベル物理学賞受賞[1]

概要 ノーベル賞受賞者 ...
ノーベル賞受賞者ノーベル賞
受賞年:2020年
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:ブラックホールの形成が一般相対性理論の強力な裏付けであることの発見
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一般相対性理論宇宙論数理物理学に貢献した。特異点定理によりスティーブン・ホーキングとともに1988年のウルフ賞物理学部門を受賞し[2]、「ブラックホールの形成が一般相対性理論の強力な裏付けであることの発見」により、ラインハルト・ゲンツェルアンドレア・ゲズともに2020年のノーベル物理学賞を受賞した[3][4]

経歴

若年期

1931年8月8日エセックス州コルチェスター生まれ。

ユニバーシティ・カレッジ・スクール英語版[5]卒業後、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)入学。父のライオネル・ペンローズがUCLの遺伝学教授で、学費が免除された。

1952年、UCL卒業、B.Sc.[6]ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ英語版大学院で学び、1957年Ph.D.取得。

ロンドン大学、ケンブリッジ大学、プリンストン大学シラキュース大学に勤務した。また、テキサス大学コーネル大学ライス大学などで客員として教鞭をとった。

1964年、スティーヴン・ホーキングと共にブラックホールの特異点定理を証明。1972年、王立学会フェロー。1973年、オクスフォード大学ラウズ・ボール教授職に就任。1994年、ナイト叙勲。

1988年、ウルフ賞物理学部門受賞。2020年、ノーベル物理学賞受賞。

家族・親族

ライオネル・ペンローズは精神科医、遺伝学者。母マーガレット・ペンローズ(旧姓リーズス)は医者。

物理学者オリバー・ペンローズは兄、チェスのグランドマスタージョナサン・ペンローズ英語版、遺伝学者シャーリー・ホジソンは弟[7][8]

父方の祖父はアイルランド生まれの芸術家J・ドイル・ペンローズ英語版

母方の祖父は生理学者のジョン・ベレスフォード・リーズス英語版。母方の祖母のソニア・マリー・ナタンソン[9][10]は、1880年代後半にサンクトペテルブルクを離れたユダヤ系ロシア人である[11][9]

ローランド・ペンローズ英語版は叔父。ローランドの妻は写真家のリー・ミラー、息子は写真家のアントニー・ペンローズ英語版である[12][13]

業績

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ペンローズの階段
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ペンローズの三角形

その他の活動

量子脳理論

著書『皇帝の新しい心』にて、内の情報処理には量子力学が深く関わっているというアイデア・仮説を提示している。その仮説は「ペンローズの量子脳理論」と呼ばれている。放射性原子が崩壊時期を選ぶように、物質は重ね合わせから条件を選ぶことができるといい、意識は原子の振る舞いや時空の中に既に存在していると解釈する[17]

素粒子にはそれぞれ意識の元となる基本的で単純な未知の属性が付随しており[要出典]、脳内の神経細胞にある微小管で、波動関数が収縮すると、意識の元となる基本的で単純な未知の属性も同時に組み合わさり[要出典]、生物の高レベルな意識が生起するというのである(「意識」の項にその仮説の解説あり。参照のこと)。

一方、麻酔科医のスチュワート・ハメロフは、生物学上の様々な現象が量子論を応用することで説明可能な点から少しずつ立証されていて、20年前から唱えられてきたこの説を根本的に否定できた人はいないと主張している[18]

臨死体験の関連性について以下のように推測している。「脳で生まれる意識は宇宙世界で生まれる素粒子より小さい物質であり、重力・空間・時間にとらわれない性質を持つため、通常は脳に納まっている」が「体験者の心臓が止まると、意識は脳から出て拡散する。そこで体験者が蘇生した場合は意識は脳に戻り、体験者が蘇生しなければ意識情報は宇宙に在り続ける」あるいは「別の生命体と結び付いて生まれ変わるのかもしれない。」と述べている[19]

量子論上の観測問題

『皇帝の新しい心』以降の著書で、現在の量子力学の定式化では現実の世界を記述しきれていないという主張を展開している。(学術論文としても提出している)

量子論には波動関数のユニタリ発展(U)と、波束の収縮(R)の2つの過程が(暗に)含まれているが、現在の量子力学の方程式ではUのみを記述しており、それだけでは非線形なR過程は説明がつかない。すなわち、現在の量子力学の定式化はRが含まれていないため不完全であるとする。そして、Rに相当する未発見の物理現象が存在していると考え、量子重力理論の正しい定式化には、それが自ずと含まれているだろうと唱えた。

『皇帝の新しい心』の続編として出版された『心の影』では、上記の仮説をより進め、UとRを含む仮説理論として「OR理論(Objective-Reduction、客観的収縮)」を提唱した。量子レベルの世界から古典的なマクロ世界を作り出しているのは、重力であり、重力がRに相当する現象を引き起こすとする。量子的線形重ね合わせとは、時空の重ね合わせであり、重ね合わせ同士の重力的なエネルギー差が大きくなると宇宙は重ね合わせを保持できなくなって、ひとつの古典的状態に自発的に崩壊するというモデルである。

その後、著書『The Road to Reality』の中で、OR理論を検証するための実験(FELIX:Free-orbit Experiment with Laser-Interferometry X-rays)を提案している。

これらの主張は、量子論におけるいわゆる「観測問題」あるいは「解釈問題」と呼ばれる議論に関連している。

受賞歴

著作一覧

物理学関係

  • The Nature of Space and Time (1996)
  • The Road to Reality : A Complete Guide to the Laws of the Universe (2004)
  • Cycles of Time: An Extraordinary New View of the Universe (2010)
  • Fashion, Faith, and Fantasy in the New Physics of the Universe (2016)

数学関係

  • ツイスターと一般相対論 (Twistors and General Relativity) - エルク・フラウエンディーナーと共著、『数学の最先端 21世紀への挑戦 第2巻』収録。丸善出版
  • 20世紀および21世紀の数理物理学 (Mathematical Physics of the 20th and 21st Centuries) - 『数学の最先端 21世紀への挑戦 第4巻』収録。丸善出版

その他

  • The Emperor's New Mind: Concerning Computers, Minds, and The Laws of Physics (1989)
    • 『皇帝の新しい心 コンピュータ・心・物理法則』林一 訳、みすず書房, 1994
  • Shadows of the Mind: A Search for the Missing Science of Consciousness (1994)
    • 『心の影 意識をめぐる未知の科学を探る 1・2』 林一 訳、みすず書房, 2001-02、新版2016
  • The Large, the Small, and the Human Mind (1997)
  • Beyond the Doubting of a Shadow(1997)
  • Cycles of Time(2010)
    • 『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』竹内薫 訳、新潮社, 2014
  • 『時間とは何か、空間とは何か 数学者・物理学者・哲学者が語る』 伊藤雄二 監訳、岩波書店, 2013
    • A.コンヌ, S.マジッド, R.ペンローズ, J.ポーキングホーン, A.テイラー
  • 『あなたの心を描きだすはじめてのアルテアデザイン 幾何学模様のカラーリングブック』渡辺滋人 訳、創元社, 2017.2
    • エンソー・ホリデー, ロジャー・バローズ, ペンローズ, ジョン・マルティノー, ハイファ・ハワージャ

関連書籍

  • 谷岡一郎・荒木義明『ペンローズの幾何学』講談社ブルーバックス 2024
  • 高橋昌一郎『天才の光と影 ノーベル賞受賞者23人の狂気』PHP研究所、2024年5月。ISBN 978-4-569-85681-0

出典

関連項目

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