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『JORGE JOESTAR -ジョージ・ジョースター-』は、2012年9月19日に集英社から発売された舞城王太郎による小説作品。製本サイズは四六判ハード。
2017年にはジャンプJブックスから新書版が発売された[1]。電子版も同時発売。
荒木飛呂彦の執筆30周年、『ジョジョの奇妙な冒険』の連載25周年の記念企画「ARAKI 30th & JOJO 25th / 2011-2012 JUMP j BOOKS Presents Special Project“VS JOJO”」の第3弾として発表された作品[2]。本企画は「VS」と冠されているとおり、若手作家が小説で勝負を挑むという野心企画とされており、3作品が作られている。
企画の他作品は『ジョジョの奇妙な冒険』の後日談(第1弾・『恥知らずのパープルヘイズ』)や裏側視点(第2弾・『OVER HEAVEN』)でありあくまでジョジョをシェアードワールドとしたものであったが、本作品は西暁町や名探偵などの舞城王太郎作品の要素が入っておりコラボレーションしているという独自の特徴がある。また作中には1部から8部までの諸設定が取り入れられている。公式宣伝チラシでも「漫画では表現不可能」と謳われ、世界観に大量の人物と能力が複雑に入り乱れている。
ジョージ2世の物語であり、メタ作品である。詳細は後述する。
表紙と挿絵は原作者の荒木飛呂彦とノベライズ作者の舞城王太郎の両名が手がけている。ハードカバー版の表紙は、トランプの絵柄を模した、荒木絵の新規書き下ろし「パイロット姿のジョージ&若きリサリサ」と舞城絵の「ペネロペ&ジョージ」のダブルカバー。新書版も同イラストを流用して装丁を変えている。加えて公式サイトでは舞城による各シーンのイラストが公開されている。これは枚数も大量で、全編の完全なネタバレとなっている。イラストには、本文を読むだけでは判明しない情報(容姿やスタンド名など)が書かれているものもある。
公式略称は「舞ジョジョ」であり、ハードカバー版帯や新書版コピーに記載されている。また単行本発売の1か月前の『ウルトラジャンプ』2012年9月号(2012年8月18日発売)には、試し読みとして本作の冒頭部分が掲載された。
『ジョジョ』の第2部『戦闘潮流』にてわずかに言及されたジョージ・ジョースター2世を主役として、第1部『ファントムブラッド』ジョナサン・ジョースター(ジョージの父)と第2部『戦闘潮流』ジョセフ・ジョースター(ジョージの息子)のミッシングリンク的な作劇として描かれている。原作におけるジョージとリサリサについての設定がほぼ全て回収されるようになっている。第3部以降で本格的に描かれることになる「スタンド」については、少し言及があるも登場はせず、代わりに独自の「ウゥンド」という能力が登場する。舞台は20世紀初頭、時間経過は1900年から1920年までの20年間である。
さらにジョージ2世とは別に、2012年の日本に住むジョージと同姓同名の少年「名探偵ジョージ・ジョースター」が登場する。名探偵ジョージの章では、『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部 - 7部までのキャラクターによく似た人物たちや、同じまたは異なるスタンドが登場する。オリジナルとなるスタンド名は洋画に由来している。名探偵ジョージPartの時間経過は、2012年7月23日夜から24日にかけての約1日である。
そしてジョージ2世と名探偵ジョージの物語が交互に描かれていき、最終的に二つの物語が一つに収束するという流れになっている。奇数章(ジョージ2世の物語)は章数が英数字で表記されており、偶数章(名探偵ジョージの物語)は章数が漢数字で表記されている。
宣伝文には、ジョースター家系図のジョージ2世の物語とある(嘘は書いていない)。そして読み始めると、第一章でメタが言及されて、第二章以降は同名の名探偵ジョージやさらなるメタが出てくる、という構造をしている。2人のジョージ・ジョースターが主人公とされ、「VS JOJO」の煽りどおりに九十九十九は名探偵ジョージに「自分が本物か、偽者か、人生で証明することになるはずだ」とメタ警句し、またジョージ2世は原作に準拠して死の運命をメタ宣告されている。物語・主人公などのメタに比重が置かれ、特に「ビヨンド(BEYOND)」という独自の新メタ概念が重要な要素を占め、ビヨンドを持つ人物が主人公とメタ定義される。
名前は「Jorge Joestar」で、これは祖父の名前である「George Joestar」と、父の愛称「JoJo」に由来した命名である。ジョージ2世を「Jorge」と表記するのは、本作における設定である。一般的に英語名の「ジョージ」は「George」であるが、スペイン語とポルトガル語の名前で、同じ意味の「Jorge」(ホルヘ、ジョルジ)が存在する。序盤の舞台はスペイン領で、ここではジョージは家族以外からは「ホルヘ」と呼ばれている。
ディオ・ブランドーは最大の敵として位置づけられている。ディオはジョージ2世にとっては父の仇であり、原作ではジョージの死の遠因にもなっている相手である。ディオに関しては、同企画の第2弾である『OVER HEAVEN』とも重複がある。
作風として、原作ではありえなかった展開が積極的に描かれている。例を挙げれば、4567部キャラ同士が出会う・ボスキャラ同士が戦う(時間スタンドvs時間スタンド)・究極生命体カーズが復活する、など。読了しても幾つもの謎が未解決で残る。
ハードカバー版から新書版にかけて、ストーリーは同一だが、部分的な加筆修正、改訂が行われている[3]。
1900年、カナリア諸島スペイン領のラ・パルマ島に住む10歳のジョージ・ジョースターは、アントニオ・トーレス達に虐められながらも、幼馴染みのリサリサに助けられる日常を送っていた。彼女が養父ストレイツォの下へ帰ってしまうという話を聞いたジョージは勇気を出して自分の力でアントニオ達に反撃しようと決めるが、その矢先にアントニオが何者かに「皮一枚」にされて殺害されるという怪事件が発生する。
アントニオ殺人事件は、ジョージのクラスメイトの名探偵九十九十九(ツクモジューク)の推理により犯人が挙げられ、解決したと思われた。しかしジョージはその直後、名探偵や警察の常識外の存在「吸血鬼」を目撃する。真の犯人たる吸血鬼はリサリサの波紋によって倒され、残党もストレイツォらに掃討されて島は平穏を取り戻した。
リサリサはイタリアに行き、ジョージと離れ離れになった。九十九十九は日本に帰国する途上のバミューダ海域で船が沈み、行方不明となった。
2012年7月23日夜。福井県西暁町に住む少年探偵ジョージ・ジョースターは、15密室殺人事件に隠された暗号を解いたことで、別の世界からやって来たという少年九十九十九と邂逅する。また吉良吉影なる人物から「杜王町に近づけば殺す」というメッセージを送られ、続くように翌朝、九十九十九が杜王町で死体となって発見された。名探偵ジョージは挑戦と受け取り、杜王町へと向かう。
1905年。ペネロペ・デ・ラ・ロサは密室を作るピエロに取り憑かれて恐怖していた。過去の事件で心に負った傷が能力となったものであり、これをジョージはウゥンドと名付ける。ジョージは暴走したペネロペのウゥンドに殺されかけるも、機転により密室を破り生還する。その頃のラ・パルマ島では集団ヒステリーのごとき恐怖が蔓延していた。
2012年7月24日午後。名探偵ジョージは杜王町で起こった名探偵三重殺人事件の捜査を開始する。矢十字屋敷に住む岸辺露伴は、名探偵ジョージに「杜王町では物理法則など簡単にネジ曲がる」、スタンドの存在を説く。そこに広瀬康司・虹村不可思議・虹村無量大数が現れるも、露伴の同居人杉本玲美も踏まえて、どうも会話がうまく成立しないのだが、これはどういうことか? 名探偵ジョージの推理により真相が明らかとなり、さらに名探偵ジョージは露伴の能力でスタンドが視認できるようになる。
エリナが新婚旅行の漂流の真相を語る。
杜王町は日本列島から分離して、高速で海上を移動していく。杜王島は透明なバリアで覆われており、軍のミサイル攻撃も通さない。外部の名探偵達は『吉良吉影殿、落ち着いてくれ。君が名探偵三重殺人事件の犯人でないことを我々は知っている。真犯人が君に濡れ衣を着せて追い詰めようとしているのだろう。捜査への協力を考えていただけないだろうか』という交渉を報道する。またアメリカの元大統領ファニー・ヴァレンタインがバリアの境界面で同スタンド使いの広瀬に伝えたところによると、このままでいくと米軍は杜王島を攻撃して転覆させてしまう予定だという。町民の間では混乱とヒステリーが広がり、あやうく体育館で集団焼身自殺となるところを、虹村達が寸前で防ぐ。
1905年。ジョージ、エリナ、ペネロペはイギリスウェイストウッドのジョースター邸跡へと移住。ジョージは高校に通い始めるもなじめずにいたが、スティーブン、ケントン、ダーリントンのモーターライズ家の子女達と出会い、飛行機作りに興味を持つ。だがケントンが殺され、ジョージが容疑者として疑いをかけられる。しかしそのときジョージはなぜかローマの地下遺跡にいてリサリサと会っていた。ジョージ犯人説は不可能犯罪である。
イタリアの離島ネーロネーロ島もまた移動し、杜王町へと激突した。マフィアが杜王町へと乗り込み、町長と住民の制圧を開始する。マフィアの汐華初琉乃は名探偵ジョージを呼び出し、「ボスのディアボロを探し出す」よう探偵依頼。追い詰められている吉良とディアボロは、突如動き出した2つの島と関係があるのだろうか? 名探偵ジョージにはマフィアから補佐役としてナランチャ・ギルガとスタンド電話が付けられた。しかし突然九十九十九が現れ、名探偵ジョージとナランチャを宇宙船へと飛ばす。
1906~8年。ジョージは18歳となり、自動車に興味を示す。殺人容疑での裁判は続くも決着がついていない。ジョージは自分の手で真犯人を探すべく推理し、新たな説へとたどり着いたのだが、それにも証拠はなかった。最終的には不起訴処分で嫌疑を解かれ、ジョージは王立飛行クラブに入る。
火星探査の有人宇宙船HGウェルズに、名探偵ジョージとナランチャは飛ばされた。火星には謎の生物がいたが、彼こそかつてジョセフ・ジョースターが地球から追放した究極生命体カーズであった。船長ファニアー・ヴァレンタインはカーズ独占を目論み、宇宙飛行士の仲間達をスタンドで殺していくも、ナランチャの反撃に遭い死亡する。最終的にはカーズが探査機ジオットを改修して、名探偵ジョージ、ナランチャ、宇宙飛行士プッチと共に地球への帰路に就く。
ダーリントンはジョージに「死者の蘇生」を語る。自分達がディオ・ブランドーと石仮面について調べた事、そして父と兄がケントン蘇生の妄念に取り憑かれているということを。
1914年には世界大戦が勃発し、ジョージは海軍航空隊に入隊。敵機に撃ち落とされて漂流するも、スティーブンとリサリサに助けられる。パイロットの間ではグレムリンの噂が流行し、目撃例も多数あったが、ついにはジョージ自身もグレムリンに出会う。
地球への帰還船内で、名探偵ジョージはカーズと会話する。今起こっていることは、ディオがプッチをそそのかすことで、火星のカーズを地球に呼び寄せようとしているのだろうという結論に至る。
さらに名探偵ジョージはスタンド電話で地球の状況を聞いたところ、日本の東北地方とイタリアのサルディニア島でゾンビ映画さながらのバイオハザードが発生しているという。そこにつけこんだアメリカ主導の捏造報道により、杜王町とネーロネーロ島は『人間をゾンビ化させる未知の細菌兵器を所持したテロリスト達に占領されている。町民達も既に感染済だ』ということにされてしまっており、宇宙船が地球上空にたどり着いた頃には、島は軍の攻撃に晒されていた。名探偵ジョージはカーズにナランチャのスタンドのコピーディスクを借りて米軍兵器を破壊して無力化させ、杜王町を援護する。続いて宇宙船転落の衝撃で杜王町は転覆し、裏側にあったグレートブリテン島が現れる。名探偵ジョージは杜王島の形を左右反転して900倍に拡大すればグレートブリテン島になるということに今さら気づく。
ゾンビの航空隊300機がイギリスに本土攻撃を仕掛けてきた。ジョージとリサリサが連携の空中戦で全て倒し、ロンドンを奪還する。
師トンペティによると、ジョージはリサリサと結婚すると死ぬ運命にあるという。それでもジョージはリサリサにプロポーズし、ジョセフも誕生する。そして1920年11月11日の結婚式の日、ジョージはゾンビ司令官に殺され、復讐のリサリサはゾンビ司令官を討ち果たして出奔する。さらにはジョージを殺されたペネロペの怒りが密室を作り、世界そのものを密室に閉じ込めてしまう。これによってイギリスと外の世界は分断されてしまった。
だが実はジョージは殺されたわけではなかった。己のビヨンドで死の運命を変え、現れた九十九十九の助けによって別の世界へと転移させられていたのである。
名探偵ジョージ、ナランチャ、プッチ、カーズは杜王町に墜落したはずなのに、1920年のイギリスにいた。名探偵ジョージ一行にペネロペが合流する。
名探偵ジョージはスタンド電話で、アロークロスハウスでディアボロと吉良の死体が発見されたという報告を受け、詳細を訪ねる。「キング・クリムゾン」「キラークイーン」という強力なスタンド使い2名がなすすべもなく殺され、犯行を誰にも目撃されていなかったという不可解な事件である。ブチャラティは「死んで良かった悪党どもだ。死の真相なんか解かなくて構わない」と言うが、名探偵ジョージは名探偵として謎を解かなければならないと宣言する。
グレートブリテン島が動き出してマンハッタン島に激突し、ロンドンとニューヨークは廃墟の街と化した。アメリカ大統領ファニー・ヴァレンタインに伴われて現れた「茨の王冠と聖痕」のディオ・ブランドーにプッチはひざまずき、新たなスタンド「メイド・イン・ヘブン」を得る。プッチの時間を加速させるスタンド能力によって、グレートブリテン島そのままに外の世界を36巡させ、2012年の世界の中に、1920年のイギリスが現出する。
杜王町のアロークロスハウスでジョージは目覚めた。ジョヴァーナに傷を治療してもらっている。スタンドの説明も受け、さらに露伴の手助けでスタンドの視認と日本での会話が可能となっている。ではどうやってイギリスに帰るか。それはビヨンドを信じること、主人公としてなすべきことをすることである。この場所アロークロスハウスにおいては、ディアボロ、ヨシカゲ、九十九十九殺害事件の謎を解くということである。ジョージはレオーネ・アバッキオとNYPDブルーと協力して推理に挑む。
ディアボロ、ヨシカゲ、プッチ、ジョヴァーナのバトルが繰り広げられ、最終的にジョージはディオに捕まる。
日光を克服しあらゆる準備を終えた究極生命体ディオ・ブランドーは、真の頂点に立つべく、究極生命体カーズに打倒を宣言する。名探偵ジョージは究極生命体同士の戦いを目撃する。
この作品には2人のジョージ・ジョースターが登場するが、この記事中ではイギリス人のジョージを「ジョージ」、日本人のジョージを「名探偵ジョージ」と呼称する。また2つの世界の登場人物が交錯するので、便宜上ジョージの世界を【A】、名探偵ジョージの世界を【B】と表記してどちらの世界の人物であるかを区別する。
ビヨンド持ちが主人公とメタ定義され、ビヨンドを持つ人物が3人いる。また主人公とジョースター家の血の繋がりが重要で、主人公3人で全て異なっている。主人公の一人とされるディオのスタンドは血が繋がっている者への予知能力を有し、つまりディオはジョースター一族に優位性がある。
ジョジョの奇妙な冒険本編に登場するものについては各項目を参照とし、本項では本作オリジナルの用語のみ解説をする。
形態 | カテゴリ | 発売日(発行日) | リンク:集英社の本 | ISBN | 備考 |
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四六判ハード | 小説/戯曲 | 2012年10月19日 | JORGE JOESTAR(四六) | ISBN 978-4-08-780650-2 | |
新書 | JUMP jBOOKS | 2017年12月19日(12月24日) | JORGE JOESTAR(新書) | ISBN 978-4-08-703441-7 | |
デジタル | ジャンプ ジェイ ブックスDIGITAL | 2017年12月19日 | JORGE JOESTAR(デジタル) |
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