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日本の推理作家・英訳者 ウィキペディアから
(せいりょういん りゅうすい、1974年8月9日 -)は、日本の推理作家。英訳者。作家の英語圏進出プロジェクト「The BBB (Breakthrough Bandwagon Books)」編集長。TOEIC満点 (990) ホルダー。ビジネス書著者。マンガ原作者。自称「大説家(たいせつか)」。日本文藝家協会会員。クリスチャン(カトリック信徒)。本名は(かない ひでたか)。兵庫県西宮市出身。
甲陽学院高等学校卒業。高校在学時、田中芳樹の『銀河英雄伝説』に影響を受け、『夢幻天空絵巻』というファンタジー小説を執筆した[1]。登場人物が数百名に上るこの架空歴史小説が、『JDCシリーズ』の構想の基となった[1]。1992年2月29日に作家になると決意し、「清涼院流水」というペンネームを名乗り始める(先に流れる川を見ていて「流水」を思いつき、それに組み合わせるものとして「清涼院」を付けたものであり、最初から「清涼飲料水」のもじりを狙ったわけではない)[2]。
1993年、京都大学経済学部に入学した。この頃から主にミステリを執筆するようになる[3]。綾辻行人や麻耶雄嵩らを輩出した京都大学推理小説研究会に所属し、そこでまずJDCシリーズ最初の短編となる『黒猫間の犯罪』を発表。この作品が研究会の間で好評だったため、以降毎月のようにJDCの短編を発表していたという[3]。なお、この当時はまだ「JDC」というタームは存在していなかった[3]。そして同年の秋、『ジョーカー』のプロトタイプとなる原稿用紙700枚の作品『華麗なる没落のために』を完成させる。この作品は「ミステリの総決算」を目指して作られたが[4]、『ジョーカー』からも推察されるような破天荒な作品ゆえに「研究会最大の問題作」と評され、そのことを巡る論争の結果、流水は研究会を脱退するに至った。
1995年、阪神・淡路大震災によって実家が全壊[4][5]。故郷の惨状を目の当たりにしたこの経験が、当時執筆途中だった『1200年密室伝説』[4]やデビュー後の『カーニバル』[6]の設定、そして自身の人生観に大きく影響を及ぼしたという[4]。
そして1996年、完成させた『1200年密室伝説』をメフィスト賞に応募。これが第2回メフィスト賞受賞となり、『1200年密室伝説』は『コズミック 世紀末探偵神話』と改題した上で刊行され、流水は小説家としてプロデビュー。「10年に1度の話題作」などと騒がれる[7]。当時の推理小説界では一種の際物扱いを受けたが、数年後、大塚英志、東浩紀、斎藤環など外部の評論家から相次いでリファレンスされるようになり、評価が高まる。
2001年1月1日、作家デビュー以後ずっと休学していた大学を中退。これにより、「21世紀最初の京都大学中退者」になったと自称する[8]。
2006年9月、記念ごとの好きな流水らしく、デビュー10周年を迎えた節目に、今まで作品を刊行してきた各出版社(講談社・幻冬舎・角川書店・徳間書店)から各社1作ずつ、10周年記念作品を発表すると予告した。
2007年1月から、10周年作品の第1弾として、講談社から『パーフェクト・ワールド What a perfect world!』を刊行。講談社BOXの企画「大河ノベル」の第1弾で、12ヶ月連続で毎月1冊ずつ刊行された。流水の他には西尾維新、島田荘司、定金伸治らがこの企画に参加した。また流水は同年、12ヶ月連続刊行と並行して、全国の主要都市を巡る12ヶ月連続サイン会「どーもツアー」も達成した。
2007年4月、10周年作品の第2弾として、角川書店から『LOVE LOGIC』を刊行。しかし、幻冬舎から予定していた10周年作品は、担当編集者の失踪によって無期延期となった[9]。また、徳間書店から予定していた10周年作品『神とオセロ』は、デザイン上のトラブルなどの理由で、原稿は完成しているにもかかわらず、いまだ刊行されていない[10]。
2009年3月15日、TOEIC学習サークル「社会人英語部」を創設[11]。
2009年5月1日、カナダ人漫画家カイ・チェンバレンとの合同公式サイト「bbbcircle」をオープン。これは流水初の公式サイトとなる。
2009年5月27日、「生まれ変わった清涼院流水の“新たなるデビュー作”」と謳われた『コズミック・ゼロ』の刊行に合わせて、文藝春秋のサイトに特設コーナーがオープン。
また、2006年にデビュー10周年を迎えて以降は、連載作品での新たな挑戦に積極的に取り組んでいる。2006年~2008年にはサブカル誌で初めて私生活を綴った『本人日記』を連載、2007年~2008年には進研ゼミで小学生向きの読者参加型の成功小説『人気者クイズ』『ホメられ隊』を連載、2008年~2009年には映画原作のケータイ小説として『忘レ愛』を連載、そして、2010年~2011年にはビジネス雑誌『セオリー』にて、 "人生を変える「英活」 TOEIC満点への勉強法" を連載。(2015年1月に『「7つの壁」を突破するブレイクスルー英語勉強法』として単行本化)
2010年10月、ビジネス書系ポッドキャスト『人生を変える一冊』の第100回のゲストとして登場した流水は、マイケル・ジャクソンをテーマとする新作『キング・イン・ザ・ミラー』と自身の人生について1時間に亘り語った。その中で、2009年に流水が発表した小説3作品『忘レ愛』『コズミック・ゼロ』『B/W』の映像化企画が同時進行していたものの、いずれも社内の事情で企画が頓挫してしまったことが明かされた[12]。
2011年9月、デビュー15周年記念作品『清涼院流水の小説作法』をPHP研究所より刊行。2009年から「大村純忠」と「ルイス・フロイス」の歴史大説を執筆中であることが初めて明かされた。
2012年12月1日、「作家の英語圏進出プロジェクト」公式サイト「The BBB」をオープン[13][14]。編集長は清涼院流水。森博嗣・高田崇史・蘇部健一など、複数のメフィスト賞受賞作家などが参加している。
2013年8月25日、流水が主催する「英語部勉強会」を、初めて一般公開。以後は毎回、全国から100人以上のTOEIC学習者が参加する人気イベントとなる。
2014年5月7日、「The BBB」にて、第189回TOEIC公開テストで990点を獲得したことが明かされた。以後、『日経トレンディ』『プレジデント』『クーリエ・ジャポン』などの雑誌に英語指導者として登場する事が増えている。
2016年3月12日、「The BBB」にて7作品を収めた森博嗣初の英語版短編集『Seven Stories』が刊行され、巻末に英訳者・清涼院流水による解説が収録されている。
2017年2月25日、第20回英語部勉強会の節目に、流水が代表を務めてきた「社会人英語部」を解散した。
2018年1月25日、2011年から予告していた構想・製作9年の歴史大説2作、『純忠 日本で最初にキリシタン大名になった男』と『ルイス・フロイス戦国記 ジャパゥン』を同時刊行した。
2021年11月、デビュー25周年記念作品『どろどろの聖書』を朝日新書より刊行。2020年7月20日に受洗し、クリスチャン(カトリック信徒)になったことが明かされた。
2022年2月22日の午後2時22分、流水が2004年に告知していた「『キャラねっと』の集い」が明治神宮で行われたが、想定をはるかに超える200人以上の読者が全国各地から参加したため、神社側の要請でイベントは集合と同時に解散となった。イベント参加者へのサポートは、「The BBB」特設ページ(秘密のゲーム延長戦)で発表された。
「大説家」という自称の通り、自身の作品を「(小説ではなく)流水大説(りゅうすいたいせつ)」と呼ぶ。
初期の作品に顕著に見られる特徴は、奇妙でナンセンスな発想の元に練られた設定と、あらゆる方向に特化された過剰な「言語トリック」(要は言葉遊びである)、ミステリ的予定調和からも外れた結末の意外性への固執である。また、本来あまり重要視されない部分にこだわり、何らかの意味を持たせる傾向がある(カバーデザイン、価格、発売日、原稿枚数、ぱっと見たときの文章の並びなど。カバーデザイン・価格はノベルス版『秘密屋』シリーズの特異な一例が知られるほか、『ぶらんでぃっしゅ?』は原稿用紙換算で777枚であったりする)。森博嗣は、流水の作品はあらゆる面で意図され、計算されていると評している[15]。
また、デビュー10周年以降は、小説と同じかそれ以上の情熱をビジネス書と英語本にも向けるようにもなり、作品においても、その傾向が強まっている。ビジネス雑誌で英語学習法を連載するのは小説家として極めて異例であるし、マイケル・ジャクソンをテーマとした『キング・イン・ザ・ミラー』は「小説であり、ビジネス書であり、音楽本でもある」本として執筆され、流水自身による英語版の製作もbbbcircleで発表されている。このように、流水の「大説」は原義の「国家や政治に対する志を書いた書」ではなく「従来のジャンルにおさまりきらないもの」という意味合いが大きい。
以上のように、その作風からデビュー当時はミステリ界に論争を巻き起こした。大森望によれば、『コズミック』刊行直後の鮎川哲也賞受賞パーティーでは、我孫子武丸、綾辻行人、有栖川有栖、笠井潔、北村薫、京極夏彦、倉知淳、篠田真由美、二階堂黎人、貫井徳郎、法月綸太郎、麻耶雄嵩、山口雅也などのミステリ作家が朝まで『コズミック』談義に明け暮れたという[16]。担当編集者曰く「デビュー当時最も叩かれた新人」。
大塚英志や舞城王太郎、西尾維新といった作家が後述のJDCシリーズに共鳴し、同じ世界観を共有した作品を発表しているなど、同世代およびそれ以降の世代の作家たちに与えた影響は大きい。
小説仕立てのビジネス書として発表された『成功学キャラ教授』は、成功本ガイドブックで歴代総合2位の高得点がつき、以後、流水はビジネス書業界に「発見」され、複数のビジネス書著者と親交を持つようになる。
流水が2009年に創設したTOEIC学習サークル「社会人英語部」の勉強会は、2013年8月の一般公開以降、全国から多くのTOEIC学習者を集める人気イベントとなった。その活動は、流水がTOEICテストで満点を獲得した後に『社会人英語部の衝撃』として書籍化もされた。流水は多くのTOEIC講師と交流し、ビジネス雑誌などに英語指導者として頻繁に登場するようになったが、2017年2月、第20回勉強会の節目に「社会人英語部」は解散した。
代表作は『コズミック』、『ジョーカー』、『カーニバル』、『彩紋家事件』の4作品を中心とする、総勢350人以上の日本探偵倶楽部 (JDC) の探偵達が活躍するJDCシリーズ。
登場人物の名前を「九十九十九」「龍宮城之介」「ピラミッド・水野」などと命名したり、作品の冒頭で1200人の殺害予告がなされたり、作中の探偵が「必要なデータが揃うと真相を悟る」、「寝ないで推理すると限界を超えた先に真相が閃く」などの推理法を駆使したりするなど、従来のミステリの定石・常識から外れた(故意に『外した』)作風である。
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