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フランスの、音響および音楽の探求と共同のための研究所 ウィキペディアから
IRCAM(イルカム、仏正式: Institut de Recherche et Coordination Acoustique/Musique)はフランスの、音響および音楽の探求と共同のための研究所。1970年より、ポンピドゥー・センターの関連組織としてジョルジュ・ポンピドゥーの指導の下ピエール・ブーレーズによって組織され、1977年に設立した。訳語としてフランス国立音響音楽研究所が当てられている。
IRCAM (フランス国立音響音楽研究所) | |
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正式名称 | Institut de Recherche et Coordination Acoustique/Musique |
日本語名称 | IRCAM (フランス国立音響音楽研究所) |
略称 | IRCAM |
組織形態 | 公施設法人 |
所在地 |
フランス, パリ 1, place Igor-Stravinsky, 75004 Paris 北緯48度51分34.9秒 東経2度21分5.3秒 |
設立年月日 | 1977年 |
所管 | 文化省 |
ウェブサイト | http://www.ircam.fr/ |
IRCAMは、今日、音楽制作と科学研究に特化した公的研究機関としては世界で最も大きな組織に数えられる。芸術の未来研究と科学技術のイノベーションが集約する唯一の場といえるこの研究所は、2006年よりフランク・マドレーネが所長の座についており、パリの演奏会シーズンを通じ、また音楽祭や、フランス国内外のツアーを通じて、制作、研究、伝播という3つの基本軸を展開している。
IRCAMは音楽制作の主要拠点であると共に、国際的な作曲家の創作活動やレジデンスの場でもあり、作曲家に対しては委嘱という手段によって、恵まれた出会いの機会を与えている。レジデント・アーティストのプロジェクトは数多く行われており、これらは、複数の分野(音楽、ダンス、映像(動画)、演劇、映画)に及ぶこともある。毎年行われている音楽祭アゴラでは、こうした創作活動を一般向けに紹介している。
IRCAMは音楽と音響の分野において、科学技術のイノベーションの最先端にいる研究センターである。IRCAMの研究は、幅広く国内外の大学や企業と共同して行われ、その範囲は音響学、信号処理、情報理論 (言語、リアルタイム、データベース、マンマシンインタフェース)、音楽学、音楽認知研究に及ぶ。これらの研究はメディアアート、造形、舞台芸術、産業界(文化産業、通信産業、情報産業、自動車産業、交通機関)にまで応用されている。
IRCAMは情報音楽の教育の場でもある。世界的な研究者や作曲家の協力によって作曲の研究課程や講習会が行われており、さらにパリ第6大学(UPMC)との共同による修士課程(音響学、信号処理、応用音楽情報理論)が開設されている。一般人向けのものとしては、教育省と各音楽院との綿密な共同によってインタラクティブな教育ソフトの開発が行われている。
2006年より、創作活動と技術研究、そしてそれらの伝播を同時に促進させるために、研究所全体の方針として芸術面に重点を置くこととなった。以下の一連の変革はそれによるものである。
IRCAMの特質は「音楽現象について様々な科学的視点を受け入れ、連携を図ること」であり、物理、信号処理、情報理論、認知心理学、音楽学の観点から研究活動を行っている。研究領域は、フランス国立科学研究センター(CNRS)との協同研究における「音楽と音響の科学、工学」(STMS)に定義されている。
活動は以下の2つの任務から成っている。
これらの任務は、芸術家と研究者を結ぶ学際的な音楽研究プロジェクトの実施、および専門的アプリケーションソフトウェアと工業規格の開発によって遂行される。IRCAMは、国内やヨーロッパの研究プログラムに積極的に参加しており、かつ産業界との共同研究をリードしている。
ユーグ・ヴィネ率いるIRCAMの研究開発部門は、研究員、技術者、博士、技師、事務員など90人のメンバーから成り、8つのチームに分けられる。各チームは各自の領域 (研究、開発、契約および外郭プロジェクト、発信)に応じた一連の仕事に組み込まれつつも、科学分野における学際性から、専門チーム間での活動においてテーマを設定している。なお、活動の性質からUMR STMSに組み込まれているチームもある。
2010年12月現在、研究チームは以下の8つから構成されている。
など
など
研究部門、教育部門と共に緊密な連結している制作部門はIRCAMの活動の支柱である。芸術部と制作部によって組織化、運営がなされており、プロジェクトの企画、実施、録音に到るまで作曲家や演奏家らの制作協力を行っている。アーティストの発表は、IRCAMの活動の重要な公開機会となっている。
まず、アーティスト(作曲家、演奏家、アンサンブル)にプロジェクトの方法を手ほどきする。他のプロジェクトの例、プロジェクトに関わるパートナーシップの創出、音楽週間や音楽祭などにおける発表機会の提供などを行い、プロジェクトの推進、構成を補助する。プロジェクトの確認の次に、実際に外部とのパートナーシップや、可能な外部からの支援を取り付けるという重要な仕事がある。
プロジェクトの実現を管理し、IRCAMのノウハウから企画立案を行っている。アシスタント、技術者、音響オペレーター、舞台オペレーターを提供している。
初期の頃より研究、教育に携わってきた作曲家の他、レジデント・アーティスト、研究課程に所属した作曲家、また、IRCAMが制作協力をした作曲家の作品などがある。
他、IRCAMの関連作品一覧を参照
世界初の情報音楽の教育機関としての歴史から、また理念のひとつである伝播とも関連して、IRCAMは多くの教育活動を実施している。
作曲家のための研究課程(cursus1,2)がある。情報音楽における理論上、作曲上の問題系に取り組み、考察するために必要な信号処理、音響合成、インタラクションの書法を1年間または2年間、集中的に訓練する。ステファーノ・ジェルヴァゾーニ、イザベル・ムンドリー、ファウスト・ロミテッリ、ジョシュア・ファインバーグ、望月京、ブルーノ・マントヴァーニなど、世界で活躍する作曲家がここで研鑽を積んでいる。2008年より、パリ、リヨンのフランス国立高等音楽院(CNSM)、スイスのジュネーヴ高等音楽院(HEM)の間で一部人員の提携を結んでいる。
音響技術者のための修士課程(音響学、信号処理、応用音楽情報理論)(atiam)がある。情報音楽、音響信号処理、音楽音響の領域における研究に取り組むための科学と音楽の基礎力を養う。これまで、音響、音楽の領域における研究者、教育者、工学技術者を数々輩出してきている。設立当初より、国立高等通信学校(Télécom ParisTech)、パリ第6大学(UPMC)の間で一部人員の提携を結んでいる。
一般人を対象としたIRCAM製ソフトウェアの講習会。週末に行われている。Max/MSP、OpenMusic、Audiosculpt、Modalysなどの諸機能を段階的に学ぶことが出来る。英語による講習も一部開設されている。作曲家、演奏家、サウンドデザイナー、音響技術者、音響技師、舞台関係者などが対象とされているが、受講資格は特に無い。
1993年より、以下のIRCAMフォーラムにて研究および創作の教育機会、ワークショップなどが設けられている。
メッスで毎年行われるフェスティヴァル・アカントの作曲講習会において、IRCAMのチームによる講習会が開催されることがある。
日本においては、2006年12月、NPO団体Glovill及び尚美学園大学大学院の招きによりヤン・マレシュのチームが来日し、初台アップルセミナールームにて3日間のワークショップ、東京日仏学院にてシンポジウム及び演奏会が行われた。ワークショップでは、Max/MSP、AudioSculpt、OpenMusicのレクチャーが行われた。
1996年から、IRCAM、文化省、フランス国立科学研究センター(CNRS)、パリ第6大学(UPMC)の間で、「音楽と音響の科学、工学」の名目で科学技術および高等教育の協力提携[1]を行っている。
IRCAMはまた、様々な演奏機会、演奏の形を展開してきた。IRCAMのレジデント・アンサンブルであり、現代音楽の演奏に特化したアンサンブル・アンテルコンタンポランはこれまで、IRCAMで創作された作曲作品の実演に対し多大な貢献をしてきている。各々の演奏家は、ソリストとして、また別のアンサンブル奏者として個別に仕事を依頼される腕前を持ち、こうした超一流演奏家集団であるアンサンブル・アンテルコンタンポランは、アンサンブル・モデルンやクラングフォルム・ウィーンなど他のヨーロッパの数多くのアンサンブルのモデルとなっている。
ポンピドゥーセンターに音楽部門が設置される予定は当初無かったが、ポンピドゥー大統領の強い意向により、音楽研究所の設立が決まった。大統領は、1966年からは全ての活動を止めてドイツに拠点を置いていたブーレーズを急遽パリに呼び戻し、研究所の計画構想を要請した。1973年にイゴール・ストラヴィンスキー広場が完成し、研究所はポンピドゥーセンターと共に1977年に完成した。当初よりブーレーズは責任者として本部におり、研究所の完成と共に所長に就任。設立前からの準備委員として、ルチアーノ・ベリオ、ヴィンコ・グロボカール、ジャン=クロード・リセ、マックス・マシューズらがいた。1992年、ブーレーズは名誉所長となり、ロラン・ベイルが所長に着任した。1996年メディアテークが開設された。この施設は世界で最初期の分野横断的な試みであり、1000時間以上の録音資料、2000冊以上の研究書のオンライン上アクセスを可能とし、かつ実際の楽譜、音楽書籍および周辺分野書籍を有した。2002年には哲学者のベルナール・スティグレールが所長になり、2006年1月1日、スティグレールのポンピドゥーセンター芸術監督就任に伴い、フランク・マドレーネが新所長に着任。マドレーネはアルス・ノヴァ・ブリュッセルやムジカ・ノヴァ・ストラスブールなどの現代音楽祭の音楽監督を務めており、就任挨拶では、INA-GRMをはじめとする国内外の様々な研究組織との共同構想を抱負として語っている。
IRCAMのエントランスは、ポンピドゥー・センター南側に位置したストラヴィンスキー広場の池(ジャン・ティンゲリーとニキ・ド・サンファル制作の可動噴水彫刻がある)の西側正面に位置するが、実際の施設の多くは、外部の騒音を遮断するために、池の地下に存在している。無響室などの音響実験錬、録音スタジオ、残響をコントロールする可動壁およびマルチ・スピーカー・システムを常設したコンサートホール“エスパス・ドゥ・プロジェクション”などの施設が池の下方部にあり、池の西側正面の建物内部には、サーバー管理の端末アクセスによるメディアテーク(地上2、3階)をはじめとし、エントランスおよび出版物販売(地上1階)、フランス国立科学研究センターの研究錬および事務所(地上4階)等が併設されている。建築設計はレンゾ・ピアノ、リチャード・ロジャースの共同によるもの。
月に一度は研究所内のホールにて新作の初演または演奏会を行っている他、ヨーロッパ各国においてIRCAMの技術を必要とする演奏会およびイベントには、担当の研究員が常に派遣されている。そして毎年6月には、現代音楽祭フェスティヴァル・アゴラを主催し、会場はIRCAM、ポンピドゥーセンターや近隣の劇場に及ぶ。2006年からは一部の日の演奏会がラジオフランスとの共催になり、オーケストラ作品や劇場作品など大規模な催しには、ラジオフランスのホールを利用している。 また、国際コンピュータ音楽会議(ICMC,1984)、第3回国際音楽情報検索会議(ISMIR,2002)、国際会議「音楽/芸術表現のための新インターフェース」(NIME-06,2006)などの国際会議がIRCAMで行われた。2010年、メッス・ポンピドゥーセンターの竣工に伴い、同センターにおいて2010年10月より2011年2月まで毎月演奏会が行われている。[2]
IRCAMの関連人物一覧を参照
他
他、ADESレーベルより多数出版
他、オペラDVDなど
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