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米国マクドネル・ダグラス社が開発したF/A-18A-D ホーネットの発展型戦闘攻撃機 ウィキペディアから
F/A-18E/Fは、マクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)が開発したF/A-18C/D ホーネットの発展型マルチロール機。F/A-18E/Fとは本シリーズの総称であり、その内容は単座型のF/A-18Eと複座型のF/A-18Fからなる。
F/A-18E/F スーパーホーネット
愛称は、ホーネットを超越しているという意味を込めて「スーパーホーネット」(Super Hornet)に変更された。A型からD型までのレガシーホーネット[注釈 1]と識別するために、「ライノ」(Rhino)[注釈 2]という愛称を無線でコールする際に用いている。「レガシーホーネット」・「ライノ」ともに非公式な呼称でもある。
F/A-18E/Fは、第4.5世代ジェット戦闘機に分類される戦闘攻撃機(マルチロール機)である。F-14の後続機計画であるアメリカ海軍先進戦術戦闘機(NATF)の「F-22N」やA-6の後続機計画である発達型戦術航空機(ATA)の[3]A-12が冷戦終結に伴う開発中止を受けて、既存のF/A-18(A-D型)の基本設計から全面的に再設計することで開発された。航続距離や兵器搭載能力の向上を図り、機体の大型化やステルス性を考慮した設計変更が行われた。
アメリカ海軍への納入は1999年から開始され、2001年にF/A-18E/FがIOC(初期作戦能力)を獲得し、アメリカ海軍のF-14艦隊防空戦闘機(艦上戦闘機)を更新する形で配備が進められ、イラク戦争などの実戦に参加した。
アメリカ海軍は、1963年から運用を続けていたA-6艦上攻撃機の退役における後継機選定のための ATA(Advanced Technology Attacker=先進戦術航空機)計画において、マクドネル・ダグラス社とジェネラル・ダイナミクス社(いずれも当時)の共同計画案を1987年末にA-12として本格的に開発を開始した。
また、ATFをベースとしたF-14D艦上戦闘機の後継機開発計画も、当時アメリカ海軍内で存在した。これはATFと同様にステルス能力を有する艦上戦闘機の開発を目指したもので、NATF(Naval Advanced Tactical Fighter)などとも呼ばれた。
計画は1988年頃から進められ、後にATFと一本化される。F-22選定後、NATFには「F-22N」との仮称が与えられ、546機の受注が見込まれた。開発はF-22をベースとし、機体構造をF-22とある程度共通させると共に、艦上戦闘機として必要な装備の付属や機体強度のアップ、F-14と同様に可変翼を有するとした。
だが、ATFの開発遅滞や予算削減から1991年に同時開発はキャンセルされた。A-12艦上攻撃機の開発中止もあり、アメリカ海軍はF/A-18A/Bをベースとした本機を開発している。
1987年、マクドネル・ダグラス社では海外への輸出を主眼にF/A-18C/Dを発展させたホーネット2000開発を計画している。F/A-18の原型機であるYF-17は、ノースロップ社独自の社内開発計画であったP-530 コブラで空軍の軽量戦闘機計画に応募したものであり、ホーネット2000では胴体と翼面の大型化や高出力エンジンへの換装によって、性能向上を図るものであったが、結局この計画は各国からの関心を集めることはなかった。
1991年初頭になり、国防総省は開発コストの高騰やスケジュールの遅延に機体重量の増大、冷戦終結による国防費削減などを理由に、A-12開発計画を中止した。A-12とは別にA-6Eのアップグレード型のA-6Fも開発されていたが、こちらも予算などの問題から開発が中止された。2つのA-6後継機開発計画が中止された結果、アメリカ海軍は別の開発・調達計画を必要とした。1992年5月、アメリカ海軍はホーネット2000をベースにしたF/A-18発展型機採用の意向を表明し、結果としてこの機体がF/A-18E/Fとなった。アメリカ海軍は、採用意向表明するのに先立ち、EMD(技術・製造・開発)段階移行のためにマクドネル・ダグラス社に対する地上試験用の3機と飛行試験用の単座型5機、複座型2機の製造承認と、ジェネラル・エレクトリック社に対するF/A-18C/D搭載のF404の発展型F414エンジンの開発承認を与えた。
1995年、飛行試験用の単座型1号機が完成し同年11月29日に初飛行した。1996年4月1日には複座型1号機が初飛行している。その後の各種試験を経て、1998年12月18日に量産型のF/A-18E初号機が海軍に納入され、2001年にF/A-18E/Fが初期作戦能力(IOC)を獲得した。
F/A-18E/FはF/A-18C/Dを改良し大型化したものであるが、多くの変更の結果、C/D型とE/F型の共通部品は僅か1割程度となった。E型は単座型、F型は複座型である。
在来型F/A-18からの主要な変更点を以下に示す。
全長はF/A-18の17.07mから18.38mへと延長され、レドームも大型化している。
主翼・尾翼・ストレーキなどといった翼の面積も拡大している。主翼面積はF/A-18の37.2m2から46.45m2となっており、操舵翼の面積も拡大されている。主翼下ハードポイントも左右1箇所ずつ増加している[注釈 3]。
これらの変更により、アビオニクス用スペースの増加、機内搭載の燃料タンクの容量増加[注釈 4]による航続距離の延長、運動性の向上などを実現している。その一方で、機体の大型化と翼面積の拡張などによって加速力は在来型と比べ低下しているともされる。
しかしながら、機体の大型化の一方でD型までにあった垂直尾翼間のエアブレーキを廃止し、方向舵を内側に動かすことと左右のストレーキ上に設置されたスポイラーでその機能を代替するなど、機体の総部品数はA-D型より減少している。
以上により、F/A-18E/Fの機体規模はかつて大型戦闘機とされたF-4ファントムIIすらを上回り、空虚重量ではF-15Eストライクイーグルに匹敵する。最大離陸重量でも、大重量の可変翼を備えた純粋複座型のF-14トムキャットに迫るものとなっているため、もはや旧ホーネットおよび原型機のYF-17のコンセプトである軽量戦闘機(英: Light Weight Fighter)にカテゴライズされる機体ではなくなっている。
A-D型 | E/F型 | |
---|---|---|
全長 | 17.07 m | 18.29 m |
全幅 | 11.43 m | 13.63 m |
全高 | 4.66 m | 4.88 m |
主翼面積 | 37.2 m2 | 46.5 m2 |
空虚重量 | A/B:12,973 kg C/D:10,810 kg |
E:14,288 kg F:14,515 kg |
最大離陸重量 | A/B:21,888 kg C/D:23,542 kg |
30,209 kg |
エンジン | F404-GE-400×2 | F414-GE-400×2 |
推力 | A/B:7,260 kg×2 C/D:8,160 kg×2 |
6,350 kg(ミリタリー)×2 9,980 kg(A/B使用)×2 |
最高速度 | A/B:M1.7 C/D:M1.8 |
M1.8 |
航続距離 | 3,700 km | 3,312 km |
戦闘行動半径 | C/D : 540 km | 1,231 km |
実用上昇限度 | 15,240 m | 15,240 m |
F-14やF-15の二次元型エアインテークのような断面積可変式ではなく、固定式のままであり、在来型同様に超音速性能を重視しないままでのステルス性考慮のための変更である。
F/A-18A-DのF404から、その発展型であるF414へ変更されている。このエンジンは完全自動化デジタル式電子制御システム(FADEC)を備えることで推力制御の自動最適化が達成されている。ただし、エンジンサイズを拡大せず高推力化するために排気速度を高めたせいで、かねてより騒音が大きいとされていたF404よりもさらに大きくなり、開発国アメリカでは訴訟にまで至った。また、ステルス性向上のため吸気ファン前方にレーダーブロッカーを装備している。
レーダーは当初、F/A-18C/Dの後期型と同じAN/APG-73を搭載していたが、ブロック2からはより高性能なAN/APG-79に変更されている。
AN/APG-79はアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーで同時処理が可能な目標数がAN/APG-73のおよそ倍となっており、限定的な電子妨害にも使用可能とされている。
その他にも、AN/ASQ-228 ATFLIRの携行能力や運用可能な兵装の種類が増えている。イラクでのサザン・ウォッチ作戦において、VFA-115 "イーグルス"所属機がF/A-18Eとして初めて実戦に出撃し、イラク軍の地対空ミサイル陣地に統合直接攻撃弾薬(JDAM)を投下している。
退役したKA-6DやS-3Bの代替として空中給油機の役割も果たせるようになっている。
プローブアンドドローグ方式が採用されており、"aerial refueling system"(ARS、空中給油システム)と呼ばれるポッドを装着することで内部タンクと増槽4本あわせて最大29,000ポンド(13トン)の燃料を搭載することができる。
しかし、空母航空団のF/A-18E/Fの約3割が空中給油任務に従事している現状を打開するために2016年から「艦上空中給油システム(CBARS:Carrier Based Aerial Refueling System)」計画に基づいてMQ-25が開発中である。
F/A-18E/Fは現在、アメリカ海軍、オーストラリア空軍で運用されている。その他いくつかの国の次期戦闘機計画で提案されたが、採用例は少ない。
型式 | 搭載位置 | 補足説明 |
---|---|---|
AN/ALR-67(V)2 | 内部 | Block 1に搭載 |
AN/ALR-67(V)3 | Block 2に搭載 |
型式 | 搭載位置 | 補足説明 |
---|---|---|
AN/ALQ-184 | 外部 | 全機搭載に対応 |
AN/ALQ-165 | 内部 | Block 1に搭載 |
AN/ALQ-214 | Block 2に搭載 |
ハードポイント11箇所。兵装搭載量 8,051kg
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