『DEMENTO』(デメント)は、2005年4月21日にカプコンから発売されたPlayStation 2用ゲームソフト。アメリカでは『Haunting Ground』のタイトルで発売された。
錬金術世界のダークサイドな一面を扱った作品。タイトルはラテン語で「狂気」を意味する言葉である。
元々『クロックタワー3』の続編として製作される予定だったが、新規ユーザー開拓のためにタイトルや設定を変更して開発された。それゆえ、追跡者からの逃走、陰湿な空気感、カメラワーク、操作など『クロックタワー3』と共通のプレイ感覚を持ち、そのシステムの1つである「パニックメーター」と同じようなシステムが使用されている(パニック状態のエフェクト、演出、制限の数も上がっている)[1]。また、音響効果は『クロックタワー3』のサウンドデザイナー・内海秀明が手がけている[2]。
「クロックタワーシリーズ」と異なる特徴的なシステムとしては、主人公が助け出したイヌに指示を送り、行動の手助けや敵への攻撃ができるほか、主人公が躾を行うこともできる。もう1つは、特殊なアイテムを使った練成がある。敵から身を隠すことができる「隠れポイント」は健在だが、「回避ポイント」は一部を除いて存在せず、代わりにイヌや自身による直接攻撃でダメージを与え、一時的に行動不能にすることができる。一方、走り続けたりして疲労が溜まると激しい行動が取れなくなるほか、敵の攻撃で負傷した際には行動に制限が掛かることがある。
『クロックタワー3』ではシリーズの恒例だったマルチエンディングやシナリオの分岐が廃止されていたが、今作は大きなシナリオ分岐こそ無いものの、特定の条件を満たさないと発生しないイベントを盛り込んでおり、エンディングも複数存在する。
俳優の竹中直人がイベントシーンの監督(シネマティクス・ディレクター)を担当していることも、本作の特徴として挙げられる。
システムの多くが『クロックタワー3』を継承、発展させている。本作独自の要素も存在する。
- 追跡者の出現条件
- 本作はイベントか時間経過で追跡者が出現する。追跡者が現れる予兆として、ヒューイが唸り声を上げる。また、大きな音を立てたりすることで時間に関係なく、追跡者に気配を悟られる。
- 逃走状態
- 主人公が追跡者に追跡されている状態。振り切るか、敵が主人公を見失って何処かへ去ると解除される。『クロックタワー』のような撃退ポイントはあまり存在せず、通常、振り切るためにはヒューイと協力してダメージを与えて行動不能に陥らせる必要がある。力尽きた追跡者は逃走するかその場に倒れて一時的に身動きが取れなくなる。
- 回避ポイントもかつてのように隠れて、追跡者がいなくなれば安心というわけではない。追跡者が逃走状態の解除と同時に姿を消す従来と違って、今作の追跡者は主人公を見失った後もしばらく周囲のエリアを巡回する。また、梯子の昇降中に攻撃を受けると落下して大ダメージを受ける、スタミナが減ったり負傷することで行動に制約が掛かるなどの、リアリティのある逃走劇が繰り広げられる。このように、本作は逃走状態と調査状態を単純にシステムとして分けるのではなく、現実味を持たせている。
- 逃走状態では調査や謎解きは行えない。この点は『クロックタワー3』よりも旧作の『クロックタワー』に近い。
- 追跡者の攻撃
- 今作の追跡者は様々な攻撃方法を持っている。『クロックタワー3』でも追跡者一体につき何種類かの攻撃方法が存在したが、どれも喰らってもパニックメーターが上がるのみで負傷も死亡もしなかった。主人公のリアクションも、基本的にはその場に尻餅を付いたり、吹き飛んだりするだけであった。しかし今作の敵の攻撃は主人公をパニックに陥らせる以外にも、負傷させる効果のあるものや、現在の状態に関係無く即死させるもの、すぐに振り解かないと一撃で殺される攻撃など、様々な効果が存在する。攻撃を受けた際のダメージ(パニック上昇率)も攻撃毎に異なり、また、強力な攻撃を受けると主人公がその場に倒れて危険な状態に陥ってしまう。さらに、攻撃を食らった直後に近づくと追跡者から強力な反撃を受け、即死することがある。
- HIDE INポイント
- クロックタワーシリーズでお馴染みの隠れポイントで、「回避ポイント」とも。追跡者の目を逃れるために使用する。しかし、前述のように本作の追跡者は一筋縄ではいかないため、隠れた後も用心する必要がある。発見されると「DANGER」の文字と共に大幅にパニック値が上昇し、引きずり出されてしまう。本作では何度も同じ場所に隠れていると発見されやすくなる上、隠れる場所によっては最初から見つかる確率が高いものや、100%見つかってしまう場所、見つかると即死させられてしまう場所など、罠の回避ポイントも存在する。また、『クロックタワー3』とは異なり、敵がすぐ近くにいる場合は隠れることができない。
- しゃがみ回避
- 追跡者から逃れるため、物陰にしゃがんで隠れて回避することができる。
- しゃがみ回避中ではフィオナから追跡者へカメラ視点が変わるため、敵の位置を特定しやすい。またフィオナのステータスもしゃがんでいる間に回復していく。
- 撃退ポイント
- クロックタワーシリーズお馴染みの、何らかのオブジェクトやアクションで追跡者を撃退するポイント。一度しか使えない上、今作ではあまり多くは存在しない。条件が揃った場合のみ発動するポイントもある。
- 戦闘
- 各章の最後は追跡者との戦闘となるが、『クロックタワー3』のように主人公が力を開放するわけでも独自のシステムに変わるわけでもなく、通常の画面のまま戦闘に突入する。直接攻撃する場合もあるが、基本的には周囲のオブジェクトを利用した戦いとなる。
- パニック
- 追跡者の攻撃を受けたり威嚇されたりすると上昇するが、メーターは画面には表示されず、画面全体にエフェクトが掛かっていく。最大まで溜まるとパニックを起こし、勝手に走り出すなど、制御しづらくなる。また、この状態に陥るとメニューを開くこともできなくなる。移動速度が速くなり、画面はほとんど見えなくなり、壁にぶつかったり敵に攻撃されると倒れてしまうこともある。倒れた状態では完全に無防備になり、敵は容赦なく即死攻撃を放ってくる。そうでなくとも、前述の通り常に敵は主人公を死に至らしめる攻撃方法を持っており、パニック状態では簡単にそれを受けてゲームオーバーとなってしまう。つまり、本作は『クロックタワー3』とは違ってパニック状態でなくとも殺される可能性がある。
- 即死トラップ
- フィオナを即死させる罠。クロックタワーシリーズでは毎回多くの即死トラップが登場したが、本作にも多くの即死トラップが設置されている。
- アクション
- 回避アクションとして「しゃがみ」と「バックステップ」が可能。しゃがみは『クロックタワー3』でも可能だったが、狭い場所を通る用途が主であり、回避の手段ではなかった。今作では前述のしゃがみ回避に有効。バックステップは後ろに飛び退いて攻撃を避けるが、スタミナを消費する。
- また、今作では物を押す動作が可能であり、謎解き以外にも、場所によっては障害物で扉を塞ぐと言ったことも可能。
- 攻撃
- 主人公自身が攻撃を行うことができる。攻撃方法はキックとタックル。キックでは壷などを破壊できるほか、扉を蹴り閉めて攻撃すると言ったことも可能。タックルは走りながら攻撃することで使用できる。キックよりも威力が高いがスタミナが減る。また、バックステップからタックルに繋げることもできる。また、アイテムを使って追跡者に対して攻撃や足止めを行なうことも可能。
- クリア後の隠しコスチュームには攻撃方法を変化させるものも存在する。
- ヒューイへの指示
- パートナーの犬に指示を出すことができる。フィオナの手の届かない位置にあるアイテムを取りに行かせたり、罠を感知したり、あるいは追跡者を攻撃させることが可能。また、特定のイベントを起こす(あるいは経験を積む)ことで新たな回避、攻撃方法を身に付けることもある。
- ヒューイとは共に行動をする、餌付けする、一緒に遊ぶと言ったことで仲良くなることができる。また、叱る、褒めると言ったアクションも可能。攻撃したりすると関係は悪化し、あまりに嫌われると攻撃される。ヒューイは最初はなかなか言うことを聞かないが、仲良くなり、また、しつけをしっかりすることで徐々に言うことを聞くようになる。
- ヒューイは体力が尽きると倒れてしまう。労わることで復活させることができるが、体力は低いまま。また、ハードモードではヒューイが倒れてもゲームオーバーとなってしまう。
- 練成
- 練成部屋でミニゲームを通じて後述のアイテムを作り出す。素材となるメダリオンが必要。
- 疲労
- 走り続けたり、タックルやバックステップを使用するとスタミナが減少し、やがて疲労状態となり移動速度が落ちる。アイテムを使うかその場でじっとしていれば回復する。
- ダメージ
- 敵の攻撃を受けて負傷した状態。移動速度が遅くなるなど、操作に制約が掛かる。アイテムを使うか時間経過で回復。特定の攻撃で追跡者もこの状態に陥れることが可能。
アイテムはマップ内に設置されている物を拾う、ヒューイの探索で発見する、錬成部屋にてセフィロト(生命の樹)を模した練成器具でメダリオンから生成する、の三種類の方法で入手できる。
メダリオン
通常の「メダリオン」の他、アイテム生成に成功しやすい「アルブムメダリオン」、犬用のアイテムを生成しやすい「ウィオラメダリオン」、攻撃用のアイテムを生成しやすい「ルブルムメダリオン」、装備用のアイテムを生成しやすい「ウィリデメダリオン」、ミニゲームで必ず何かしらのアイテムを生成できる「マギストメダリオン」がある。
ハーブ、薬類
マップを探索することで手に入るハーブ類や、錬成によって入手できる薬類によって、フィオナの体力やパニック値を回復することができる。中にはフィオナの体力を減少させたり、パニック値が上昇しやすくなるようなバッドアイテムや、体力の回復と引き換えにパニック値が上昇するアイテムなどもある。ハードモードでは、マップでハーブ類を入手することができないため、錬成によって回復アイテムを生成する必要がある。
攻撃アイテム
- マグネシア石 / マグネシア錬石 / プリママグネシア
- 地面に置いて使用することで、追跡者が踏むと爆発する罠タイプのアイテム。上位のアイテムほど爆発も大きくなる。設置してからしばらくすると自動で爆発する。階段などの傾斜で設置すると下へと転がっていくほか、直接キックすることで追跡者にぶつけることが可能。
- アンチモン / 錬成アンチモン / アンチモンカソード
- 投げつけて追跡者に命中させると、放電によって追跡者を足止めできるアイテム。上位のアイテムほど足止めできる時間が長くなる。追跡者との直接対決では動きを止めている隙にキックなどで追撃ができる。ラスボスには効果がない。
- ビスクドール
- デビリタスが大事にしていたらしい人形。逃走状態中、デビリタスにまだ発見されていない状況で投げつけて設置することによってデビリタスを人形まで誘導することが可能。一度拾われた人形は、デビリタスの小屋で再入手できる。
- 鳴き石
- 地面に置いて使用することで、しばらく時間が経つと大きな音を立てて追跡者を陽動したりできるアイテム。
- ボール
- 正確には攻撃用のアイテムではなく、ヒューイと一緒に遊ぶためのアイテム。ヒューイが近くにいる状態で投げると、ヒューイが拾いに行くことがあり、拾ってきた時に褒めるとヒューイとの友好度を上げられる。拾われなくてもしばらく時間が経つと勝手に手元に戻っている。
犬用アイテム
ヒューイの体力を回復させる「ササミジャーキー」、体力を完全回復し、喜ばせられる「ビーフジャーキー」といった回復アイテムの他、体力を減少させるバッドアイテムの「たまねぎ」(タマネギ中毒を参照)、ヒューイの攻撃力を上昇させるのと引き換えに、敵もフィオナも見境なく攻撃するようになり友好度も下がる「シルベスタエスカ」の4種類のアイテムがある。
装備アイテム
- 黒曜石のチョーカー
- ルミネセンスの追跡から逃れやすくなる。
- 紅玉のチョーカー
- 体力の消耗率と回復率が良好になり、追跡者の攻撃でダメージ状態になり難くなる。
- 金剛石のチョーカー
- 体力の消耗率が大きく下がり、回復速度も2倍になり、ダメージ状態にならなくなる。
- 研究者のイヤリング
- パニック値の回復が少しだけ早まる。
- 賢者のイヤリング
- パニック値の回復が少しだけ早まる他、攻撃を受けた時のパニック値の上昇を少しだけ緩和する。
- 錬金術師のイヤリング
- パニック値の回復速度と上昇率をかなり有利にし、威嚇攻撃を無効化にする。
- 妖精のイヤリング
- 立ち止まると半透明になり、追跡者から発見されにくくなる。
- フェザーブーツ
- 装備することで足音が静かになり追跡者にフィオナの居場所を気づかれにくくなる。
- メタルブーツ
- 装備することでフィオナのキックによる攻撃力が2倍になる。また、追跡者を負傷させることもできるようになる。
- シルバーブーツ
- 装備することでフィオナのキックによる攻撃力が5倍になる。また高確率で追跡者を撃退できる。
- パウダーシューズ
- まれに攻撃力を50倍にする。
プレイ中、条件を満たすことでフィオナの衣装を変更することが可能となっており、特殊能力が付加されているものもある。また、ヒューイの外見も変更することが可能である。
フィオナの衣装
- 薄手のシーツ
- ゲーム開始直後に身に着けているもの。すぐに下記の服へと着替える上、以降はこの衣装に着替えることもできない。
- ノーマル1
- ダニエラが用意してくれた服。ゲームの大半はこの衣装で行動することになる。
- ノーマル2
- 水塔探索中に着替えることができる服。上記の服のブーツが無くなる他、後ろ髪が解けている。裸足であるためノーマル1よりも足音が小さい。
- ペイシェントウェア
- 水塔探索直後に着ている、上半身だけの手術着。基本的な性能はノーマル2と同じ。
- ボンテージ
- 特定の条件を満たすことで使用可能となる。キックではなく、鞭によって攻撃する。
- カウガール
- 特定の条件を満たすことで使用可能となる服。キックではなく、拳銃により攻撃する。拳銃は攻撃力が高いが、近距離でないと当たらない。
- カエルスーツ
- 特定の条件を満たすことで使用可能となるコミカルな衣装。バックステップによる疲労度増加がなくなる他、しゃがむとカエルのような体勢になる。
ヒューイの外見
- ホワイトシェパード
- デフォルトの状態。フィオナの指示によく従う、探索向けの犬。
- ジャーマンシェパード
- 特定の条件を満たすことで使用可能となる。攻撃力が2倍となるがフィオナの指示にあまり従わないため、探索よりも追跡者との戦闘向きの犬。
- ヌイグルミ
- 特定の条件を満たすことで使用可能となる。敵から攻撃を受けても一切ダメージを受けない。