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『クロックタワー3』(CLOCK TOWER 3)は2002年12月12日にカプコンから発売されたPlayStation 2用ゲームソフト。
ヒューマンから発売されていた『クロックタワーシリーズ』のナンバリング作品。ただし、本作はカプコンと制作会社の倒産後に権利を引き継いだサンソフトとの共同制作で開発が進められたため、河野一二三などの旧作スタッフは一切関わっていない。過去作品とはシステムも世界観も全くの別物となっており、「バロウズ」「シザーマン」といった一部の用語以外の繋がりは一切無い(これらの用語も過去作品から借用されただけであり過去作品との繋がりはない)。カプコンとシナリオ集団「フラグシップ」を中心に制作が進められた。イベントCGムービーには深作欣二を監督として起用。
2001年4月11日にカプコンとフラグシップが主催の新作発表会の"Take Off FLAGSHIP PREMIUM NIGHT"が都内で行われた。会場には深作欣二をはじめとする制作者が姿を見せ、ソフトに賭ける意気込みを語った。「ゲームという世界は全くの未経験。この年齢で初体験できるということは中々ないことなので、ふたつ返事で引き受けてしまいました」と述べている。[1]
従来のようなポインタでオブジェクトをクリックして進める形式ではなく、シリーズ初の直接操作ボタンを入力して主人公を操作する形式となっている。「主人公には戦う力は無く、敵から逃げ隠れしながら進まなくてはならない」というコンセプトこそ受け継いでいるものの、「逃げるしかなかった主人公が戦うを力を得て反撃する」という設定とそれに伴うアクション性の向上により、ほぼ別物と言っていい内容になっている。
また、前作まではシナリオの分岐により複数のエンディングに分岐するマルチエンディング等が盛り込まれていたが、本作は完全に一本道のストーリーであり、エンディングも一種類のみである。
本作のストーリーやキャラクターは、これまでの『クロックタワー』シリーズとほとんど関連性はない。
深作は2002年、数ヶ月東映東京撮影所のスタジオで撮影(モーションキャプチャー収録)に携わり、これを撮り終えた。2003年1月に逝去した為、本作が深作の遺作となった(『クロックタワー3』の公式サイトにその撮影風景がムービーとして置かれている)。
本作は全4章(ゲームではブランチ[Branch]と表記)のシナリオからなり、シナリオは主人公アリッサを狙う追跡者『魔のモノ』からの追跡を回避しつつエリア内を探索するアドベンチャーパートと、追跡者を倒すために戦う戦闘パートから構成される。
アドベンチャーパートにおいては、バイオハザードシリーズのように「配置されたアイテムが光る」「シナリオの背景や謎解きのヒントとなる文言を記したファイル」等が存在し、これらを探し、フィールドに仕掛けられた様々な仕掛けを解いてエリアの先に進む。魔のモノと戦う力を秘めた戦士ルーダーの血を引くアリッサの力を解放するためのキーアイテムを探し当て、下記の戦闘パートで魔のモノを打倒してメインの被害者の霊を救済すること(被害者の癒し)が前半の2つの章のメインイベントとなる。また、そのほかの殺害された被害者の霊がフィールド内を徘徊していることもあり、思い出の品を見つけて昇天させてあげることができる。これにより回復や防御用のアイテム、エリア進行に必要なキーアイテムなどが入手できる。
シナリオ最後には魔のモノとの対決が待ち受けており、弓矢を武器として戦うことになる。この際にはアリッサと敵の双方にライフゲージが表示され、敵の攻撃を受けてライフが0になるとゲームオーバーとなる。相手のメーターを0にすれば勝利となりシナリオクリアとなって次のシナリオに進む。最終シナリオに到達して最終ボスを倒すとゲームクリアとなる。
『クロックタワー3』の舞台は2003年のロンドン[3] 。アリッサ・ハミルトンは14歳の少女で、3年前から寄宿学校で暮らしている。母親のナンシーは、祖父のディックが失踪した後、彼女を寄宿学校に送った。ゲームは、アリッサが母から「15歳の誕生日が終わるまで身を隠していなさい」という手紙を受け取るところから始まる[4]。母の異変に気づき不安になったアリッサは、母の意思に反して家に戻ることを決意する。しかし、母は不在で、「闇の紳士」と呼ばれる男がいるだけだった。母を探すことを決意したアリッサは、母の部屋を探索する。突然、フレデリック・ショパンの「幻想即興曲」がどこからともなくで流れ始め、アリッサは第二次世界大戦中のロンドンの街にタイムスリップしてしまう。
仕立て屋に入ったアリッサは、ハンマーを振り回した男が少女を殺害する場面を目撃する。やがて、アリッサは事件の真相を解明する。メイ・ノートンは、1942年のクリスマスイブにハンマー男に殺された。ハンマー男は殺人を繰り返した後、捕まって処刑された[5][6]。アリッサは、父の懐中時計を渡すことで、地球に閉じ込められているメイの魂を解放しなければならないことに気づく。そして、メイの魂に時計を渡し、父親と再会させる。その時、アリッサは気を失い、下宿で目を覚ます。彼女は友人のデニス・オーウェンと一緒に下宿を探索し、自分の過去を知る。彼女の家系の少女たちは、超自然的な力を持つ若い女性たち「ルーダー」と呼ばれていた。ルーダーは、無実の人間を感染させて殺人行為に走らせ、その時点で人間を「部下」にしてしまう存在「エンティティー」の宿敵である。ルーダーの力は15歳でピークに達し、その後は衰え、20歳までに完全に消滅する[7][8]。
アリッサは1960年代に入り、盲目の老女ドロシー・ランドとその息子アルバートの家に入る。彼女はランド親子が硫酸男に殺害され、酸の桶に投げ込まれるのを目撃する[9]。アリッサは硫酸男を倒して、ドロシーの魂に失われたショールを返し、自分とアルバートを解放する。その後、彼女は現在に戻り、そこで闇の紳士が2人の部下を殺したことを祝福する。そして彼女を巨大な時計台の上に送り込み、15歳の誕生日を迎えたら永遠に結ばれると告げ[10]、母親の死を告げる。彼女が信じようとしないので、彼は彼女を塔から投げ落とす。下水道で意識を取り戻した彼女は、もう一人の部下である斧男と対決することになる。斧男を倒すが、殺し損ねて墓場に送られてしまう。そこで彼女は、人間がエンティティーになるためには、15歳の誕生日に血縁関係にあるルーダーの心臓を取り出し、その血を飲まなければならないという「婚約の儀式」を知る[11]。やがてアリッサは斧男と再戦し、破壊することができた。
デニスが到着し、彼とアリッサは、彼らがデニスを誘拐したシザーマンとシザーウーマンに遭遇した放棄された病院に自分の道を見つける。アリッサは城に行き、そこでディックが奇妙な呪文を唱えているのを目にする。そこで彼女は、ディックが「エンゲージメントの儀式」を知っており、自分の子孫である城主のバローズ卿もその儀式を知っていることを知る[12]。そして彼女は、ディックがバローズにエンティティになるための協力を求め、バローズに自分の体に入ってもらい、一緒に儀式を完成させるという過去の出来事を見る。バロウズの霊がディックに憑依し、闇の紳士に変身する。一方、アリッサは双子からデニスを救出するが、その過程で双子を殺してしまう。そして闇の紳士はアリッサに、もしナンシーの魂を救いたければ、塔の頂上に来いと告げる。そこで、闇の紳士はバロウズ卿に変身し、儀式を始める。しかし、デニスがバローズの気をそらし、アリッサが反撃に出る。ナンシーの魂は、残された自分のルーダーの力をアリッサに移し、バロウズを破壊する力を与える。バロウズを倒したアリッサは、母の魂と再会する。そして、塔は崩壊する。目覚めたアリッサは野原でデニスと出会う。彼女はデニスに駆け寄り、彼を抱きしめながら言う。「ママ、やったわ!! やったわ、私達!!」
声優表記は「ゲーム版 / ドラマCD版」。
ボタンは全て初期設定のもの。
2000年にヒューマン株式会社が倒産した後、サンソフトがクロックタワーの知的財産権の唯一の所有者となった[20]。2001年4月、カプコンは『クロックタワー3』をPlayStation 2で発売することを発表し、サンソフトとの共同制作を行った。映画監督である深作欣二がディレクション、雨宮慶太がキャラクターデザイン、杉村升がシナリオ、久保こーじが音楽を担当した[21]。深作にとってゲームの制作は本作が初めてである[21]。また、背景デザインは野口竜が担当した[21]。 発表当時、キャスティングの段階で、アリッサのモーションキャプチャーのために200人以上の女優がオーディションを受けた[22]。2002年5月に開催されたE3のカプコンブースでは、ノンプレイのデモが展示された[23]。
2002年12月12日に発売された『クロックタワー3』は[24][25]、商業的には失敗に終わった。カプコンは最低でも45万本の売り上げを見込んでいたが、その数字を大きく下回る結果となった[26]。
『クロックタワー3』は、28件のレビューを受け、Metacriticでは100点満点中69点という「賛否両論」の評価を受けた[27]。
このゲームの表現力は高く評価されており、多くの人が、優れた脚本と演出されたカットシーンによってもたらされた優れた映画的スタイルを指摘している[28][30][31][32][34]。また、グラフィックやその雰囲気も好評であった[30][32][33]。GameSpyのAlan Pavlackaは、「脚本がこのゲームの最大の長所だと感じており、「優れた映画のシーン」と「独特のビジュアルスタイル」も高品質のプレゼンテーションに貢献している」と評した[32]。IGNのJeremy Dunhamは「『クロックタワー3』はイギリスのシリアルキラーの裏社会の汚くてかび臭い感じをうまく表現している...それはメアリー・シェリーの小説からそのまま出てきたようなものだ」と評価している[33]。深作欣二によるカットシーンの演出については、EurogamerのKristan Reedが「非常によく再現されている」と評価している[28] 。また、カメラワークやゲームの怖さについては、賞賛と批判の両方があった[28][31][32][33][34]。
プレゼンテーションが好意的に受け止められた一方で、ゲームプレイについては複数のレビューで批判を受けた[30][31][32][33]。具体的には、ボス戦や、隠れたり追いかけたりする反復的なゲームの仕組みが弱点として挙げられている[28][30][31][33]。GameSpotのBrad Shoemakerは、「映画のような部分はゲーム性に支えられているとし、プレイヤーはプレイする楽しさよりもストーリーのためにゲームを終わらせたいと考えるだろう」と述べている[31]。Game RevolutionのAA Whiteは、「『Clock Tower 3』は最終的に、実際のゲームプレイよりも映画の方が面白いゲームの一つであり、ゲーマーの立場からすると、それは決して良いことではない」と評した[30]。また、「ゲームが短すぎる」という意見もある[28][30][32][33]。
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