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メジャーリーグベースボールの第117回優勝決定シリーズ ウィキペディアから
2021年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第117回ワールドシリーズ(英語: 117th World Series)は、10月26日から11月2日にかけて計6試合が開催された。その結果、アトランタ・ブレーブス(ナショナルリーグ)がヒューストン・アストロズ(アメリカンリーグ)を4勝2敗で下し、26年ぶり4回目の優勝を果たした。
2021年のワールドシリーズ | |||||||
シリーズ優勝を記念して2022年9月にホワイトハウスを表敬訪問し、当時のアメリカ合衆国大統領ジョー・バイデンにユニフォームを贈呈するブレーブス一行。背番号46はバイデンが第46代大統領であることにちなむ[注 1] | |||||||
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シリーズ情報 | |||||||
試合日程 | 10月26日–11月2日 | ||||||
観客動員 | 6試合合計:25万7671人 1試合平均: 4万2945人 | ||||||
MVP | ホルヘ・ソレア(ATL) | ||||||
責任審判 | トム・ハリオン(第2戦を除く)、 テッド・バレット(第2戦のみ)[1] | ||||||
ALCS | HOU 4–2 BOS | ||||||
NLCS | ATL 4–2 LAD | ||||||
チーム情報 | |||||||
アトランタ・ブレーブス(ATL) | |||||||
シリーズ出場 | 22年ぶり10回目 | ||||||
GM | アレックス・アンソポロス | ||||||
監督 | ブライアン・スニッカー | ||||||
シーズン成績 | 88勝73敗・勝率.547 NL東地区優勝 | ||||||
分配金 | 選手1人あたり39万7391ドル[2] | ||||||
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ヒューストン・アストロズ(HOU) | |||||||
シリーズ出場 | 2年ぶり 4回目 | ||||||
GM | ジェームズ・クリック | ||||||
監督 | ダスティ・ベイカー | ||||||
シーズン成績 | 95勝67敗・勝率.586 AL西地区優勝 | ||||||
分配金 | 選手1人あたり25万8373ドル[2] | ||||||
全米テレビ中継 | |||||||
放送局 | FOX | ||||||
実況 | ジョー・バック | ||||||
解説 | ジョン・スモルツ | ||||||
平均視聴率 | 6.5%(前年比1.3ポイント上昇) | ||||||
ワールドシリーズ
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出場両球団監督の年齢はアストロズのダスティ・ベイカーが72歳、ブレーブスのブライアン・スニッカーが66歳で、合計するとシリーズ史上最高齢となる[3]。ベイカーは監督として歴代12位、シリーズ優勝経験がない人物に限れば歴代最多のレギュラーシーズン通算1,987勝を挙げているが[注 2][4]、今回も初優勝を逃した。スニッカーは、1977年に選手として入団して以来45年間ブレーブス一筋に様々な役職を担ってきたが、1995年の前回優勝時はメジャーのスタッフから外れていたため[5]、今回が自身にとって初の優勝となった。シリーズMVPには、第1戦・第4戦・第6戦の3試合で決勝本塁打を放つなど、6試合で打率.300・3本塁打・6打点・OPS 1.191という成績を残したブレーブスのホルヘ・ソレアが選出された。
2022年から、MLBは指名打者(DH)制度をアメリカンリーグだけでなくナショナルリーグにも導入した。ワールドシリーズにおけるDH制は1986年以降、アメリカンリーグ球団の本拠地球場で行われる試合にのみ採用されていたが[注 3]、2022年以降は開催地に関係なく全試合で採用される[6]。したがって、DH制なしで行われる試合は今シリーズの第5戦が最後となった。その試合で最後に打席に立った投手は、アストロズのケンドール・グレーブマンだった[7]。
10月22日にまずアメリカンリーグでアストロズ(西地区)が、そして23日にはナショナルリーグでブレーブス(東地区)が、それぞれリーグ優勝を決めてワールドシリーズへ駒を進めた。
アストロズはエースのジャスティン・バーランダーをトミー・ジョン手術で、正中堅手ジョージ・スプリンガーをFA移籍で失ってシーズン開幕を迎えた。しかもこの年は、シーズンを通して敵地でブーイングを浴び続けた。というのも、2017年・2018年に電子機器を用いた不正な方法でサイン盗みをしていたことが2019年のワールドシリーズ敗退後に発覚し、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で全試合無観客開催だったため、2021年が不正発覚後に観客の前で試合をする初のシーズンだったからである[8]。それでもアストロズは勝ち星を積み重ねた。序盤はオークランド・アスレチックスに先行を許したものの、6月13日からの11連勝で逆転して地区首位に立ち、前半戦終了時には55勝36敗で2位に3.5ゲーム差をつけた。得点数と打率でリーグトップの強力打線がチームを牽引した[9]。後半戦に入ってもアスレチックスやシアトル・マリナーズを寄せ付けず、9月30日に2年ぶりの地区優勝を決めた[8]。平均得点5.33はリーグ最高、防御率3.78はリーグ4位。打線はOPSリーグ上位20人中5人を擁する層の厚さで得点を奪い、投手陣もバーランダーを欠きながら先発ローテーションの陣容をほぼ固定し多くのイニングを消化していった[10]。チームはカルロス・コレアを中心に団結し、激しい憎悪を向けられた敵地でも44勝37敗と勝ち越した[11]。地区シリーズではシカゴ・ホワイトソックスを3勝1敗で[12]、リーグ優勝決定戦ではボストン・レッドソックスを4勝2敗で[13]、それぞれ下した。
ブレーブスはシーズン開幕から4連敗を喫し、その後も勝率.500をなかなか超えられないまま、前半戦は44勝45敗と負け越した。その間の5月には、捕手トラビス・ダーノーが左手親指靭帯損傷で故障者リスト入りし、左翼手マーセル・オズナはドメスティックバイオレンスで逮捕され休職に追い込まれる。さらに前半戦終了前日にも、右翼手ロナルド・アクーニャ・ジュニアが右膝前十字靭帯断裂の大怪我を負ってシーズンを終えた。ただ、こうして打線の主軸が相次いで戦列を離れながらも、東地区の勝ち星が他地区より伸びなかったため、地区首位ニューヨーク・メッツとのゲーム差は4.0と挽回可能な程度にとどまっていた[14]。7月30日のトレード期限までには外野手の補強を重点的に行い、ジョク・ピーダーソン、ホルヘ・ソレア、アダム・デュバル、エディ・ロザリオを立て続けに獲得する。翌31日から6戦5勝で初めて勝率.500を超えると、8月15日には地区首位に浮上した[15]。後半戦はメッツが29勝45敗と失速したこともあり[16]、9月30日にブレーブスの地区4連覇が決まった[15]。平均得点4.91はリーグ3位、防御率3.89はリーグ4位。オースティン・ライリーの成長などで故障者の穴を埋めた打線や、チャーリー・モートンとマックス・フリードを中心とする投手陣の頑張りに加え、5月下旬から守備シフトを積極的に用いるようになったことも功を奏した[17]。地区シリーズではミルウォーキー・ブルワーズを3勝1敗で[18]、リーグ優勝決定戦ではロサンゼルス・ドジャースを4勝2敗で[19]、それぞれ下した。
両チームとも、前GMが在任時の不祥事で職を追われ、他球団から招請した新GMのもとで今シリーズ出場を果たしたという共通点を持つ[20]。アストロズは前述の通り、電子機器を用いた不正なサイン盗みが発覚し、当時のGMジェフ・ルーノウが2020年1月、MLB機構によって1年の資格停止処分を下されたうえに球団から解雇された。後任にはタンパベイ・レイズ編成副代表のジェームズ・クリックが就任した。ブレーブスは、GMのジョン・コッポレラが海外の有望アマチュア選手の獲得に際し、MLB機構が設定する契約金上限を超過していないように見せかけて裏で金銭を渡すなど腐敗を助長したとして、2017年11月にMLB機構によって永久追放処分を受けた。その後、ドジャース編成副代表のアレックス・アンソポロスを後任に据えた。クリックもアンソポロスもチームをいったん解体して一から作り直したわけではなく、両チームとも主力選手の多くは前GMが獲得している[21]。
ワールドシリーズの第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、レギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に与えられる。ポストシーズン進出10球団のアドバンテージ優先順位は以下の通り。
優先順位 | 球団 | レギュラーシーズン成績 | ポストシーズン結果 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
WCG | DS | LCS | |||||
1 | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 107勝55敗・勝率.660 | NL西地区優勝 | 地区シリーズ(DS)敗退 | 免除 | 2勝3敗 | - |
[※1] | 2ロサンゼルス・ドジャース | 106勝56敗・勝率.654 | NL西地区2位=第1ワイルドカード | リーグ優勝決定戦(LCS)敗退 | 1勝0敗 | 3勝2敗 | 2勝4敗 |
[※1] | 3タンパベイ・レイズ | 100勝62敗・勝率.617 | AL東地区優勝 | 地区シリーズ(DS)敗退 | 免除 | 1勝3敗 | - |
[※1][※2] | 4ヒューストン・アストロズ | 95勝67敗・勝率.586 | AL西地区優勝 | ワールドシリーズ進出 | 免除 | 3勝1敗 | 4勝2敗 |
[※1][※2] | 5ミルウォーキー・ブルワーズ | 95勝67敗・勝率.586 | NL中地区優勝 | 地区シリーズ(DS)敗退 | 免除 | 1勝3敗 | - |
[※1] | 6シカゴ・ホワイトソックス | 93勝69敗・勝率.574 | AL中地区優勝 | 地区シリーズ(DS)敗退 | 免除 | 1勝3敗 | - |
[※1][※3] | 7ボストン・レッドソックス | 92勝70敗・勝率.568 | AL東地区2位=第1ワイルドカード | リーグ優勝決定戦(LCS)敗退 | 1勝0敗 | 3勝1敗 | 2勝4敗 |
[※1][※3] | 8ニューヨーク・ヤンキース | 92勝70敗・勝率.568 | AL東地区3位=第2ワイルドカード | ワイルドカードゲーム(WCG)敗退 | 0勝1敗 | - | - |
[※1] | 9セントルイス・カージナルス | 90勝72敗・勝率.556 | NL中地区2位=第2ワイルドカード | ワイルドカードゲーム(WCG)敗退 | 0勝1敗 | - | - |
10[※1] | アトランタ・ブレーブス | 88勝73敗・勝率.547 | NL東地区優勝 | ワールドシリーズ進出 | 免除 | 3勝1敗 | 4勝2敗 |
10月22日にまずアストロズがワールドシリーズ進出を決めた。しかしこの時点では、ナショナルリーグのリーグ優勝決定戦が未決着だった。対戦していたのは、優先順位がアストロズより上のドジャースと、アストロズより下のブレーブスである。したがって、アストロズとナショナルリーグ優勝球団のどちらにアドバンテージが与えられるかは、まだ決まらなかった。翌23日、ブレーブスがリーグ優勝を果たし、アドバンテージがアストロズへ与えられることとなった。
アストロズは1962年、ナショナルリーグの新球団 "ヒューストン・コルトフォーティファイブス" として創設され、2012年シーズン終了後にアメリカンリーグへ転籍した。したがって1962年から51年間、ブレーブスとコルトフォーティファイブス/アストロズは同じリーグに所属し毎年対戦していた。その期間のレギュラーシーズン通算対戦成績は、ブレーブスの379勝321敗・勝率.541である[22]。このうち、1968年9月7日の試合では、ブレーブスの新人ダスティ・ベイカーがメジャー初出場を果たした。53年後の今シリーズでは、ベイカーはアストロズの監督として古巣ブレーブスと対戦する[23]。アストロズがアメリカンリーグへ転籍したあとは、両球団の対戦はインターリーグとして数年に一度しか行われなくなった。転籍後の対戦は2014年に3試合、2017年に4試合の計7試合が組まれており、対戦成績はアストロズの5勝2敗・勝率.714である[24]。直近の2017年は、5月にアストロズの本拠地ミニッツメイド・パークで2試合、7月にブレーブスの本拠地サントラスト・パーク(球場名は当時)で2試合、というように分けて行われ、アストロズが全勝している。
1969年に東西2地区制が導入されると、アストロズとブレーブスはともに西地区に割り振られた。当時は地区優勝しないとポストシーズンへ進めない仕組みだったため、両チームがポストシーズンで対戦することはなかった。1993年シーズン終了後に地区割の再編が実施され、両チームのポストシーズンでの対戦が実現しうるようになった。実際に実現したのは5度、全て地区シリーズでの対戦で、1997年から2005年までの9季内に集中している。この期間はちょうど、ブレーブスによる1991年から2005年にかけての地区14連覇と重なる[注 4][25]。対戦の結果、1997年・1999年・2001年はブレーブスが、2004年・2005年はアストロズが、それぞれシリーズを制してリーグ優勝決定戦へ進んだ。このうち、1999年のシリーズ最終戦は、アストロズにとって当時の本拠地球場アストロドームでの最後の試合となった[26]。また、2005年のシリーズ最終戦は、ポストシーズン史上最長の延長18回までもつれた末に、アストロズのクリス・バークが史上7人目となるポストシーズンのシリーズ勝利決定サヨナラ本塁打を放った[25]。ポストシーズンにおける両チームの対戦はこの試合以来、今シリーズで16年ぶりに実現する[26]。
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
ヒューストン・アストロズ | アトランタ・ブレーブス | ||||||||||||||||
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守備位置 | 背番号 | 出身 | 選手 | 投 | 打 | 年齢 | ワールドシリーズ経験 | 守備位置 | 背番号 | 出身 | 選手 | 投 | 打 | 年齢 | ワールドシリーズ経験 | ||
出場 | 優勝 | 出場 | 優勝 | ||||||||||||||
投手 | 77 | ルイス・ガルシア | 右 | 右 | 24 | 初 | なし | 投手 | 36 | イアン・アンダーソン | 右 | 右 | 23 | 初 | なし | ||
93 | イーミ・ガルシア# | 右 | 右 | 31 | 初 | なし | 60 | ジェシー・チャベス# | 右 | 右 | 38 | 初 | なし | ||||
31 | ケンドール・グレーブマン# | 右 | 右 | 30 | 初 | なし | 64 | タッカー・デービッドソン[※1] | 左 | 左 | 25 | 初 | なし | ||||
21 | ザック・グレインキー | 右 | 右 | 38 | 2年ぶり2回目 | なし | 54 | マックス・フリード | 左 | 左 | 27 | 初 | なし | ||||
53 | クリスチャン・ハビエル | 右 | 右 | 24 | 初 | なし | 77 | ルーク・ジャクソン | 右 | 右 | 30 | 初 | なし | ||||
88 | フィル・メイトン# | 右 | 右 | 28 | 初 | なし | 74 | ディラン・リー# | 左 | 左 | 27 | 初 | なし | ||||
17 | ジェイク・オドリッジ | 右 | 右 | 31 | 初 | なし | 55 | クリス・マーティン | 右 | 右 | 35 | 初 | なし | ||||
55 | ライアン・プレスリー★ | 右 | 右 | 32 | 2年ぶり2回目 | なし | 68 | タイラー・マツェック | 左 | 左 | 31 | 初 | なし | ||||
58 | ブルックス・ラリー | 左 | 左 | 33 | 初 | なし | 33 | A.J.ミンター | 左 | 左 | 28 | 初 | なし | ||||
45 | ライン・スタネック | 右 | 右 | 30 | 初 | なし | 50 | チャーリー・モートン[※1] | 右 | 右 | 37 | 2年連続3回目 | 1回 | ||||
62 | ブレイク・テイラー | 左 | 左 | 26 | 初 | なし | 51 | ウィル・スミス | 左 | 右 | 32 | 初 | なし | ||||
65 | ホセ・ウルキディ | 右 | 右 | 26 | 2年ぶり2回目 | なし | 18 | ドリュー・スマイリー | 左 | 左 | 32 | 9年ぶり2回目 | なし | ||||
59 | フランバー・バルデス | 左 | 右 | 27 | 初 | なし | 30 | カイル・ライト | 右 | 右 | 26 | 初 | なし | ||||
捕手 | 18 | ジェイソン・カストロ[※2] | 右 | 左 | 34 | 初 | なし | 捕手 | 24 | ウィリアム・コントレラス | 右 | 右 | 23 | 初 | なし | ||
15 | マーティン・マルドナード | 右 | 右 | 35 | 2年ぶり2回目 | なし | 16 | トラビス・ダーノー | 右 | 右 | 32 | 6年ぶり2回目 | なし | ||||
11 | ギャレット・スタッブス[※2] | 右 | 左 | 28 | 初 | なし | 内野手 | 1 | オジー・アルビーズ★ | 右 | 両 | 24 | 初 | なし | |||
内野手 | 27 | ホセ・アルトゥーベ★ | 右 | 右 | 31 | 2年ぶり3回目 | 1回 | 9 | オーランド・アルシア# | 右 | 右 | 27 | 初 | なし | |||
2 | アレックス・ブレグマン | 右 | 右 | 27 | 2年ぶり3回目 | 1回 | 17 | ヨハン・カマルゴ[※3] | 右 | 両 | 27 | 初 | なし | ||||
1 | カルロス・コレア★ | 右 | 右 | 27 | 2年ぶり3回目 | 1回 | 5 | フレディ・フリーマン★ | 右 | 左 | 32 | 初 | なし | ||||
16 | アレドミス・ディアス | 右 | 右 | 31 | 2年ぶり2回目 | なし | 27 | オースティン・ライリー | 右 | 右 | 24 | 初 | なし | ||||
9 | マーウィン・ゴンザレス# | 右 | 両 | 32 | 4年ぶり2回目 | 1回 | 7 | ダンズビー・スワンソン | 右 | 右 | 27 | 初 | なし | ||||
10 | ユリ・グリエル | 右 | 右 | 37 | 2年ぶり3回目 | 1回 | 外野手 | 23 | エイーレ・アドリアンサ[※3] | 右 | 両 | 32 | 初 | なし | |||
外野手 | 44 | ヨルダン・アルバレス◎ | 右 | 左 | 24 | 2年ぶり2回目 | なし | 14 | アダム・デュバル# | 右 | 右 | 33 | 初 | なし | |||
23 | マイケル・ブラントリー★ | 左 | 左 | 34 | 2年ぶり2回目 | なし | 11 | テレンス・ゴア | 右 | 右 | 30 | 7年ぶり2回目 | なし | ||||
20 | チャズ・マコーミック | 左 | 右 | 26 | 初 | なし | 38 | ギジェルモ・エレディア | 左 | 右 | 30 | 初 | なし | ||||
26 | ホセ・シリ | 右 | 右 | 26 | 初 | なし | 22 | ジョク・ピーダーソン# | 左 | 左 | 29 | 2年連続4回目 | 1回 | ||||
30 | カイル・タッカー | 右 | 左 | 24 | 2年ぶり2回目 | なし | 8 | エディ・ロザリオ#◎ | 右 | 左 | 30 | 初 | なし | ||||
12 | ホルヘ・ソレア# | 右 | 右 | 29 | 5年ぶり2回目 | 1回 |
アストロズはリーグ優勝決定戦のロースターから、外野手のジェイク・マイヤーズに代えて内野手のマーウィン・ゴンザレスを登録した。マイヤーズは地区シリーズ第4戦の守備中に外野フェンスへ激突して負傷退場し、リーグ優勝決定戦ではロースター入りしたものの1試合も出場しなかった。ゴンザレスはスイッチヒッターであることや複数のポジションをこなせること、4年前のワールドシリーズ出場経験などを買われて、今ポストシーズンで初めてロースター入りした[27]。ただ、この年ゴンザレスの打撃は右投手相手の打率.177・OPS.521に対し左投手相手だと打率.250・OPS.713だったが、アストロズの先発ラインナップで代打を出せそうなタイミングは右打者のところにしかないため、代打起用はそう多くはならないとみられる[28]。
ブレーブスはリーグ優勝決定戦終了時のロースターから投手と野手をひとりずつ入れ替え、ジェイコブ・ウェブとヨハン・カマルゴを外してカイル・ライトとテレンス・ゴアを加えた。リーグ優勝決定戦では、ウェブは救援登板2試合のうち第5戦で1.0イニング4失点を喫し、カマルゴは代打4打席で無安打2三振に終わっていた。そのシリーズ途中で先発ローテーション4番手のワスカル・イノアが肩の炎症により離脱したことから、ライトにはその穴埋めとしてイニングを消化することが期待される[29]。ゴアはこの年「生涯の夢」だったというブレーブス入団を果たし[30]、レギュラーシーズン中は傘下マイナーリーグのAAA級で過ごしたものの、ポストシーズンで代走要員としてメジャーへ昇格、地区シリーズ第2戦の1試合に出場していた[31]。
今シリーズのロースターには、シリーズ史上初あるいは史上最多となることがらが複数ある。
MLB.comが所属記者・アナリスト76人にどちらがシリーズを制するか予想させたところ、アストロズ勝利予想が52人に対しブレーブス勝利予想が24人という結果となった[35]。ESPNも同様の企画を自社の記者15人で実施し、アストロズ勝利を予想したのが12人と、ブレーブス勝利予想3人の4倍にのぼった[36]。『ガーディアン』国際版の企画では、記者3人のうちふたりがアストロズを、ひとりがブレーブスを支持した[37]。他のメディアでは、両者への支持が拮抗した。CBSスポーツでは記者4人がふたりずつ[38]、『USAトゥデイ』では記者6人が3人ずつ[39]、『スポーツ・イラストレイテッド』でも記者6人が3人ずつ[40]、といずれもアストロズ支持とブレーブス支持が半々に分かれた。
2021年のワールドシリーズは10月26日に開幕し、途中に移動日を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 | 試合 | ビジター球団(先攻) | スコア | ホーム球団(後攻) | 開催球場 | |
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10月26日(火) | 第1戦 | アトランタ・ブレーブス | 6-2 | ヒューストン・アストロズ | ミニッツメイド・パーク | |
10月27日(水) | 第2戦 | アトランタ・ブレーブス | 2-7 | ヒューストン・アストロズ | ||
10月28日(木) | ||||||
10月29日(金) | 第3戦 | ヒューストン・アストロズ | 0-2 | アトランタ・ブレーブス | トゥルーイスト・パーク | |
10月30日(土) | 第4戦 | ヒューストン・アストロズ | 2-3 | アトランタ・ブレーブス | ||
10月31日(日) | 第5戦 | ヒューストン・アストロズ | 9-5 | アトランタ・ブレーブス | ||
11月 | 1日(月)||||||
11月 | 2日(火)第6戦 | アトランタ・ブレーブス | 7-0 | ヒューストン・アストロズ | ミニッツメイド・パーク | |
優勝:アトランタ・ブレーブス(4勝2敗 / 26年ぶり4度目) |
試合前のアメリカ合衆国国歌『星条旗』独唱と始球式を行った人物は、それぞれ以下の通り。
試合 | 国歌独唱 | 始球式 | |
---|---|---|---|
投手役 | 捕手役 | ||
第1戦 | キキ・パーマー[41] | クレイグ・ビジオ[42] | アレドミス・ディアス[42] |
第2戦 | ジアバニー・ウォーカー (アメリカ海軍一等兵曹)[43] | ジェフ・バグウェル[44] | チャズ・マコーミック[44] |
第3戦 | ザック・ブラウン (ザック・ブラウン・バンド)[45] | ジェイダ・ターナー、ウェス・アビラ、 ジャネット・カッツ(実業家)[46] | (不明) |
ハンク・アーロンJr. (ハンク・アーロンの息子)[47] | フレディ・フリーマン[47] | ||
第4戦 | ジョーダン・フィッシャー[48] | エリザベス・オコナー (ステージIVの膵癌サバイバー)[49] | (不明) |
第5戦 | ローレン・アライナ[50] | グレッグ・マダックス[51] | エディ・ペレス[51] |
第6戦 | カーリー・ピアース[52] | メアリー・オーガスティン・ファム (ドミニコ会の修道女)[53] | チャズ・マコーミック[53] |
第3戦の試合前、ふたつの始球式が別個に行われた。そのうち実業家の3人は、いわゆる "スモールビジネス" を立ち上げた人物である。MLBとそのスポンサー企業であるマスターカードは、この年7月のオールスターゲームに合わせてスモールビジネス・コンテストの開催を発表した[54]。このコンテストはジョージア州アトランタとマサチューセッツ州ボストン、カリフォルニア州ロサンゼルスの3都市で開催され、それぞれの優勝者へ特典として賞金1万ドルやマスターカードからの経営コンサルティング受講権のほか、ワールドシリーズでの始球式権が贈呈された[46]。3人のうち、結果的にはシリーズ開催地となるアトランタでコンテストを制したのはジャネット・カッツである。彼女はエルサルバドル移民で、夫ケンとともにププサなどを供するレストランを営んでいる。夫婦のうちどちらが始球式で投じるかについて、ジャネットは「率直に言うと議決権の51%を握っているのは私なのよ」と冗談めかして話した[55]。ケンはブレーブスのファンとして「投手に怪我人が出たので厳しい戦いになるが、勝ってほしい」とチームを心配していた[54]。
第4戦で始球式を務めたエリザベス・オコナーも始球式権を贈呈された人物である。MLBは悪性腫瘍(癌)研究支援の慈善団体 "スタンド・アップ・トゥー・キャンサー"(SU2C)に協賛しており、この年はシリーズ第4戦の始球式権をチャリティオークションにかけた。その結果、オークランド・アスレチックス名誉会長のルー・ウルフが50万ドルで落札して、SU2Cと共同で始球式の人選を行いオコナーに白羽の矢を立てた[49]。オコナーはブレーブスのファンであり、執刀医ダニエル・ボンホフが「1年以上生きられるのも6人に1人」というほど進行した膵癌――発見されたのは第2子出産の2週間後だった――を患いながらも、化学療法と外科手術で克服した経験を持つ[56]。
第6戦の始球式に登場した修道女メアリー・オーガスティン・ファムは、アストロズの地元テキサス州ヒューストンにある無原罪懐胎管区ドミニコ修道女会に所属する。同会は9人の修道女によって1978年に設立された。9人中7人はベトナム戦争末期のサイゴン陥落によってベトナムから逃れてきた修道女であり、同会はベトナム系移民の支援や低中所得世帯向けカトリック系保育学校の運営などを行ってきた[57]。これを称えるため、同市内の実業家ジム・マッキンベイルが試合の入場券を自腹で購入し、彼女らを試合へ招待するようになった。マッキンベイルが経営する家具店ギャラリー・ファーニチャーの施設内にも保育学校があり、同会がそこで週1回の子供向け聖書教育を実施しているほか[58]、マッキンベイルも同会へ家具を寄贈していた[59]。アメリカンリーグ優勝決定戦の初戦にマッキンベイルが彼女たちを55人ほど招待し、その試合でアストロズが逆転勝ちを収めたことで、彼女たちは "反撃の修道女"(英語: Rally Nuns)と呼ばれるようになった[58]。同シリーズの第6戦でも修道女のうちのひとり、メアリー・キャサリン・ドゥが始球式を行い、そこでカルロス・コレアの決めポーズを真似したことでファンの心をつかんだ[注 7][60]。彼女たちが観戦に訪れたときアストロズは、同シリーズ2試合ではいずれも勝利し[59]、続くワールドシリーズでは第1戦で敗れたあと第2戦では勝利していた[61]。そしてこの第6戦でアストロズは敗れ、4年ぶりの優勝とはならなかったが、マッキンベイルは「彼女たちは彼女たちで楽しんでたし、ファンも彼女たちと楽しい時間を過ごした。とてもいいことだった」と喜んだ[58]。
アメリカ合衆国におけるテレビ中継はFOXが放送した。実況はジョー・バックが、解説はジョン・スモルツが、フィールドリポートはケン・ローゼンタールとトム・バードゥッチが、それぞれ務めた。バックのシリーズ中継出演は通算24回目で、これはかつての解説者ティム・マッカーバーと並ぶ歴代最多タイである[62]。また試合前にはケビン・バークハート進行のコーナーがあり、デビッド・オルティーズやアレックス・ロドリゲス、フランク・トーマスが出演して試合の見所などを語った。今シリーズ6試合でFOXが得た広告収入は総額2億ドル前後とみられる[63]。CM出稿状況について今シリーズを前年と比較すると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行にともなう製品供給網混乱の影響を受けた自動車産業が半減させたのに対し、ソーシャル・ネットワーキング・サービスのTikTokや暗号通貨取引所のFTXなどが大幅に増やすという傾向がみられた[64]。
全6試合の平均視聴率は6.5%で、前年から1.3ポイント上昇した[65]。シリーズを通しての、全米および出場両チームの本拠地都市圏における視聴率等は以下の通り。
試合 | 日付 | 放送時間 | 全米 | ジョージア州アトランタ | テキサス州ヒューストン | ||||
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視聴率 | 占拠率 | 視聴者数 | 視聴率 | 占拠率 | 視聴率 | 占拠率 | |||
第1戦[66][67] | 10月26日(火) | 午後 | 8時 5分〜 0時 8分6.1% | 15% | 1081万人 | 26.0% | 49% | 25.2% | 48% |
第2戦[68][67] | 10月27日(水) | 午後 | 8時 3分〜11時17分5.8% | 14% | 1028万人 | 23.3% | 42% | 27.4% | 50% |
第3戦[69][67] | 10月29日(金) | 午後 | 8時 7分〜11時45分6.1% | 16% | 1123万人 | 26.3% | 48% | 24.2% | 49% |
第4戦[70][67] | 10月30日(土) | 午後 | 8時 4分〜11時57分5.7% | 15% | 1051万人 | 26.0% | 49% | 23.6% | 50% |
第5戦[70][67] | 10月31日(日) | 午後 | 8時12分〜 0時 8分7.4% | 18% | 1364万人 | 31.4% | 56% | 26.4% | 50% |
第6戦[71][67] | 11月 | 2日(火)午後 | 8時 4分〜11時35分7.9% | 18% | 1397万人 | 33.5% | 54% | 25.6% | 47% |
平均[65] | 6.5% | 16% | 1175万人 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
今シリーズ | 前年からの変動 | 裏番組の最高視聴率 | ||||||||
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試合 | 視聴率 | 視聴者数 | 前年視聴率 | 前年視聴者数 | 番組 | 放送局 | 放送時間 | 視聴率 | ||
変動 | 変動 | |||||||||
第1戦[66] | 6.1% | 1081万人 | 5.1% | 1.0ポイント上昇 | 920万人 | 161万人増加 | 『ザ・ヴォイス』 | NBC | 午後 | 8時00分〜 9時00分4.0% |
第2戦[68] | 5.8% | 1028万人 | 5.0% | 0.8ポイント上昇 | 895万人 | 133万人増加 | 『シカゴ・ファイア』 | NBC | 午後 | 9時00分〜10時00分4.3% |
第3戦[69] | 6.1% | 1123万人 | 4.3% | 1.8ポイント上昇 | 816万人 | 307万人増加 | Shark Tank | ABC | 午後 | 8時00分〜 9時 1分2.3% |
第4戦[70] | 5.7% | 1051万人 | 4.8% | 0.9ポイント上昇 | 933万人 | 118万人増加 | Saturday Night Football[注 8] | ABC | 午後 | 7時39分〜11時29分3.7% |
第5戦[70] | 7.4% | 1364万人 | 5.3% | 2.1ポイント上昇 | 1006万人 | 358万人増加 | 『サンデーナイトフットボール』 | NBC | 午後 | 8時23分〜11時33分8.7% |
第6戦[71] | 7.9% | 1397万人 | 6.8% | 1.1ポイント上昇 | 1263万人 | 134万人増加 | 『FBI: 特別捜査班』 | CBS | 午後 | 8時00分〜 9時00分4.3% |
平均[65] | 6.5% | 1175万人 | 5.2% | 1.3ポイント上昇 | 979万人 | 196万人増加 | [註]放送時間は東部夏時間。中部夏時間は-1時間 |
第6戦の7回表、フレディ・フリーマンのソロ本塁打でブレーブスが7-0とリードを広げた。試合がこのまま進めばブレーブスの勝利でシリーズが決着し、フリーマンはブレーブスとの契約を満了してFAとなる。この場面でバックは以下のように実況した。
1-1 pitch. Flies into left center field… well hit… back at the wall… it is gone! A home run for Freddie Freeman! How about that!? In what might be his last at-bat for the Atlanta Braves he just made it 7-0 with a shot into left-center field.
(カウント1-1からの投球、打球は左中間へ上がりました…打球が伸びる…外野手が下がる…入りました! フレディ・フリーマンのホームラン! なんということでしょうか!? これがブレーブスでの最後の打席になるかもしれない、その場面で左中間へ一発を打ち込んで試合を7-0としました) — ジョー・バック[72]
これに対し、フリーマンの残留を信じるブレーブスのファンから「せっかくの場面が台無し」「ブレーブスがフリーマンを流出させるわけがない」などとTwitter上で批判が相次ぎ、炎上状態となった[73]。ただ、この試合の直後にはフリーマン自身も残留希望を明言していたものの、契約交渉は結局まとまらず、この試合を最後にフリーマンはロサンゼルス・ドジャースへ移籍することとなった[74]。またバックも、残り1年となっていたFOXとの出演契約を破棄してESPNへ移籍したため、ワールドシリーズ実況を行うのは今シリーズが最後となった[75]。
日本での生中継の放送は、日本放送協会(NHK)の衛星放送チャンネル "BS1" で行われた。この年の放送では、アメリカ合衆国在住の高橋尚成が第6戦を除く5試合で球場から随時リポートしたが、実況アナウンサーと解説者は前年同様に現地へは行かず、現地からの映像をスタジオで観ながら実況・解説を行う形式がとられた。上原浩治は第3戦の中継に解説者として出演した翌日、第4戦を映像観戦しながら、現地にいる高橋を羨むつぶやきをTwitterに投稿した[82]。
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