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三重県伊勢市にある寺院 ウィキペディアから
金剛證寺(こんごうしょうじ)は、三重県伊勢市朝熊町岳にある臨済宗南禅寺派の寺院。山号は勝峰山。院号は兜率院。本尊は虚空蔵菩薩。朝熊山(あさまやま)南峰(経ヶ峯)東腹にあり、当寺は「朝熊山」と呼ばれる場合がある。
創建は6世紀半ば、欽明天皇が僧・暁台に命じて明星堂を建てたのが初めといわれているが、定かではない。平安時代の天長2年(825年)に空海が真言密教の道場として当寺を中興したと伝えられている[1]。またその際、空海は本尊として福威知満虚空蔵菩薩を祀り、寺名を勝峰山兜率院金剛證寺とし、虚空蔵求聞持法を修したという[2]。なお鳥羽市河内町丸山539の庫蔵寺(真言宗御室派)は、空海が当寺の奥の院として建立したものであるという。
当寺はその後衰退して無住の時代が続いたが[2]、14世紀末の明徳3年(1392年)[2]から応永年間(1394年 - 1427年)に鎌倉建長寺71世の仏地禅師東岳文昱(とうがくぶんいく)が再興に尽力した[1]。これにより東岳文昱を中興で新たな開山第一世とし、真言宗から臨済宗に改宗し禅宗寺院となった。
神仏習合の時代、伊勢神宮の丑寅(北東)に位置する当寺は「伊勢神宮の鬼門を守る寺」として伊勢信仰と結びつき、「伊勢へ参らば朝熊を駆けよ、朝熊駆けねば片参り」[1][3]とされ、伊勢国・志摩国併せて最大の寺となった。
また、当寺には虚空蔵菩薩の眷属である雨宝童子が祀られているが、雨宝童子は伊勢神宮内宮の祭神である天照大御神の化現と考えらていたため、当寺は伊勢神宮の奥の院とされるようになった[4]。こういった伊勢神宮との結び付きもあり、当寺では仏事に用いられるのは樒(しきみ)ではなく神事に使われる榊(さかき)が供えられる、全国でも珍しい寺となった[4]。
当寺は関ヶ原の戦いの後に答志島(現・鳥羽市)で自刃した九鬼嘉隆ゆかりの寺であり、嘉隆にまつわる所蔵品がいくつかある。嘉隆の三男有慶は嘉隆の菩提を弔うために当寺にて出家し、金剛證寺第12世となった。
江戸時代には江戸幕府は伊勢神宮と絡んで当寺を重視し、援助が行われている。当寺は、慶長2年(1597年)に続いて慶長13年(1608年)にも火災にあって本堂が焼失したが、翌慶長14年(1609年)には徳川家康の命で[2]、播磨国姫路城主で家康の娘婿でもある池田輝政により、本堂・摩尼殿(まにでん)が再建されている[1]。この本堂は元禄14年(1701年)に徳川綱吉の母桂昌院による修復を経て現存し、重要文化財に指定されている。
明治時代になると、他の伊勢神宮の神宮寺が廃寺とされる中で、当寺は伊勢神宮の奥の院とされながらも廃寺を免れている。しかし、1887年(明治20年)に再び火災にあい、多くの堂宇を失っている[2]。
1925年(大正14年)にケーブルカーが開通、昭和になってからは内宮前から登山バスが運行されるなどで朝熊山へ登る人が激増したが、太平洋戦争中の1944年(昭和19年)にケーブルカーの線路が軍のために金属供出されて廃線となり、一般の朝熊山への入山が禁止され当寺は衰微した。戦後には1960年(昭和35年)の伊勢湾台風などで被害を受けるなど衰退の一途をたどった。
1964年(昭和39年)の伊勢志摩スカイライン開通後には参拝客も再び急増し、1979年(昭和54年)には仁王門が再建されるなど往時の賑わいを超えるまでに復興した。路線バスは2008年(平成20年)以降は6月の開山忌の3日間を除いて運行されていなかったが、2013年(平成25年)以降は土日祝日に限り三重交通の参宮バスが運行されている。但し、本数が1日に5本と僅少であり注意を要する。
1894年(明治27年)に近くの経ヶ峯から複数の平安時代末期の承安3年(1173年)の銘のある経筒が発見されたほか、1960年(昭和35年)の伊勢湾台風の際にも経塚が発見され、この平安時代末期には埋経信仰があったことが確認された。この時の出土品の経筒などは1963年(昭和38年)に国宝(考古資料)に指定され、経塚は1966年(昭和41年)に朝熊山経塚群として国の史跡に指定された。「線刻阿弥陀三尊来迎鏡像」などの「朝熊山経ヶ峯経塚出土品」は、当寺境内にある宝物館で見ることができる。
朝熊山付近では江戸時代以降、宗派を問わず葬儀の後に朝熊山に登り、金剛證寺奥の院に塔婆を立てて供養する「岳参り」「岳詣(たけもうで)」などと呼ばれる風習がある。
また寛永7年(1630年)に秋田氏の祖で常陸国宍戸藩主秋田実季が山麓に蟄居させられている。豊臣秀吉の勘気を受けた尾藤知宣が潜伏したり、関ヶ原の戦いに際して福原長堯がこの地で自害したなど、アジール的な空間でもあった。
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