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海野つなみによる日本の漫画 ウィキペディアから
『逃げるは恥だが役に立つ』(にげるははじだがやくにたつ、ハンガリー語: Szégyen a futás, de hasznos.[注 1])は、海野つなみによる日本の漫画作品。
『Kiss』(講談社)にて2012年22号より連載を開始[1][2] し、2017年2月号まで連載された[3]。その後、人気にこたえる形で2019年3月号から連載を再開し[4]、2020年4月号まで連載された[5]。略称は「逃げ恥」(にげはじ)[6]。
海野にとっては『回転銀河』以来の現代もので、主人公二人の「契約結婚」を軸に、様々な男女間の社会問題を織り交ぜたラブコメディとなっている。タイトルの『逃げるは恥だが役に立つ』は、ハンガリーのことわざ「Szégyen a futás, de hasznos.」[7] の和訳で「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切」の意味。各話の副題もことわざや故事成語である[8]。
2015年、第39回講談社漫画賞・少女部門受賞[9]。2021年5月時点で累計発行部数は450万部を突破している[10]。
2016年にTBSテレビ系でテレビドラマ化された[11]。また、2019年と2021年に朗読劇が上演された[12][13]。
大学院を出ながらも就職難で派遣社員になった森山みくりは、いわゆる派遣切りに遭い、無職の身となってしまう。求職中の娘を見かねた父は、家事代行サービスを利用していた元部下の津崎平匡が折りよく家事代行の会社を替えようとしていたところを頼み込んで、週1回の仕事を取り付けてくる。
気難しい性格で、あまり他人に構われることを好まない津崎だったが、みくりとは適度な距離感を保って良好な関係を築く。だが、定年を機に田舎へ引っ越すという願望を両親が叶えることになり、現状を維持したいみくりは津崎に「就職としての結婚」を持ちかけ、その提案にメリットを感じた津崎は了承し、2人は「雇用主と従業員」という関係の契約結婚という道を選ぶ。
結婚式も挙げず事実婚という体で周囲への挨拶を乗り切ったみくりと平匡だが、2人のよそよそしさをいぶかしむ平匡の同僚の風見涼太や沼田、みくりの伯母の土屋百合の目をごまかすため「ハグの日」を設けるなどして周囲に親近感を醸し出そうとするうちに2人の間に本当の恋愛感情が芽生える。
海野は過去の連載作品でネタのストックを一つずつ消化していたが、残っているネタが少なくなってきた。残っているネタは、ミツバチを擬人化した近未来SFファンタジーというものだった。それは、神様である人間が住む神殿に仕える蜜の一族の話で、内容が過激であったため、担当者と女性誌より青年誌向けだと話していた。普段の妄想で考えているネタを話している中で、契約結婚が話題に上がった。そして、なんとなく本作の制作に至った。
「触られるのが嫌な相手でなければ一緒に暮らせるのではないか」と思ったことがこのマンガの始まりで、「マンガやドラマでハードルを上げ過ぎて『本当に相手を好きなのか、愛しているのか?』とか考えてしまうと結婚はすごく難しいことのように感じました。愛していると相手の気持ちを考えて自分の言いたいことを言えなかったりしますが、お見合い結婚でうまくいった夫婦もたくさんいます。『そこそこ好き』くらいの方が、相手への期待もそんなにないからうまくいくのではと思ったんです」という。契約結婚をモチーフとするドラマや漫画は昔からあり、その多くは金持ちとの愛のない「玉の輿婚」から愛が生まれる、といった内容だったが、それらとはちょっと違う切り口でビジネス物のようなテイストを入れてみたところ、女性からは『こういう仕事だけの結婚をしたいけれど相手がいない』、男性からは『こんなの男に都合がよすぎないか、そんな女性が現実にいるのか』といった感想を多数受けたとのこと[16]。
また、高齢童貞・高齢処女もテーマの一つだが、海野は、自らを『プロの独身』と言うほどまでに『独身をこじらせている』津崎については「面倒くさいやつだなあ、でも、こう思ってしまうのよね、しょうがない、しょうがない」と思いながら描いているという。また、みくりと『高齢処女』のおば百合の関係描写については、独身もしくは子供のいない叔母に可愛がられていたという知人たちの話を元にしているとのこと[17]。
海野にとって現代ものは、2009年まで連載していた『回転銀河』以来だが、それは『Kiss』本誌ではなく、増刊での不定期連載であり、20代以上が読者層の『Kiss』で正統派な現代ものを連載するのは、『デイジー・ラック』以来、12年ぶりである[18]。
海野は、単行本3巻のあとがきに「演劇でいうエチュード(即興劇)みたいな感じで描いているので、先のことはよくわかりません」と書いている。いつもは最後までプロットを練ってから連載を始めるため、そういった連載の仕方は作者にとって初の試みである。海野曰く、それは、ラストを考えないで連載を始めたら最初の4話で終わりになり、山場のエピソードを描くことが出来なかった『デイジー・ラック』のトラウマが原因である[19]。
作中に「みくりの妄想」という体でテレビ番組等のパロディが多く登場するが、これは海野が元々ページ数が余ったときの穴埋めで描いていたのが始まりで、特に第1話で「契約結婚」に至るまでの経緯を盛り込もうとすると話がまとまらなくなることから、パロディを交えて判った気にさせてしまうことを狙ったものであるという[20]。テレビドラマ化(後述)の際には深刻な場面でパロディを挿入することで視聴者が見やすくする効果も得られたという[20]。
また、制作に当たっては、海野と親交があり、長らく独身を続けていた西靖(毎日放送アナウンサー)に対して、自身が漫画家であることを伏せて取材を行い、平匡による独身男性の「わびしさ」を描くのに参考としたといい、西が出演し海野もよく視聴していた『ちちんぷいぷい』(MBSテレビ)から参考にした構図があることを、同番組によるインタビューで明らかにしている[21]。
連載再開にあたっては、当初よりテレビドラマ化を前提とした1年程度の連載として描かれている。海野が「ドラマ化ありきの続編」の執筆を悩んでいた(小説として描くことも検討していたという)ところ、テレビドラマの脚本担当である野木亜紀子と話をしていた際に野木から「読者は海野さんの漫画を待っている」といわれ、普通に続編として描くことにした[22]。
2016年10月11日から12月20日までTBSテレビ系「火曜ドラマ」で放送された[11][24]。
2021年1月2日にはスペシャルドラマ『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』が放送された[25][26]。
東宝の朗読劇シリーズ《恋を読む》の第2弾として舞台化[12]。2019年10月2日から6日までヒューリックホール東京で全10公演、2019年12月7日・8日に名古屋市芸術創造センターで計4公演が行われた[12][27]。
2021年8月11日から18日にかけて日比谷シアタークリエにて全16公演が公演された[28]。朗読劇シリーズ《恋を読む》の再演となる。
年 | 日程 | 津崎平匡 | 森山みくり | 風見涼太 | 土屋百合 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|---|
2019年 | 10月2日 | 荒木宏文 | 妃海風 | 石川界人 | 友近 | [27] |
10月3日 | 細谷佳正 | 咲妃みゆ | 木村達成 | 壮一帆 | ||
10月4日 10月5日 |
梶裕貴 | 生駒里奈 | 有澤樟太郎 | 濱田めぐみ | ||
10月6日 | 吉沢悠 | 内田真礼 | 斉藤壮馬 | 朴璐美 | ||
12月7日 | 生駒里奈 | 石川界人 | 友近 | |||
12月8日 | 細谷佳正 | 妃海風 | 矢田悠祐 | 春野寿美礼 | ||
2021年 | 8月11日 | 仙名彩世 | 梅津瑞樹[注 2] | 壮一帆 | [13] | |
矢田悠祐[注 3] | ||||||
8月12日 | 太田基裕 | 桜井玲香 | 立花裕大 (昼公演) |
シルビア・グラブ | ||
有澤樟太郎 (夜公演) | ||||||
8月13日 | 戸塚祥太(A.B.C-Z) | 大原櫻子 | 梅原裕一郎 | |||
8月14日昼 | 水田航生 | |||||
8月14日夜 | 友近 | |||||
8月15日 | 太田基裕 | 仙名彩世 | 有澤樟太郎 (昼公演) |
春野寿美礼 | ||
立花裕大 (夜公演) | ||||||
8月16日 | 立石俊樹 | 花乃まりあ | 牧島輝 | |||
8月17日 | 荒木宏文 | 城妃美伶 | 有澤樟太郎 | 朴璐美 | ||
8月18日昼 | 矢田悠祐 | |||||
8月18日夜 | 内田真礼 | |||||
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