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転売(てんばい、英: resell)とは、買い取った物をさらに他に売り渡すこと[1]。転売を職業とする者のことを「転売屋(てんばいや、英: reseller)」という。
ウィキペディアは百科事典であり、以下の記述は転売屋になることおよび高額転売を奨励しておりません。行為によっては迷惑防止条例や法律に触れる恐れもあるため、決して安易に真似をしなでください。 |
不当に多数の商品を買い占め、価格を吊り上げる行為に対する侮蔑的な意味を込めて、転売屋を「転売ヤー(てんばいやー)[2][注 1]」とも呼ぶ。ネットスラングの一種。
本項目では、転売行為そのものの内容についても扱う。
主に数量が限定されるなどの理由で入手が困難であり、希少価値が高い商品を転売目的で購入(個人ないしアルバイト等で雇われた複数人)して買い占め、インターネットオークションやフリマアプリなどのインターネットを介し高値で販売し[注 2]、輸送便で発送することを生業・趣味とした一般個人を指す。ただし、株式、債権、通貨(暗号通貨を含む)および、金、銀、銅、プラチナ、原油、穀物などの先物といった金融商品や土地、不動産の売買を行う個人についてはこの語では呼ばれない。
転売屋同士による買い占めが発生することで、制作・販売意図を設けて商品を取り扱っている運営者、計画性を練って生産・販売戦略を立てる製造・供給者、正規の価格や手段で購入したい需要者(客)の利益を損ねる行為として問題となっている。
日本では、チケット・乗車券に関してダフ屋行為として特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(チケット不正転売禁止法)によって明確に規制されている。金券ショップにおいては、警察から古物商の許可を取得して店を構えて営業している点で異なる。
本稿の説明では取り上げないが、以下の転売行為もある。
物を購入して他者に売る行為であるため、原理的にはあらゆる商品を「転売」の対象にすることができるが、以下のような利益(価値)の高い物が対象となりやすい。
なお、規約などで転売目的での購入を禁止している業者もある[32]。前述のコンサートチケットでは転売行為が発覚した場合は該当チケットを無効とするだけでなく、購入者をファンクラブからの退会処分とする転売対策も行われていることがある[33]。また、Amazonなどのネットショッピングで出品の際、正規の仕入れを判断するため仕入明細の提出を求められる場合がある。
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
原則として、日本国内において、いったん一般消費者の手に渡った物品(「古物」)を転売買して営業を行う者は古物営業法に基づく古物商許可を受ける必要がある[41]。個人であっても、古物商許可を得ずにインターネットオークションその他で継続反復し、大量の転売買営業を行っている場合、古物営業法違反などで有罪となる事例がある。
※オークションで「販売業者」として認定される基準[42](古物営業法の取締基準と異なることに注意)
転売対象が乗車券、入場券や観覧券などのチケット類である場合は、古物商許可を取っていたとしても、ダフ屋営業として2020年東京オリンピック・パラリンピックを念頭に施行された[43]特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(チケット不正転売禁止法)違反[44] 、迷惑防止条例違反[45]、物価統制令[46] を適用して検挙される事例もある。特にイベントでは、チケットの譲渡・転売を禁止している場合、購入者以外がチケットを使用すると不正入場として警察に通報される可能性がある。
しかし、鉄道における乗車券は、チケット不正転売禁止法で規制する「特定興行入場券」の対象外とされているため、この不備を突く形で2023年11月23日で運行を終了したJR西日本の観光列車『奥出雲おろち号』の座席指定券[47]や、2024年3月16日に金沢駅 - 敦賀駅間が延伸開業する北陸新幹線の指定券[48]が、原価の100倍以上の高値でインターネット上で高額転売されており、乗車できない乗客が多数生じる事態となった。特に後者の件では、JR西日本が、当時ネット出品をしないよう呼びかけていた。
国民生活安定緊急措置法で一定の条件下で生活関連物資の転売について特定標準価格を超えた販売に追徴金を科したり、5年の懲役および300万円の罰金をあわせた両方を刑事罰として科すことが規定されている。
近年では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行初期であった2020年に、衛生用マスクや消毒用アルコールが需要の拡大から供給が著しく不足し、その影響で価格の高騰が起き、高額な転売事例が予見されたことから同法の一部改正(同年3月11日および5月22日)により追加された事例がある(2020年8月28日に同法の指定から解除)。
たばこの販売にはたばこ事業法により製造たばこの特定販売(輸入販売)又は小売販売には財務大臣の登録・許可を受けなければならない[50]。
医薬品の販売には医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法、旧薬事法)により、販売地の都道府県知事の許可が必要になる[51]。さらに、インターネットオークションやフリーマーケットへの出品は禁止されている。
販売国を住居としていない外国人が在留資格に反する形で転売を職業とした場合は、出入国管理及び難民認定法(出入国管理法)違反で逮捕された例がある[52]。この場合は、経営管理査証の取得が必要になる。
アメリカ合衆国では、2016年からチケット転売規正法であるBetter Online Tickets Sales Act(BOTS法)が施行されており、ボットを利用してオンライン上で転売する行為を禁止している。2021年1月には、このBOTS法違反に基づく措置として、連邦取引委員会がニューヨーク州にある転売業者3社に罰金を払うよう命じた[53]。前述のようにBOTS法に違反しないスニーカーの転売市場などは好調になっている[3]。
転売行為は商品供給の公平性を欠くことや、転売屋およびインターネットオークション・フリーマーケットの事業者[54]が一方的に高額利益を得るなど問題視される例がある[55][56]。また、販売場所の周辺にテントなどを設営し長期間居続ける事も問題とされる[55]。大和大学准教授の立花晃は、「古物商の資格も商品知識もない転売屋が、大量転売のためだけに店舗に並ぶケースもある」と語った[57]。
2016年8月には、音楽業界団体により、チケットの高額転売に反対する意見広告が朝日新聞と読売新聞に掲出され、この意見広告には、100組以上のアーティストが賛同人として名を連ねた[58]。
転売行為の利益については無申告のケースが非常に多い。国税庁が2020年11月27日に発表した所得税などの調査結果では、インターネット取引を行っている個人について、1877件中1680件で無申告が明らかになっており、追徴課税は65億円に及んでいる[59]。また、2023年4月までに、トレーディングカードの転売を行っていた神戸市内の男性3人と業者1社が2017年から2021年にかけ、大阪国税局から転売で得た利益について計約1億円の申告漏れを指摘されていたことが判明している[60]。
そのほか、インターネットオークション、フリーマーケットサイトや個人が出店できるECサイトなどでは手元に商品がない状態の「無在庫転売・出品」を禁止しているが、この規約をかいくぐって無在庫転売を行う業者の中には、他の出品者の出品ページから写真や商品紹介ページをそのままコピー&ペーストし、別のECサイトやフリマサイトなどへ無断転載し出品を行い、注文があった場合はコピー元の出品者から商品を買うことで「仕入れ」を行う者がいる[61]。また、こうした行為の指南書やツールを売りつけ、指南書の購入代金やサポート代金などという名目で高額な料金を詐取する悪質な情報商材業者の存在が指摘されている。
販売店やECサイトで1人が購入できる個数を制限する(例:「お一人様一点限り」「同一住所への大量発送の注文をキャンセルする」[74])、購入時に特定の条件を設ける(例:「店の会員カードを所持していること」「他支店・系列店舗での購入履歴がある場合は購入不可」「購入希望の商品名を確認する」「中学生以下限定」[75]など)[76][77]。2021年1月、ヨドバシカメラは転売業者対策としてクレジットカード限定の店頭販売を行った[78][79]。
2021年から、トヨタ自動車のランドクルーザー(2021年式・300系)の販売時に、「登録後1年以内はオークションへ出品しない」「不適切な輸出につながる可能性がある場合、取引を解消する」「海外に輸出しない」旨の誓約書の記名と提出を購入の条件に加えるようになった。これは、海外に輸出されることでテロリストに行き渡り、「武器」として転用されるのを防ぐため(外国為替及び外国貿易管理法違反を避けるため)としているが、これらの誓約書は法的な拘束力を有せず[注 3]、条項を無視しても違法性がないため、転売の規制が進んでいない[80][81]。
転売に対し、販売店側もそのまま看過していたわけではなく、「商品価値=転売時の買取価格」を下げるため独自の対策を講じ、転売屋の利益を極力発生させない工夫を施すようになった。主な例として、一度「パッケージ(外箱、シュリンクなどの梱包)が開封された」状態にしてから引き渡すことで、「中古品」と査定されるため買取価格が下がるケースもあり、買取価格が購入時の価格を下回れば、転売屋にとっては赤字になる。
2021年8月19日、愛知県名古屋市の玩具店はプラモデルの転売対策として「商品購入時に内袋を開け、中に入っている成型物のランナー[注 4] の一部を客に切り取ってもらい引き渡す」という対策を行った[82]。ランナーは組み立てる人にとっては不要だが、買い取りサービス業者は一度開封された商品を「中古品」と査定するため、買取時の商品価値が下がる[83]。玩具店の店主は、「転売目的と思われる客に先に買われてしまい、常連客に売り切れを告げることが辛かった。目先の利益だけでなく、どれだけお店のファンを増やせるかを重視している。スタッフや常連客と相談して考案した」と話した。綺麗なまま保存しておきたいユーザーもいることから悩みもしたが、この対策は客の99%からは好意的に受け取られた。投稿を見たユーザーからも絶賛された[84]。
その他、大手家電販売店のヨドバシカメラでは、2021年9月頃からプラモデルについては購入できる商品個数を制限するとともに、外箱に店舗名を記した捺印を行う対策を開始した。また、トレーディングカードゲームのカートン販売については、製品を保護しているビニール製のシュリンクや外箱を廃棄し、中身のカードパックのみを取り出して販売する対策を開始[注 5] 。さらに、ジャンルに関わらず商品名を正確に言えない者を購入希望者の列から排除するなど、転売を目的としない本当に欲しいユーザーに商品を届ける姿勢に称賛の声が相次いだ[77]。
神奈川県を中心に店舗を展開している家電量販店のノジマは、2021年10月からPlayStation 5の店頭での引き渡し時に外箱に購入者の名前を書いてもらうなどの、綿密な転売対策を行っている[85][86]。これは「海外への流出を防ぐため」で、客の声などから「箱に名前が書いてある」だけで転売価値が1万円近く下がることがわかったためだという[35]。
また、全国にテレビゲーム販売・レンタルビデオ店舗を展開しているゲオにおいても、2021年11月から、PlayStation 5のコントローラーを梱包している袋にバツ印を記入させる対策を取っている[87]。
2022年3月、TSUTAYAとゲオはPlayStation 5の外箱に「開封済確認シール」の貼り付けを開始した。このシールはソニー・インタラクティブエンタテインメントが提供し、販売時にハサミなどで切って開封すると、箱の開口部分に剥がすのが難しいシールが残る[88]。
2022年6月、NTTドコモはスマートフォンの購入時に外箱への記名や押印を割引施策を適用するための条件とした[89][90]が、割引施策を適用しないのと引き換えに、外箱への記名や押印をしないままでの購入も可能としている。
後述のように、ユーザー側の要望を受けて追加生産を行うことでプレミア価格の成立を困難にするケースも出てきている。
2022年11月、トレーディングカードゲームのパックの上部を切り落としその場で開封する対策が登場した。転売時に写真の撮り方でごまかせないように明らかにわかる程度に切り落とす[91][92]。
2019年2月13日、衣料品チェーンストアしまむらにおいて、ゲーム「刀剣乱舞」とコラボしたトレーナーが販売店舗限定で販売されたが、買い占められ転売された[95]。高田馬場店では、列の1番目に並んでいた人物が全て購入しようとし、最終的に警察沙汰にまで発展した[95]。これに対し、ファンコミュニティ全体で転売ショップの違反を通報する活動を行い、しまむらへ再販を望む意見を送った[96]。この事態を受け、しまむらが本商品の再販を決定した[97]。
2021年9月には「刀剣乱舞無双」の数量限定版が転売されたが、ファンコミュニティ全体で転売品の不買運動をおこなった[96]。制作陣へ意見を送ったことが功を奏し、代表取締役社長の働きかけを得て、数量限定版の追加生産が決定した[96][98]。
2021年10月23日には、VTuberグループ「ホロライブ」と、大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」とのコラボグッズが全国の店舗で数量限定で販売されたが、多数のグッズが転売屋により買い占められフリマサイトで転売された。これに対して、ホロライブのメンバーである不知火フレアらがファンに向け、転売屋からグッズを買わずに再販売を待つようSNSで呼びかけを行い、多くのファンがこれに同調した。ドン・キホーテ側もこの事態を受け、2日後の10月25日に予約通販決定を発表し対応した[99]。
2022年4月16日、東京都渋谷区の「Apple 表参道」前[100]にて、男性を待ち伏せしていた中国人男性3人が鉄パイプなどで襲撃し、持っていたバッグを奪おうとした。被害男性は転売目的でiPhoneを100台近く購入した他、バッグの中に現金35万円や、約940万円分のApple gift card[101]を入れていた。
被害男性は元中国国籍で日本国籍を取得しており、事件前日にもこの店舗でiPhoneを100台ほどを購入していた。加害者3人組と被害者は、同じく埼玉県川口市在住だった。警視庁の暴力団対策課が捜査を担当し、2022年9月14日に犯人3人を逮捕した[102]。
2024年9月17日には、iPhone 15の購入をめぐりApple 表参道前でトラブルを起こし、業務を妨害したとしてチャイニーズドラゴンのメンバーら男女7人が逮捕されている。買い占めや転売を常習的に続けていたと報じられている[103]。
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