田崎 晴明(たさき はるあき、1959年8月28日 - )は、日本の物理学者。学習院大学理学部教授。
専門は理論物理学・数理物理学・統計物理学。「ニセ科学フォーラム」実行委員。理学博士(東京大学・1986年)。
名前の「晴」は正確には旧字体である(「青」の下の部分が「月」ではなく「円」)。
父は筑波大学名誉教授の田崎明、祖父は神経の跳躍伝導の発見者である田崎一二。植物学者の鳥居啓子は再従妹(祖父の妹の孫)。
東京都生まれ。1982年に東京大学理学部物理学科を卒業[1]。1986年に東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了後、プリンストン大学講師を務め、1999年より学習院大学理学部教授。
『量子多体系の数理物理学的研究、特にハルデン・ギャップ(フランス語版)問題、ハバード・モデルにおける強磁性の解明』で久保亮五記念賞を受賞。多体問題の研究に加えて、1997年より熱力学の研究も開始[2]。リーブ-イングヴァソンの論文(断熱的到達可能性の項も参照)に影響を受けたこの研究は、2000年に出版された『熱力学』に結実した。
自らのウェブページ上から情報発信している。専門分野以外では、『知の欺瞞』の主要訳者を務めてソーカル事件に関連した社会批評を展開[3]し、またパキスタンの物理学者兼政治評論家ペルヴェース・フッドボーイの論説を紹介し、菊池誠・天羽優子・黒木玄らと共に『水からの伝言』のような疑似科学を批判する[4]など、科学と社会に関する発言も多い。ただし自身の権威主義との折り合いに苦労している面もある。福島第一原子力発電所事故に関連して、放射線と被曝の基礎知識を解説している。その他にモーニング娘。の批評などもある。
2ちゃんねるの本人のスレッドに書き込んだことがある[5]。
ノーベル財団による2016年のノーベル物理学賞の専門家向け解説では、本文でトポロジカル相転移に関する田崎らの貢献に言及し、参考文献として田崎の共著論文三編[6][7][8]を引用している[9]。
第1回久保亮五記念賞(1997年)『量子多体系の数理物理学的研究、特にハルデン・ギャップ問題、ハバード・モデルにおける強磁性の解明』
翻訳
- スウィンバンクス・デイビッド、田崎真理子・田崎晴明訳『アジア諸国における研究評価』パリティ 13(5), 67-71, 1998
- アラン・ソーカル・ジャン・ブリクモン、田崎晴明・大野克嗣・堀茂樹訳『「知」の欺瞞 - ポストモダン思想における科学の濫用』岩波書店、2000年。ISBN 4000056786
- エリオット・リーブ・ヤコブ・イングヴァソン、田崎晴明訳『統計力学も熱機関もなしで理解できる - エントロピー再考』パリティ 16(8), 4-12, 2001
- パルヴェーズ・フッドボーイ、廣田和馬・田崎晴明訳『理性で根源に立ち向かえ』(2001年9月27日朝日新聞朝刊(全国版)に掲載。坂本龍一『非戦』幻冬舎。ISBN 4344001443に再録。)
- マーレイ・T・バチェラー、田崎晴明訳『数多くの分野での、その驚きの道のり - ベーテ仮設の75年』パリティ 22(9), 4-11, 2007
- アラン・ソーカル・ジャン・ブリクモン、田崎晴明・大野克嗣・堀茂樹訳『「知」の欺瞞 - ポストモダン思想における科学の濫用』岩波書店(岩波現代文庫)、2012年。ISBN 4006002610
解説記事
- 田崎晴明『パーコレーションのフラクタル幾何学』数理科学 25, 18-26, 1987
- 田崎晴明『Percolationと臨界現象の物理』数学 40, 254-257, 1988. doi:10.11429/sugaku1947.40.254
- 田崎晴明『ランダム磁場イジング模型』物性研究 55, 472-487, 1991. NAID 110006476970
- 田崎晴明『量子スピン系におけるハルデン・ギャップ(理論)』 固体物理 27, 1-8, 1992
- 田崎晴明『量子スピン系の理論』物性研究 58, 121-178, 1992. NAID 110006478101
- 田崎晴明『ギブスの変分原理と統計物理』数学セミナー 34, 37-41, 1995
- 田崎晴明『ハバード模型の物理と数理』固体物理 31, 173-188, 1996
- 田崎晴明『スピンはそろう - 強磁性の起源をめぐる理論』日本物理学会誌 51, 741-747, 1996. doi:10.11316/butsuri1946.51.741
- 大野克嗣・田崎晴明・東島清『くりこみ理論の地平』数理科学 35, 5-12, 1997
- 田崎晴明『くりこみ群と普遍性』数理科学 35, 21-29, 1997
- 田崎晴明『統計物理学の基礎をめぐって』数理科学 37, 53-60, 1999
- 田崎晴明『統計力学におけるゼロ - ゼロ点をとおしてみる相転移現象』数理科学 43, 43-48, 2005
- 田崎晴明『熱力学の「空間」と統計力学の「空間」 - ミクロとマクロを結ぶ鍵』数理科学 44, 18-23, 2006
- 田崎晴明『非平衡定常系の熱力学と統計力学にむけて』日本物理学会誌 63, 797-804, 2008. NAID 110006951136
- 田崎晴明『平衡と非平衡の熱力学・統計力学 - ミクロとマクロを結ぶ論理』数理科学 46, 12-17, 2008
- 田崎晴明『三角格子上の臨界パーコレーションの共形不変性 - カーディーとスミルノフ』数理科学 46, 13-19, 2008
- 田崎晴明『統計力学と確率論 - 調和振動子(自由場の理論)からランダムウォークへ』 数理科学 48, 7-12, 2010
- 田崎晴明『「ゆらぐ界面」をめぐる実験と理論』日本物理学会誌 65, 760, 2010. NAID 110007818483
- 田崎晴明『「悪魔」との取り引き - エントロピーをめぐって』日本物理学会誌 66, 172-173, 2011. NAID 110008593008
- 田中彰則・田崎晴明『ハバード模型における金属強磁性』日本物理学会誌 66, 434-438, 2011. NAID 110008661954
- 田崎晴明『アインシュタインと非平衡統計力学 - 1905年のブラウン運動の論文をめぐって』 数理科学 50, 27-32, 2012
- 田崎晴明『自由エネルギーと熱力学第二法則 - マクロな世界でのエネルギー』 数理科学 51, 21-26, 2013
その他
- 高安秀樹編『フラクタル科学』朝倉書店、1987年。ISBN 4254100639
- 田崎晴明『マセマティカルフィジックス・ワンダーランド』数学セミナー 34, 39, 1995
- 田崎晴明『夏の学校の思いで』(第46回物性若手夏の学校)2001
- 田崎晴明他『座談会:21世紀の物理学に未来はあるか』パリティ 16(5), 46-56, 2001
- 田崎晴明他『座談会「物理学の明日」』日本物理学会誌 56, 648-659, 2001. NAID 110008006927
- 田崎晴明『科学と「ニセ科学」をめぐる風景』物理教育 54, 215-219, 2006. NAID 110007491321
- 田崎晴明・田崎真理子『リカ先生の10分サイエンス 1-50』理科の探検(RikaTan) 1-6, 2007-2012(連載)
- 田崎晴明『科学の心、科学的思考、そして科学者の姿勢とは』論座 141, 192-198, 2007
- 小島寛之・田崎晴明・加藤岳生『討議 自然からの出題にいかに答えるか - 数学的思考と物理学的思考』現代思想 38, 116-141, 2010
- 天羽優子・菊池誠・田崎晴明『「水からの伝言」をめぐって』日本物理学会誌 66, 342-346, 2011. NAID 110008661938
- 高橋秀俊・藤村靖『高橋秀俊の物理学講義 - 物理学汎論』「解説」筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2011年。ISBN 4480093958
- 田崎晴明『特別インタビュー やっかいな放射線の基礎知識を学ぼう』第三文明 637, 42-44, 2013
ただし、ソーカルからの批判を受けた思想家たちに関する文章を執筆したことのある思想史家の仲正昌樹は、原作者たちの明白な誤読部分や文脈喪失部分を、邦訳の際に引用源と照らして検証せず、訳注でもそのことを明記しなかった田崎たちの邦訳のあり方を批判している。
- 山形浩生:山形は田崎の『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』を朝日新聞にて書評した
- 別唐晶司:田崎は高校時代のクラスメートであると言明している